この画像を大きなサイズで見るイングランド南西部、波と風に削られた断崖が続くジュラシック・コーストで、2001年、地元の化石収集家がきわめて保存状態の良い海生爬虫類の化石を発見した。
この標本は、カナダのロイヤル・オンタリオ博物館に収蔵されたものの、長い間調査されないままになっていた。
ところが最近、詳しい分析が行われた結果、それがこれまで知られていなかった魚竜の新属新種であることが明らかになった。
「キフォドラコン・ゴールデンカペンシス(Xiphodracon goldencapensis)」と名付けられたこの化石は、当時の海の生態系や魚竜の進化の過程をひも解く、きわめて重要な手がかりとされている。
この研究成果は『Papers in Palaeontology』誌(2025年10月9日付)に発表された。
立体構造を保ったまま残された魚竜の化石を発見
イングランド南西部、ジュラシック・コーストの断崖「ゴールデン・キャップ」で、地元の化石収集家クリス・ムーア氏が、ほぼ完全な魚竜の骨格を発見したのは2001年のことだ。
この化石は、立体構造を保ったまま保存された極めて状態の良いもので、巨大な眼窩と剣のような吻(ふん)を持つ頭骨が特徴的だ。全長は約3mと推定されている。
「最初に尾の椎骨の一部が突き出しているのを見つけたんです。それを一度覆ってから、掘り出す許可を得て調べてみました」とムーア氏は語る。
「椎骨をたどっていくと後ろ脚のひれがあり、さらに肋骨や前脚のひれも見つかり、最後には頭骨にたどり着きました。」
「そのとき硬い物に当たったのですが、それが頭骨だったんです。しかも、立体的な形のまま保存されていました。多くの魚竜の骨は圧縮されて平らになっていることが多いのですが、これは完全に立体の形を保っていました。頭骨の両側には2つの目があり、そして前方には何百本もの細く鋭い歯を備えた、巨大で剣のように長い吻(ふん:口先)が伸びていたのです。」
この画像を大きなサイズで見る発見から15年後に本格調査、24年後に新属新種登録
発見当初から保存状態の良さは注目されていたが、実際の研究が進められたのは、2016年にマンチェスター大学の魚類古生物学者ディーン・ロマックス博士がこの化石と出会ってからだった。
この化石の研究が長い間進まなかったのには理由がある。
発見された標本はカナダのロイヤル・オンタリオ博物館へ送られ、当時、世界的に有名な魚類学者、クリス・マクゴーワン博士が研究を行っていた。
だが、何らかの事情で正式な報告書はまとめられないままになり、マクゴーワン博士の引退後、ロマックス博士がムーア氏に「もう一度調べさせてほしい」と申し出たのだ。
ロマックス博士は「最初に見たときから普通ではないと感じましたが、ここまで重要な発見になるとは思いませんでした」と語る。
研究の結果、この魚竜は新属新種であることがわかり、「キフォドラコン・ゴールデンカペンシス(Xiphodracon goldencapensis)」と命名された。
「キフォ(Xipho)」は剣、「ドラコン(dracon)」はドラゴンを意味しており、そのまっすぐで鋭く伸びた吻から名付けられた。「ドラゴン」は、200年以上前から魚竜が「海のドラゴン」と呼ばれてきたことに由来する。
また、「ソード・ドラゴン・オブ・ドーセット(ドーセットの剣竜)」の愛称で呼ばれている。
これは、イングランドにおいて100年以上ぶりとなるジュラ紀前期の新属新種の魚竜の命名であり、古生物学的にも大きな意味を持つ。
この画像を大きなサイズで見る進化の空白を埋める重要な手がかり
魚竜は中生代(三畳紀〜白亜紀)に生息していた絶滅爬虫類の一群で、現代のイルカに似た流線型の体とヒレ状の四肢を持ち、魚やイカなどを捕食していた。
分類上は魚でも哺乳類でもなく、「魚竜目(Ichthyosauria)」という独自のグループに属している。
キフォドラコンの発見が極めて重要な点は、進化史の中でも特に情報が乏しい前期ジュラ紀の地質時代の一つ「プリンスバッキアン期(約1億9300万〜1億8400万年前)」に属していることだ。
この時期は、魚竜のいくつかの系統が絶滅し、新たなグループが現れた転換点とされており、生物の多様性に大きな変化が起きたことが示唆されている。
共著者であるニューヨーク州立大学ブロックポート校、ジュディ・マサレ教授はこう語る。
プリンスバッキアン以前と以後では、魚竜の化石は多数見つかっているものの、共通種が存在しません
つまり、進化的に重要な変化が起きた時期であり、それが“いつ”だったのかを明らかにする上で、キフォドラコンは非常に重要な手がかりになるのです(マサレ教授)
