第5回「スマホがあるのに賭けないのは難しい」 繰り返した借金と窃盗

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永田豊隆
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 いっそ刑務所に入りたい――

 2024年1月、男性(37)はそんな思いを抱えて、関西地方の警察署に自らおもむいた。

 数日前、オンラインのギャンブルでつくった借金の返済にあてようと、勤務先の飲食店から10万円を盗んだ。

 署員から事情を聴かれると、すべて正直に話した。

 警察から勤務先の店長に連絡がいき、男性は解雇された。しかし、店長が被害届を出さなかったため逮捕はされなかった。

 勤務先の金を盗んだのは、人生で2度目だった。

 関東地方の出身。高校までは運動部に打ち込んだ。周囲からは「まじめな人」と言われることが多かった。

 高校を卒業した後、飲食店に就職。年収は400万円ほど。実家暮らしで生活に不自由はなかった。

 20歳のころ、パチンコとスロットに夢中になった。負けるたびに消費者金融で借り入れ、5年ほどで借金が約100万円になって返せなくなった。両親に打ち明けると、怒られたけれども払ってくれた。

公営ギャンブルのオンライン化が進むなか、スマートフォンを通じて競馬や競艇にはまり、ギャンブル依存症となって苦しむ人たちがいます。当事者の体験を紹介するとともに、回復へ向けた取り組みを探ります。

「実質は闇金融」、取り立て容赦なく

 それでもパチスロはやめられ…

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この記事を書いた人
永田豊隆
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
貧困問題、社会保障、精神科医療、依存症
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    辛酸なめ子
    (漫画家・コラムニスト)
    2025年11月24日17時0分 投稿
    【視点】

    最初の成功体験がきっかけでギャンブルにハマったという男性。おそらくカジノ業者も最初はわざと勝たせてそのままギャンブルの道に引きずり込むという仕組みなのでしょう。ギャンブルがやめられない人の心境がよくわかり、通訳の一平さんもこういう心境だった

    …続きを読む
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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2025年11月24日20時55分 投稿
    【視点】

    「ギャンブルを楽しんだときなんて、一度もなかった」という言葉がなんとも切ない。 スマホの登場で、ギャンブルだけでなく、盗撮が増えたりネット依存になったり、さまざまなアディクションと繋がり易くなっている。なおかつ、日常生活に欠かせない存在なだ

    …続きを読む