『Total War』シリーズ制作者インタビュー。25年間同じシリーズに携わり続けたクリエイターが語る、秘伝のタレのような積み重ね

『Total War』シリーズ25周年記念インタビュー。四半世紀続くシリーズのメインクリエイターに話を訊いた。

ストラテジーゲーム『Total Warシリーズが25周年を迎える。イギリスのデベロッパーCreative Assemblyが手がける人気ストラテジーシリーズで、歴史上の戦争や偉人をテーマにタイトルを送り出してきたシリーズだ。フランチャイズ作品としてGames Workshopのミニチュアゲーム『Warhammer』シリーズをテーマにした『Total War: WARHAMMER』シリーズを展開するなど、現在も多くのファンを抱えて成長している作品でもある。

今回、シリーズ25周年を記念し、『Total War』に長年携わってきたクリエイターへのインタビューを実施。フランチャイズ・コンテンツ・ディレクターであるケヴィン・マクドウェル氏と、バトル設計者のスコット・ピットケスリー氏に話を伺った。四半世紀にも及ぶ長寿シリーズについての思いと、今後の展開について訊いてきた内容をお届けする。

――自己紹介をお願いします。

ケヴィン・マクドウェル(以下、ケヴィン)氏:
フランチャイズ・コンテンツ・ディレクターのケヴィン・マクドウェルです。

スコット・ピットケスリー(以下、スコット)氏:
バトル設計担当のスコット・ピットケスリーです。

――ケヴィンさんと『Total War』との付き合いは25年にも及ぶとのことで、もはや「人生のプロジェクト」と言ってよいレベルだと思います。ご自身では、どのように感じていらっしゃいますか?

ケヴィン氏:
子どものころから興味があったゲームの仕事に長く携わることができたので、とても満足しています。私は大学まで建築を学んでいたんですが、ゲーム業界に足を踏み入れて、初めて参加したプロジェクトはF1レースゲームの制作でした。サーキットの設計図を作るなど建築的な要素が多いので、自分の経歴とも相性が良かったんです。

しかし、F1系のタイトルを2本ほど作った後で、別のことにも挑戦したいと思うようになっていきました。当時スケッチブックにアイデアをたくさん書き留めていたんですが、そのとき自分のなかで考えていたのは「ラグナロクとヴァイキングをテーマにしたストラテジーゲーム」でした。

――おお、まさに『Total War』シリーズのようなアイデアですね。

ケヴィン氏:
はい(笑)そんな折、Creative Assemblyの面接を受けに行く機会がありました。当時のCreative Assemblyはスポーツゲームしか作っていませんでしたが、面接にあたってスタジオを案内してもらったときに、『Shogun: Total War』のプレリリース版を見せてもらったんです。それを見た瞬間、「自分がやりたかったのはまさにこれだ!」と思ったことを今でも覚えています。『Medieval: Total War』と『Rome: Total War』からプロジェクトに参加することになり、それから25年間、ずっと『Total War』に関わってきています。

『Total War: ROME REMASTERED』

――長くシリーズに関わってこられた立場から、『Total War』シリーズと他のストラテジーゲームとの違いはどこにあると思いますか。

ケヴィン氏:
一番の違いは、戦略部分と戦闘部分が分かれている点です。実は、これは「2本分のゲーム」を連携させている複雑な形式なんですよ。

プレイヤーは世界地図や地域マップを俯瞰する視点で、ある種の“王国の支配者”として行動します。そこで、グローバルな戦争状況を大局的に眺めるわけです。それがファンタジーであっても、歴史ものであっても、中国、日本、ヨーロッパなど、どの地域であっても同じです。そのマップ上で軍隊を動かし、軍同士がぶつかったとき、今度はリアルタイムストラテジーに切り替わります。

他のストラテジーゲームと大きく違うのは、この「操作の仕組み」です。『Total War』では、個々の兵士ではなく兵士の“部隊(集団)”を操作するので、現実世界により近い表現が可能です。1万体の兵士を表示することも普通ですし、5万、6万の兵による戦闘も存在します。そして、それぞれの部隊単位だけでなく、個々の兵士レベルにもAIが入っています。一人ひとりが「誰と戦うか」「どのように戦うか」「どう動くか」といったことを、一定の“知性”を持って振る舞っているわけです。そこがシリーズの一番の特徴であり、他タイトルとの違いだと思っています。

――ありがとうございます。スコットさんはどうお考えですか。

スコット氏:
キャンペーンとバトルが相互に補完し合うことで、全体としてひとつの作品として調和している点です。キャンペーンで積み重ねた物語がバトルを熱くして、「この拠点は前のターンであの将軍に奪われたから、どうしても取り返さないといけない」といったかたちで戦闘に重みを与えるんです。

そして、その勝利がまたキャンペーンにフィードバックされ、新しい選択肢を開いていく。この相互作用を、同じレベルで実現しているゲームは他に思い当たりません。もし『Total War』が存在しない世界で誰かが「こういうゲームを作りたい」と提案したら……多分、誰も企画を通さないと思います。それくらい野心的な構造なんです。我々は長年の積み重ねがあるからこそ、なんとか成立させることができている。そうした唯一性があるからこそ、本シリーズは長く続いているのだと思います。

