世間的には、演出家・脚本家というより、ともさかりえさんの元夫で有名な河原雅彦さんが週刊朝日に書いたクックパッドに関する記事が朝日新聞出版のニュース・情報サイトであるdot.に掲載され炎上しています。
増加する“クックパッド至上主義”な女性達 あなたはどう思う?
小町に投稿したらフルボッコ間違いなしの内容で、はてな匿名ダイアリーに書けば釣りと疑われるぐらい、突っ込みどころ満載のこの記事、何が炎上ポイントだったか、なぜこのような炎上が起きたのか、ちょっと書いてみます。
まずは何が炎上ポイントだったかの解説から。
男性からみて「ねえ、大丈夫?」ってくらいの料理が苦手な女性は今も昔も変わらずいるとして、最近急増しているのが、「クックパッド」なるサイトにハマっている女性達だ。
最初の方の男の料理話も多少鼻につくものの、やはり炎上のとっかかりはここからですよね。なぜ”男性からみて”と書いているかといえば、そもそも男性は料理ができないもので、女性は料理ができるべきだという発想があるから。これが心にモヤモヤを生み出してくれます。
これは、クックパッド社が運営するレシピコミュニティーサイトなるもので、会員登録した人達がご家庭のレシピを写真付きでドシドシ公開出来るシロモノなのだが、そのユーザー数ときたら月間2千万人以上! まあ、サイトに投稿することで料理に励むモチベーションが上がるとしたら、そのこと自体、ちっとも悪くは思わないが、よく残念に思うのは、ふと料理の話題になった際、「私、料理するよー」「へー、なにを作るの?」「クックパッドのレシピばっかり作ってるぅ。あれ、超美味しいし、超便利ぃ」なーんてことをへっちゃら顔で言い放つ女性に遭遇したときだ。
増加するクックパッド至上主義な女性達というタイトルから、どんなまともな情報源があるかと思えば、河原さんの出会った女性がサンプルだったことがここで判明。しかも、この女性の話し方がとにかくアポっぽい。本当に実在しているか分からないアホ女性を利用して、クックパッドユーザーをこき下ろす。
解説から外れますが、これ小町で書いたら、「そういう頭の悪そうな女性としか出会えないトピ主さんのほうが残念です。」と必ずコマッチャから突っ込まれます。
なんつうかなー、人様の味覚に合わせたレシピを丸ごと使って喜んでるんじゃなく、もっと料理に対してクリエイティブであって欲しいと切に思う。あんなの、参考にするぐらいでちょうど良くない? 試しにオレも使ってみたことあるけどさー。別に驚くほど美味しいものとかなかったよ? ま、好みなんか千差万別だから、そんなの当然だよね。
二つ炎上ポイントがあって、一つ目は、普通ほとんどの人が(プロの料理人でも)誰かのレシピをマネて料理を作り始めるわけで、クックパッドのレシピを使うこともそれと変わらないのになぜかクックパッドを使うことを否定しているところ。
もう一つが、料理とはクリエイティブなものであるべきで、クックパッドには驚くほど美味しいものがないという考えがあるところ。クックパッドは、毎日のレシピに悩んでいる人が冷蔵庫に残った食材と睨めっこしながら、どうやってバラエティを出していくかということで利用するものですから、そもそもが驚くほど美味しいものを求めているわけではなく、当然クリエイティブなんてことは二の次です。
自分流でいろいろ試して失敗したり、思いがけず美味しい味覚に出会えたりっていう積み重ねこそが、その人が作る料理の個性につながって、ゆくゆくはその人の味になるんだと思うの。
これは分からぬではないですが、ただし、この続きとして、
付き合ってる子に、「これ、クックパッドに載ってたの」って嬉しそうに料理を出されても、なんだか微妙な気分になっちゃうもの。その子としては好きな人に不味いものは食べさせたくないし、料理下手だと思われたくないっていう愛情と自尊心がそれをさせたのだろうけど、食べる側にしたら少々自分の舌に合わなくたって、作ってくれただけで十分嬉しいんだから。たとえそれがどうしようもない失敗作だとしても、「どうしたらこうなるの!?」って意外と楽しくはしゃげたりもするのさ。
料理ができる俺という観点からスタートした話なのにここで、料理を食べさせてもらう立場の俺観点に切り替わるんですよね。不味いのはいいけど、自分流の料理を作れというハードルの高い提案。その上、”作ってくれただけで十分嬉しい”と言っているくせに、クックパッドのレシピ通りだと”微妙な気分になっちゃう”と短い文章の中での矛盾。
つか、そういうときほど男の器が出るね。「こんなもん食えるか!」って頭ごなしに不機嫌になる男とは、それこそ別れた方が賢明だと思います。
不味いご飯でも食べられる俺は理解がある男というように書いてますけど、クリエイティブに作れという主張自体が俺が喜ぶように作れということを言っているのと同じことなんですけどね。器が小さいと思っている頭ごなしに不機嫌になる男とほとんど変わらない。
とにかくだ。
もし、クックパッド至上主義な女が嫁になって、人様の家庭のレシピばっかり毎日食卓に並んだら本当イヤ! 食べる側はあくまでその人の味に触れていたいし、料理する側も食べる人を思いはかりながら料理をする。大切だと思うのだけど、そんな普通感覚。
