大阪・関西万博で《いのち輝く》ミャクミャク博多人形
大阪・関西万博が開幕しました。
各国パビリオンの様子はとても興味深く、行きたい気持ちが日々募っています。
週末にニュースを見ていると、「ミャクミャク博多人形」の文字。
日経アートでもご紹介している博多人形師・中村弘峰氏のインスタで
先に見ておりましたので、すぐに「あれだ!」と分かりました。
万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、
中村弘峰氏の作品のタイトルは「いのち輝くコブラツイスト」。
覆面レスラーが、公式キャラクターのミャクミャクをコブラツイストで締め上げています。
ミャクミャクには目が複数あるのですが、苦しそうにギュッとつむっていたり、
半泣きで涙をこぼしていたり、それでも負けるまいと覆面レスラーを睨みつけたりと、
目の表情だけで「いのち輝く」さまが伝わってきます。
プロレスはスポーツなので、本当のいのちのやり取りには決してならないものの
ユーモアをまじえつつ、ギリギリを攻めあう緊張感がテーマにぴったりであると感じました。
昨年のことになりますが、天王洲アートウィークで開催されていた
「Beautility: The Betweenness of Kogei」で展示されていた中村弘峰氏の作品をご紹介します。

中村弘峰『Legend of Cobra Twist』
赤のマスクを被ったレスラーがコブラツイストで相手を締め上げ、
技をかけられている緑のマスクのレスラーは右手を少しあげて
タップアウト(降参)しそうなものの、表情からはまだ負ける気がなさそうです。

裏側にまわってみますと、緑(以降略)の背中がぐっと寄せられているところや、
倒れるまいと踏ん張った脚の様子がわかってとても面白い…!
また衣装(マスク・タイツ)も赤は獅子、緑には孔雀が描かれているのですが
タイツは特に足が絡んでいるため、獅子と孔雀も睨み合っているように見えます。
こちらを拝見してから「いのち輝くコブラツイスト」の写真を見て気がつきましたが、
ミャクミャクもタップアウト?間際のようで、手をあげていますね。
小さい手を懸命にあげているのが大変かわいらしいです。
何げない仕草やポーズのようで、身体的・精神的リアリティに基づいているからこそ、
氏の人形からは「いのち輝く」様子が伝わってくるのだと改めて感じました。
アニメーションやキャラクター文化が発達している日本、
人形師はまさにそういった、人のかたち・命のかたちを立体的に具現化する先駆者。
伝統技術としての「人形」の奥深さを、私たちも応援・発信していきたいと思います。
web企画『注目のアーティスト』では、中村弘峰氏に貴重なお話を伺っています。
写真も豊富に掲載していますのでぜひご一読くださいね!
人形を制作する中村家の4代目・中村弘峰さんを訪ねました。伝統工芸の正統な後継者であり、気鋭のアーティストです。2009年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、11年に同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。野球やアメリカンフットボールなどのスポーツ選手を五月人形にした「アスリートシリーズ」、可愛く不思議な姿の「動物シリーズ」などが代表作です。

