(前回→「開業から15年、あの『代官山 蔦屋書店』の現状は?」)
書店の生き残りをかけて、IT、AIを駆使した新規ビジネスが登場する一方で、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、横浜市)が運営する蔦屋書店では、価値の源泉を「本」と「人」に置いている。その象徴的な存在が、コンシェルジュ。コンシェルジュが成功させた、本を売る仕掛けを、「梅田 蔦屋書店」の店長にして文学コンシェルジュでもある北田博充さんに聞いていく。
2015年にオープンした梅田 蔦屋書店は、大阪駅直結のファッションビル「LUCUA 1100(ルクア イーレ)」内にあり、面積が約1000坪という大型店です。ここは、全国の蔦屋書店の中でビジネス書をいちばん売り上げている店舗とか。

北田博充・梅田 蔦屋書店店長(以下、北田):はい、大阪駅直結という立地特性上、オープン当初からビジネスパーソンのご利用が多い店舗でした。開業時はまさに「ワークスタイル」というジャンルに注力して、マーチャンダイジングを行っていましたが、その半面、突出した特徴や強みが存在せず、新型コロナウイルス禍を機に在宅勤務へのシフトが進んだことで、ビジネス書の売り上げも低下傾向にありました。
前回、CCCの鎌浦からお話をさせていただいた通り蔦屋書店は、銀座と京都はアート、二子玉川は家電など、それぞれに強みがあります。
梅田でもワークスタイルだけに頼らない特徴付けが必要で、20年から主力ジャンルの「ワークスタイル」に「エンタメ」を加えて、その2本柱で働き方の提案と、その表裏となる私生活での“推し活提案”を積極的に始めました。

推し活と梅田店の相性はバツグン
推し活提案とは、どういうものなのでしょうか。
北田:端的にいうと、タレントさんに会えるようなイベントで、週末に集中して数多く催しています。
先に成果からお伝えしますと、推し活提案を行う前と2025年度で比較すると売り上げが10倍になるなど、ものすごい増加になりました。
え、いきなりすごい伸びです。それはエンタメジャンルに限った本の売り上げということですね、念のため。
北田:その通りです。
成功の前提として、なぜエンタメを強化しようと考えられたのでしょうか。
北田:そこには3つの背景と理由があります。1つ目は「顧客層マッチング」の視点です。
表1は「ライフスタイル推計値」という、顧客層の志向性を表すグラフですが、梅田蔦屋では、そのライフスタイル推計値のグラフが「SHIBUYA TSUTAYA」(東京・渋谷、24年にリニューアルオープン)と「TSUTAYA EBISUBASHI」(大阪・戎橋、03年オープン)と、ほぼ同じ折れ線グラフだったんです。

渋谷と戎橋は、いずれもCCC直営の「TSUTAYA」ブランドで、アニメ、音楽、本と、エンタメに関する総合的な旗艦店。立地はまさに若者文化のど真ん中ですね。
北田:ライフスタイル推計値の折れ線グラフがシンクロするということは、渋谷や戎橋で取り組んでいるタレントイベント、推し活提案が、梅田でも商機を生み出すのではないか。そう考えたのです。
なるほど。では2つ目とは?
北田:2つ目は、梅田 蔦屋書店が都心型の駅直結商業施設に出店しているという、その立地特性です。タレントさんが来られるイベントには、遠方からもお客さまがいらっしゃるので、アクセスしやすい立地は、大きな利点になります。
そして3つ目が、梅田エリアにこのような大型のエンタメイベントをできる書店が少なかった、つまり競合が少なかったということになります。
イベントの中身はどのようなものなんでしょうか。
北田:タレントさんの写真集や本のお渡し会が中心になります。23年にパイロット的な意味で、初めてお渡し会を行いました。当時の1イベントあたりの売り上げと比較すると25年は約6倍となり、ついに1つのイベントで数千万円という、大きな売り上げをつくるまでになっています。
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