ここで結論の繰り返しと思いきや、なぜか自分の結婚相手の話になった上で、新たな炎上要素として、“料理する側も食べる人を思いはかりながら料理をする”という追加燃料を投下。クックパッドユーザーで、既婚女性が作る料理は食べる人のことを”思いはか”っていないって言っているようなものですから、炎上は必至です。
ということで炎上解説でした。次に、なぜこうも炎上したか、炎上の背景を検討。
Twitterユーザーで特に燃えているこの記事。クックパッドユーザーとTwitterユーザーはかなり重複しているでしょうから、炎上の需要者がいるのは当然です。普通のクックパッドユーザーなら一言言いたくなる。
ただ、河原さんのように、レシピ通りに作るのではなく、俺流に作るのが料理であるという風に考えている人が少ないかと言えば、そうではないと思うんですよね。この記事に言及されているしのさん(男性)が、
「男子料理はこだわり、女性料理は手際」、という言葉は料理上手な嫁や知人が共通して唱える言葉ですが本当にそのとおりだと思います、はいごめんなさいこだわり料理で汚した鍋とかフライパン食後にちゃんと洗います。
(中略)
ってな感じであの記事、バーカバーカと罵りたいけど意外と根っこの部分では我々男子が抱きがちで、我が身を振り返らないといかん話だよなー…と思いましたよ。
書かれている通り、男子料理という言葉でピンと来る人は多いのではないでしょうか。河原さんのように考えている人は身近に結構いる。
自分が満足するためだけに娯楽として料理を作っている人からすれば、子どもやパートナーを飽きさせないために実用性から料理を作っているクックパッドの多くのユーザーが想像できないのは理解できないことではない。
この対立は、手作りVS既製品論争とも近いものがありますよね。既製品を嫌がる人はレシピ通りに作るのを嫌がる人と通じるものがある。自分のためにわざわざクリエイティビティを発揮してくれることに価値があるいう考え。
関連:[コラム]釣り解説”働くママ向けの「手作り風」商品に見る、日本の異常な忙しさ”
加えて、この記事が誰向けに書かれているかというのも、この炎上の背景を考える上では必要ですよね。以下、今回の記事が掲載される週刊朝日の媒体資料ですが、

2/3が男性で、2/3が50代以上です。この層からすればクックパッド利用者はほとんどいないでしょうね。そうなると、”クックパッドなるもの”が流行っているらしいけど、そんなもの使わずに、自分のために料理を作れという河原さんの主張に溜飲を下げる人もいそうな気がする。
だから、週刊朝日の読者のために書かれたこの記事がこういう内容になるのは必然です。これが「クックパッドは主婦の生活のために必要なツールです」なんて記事では読者は喜ばない。読者層からすれば、河原さんが仰っていることに頷く人のほうが多いんじゃないか。
そう考えれば、河原さんの軽快な口調は、自分の馬鹿さを晒しているのではなく、主な読者層に対して、「みんなもそう思うよな!」って言っているフレンドリーな言葉遣いとも読める。
昨今の冷蔵食品炎上よろしく、これも内輪ネタが外部の目に露わになってしまったというのと変わらない構造だと思います。この場合、流出させたのは、2chのまとめサイトではなく、朝日新聞出版のWeb媒体であるdot.に、この記事を転載させた編集部ですから、朝日新聞出版としては自業自得でしょうけどね。
逆にアクセス数が増えて朝日新聞出版としては喜んでいるかもしれませんし、本当に腹が立つなら、釣りと同様に、Twitter等で言及しないでスルーした方がいいかもしれません。
こういう風に炎上を分析することはできますが、そんなことより気になるのが、河原さんの最後の段落でのよく分からない謎のキレっぷり。今は独身なのに、なぜか嫁の話を出してきて、レシピ通りの料理が”本当イヤ!”って。何があったのかと。
そうなると、過去の話として、
【悲報】コラム炎上中の河原雅彦さんの案件がメシマズ嫁方向に展開して、元嫁ともさかりえさんにまさかのメシマズ疑惑が!
— くっきー (@kukkyx)
なんてゲスパーもしてしまいますよね……。ごめんなさい、関係なくて。これは完全に余談です。
ちなみに、我が家では誰かが料理を作っている最中には絶対に何も口出しをしないというルールがあります。できたものについて批評するのはありです。もちろん、美味しい時は必ず美味しいと口に出して言うこと!作っている最中に何か言われることほど腹が立つことはない。
なお、更に余談になりますが、自分が料理をやりはじめた頃にボロボロになるまで読んだのが以下の本です。
※例のごとくアフィリエイトではありません。
ご飯の炊き方から始まり、豆腐の切り方、残り物の保存方法、電子レンジ調理の仕方など、本当に料理の基本がこれでもかと丁寧に書かれており、大変重宝しました。子どもにもこの本を使って教えたいぐらい。絶版になっていますが、新版含め、マーケットプレイスで1円で売られているようです。
あと、更に更に余談で、自分ははなまるマーケットに昔ハマっていて、それで料理を作る習慣ができたように思います。はなまる好きの方には、以下のサイトがとても素晴らしいまとめになっていますので、ぜひご覧になって下さい。岡江さん愛に溢れています。
余談が長くなったついでに、日記としてのクックパッドの利用について、自分が過去書いた記事も紹介しておきます。