この化石の研究を始めた前出のロマックス博士もこう語る
この化石は、進化のパズルの欠けていたピースでした。キフォドラコンは、より後の時代の魚竜と近い特徴を持っており、これまで考えられていたよりも早く種の入れ替わりが起きていたことを示しています(ロマックス博士)
この画像を大きなサイズで見る生きた痕跡と死の証拠が刻まれた化石
この化石には、個体の生涯に関する重要な痕跡も刻まれていた。
共著者であるドイツ・シュトゥットガルト自然史博物館のエリン・マクスウェル博士によれば、キフォドラコンの四肢の骨や歯には変形があり、生きていた時に大きな怪我や病気を負っていた可能性があるという。
さらに頭骨には、大型の捕食者によるとみられる咬み跡も確認されており、これが死因である可能性が高いという。襲ったのは別の、より大型の魚竜だったと推定されている。
この画像を大きなサイズで見るまた、この標本には魚やイカの痕跡が保存されており、死の直前に何を食べていたのかを示す「最後の食事」の記録も残されていた。
加えて、解剖学的にも他に例を見ない特徴が確認された。
特に鼻の周囲にある眼窩(がんか)の内側壁を構成する小さな薄い骨「涙骨(るいこつ)」には、これまでの魚竜には見られなかった二股状の特殊な骨の構造が見つかっている。
こうした独自の形態的特徴と進化的な位置づけをふまえ、研究チームはキフォドラコンを新属新種として記載するに至った。
現在、この化石標本はカナダ・トロントのロイヤル・オンタリオ博物館に保管されており、今後は一般公開される予定だ。
References: Manchester.ac.uk / Onlinelibrary.wiley.com
















死ぬ前まで普通にご飯食べれてたのか
捕食されたなら身体はバラバラになりそうなものだし
致命傷を負った後、泥にでも潜ったのかな?
仕留めた直後に別の捕食者が割り込んできて、捕食者同士が争ってる間に死体が海底に落ちて泥に沈んだとか。いろいろ想像できて楽しい
そろそろ年代特定のウソを暴いてほしい
好事家の収集品の中にはまだまだ隠された逸品がありそうに思える
化石とか宝石とかに興味が無い2~5代目が相続を機に金に換えようと売りに出すのもありそうだし
それはいつどこで掘り出されたか分からないから学問的には何の意味も無くてな……
そんなことはない
同種の異性だったり、種の移行期だったりすることもあるだろう
時代が下がればタンパク質の検出ができたりするかも
宝石なんかだと盗まれてリカットされてたり、失われたペア(耳飾り、対の指輪、首飾りとのセットなど)はまたにある
以前より分析力が上がってるので無意味ということはないんだよ
一度陸に上がって肺呼吸になった爬虫類が、魚類の占める生態的ニッチを奪うことができたのはなぜなんだろう
この時代の爬虫類は海、陸、空に適応放散してほんとすごい
シーラカンスみたいに後ろ脚的なものあるね
すげぇ完璧に残ってるじゃん( *´艸`)
干物みたいだすごい、骨になってない肉がついてる
こんな化石もあるのか(感動
岩石の中からこんな化石を掘り出す作業もすごいな
特に頭部の繊細な構造を削り出すのって、すごく根気のいる仕事だと思う
素人的にはこんな状態の恐竜(魚竜)の化石が出て来るのが凄いと思った。生きている時の事が想像できるのでリアルにこんなのが泳いでいる海には行きたくないと思った。
イングランド南西部、ジュラシック・コーストの断崖「ゴールデン・キャップ」って凄い場所なんだな。
(世界にはこんな場所が他にもあるのかな驚いた)
アメリカのバットランドとかヘルクリーク。日本だと手取層群北谷層。
ジュラシック・コーストは、古生物学の草分けの一人メアリー・アニングがイクチオサウルスの全身骨格を発見した、ライム・リージスを含む地域でもありますね。
襲ったのはテムノドントサウルス(最大9m)と考えられている。
この体長3mの個体では太刀打ちできないな。
煮たら出汁が取れそう
爬虫類だろうけど、嘴に見えるから鳥に見えちゃうね頭部が
トカゲ味か、魚味かどっちに似ているのだ?
トカゲ食ったことないから味の違いがわからない
魚竜の頭骨本当に魚に似てるな
大きいカマスか何かみたいだ
これが収斂進化ってやつかな
手負いの状態で生き抜いてきたけど、さいごにやられて力尽きて沈んだんだな。怖かったかな。そこから1億年以上…掘り出されてしまったあとの寿命はたかだか数十・数百年かもしれない?のがせつないかも。災害・戦乱・カネ……地上は怖い。
貴方優しいね 化石になった生き物の人生にまで想いを寄せるなんて