[書評]情報社会学序説 At home in the last modern
![]() | 情報社会学序説―ラストモダンの時代を生きる 公文 俊平 NTT出版 2004-10 by G-Tools |
大変興味深かった。
以前、公文俊平先生の論文を読ませていただいて涙がでるほど感動した。
・From Wealth to Wisdom: A Change in the Social Paradigm 国際経営情報学会講演記録
インターネットが一般に普及しはじめるより3年も前の論文だ。1992年に既に公文俊平先生は大きな社会的な「力」の変遷がインターネットから起こるを予見していた。国と国とを単位とする「威のゲーム」、資本主義の結果としての「富のゲーム」、そして92年以降ネットワーク社会において「智のゲーム」が始まるという予感はまったく正しかったのだと想う。公文先生の予言とおりなのか、「富のゲーム」については特に日本においてこの10年あまり雑誌から、家電、ソフトウェアなどさまざまな「商品」の「貨幣」建ての価格が下落し、商品によっては表面の金銭的な価格としては「無料(タダ)」のものがヒットとなるというところまで資本主義は行きついてしまった。そして、30代以下の世代におけるゲームや、アニメや、あるいはネットにおけるような「キャラクター」と「ネタ(情報)」への関心の高さを見ると、貨幣も含めた物体としての「商品」を所有するという「富」への関心から、必ずしも物質的な結実をもたない「商品」のシンボル的な力の「消費」へと移行しつつあるようにさえ想われる。
そう、本書において公文先生は、日本のこうした若い世代のこの10年あまりの動向に関心を持ち、そこに「智のゲーム」の萌芽を見ていらっしゃるように想われる。特にいわゆるオタク文化に期待を向けておられるように感じる。
一方、本書はこうした情報社会の変遷への興味を出発点として、シグモイド曲線に似た「S字波」をモチーフとした文明論、地域通貨への洞察、そして、べき乗則の世界へと展開されていく。実に私と関心が共通なことにびっくりした。参考図書のリストに、バラバシや、高安先生があがっていたのもうれしい。安冨先生の論文はご存知なのだろうか?鈴木健さんがGLOCOMにいらっしゃるから、きっともうご存知なんだろうな。いや、ちと寄り道に入りかけているが、この辺は一旦置く。
今回、読了してどうしても気になって仕方がなかったのが、文明の進化がひとつのテーマであるにもかかわらず「絶滅」についての考察がないことだ。べき乗則は、多分リンクから離れて死滅し、淘汰されていくノードの存在が前提にあるような気がしてならない。本書からは、こうした「絶滅の予感」がない。文明論のアナロジーとして使っていらっしゃるシグモイド曲線は、私が理解している限りでは、成長し、数が増えていくノードの間で、えさ場(ニッチ)の取りあいが生じる様子を記述したロジスティック関数から得られると想っている。また、リアルの社会との関わりがどんどん薄くなる方向でネット界隈に生きる若者が、公文先生の期待する「智のゲーム」の時代を生き抜く「智衆」であるとは私には想いずらい。本書において「創発」という言葉で示される自己組織化の多くの現象も、どちらかというと「賢いつもりで人間は行動しているが、それでも全体としてみれば極めてシンプルな形にいきついてしまう」と読むべきではないだろうか?
なんというか、自分自身、自分の属するコミュニティー、組織、あるいは国といったものが安定している、永続すると想いこむことの弊害が、いまの日本の社会に多く散見されるような気がしてならない。社会的なネットワークに背を向ける、「社会とかかわらないで生きていく」とか、「社会主義など過去のものだ」とうそぶく彼らからは、「死のにおい」、いや「生のにおい」がしないように感じるのは私だけだろうか?彼らの生き方は、今が変わらない、自分も変わらないとい前提であるような気がしてならない。もっとも彼らの対極にある日本の支配層といわれる老人達も自分たちが不死であると誤解しているような気もするが、それはまた別な話題だ。今の日本は「死」が遠ざかっている社会であるがために、逆に大きな淘汰の時代を迎えているような気がしてならない。「繁栄の中に衰退の種がある」という山本七平の予感についてはすでに書いた。
ちなみに、生成と絶滅という観点からナウシカを読みなおすと本当に示唆するところが多いように感じる。そうそう、あとこの辺の視点から旧約聖書の「伝道者の書」を読みなおしたいとも想っている。「伝道者の書」の「空」とは「永遠に持続するものはどこにもない」という意味ではないかと想っているが、山本七平ならぬ我が身の浅薄な知識ではトンデモのそしりをさけるすべもない。
■参照
・情報社会学序説―ラストモダンの時代を生きる by 公文俊平先生 し、しらなかった。ご本人がブログ形式で本書を公開していることを。
・ゾウと人間のゲーム by palさん もうなんかFIFTH EDITIONに刺激されっぱなしです。
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