『Shogun: Total War』

――25年にもわたる『Total War』シリーズとの歩みのなかで、特に印象に残っている「トップ 3 のプロジェクト」を教えてください。まずはケヴィンさんから。

ケヴィン氏:
まずは『Rome: Total War』ですね。このタイトルは、「『Total War』とは何か?」を根本から作り直したタイトルでした。初代『Shogun: Total War』は、駒をドラッグ&ドロップで動かしていく、非常にシンプルなボードゲーム風のマップを持っていました。戦闘マップもとてもシンプルで、2Dスプライトと単純な地形だけで構成されていました。『Rome: Total War』では、そこから完全に3Dへ移行し、あらゆる要素を作り直しました。

次に印象に残っているプロジェクトは『Total War: Shogun 2』です。『Rome: Total War』は制作に4 年半かかったのですが、それに対して 『Total War: Shogun 2』は、驚くほどスムーズに進んだプロジェクトで、なんと9か月で完成したんです。奇跡のような話ですよね。

――かなり短いですね。

ケヴィン氏:
『Total War: Shogun 2』が順調だった理由のひとつは、すでにあるタイトルをもとに制作されたことが大きいですね。ベースとなる作品の大本は『Empire: Total War』で、その後に制作された『Napoleon: Total War』で、制作の仕組みはさらに改良されました。その上にさらに『Total War: Shogun 2』を積み上げた形です。また、『Total War: Shogun 2』では最初の段階から「何を作りたいか」というビジョンがかなりはっきりしていたことも大きいと思います。

――長いシリーズのなかで、システムの改修があったんですね。

スコット氏:
土台となるエンジンは同じものを使い続けているのですが、そこに載っているパーツはほぼすべて新しく交換されています。『Shogun: Total War』『Rome: Total War』、そして『Empire: Total War』の3回にわたってエンジンを作り直していて、いまは『Empire: Total War』のときのエンジンをもとに、いろいろ作り変え続けている感じですね。

『Empire: Total War』

ケヴィン氏:
組み替え続けて元のパーツの残っていないものは同じエンジンなのかと聞かれると……今となっては「もう同じとは言えない」と思っています。当時から残っている部分は本当にわずかですね。

――秘伝のタレのような感じなんですね。話を戻して、3つ目の印象に残ったタイトルを教えてください。

ケヴィン氏:
『Total War: Warhammer』です。『Total War』シリーズで初めて“完全なファンタジーゲーム”に挑戦したプロジェクトですね。Games Workshopとパートナーシップを結んでIPを扱うことになったんですが、お互いの会社に相手の会社で働いていたことがある人がいて……。熱意のあるメンバーで打ち合わせをすることができたことを覚えています。

ファンタジーの世界観に取り組むのは、とても大きな挑戦でした。というのも、我々のゲームエンジンが、魔法や飛行ユニット、巨大クリーチャーといったファンタジー要素にどこまで対応できるのか、まったく確信がなかったからです。ですが蓋を開けてみると、ウォーハンマーの非常によく作り込まれた世界観やルールのおかげで世界観をゼロから作る必要がなく、「この世界観をどうゲームに落とし込むか」に集中できました。「卓上ゲームのルールをどうビデオゲームのメカニクスとして落とし込むか」を考えることに専念でき、良い作品に仕上げることができました。

――ありがとうございます。スコットさんはいかがですか。印象に残っているプロジェクトはありますか。

スコット氏:
まずは『Rome: Total War』ですね。自分が最初に関わった 『Total War』なので、特別な思い入れがあります。自分が入社したとき、『Total War』シリーズはすでに1作目が発売されていました。なので、今のように「『Total War』が好きだからCreative Assemblyに応募するということはなかったんです。

『Rome: Total War』の開発を通して「『Total War』とは何か」と、ゲームの作り方を学びました。大学を出たばかりのころは「いろいろ知っているつもり」でいたのですが、会社に入ると何も分かっていないことを思い知らされるんですよね。その感覚をはっきり覚えています。

ケヴィン氏:
当時、『Rome: Total War』には専任のデザイナーがいなかったんですよね。

スコット氏:
ええ、なので自分たちで全部デザインをやっていましたね。そういう意味でも特別なタイトルです。

次に挙げるのは『Empire: Total War』ですね。スケールがとても魅力的なタイトルなのですが、正直に言うと、開発が始まった当初は題材にあまりピンときていませんでした。「そんなに面白い時代かな?」と。ところが作っていくうちに、考えが一変しました。完全に『Total War』向けの時代ですし、最後にはそのアイデアに惚れ込んでいましたね。

『Empire: Total War』

スコット氏:
そして、3つ目はやはり『Total War: Warhammer』です。自分が13歳くらいのころ、ウォーハンマーのミニチュアを集めて、組み立てて、塗装して……という遊びをしていたんです。もし未来から来た自分が当時の自分に「将来それでお金をもらってゲームを作る側になるよ」と言ったらどうなるんだろう。たぶん、頭が爆発すると思います(笑)

『Total War: Warhammer』では、自分はテクニカルディレクターとして全体を見ていて、非常に大きな責任と同時に大きなやりがいがありました。自分が大好きだった世界をこれまでにない形でゲームとして実現する機会を得られたわけですから、13歳の自分にとっての夢が叶ったような作品です。

『Total War: Warhammer』

――シリーズは長年にわたって世界各地の歴史を題材にしてきましたが、今後「人気のあるアジアのIP」や「アジアの歴史的題材」を扱う可能性についてはいかがでしょうか?もしケヴィンさん個人の好みで「アジアのどこか」を選べるとしたら、どこを選びますか?

