2025-07-27

劉仲敬の代表的 著書の紹介

https://anond.hatelabo.jp/20250727120239

《民國紀事本末》(2013年

いわゆる「共和国時代」の出来事時系列に整理しつつ、従来の教科書的な叙述を批判的に再解釈した作品史実の列挙にとどまらず、当時の政治的思想的背景を浮かび上がらせ、国共内戦から国民政府期に至る人脈や権力構造連続性と断絶を明らかにする。

《從華夏到中國》(2014年

華夏」という文明単位から「中國」という近代ナショナルステートへの移行過程を史的にトレース。劉仲敬独自の「文明分析」の下、周秦以降の冊封体制清朝の版図拡大、近代ナショナル・アイデンティティの醸成をリンクさせ、「中国」という概念いかに後付けの政治装置として形成されたかを論じる。

《安·蘭德傳:生平與思想》(2015年

アイン・ランド(Ayn Rand)の伝記的考察。従来の思想史や伝記とは一線を画し、ランド個人主義思想中国東アジア文脈で再評価彼女小説『肩をすくめるアトラス』の世界観と、劉仲敬が批判する中央集権体制との対比を鮮やかに描き出す。

《經與史:華夏世界的歷史建構》(2015年

儒教経典(「經」)と史書(「史」)が中国文明自己叙述をいかに形作ってきたか分析。『春秋』『史記からまり、後世の史観儒学解釈政治体制正当化になった過程を追う。文字通り「経典」と「歴史」の相互作用に着目し、文明自己神話メカニズムを解剖する。

《守先待後:思想、格局與傳統》(2015年

劉仲敬自身思想羅針盤を示す論考集。先行する思想制度(「守先」)を理解した上で、新たな時代構造(「待後」)を構想するという二段階モデル提示し、中国内部の制度変遷や外部文明の衝撃に対処する方法論を提起している。

近代史的墮落」シリーズ(2016–2018年

東アジア現代の主要人物を題材に、それぞれの生涯を通して「文明堕落」を読み解く評論シリーズ

《晚清北洋卷》:清末の北洋官僚をめぐる権力と腐敗の構造分析

《國共卷》:国民党共産党指導者層の思想的相違と利害駆け引き

《民國文人卷》:黎明期共和国文化人知識人が抱えた矛盾理想の断絶。

いずれも「近代国家の没落」をテーマに、政治家・知識人個別事例から大局的な文明批判を行う。

《遠東的線索:西方秩序的輸入與中國的演變》(2017年

ヨーロッパ国際秩序ウェストファリア体制産業革命後の列強均衡)が東アジアにもたらした制度価値観検証。清末以降の不平等条約から中華民国共産党政権への制度移植過程を、構造主義的に解剖し、「外来」と「内向」の相剋を描き出す。

《中國窪地:一部內亞主導東亞的簡史》(2017年

「窪地(低地)」概念を用い、ユーラシア内陸アジア勢力モンゴル満州中央アジア部族)が東アジア世界に与えた影響を再考。従来の漢民族中心史観を覆し、「内亞(シベリアモンゴル満州から視点で見た中国史」を示す、劉仲敬の代表作のひとつ

《滿洲國:從高句麗、遼金、清帝國到20世紀,一部歷史和民族發明》(2019年

満洲国を単なる傀儡政権とみなすのではなく、高句麗→遼・金→清帝国へと続く「北方遊牧文明」の連続性を強調。20世紀満洲国成立を「民族発明」の一例として論じ、ナショナル・アイデンティティ形成ダイナミズムを浮き彫りにする。

文明更迭的源代碼》(2020年

いわゆる「阿姨學(劉仲敬思想)」の内幕を語る、自著解説書兼思想史。各文明の興亡パターンを「源代碼(ソースコード)」として抽象化し、文明間の普遍的法則提示。連載講義をまとめたスタイルで、初心者から上級者まで劉仲敬の全体像を掴むのに最適の一冊。

記事への反応 -
  • 劉仲敬(リュウ・チュウケイ)とは? 劉仲敬は中国出身の歴史学者、思想家、作家であり、東アジアの歴史・民族問題、政治思想に関する独自の視点で知られています。特に「中国史の...

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 《民國紀事本末》(2013年) いわゆる「共和国時代」の出来事を時系列に整理しつつ、従来の教科書的な叙述を批判的に再解釈した作品。史実の列挙にとど...

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    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬から見た日本の特徴と位置づけ 1. 日本は独自の文明圏(「夏」の一つ)として捉える 劉仲敬の「諸夏主義」の枠組みでは、中国大陸以外の地域も...

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    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬から見た香港と反送中デモ 1. 香港は独自の文明圏(「夏」の一つ)として捉えられる 香港は歴史的に中国本土とは異なる植民地時代を経て、独自...

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬が語る中国が民主化できない理由 1. 中国は多民族多文明の連合体であり単一民族国家ではない 中国は「中華民族」という単一民族で統一された国...

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬の米中対立観 1. 米中対立は単なる国家間の力関係ではない 米中対立は単なる二つの大国の争いではなく、文明圏や政治体制、価値観の衝突である...

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬の考える「脱中華」とは? 1. 「中華」の枠組みを根本から疑い解体すること 劉仲敬は「中華」や「中華民族」という概念を政治的な神話・プロパ...

      • ~ワイの脱中華~ 「昨日もラーメン、おとといもやがな…😔」 「よっしゃ、今日はココイチにしよ!😋」

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 劉仲敬思想と日本の反中保守派の相性・補完性 1. 共通点:対中批判・警戒の姿勢 劉仲敬は中国の中央集権的な大中華主義や中華民族統一神話を強く批...

    • https://anond.hatelabo.jp/20250727120239 日本・台湾・香港・アメリカの反中言論人の違い 項目 日本の反中言論人 台湾の反中言論人 香港の反中言論人 アメリカの反中言論人 主な動機・背景 安全...

      • https://anond.hatelabo.jp/20250727122739 項目 劉仲敬の特徴 反中言論人(日本・台湾・香港・米国)との違い 相性・補完性 思想的深さ・視点 歴史的文明圏論、多民族多元連合体「諸夏主義」重視...

        • 日本の反中言論人との相性 日本の保守派言論人は、安全保障や経済・技術の現実的リスクを重視し、「中国」という単一の大国モデルに立脚して警戒を表明します。一方で劉仲敬は中国...

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