バブル崩壊後、日本は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥った。デフレと低金利が常態化し、預金利息はほとんど期待できず、資産を現金で保有していても増えない時代が続いた。
この時代に「アリ」となった人々は、将来を見据え、株式・不動産・外国資産といったリスク資産に投資した。短期的には成果が乏しい局面もあったが、少額からでも積み立てを続け、長期でリスクを分散する姿勢が功を奏した。結果として、デフレ脱却後の株価回復や世界的な資産価格の上昇を享受し、資産形成を進めることができた。
一方で「キリギリス」となった人々は、当時の常識に従い「安全第一」を理由に現金と預金に資産を留め続けた。デフレ下では物価が下がるため、現金の実質価値が維持されることが安心材料となった。しかし、これはあくまで「デフレという特殊環境」が支えた一時的な優位にすぎなかった。
令和に入り、状況は一変した。エネルギー・食料を中心に世界的なインフレが進み、日本でも物価上昇が家計を直撃している。低金利が続く中、預金に資産を置いたままの「キリギリス」たちは、現金の購買力が目減りし、生活水準の維持に苦しむ局面を迎えている。
一方で「アリ」として投資を続けてきた人々は、資産の成長によってインフレの影響を和らげることに成功している。
寓話「アリとキリギリス」の結末は、令和の物価高において現実の姿として現れた。平成不況下における投資行動の差が、時を経て大きな格差となって可視化されているのである。