こんにちは、宇内一童です。
この企画では毎回ゲストの方に出演していただき、その人の「お金を積まれても売りたくないモノ」を聞いていきたいと思っています。
今回インタビューにお答えいただくのは、デイリーポータルZでウェブマスターを務めている林雄司さんです。
インタビュー前に突然「最近、水と牛乳が飲めないんですよ」とカミングアウトしてくれた林さん。そっちの話も気になりますが、ひとまずそれは置いといて、林さんの「売りたくないモノ」についてお話を伺ってみましょう。
売りたくないのは「いつも読んでいる本」

- 宇内
- ではさっそく、林さんの「売りたくないモノ」を見せてください。

- 林
- はい。よく読んでる本なんですけど。4冊持ってきました。

- 宇内
- 3冊がエッセイなんですね。

- 林
- そうですね。なんでもないことを面白く書いてるようなエッセイをよく読みます。

左から三谷幸喜著の「オンリー・ミー」、松尾スズキ著の「大人失格」、宮田珠己著の「旅の理不尽 アジア悶絶編」。

- 宇内
- どういうときに読んでるんですか?

- 林
- 原稿を書く前に読みますね。愉快な文章を書く人の本を読んで「俺も面白い文章書こう」ってインスピレーションをもらってます。

- 宇内
- それ僕もよくやります。

- 林
- Facebookの意識高い書き込みなんかを見ていると「揚げ足とってやろう」みたいに自分の悪の部分が出てしまうんですよ。だから、面白くて愉快な本を読むようにしてます。

- 宇内
- 悪いほうの林雄司が出ちゃうんですね。この本の中で、印象に残ってるエッセイはありますか?

- 林
- 松尾スズキの「本屋で夢中で立ち読みしてて気づいたらレジに入ってた話」とか。三谷幸喜の「デニーズを高級レストランだと勘違いしてて彼女を連れて行ったらドン引きされた話」とか。あとこっちの1冊はエッセイじゃないんですけど、「アシモフの雑学コレクション」も面白くてよく読んでいます。

- 林
- 人に買い与えるぐらい好きな本なんですよ。

- 宇内
- へえー、星新一が雑学を。ショートショートじゃなくて。

- 林
- そう。でもこれはショートショートよりも更に短いんですよ。

- 宇内
- 本当だ!Twitterで書けるくらいの文字数ですね。

- 林
- 淡々としてるところがなんか面白いんですよね。例えばこの雑学。「コアラはユーカリの木だけで生きている。他には何もいらない。水さえも。」


- 宇内
- 水さえも。

- 林
- そうそう、そこです。「水さえも」で終わるあたりがなんか独特で笑っちゃうんですよね。こういうソリッドな文体で書きたいなぁなんて。星新一になりたいなんておこがましいですけど。

- 宇内
- これ「なんか面白い」って表現してましたけど、そのなんとも言えない感じって言葉にしにくいですよね。

- 林
- そうですね。あ、あとこれも面白い。「フィリピンのティンギャン族のキスは、変わっている。顔を近づけて、さっと息を吸う。」

- 宇内
- 口に出して読んでみるとめちゃくちゃ面白いですね。

- 林
- オチとかはなくて「さっと吸う」で終わらせる寸止めな感じ。これが「なんか面白い」の正体なんじゃないですかね。

- 宇内
- ところで、今回紹介していただいた本なんですが、なんで売りたくないんですか?

- 林
- また買うのがめんどくさいから。

- 宇内
- 「愛着がある」みたいな理由じゃないんですね。
サーモグラフィーが登場

- 宇内
- 本の他にも「売りたくないモノ」はありますか?

- 林
- サーモグラフィーは売りたくないですね。

- 宇内
- まず、サーモグラフィーを持ってること自体意味がわからない。

- 林
- 計測器が好きなんですよ。サーモグラフィーは3つ持っていて、最近買ったのは「FLIR」というメーカーのiPhoneに装着するタイプ。ちょっと起動してみましょうか。

- 宇内
- 最近のものって、なんでもiPhoneと連携できちゃうんですね。

- 林
- これはいいですよ〜。飲み会で自慢するんだけど、家に帰ったら無くしてないかバッグの中を必ず確認しちゃうもん。ほら、飲み会に行くとよくモノが無くなるじゃないですか。

- 宇内
- 無くなりますよね。あとメガネもベトベトになりません?

