2025-05-23

法人税消費増税と引き換えに減税されたって本当?

結論(要点先出し)

消費税収が「法人税減税の穴埋め財源」として法律で紐付けられている事実はありません。

2014 年の税制改正以降、国の消費税地方消費税 1%分を除く)は《全額》を社会保障4経費に充当することが法律*で義務づけられています。 

とはいえ実際の歳入構成を見ると、1989 年の消費税導入以降、

法人税シェアは低下(約3割→1割台)、

消費税シェアは上昇(ゼロ→2割超)。

消費税法人税の穴を埋めている”と見えるのはこの相対的推移のためです。

• 例:令和7(2025)年度予算ベース

法人税 19.25 兆円(16.7 %)

消費税 24.91 兆円(21.6 %) 

• 令和5(2023)年度決算

法人税 15.86 兆円

消費税 23.09 兆円 

法人実効税率は 1990 年代の 37 %超から現在 29.74 %まで段階的に下がりましたが、同時に課税ベース拡大や外形標準課税の強化を行っており、税率引下げ=税収減とは必ずしもなっていません。 

1 法制度上の流れ

年度 消費税消費税収の主な使途 同時期の法人税政策

1989 3 % 全額一般財源 法人実効税率 37.5 %(導入前後で小幅減)

1997 5 % 一般財源 法人税率 37.5→34.5 %

2014 8 % 法律社会保障へ全額充当 32.11→29.97 %(2015〜16 年改正

2019 10 % 社会保障4経費・幼保無償化等 29.74 %据置

法的根拠消費税及び地方消費税法・社会保障と税の一体改革関連法 

2 歳入構造の変化が「財源論」を生む理由

区分 1990 年度(実績) 2023 年度(決算

法人税収 ≈18 兆円 15.9 兆円 

消費税収 3.3 兆円 23.1 兆円 

消費税収は +20 兆円超増え、法人税収はバブル崩壊後に落ち込みいまだ当時をわずかに下回る水準。

• その結果 **「法人税が減った分を消費税が補った」**ように見えるが、会計上はあくま共通一般会計に入り、用途社会保障等で指定済み。

3 法人税減税と実際の税負担

2015-16 年改正では税率を下げる一方、交際費損金不算入縮小・欠損金控除制限などでベースを拡大し「ネット減収はほぼ均衡」と政府試算。

• 近年の好業績もあり、法人税収は 2003 年度の 6.8 兆円から 2023 年度に 2.3 倍へ回復

総合すると「法人税率引下げ分の恒久的な減収を、消費税率引上げ分そのものが賄っている」と断言するのは ミスリーディング

4 まとめ

1. 制度面:消費税には法人税減税をカバーするような法律上のリンクはない。

2. 実績面:結果として消費税収増が歳入構成法人税比率低下を埋めているため、そのような印象を与える。

3. 評価因果目的)と結果(見かけ)を分けて考える必要がある。社会保障財源の硬直化、企業課税国際競争力確保という別々の政策課題が同時進行した――これが実態に近い整理です。

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