- 林
- そう!メガネがベトベトになるんですよ!なんなんですかね、アレ…あっ、起動しました。

- 林
- あれっ、顔の表面が36度になってますよ。表面にしてはちょっと熱すぎますね。大丈夫ですか?

- 宇内
- 表面の温度の常識を知らないので、よく分かりません。

- 林
- ほらっ!こうやって、写真とサーモグラフィーを切り替えて遊ぶんですよ。

- 林
- サーモグラフィーと普通の写真を切り替えられるんですよ。面白いでしょう。

- 宇内
- よくわかりません。

- 林
- これ持ってると飲み会でものすごくモテますよ。女の人を撮ってあげて「おやおや、ここが熱いですねぇ」なんて言ったりして。それ、なんのハラスメントなんだよって話ですけど。

- 宇内
- サーモハラスメントだ!新しい。

- 林
- あと、これはiPhoneだけあって自撮りができるんです。

- 宇内
- 自撮り?!

- 林
- これを作ったメーカーは selfie(セルフィー)を意識して thermie(サーミー)って呼んでいて、Twitterで「#thermie」をつけてツイートしよう!みたいに呼びかけてるんだけど、全然世間に浸透してないんですよ。

- 宇内
- そりゃそうでしょう。

- 林
- せっかくなので一緒に撮りましょうよ。


- 宇内
- 何ともコメントしずらいです。ちなみにコレ、いくらぐらいするんですか?

- 林
- 250ドルしました。海外から買ったんですよ。

- 宇内
- 3万円くらいか…安いんだか高いんだかわからなくなってきました…。あと気になってたんですけど、そっちのレトロなカメラみたいなものもサーモグラフィーですか?

- 林
- 初めて買ったサーモグラフィーですね。買ったのは、たしか3〜4年前かな。日本のメーカーなんですけど、30万円しました。

- 宇内
- えぇ〜!!!! 30万…!!!!

- 林
- でもカメラ型のサーモグラフィーって、昔は200万くらいしたんですよ。それが30万で買えるようになったら、やっぱり買うじゃないですか。

- 宇内
- ちょっと共感はできないですね。

- 林
- 一眼レフとか、高いカメラ買う人いるじゃないですか。あれと同じくらいの値段だし、買ってもいいよなって自分に言い聞かせて買っちゃいますね。でもほとんど法人が買うみたいで、営業の人に「なんで買うんですか?」って聞かれちゃった。

- 宇内
- 営業の人にはすごく共感できます。

- 林
- なんでって言われても「ただ欲しいから」ってだけなんだけど。

- 宇内
- せっかくなのでこのサーモグラフィー、オークションでいくらで取引されてるか調べてみましょう。

- 宇内
- オークションでは出品されてないみたいですねぇ…あ、ちょっと待った!

- 宇内
- 楽天で35万円くらいで売ってる!

- 林
- それってまだ価値が落ちてないってことですよね。嬉しいなぁ。大事にしよう。

- 宇内
- まさかそんなに価値があるとは…買う理由にはまったく共感できなかったですけど、価値があるとわかると欲しくなるなあ…。

- 宇内
- あ、ちなみに残りの1台はどういったサーモグラフィーなんですか?

- 林
- こっちのやつはですね、デザインがスマホみたいでかっこいいんですよ!

- 林
- これのすごいところは、カメラの内部が熱いと自動で温度調整してくれるんです。キャリブレーションっていうんですけど…
使い道のなさそうな高価なマシーンを迷うことなく購入してしまう男の中の男・林雄司さん。楽しいお話をありがとうございました!4台目のサーモグラフィーを購入した際は、是非また自慢話を聞かせてくださいね!
林雄司
ニフティ株式会社の社員。「デイリーポータルZ」編集長。サーモグラフィー好き。Webサイト「webやぎの目」「東京トイレマップ」などを運営している。
