ケヴィン氏:
すでに『Total War: Three Kingdoms』で三国志を、『Shogun: Total War』で日本の戦国時代を取り扱っています。この2つは、個人的にも上位の題材ですね。『Total War』シリーズを作るには、我々のエンジンに合うかどうか、ユニットの多様さや地域の面白さがあるかどうか、歴史ゲームとしてプレイヤーに人気のある題材かどうか――そのあたりの条件が揃っている必要があります。なので、あまりにもマニアックな題材だと難しいんですが、そういう意味でも三国志と日本の中世はベストでした。

『Total War: Three Kingdoms』

まだ十分に掘り下げていないエリアという意味では、インドや東南アジアがあります。この2エリアを舞台とした『Total War』には、いつかぜひ取り組んでみたいと思っています。

――日本では最近、いくつかの『Total War』シリーズのタイトルがSteamで遊べるようになりました。これから『Total War』を始めたい人に対して、どのタイトルを“入門作”としておすすめしますか?

スコット氏:
自分なら『Total War: Shogun 2』をおすすめしますね。日本が舞台である、という点ももちろん大きいのですが、それ以上に『Total War』シリーズの“純度”が一番高い作品だと思っているからです。シリーズとしての要素をすべて残しつつ、余計なものは極力削ぎ落としていて、日本文化から受けた影響――「純粋さ」や「研ぎ澄まされた感じ」が強く出ている作品だと思います。

ケヴィン氏:
同感です。ビジュアル面でいうと、『Total War: Shogun 2』で自分が目指したのは、「中世日本らしい美しい色彩」と、「黒澤明の映画のようなシネマティックな雰囲気」を持つゲームにすることでした。特に、『乱』や『七人の侍』には強くインスピレーションを受けました。

ですが、『Total War: Shogun 2』がヴァイキングを題材にしたゲームだったとしても、同じようにおすすめしていたと思います。ファンの間でも、「『Total War』の“モダンな時代”の始まり」として認識されているので、そういう意味でもとても良い入り口だと思います。

『Total War: Shogun 2』

スコット氏:
『Total War』シリーズは作品ごとにそれぞれ“違った良さ”がありますよね。とにかく広大な世界を扱いたいなら『Empire: Total War』、ファンタジーの世界で巨大なキャンペーンを遊びたいなら『Total War: Warhammer』がおすすめです。つまり、本当に「人によって答えが違う」と思います。

私の父は今でも『Napoleon: Total War』を遊んでいます。彼にとっては、そのタイトルが一番しっくりくるんでしょうね。「最初に遊ぶべき『Total War』はどれか?」という問いに対して、100 人のファンに聞いたら、ほぼ全員違う答えを返してくると思います。ただ、誰かの答えを「それは間違った選択だ」と言う人はいないでしょう。

――ちなみに、もし『Total War』を制作するにあたって何でも好きな IP を選べるとしたら、「夢のIP」は何ですか?

スコット氏:
もうすでにやってしまいましたが、ウォーハンマーがそうです(笑) それ以外だと、そうですね……「子ども向けゲーム」をやってみたいですね。自分の息子と一緒に遊べる『Total War』――歴史を学べるけれど、大規模な残酷描写などは抑えたものが作れたらいいなと思っています。

ケヴィン氏:
自分には娘が二人いるんですが、小さいころ「My Little Pony」のコミックをたくさん持っていて、冗談半分で「My Little Ponyの『Total War』を作るべきだ」とよく言っていました。あれってよく読むと、「いろんなポニーの派閥が戦争している」みたいな内容で、「これ『Total War』じゃないか」と思ったんですよ。

スコット氏:
あ、次回作のリークになってしまいますね(笑)

ケヴィン氏:
もちろん、今ここで口にしているものは「開発していないもの」だけですよ!(笑)

『Total War: WARHAMMER III』

――ここ数年で SNS などを通じたコミュニティとの関わり方が大きく変わってきましたが、そのことはゲームの作り方に影響を与えていますか?

スコット氏:
ゲーム開発のやり方は、昔に比べると大きく変わりました。現代では、クリエイターは常にコミュニティや外部からのフィードバックを感じながら作る必要があります。それには良い面も悪い面もあります。プレイヤーが求めているものを作らなければいけませんし、彼らの声は想像以上に大きな影響力を持っています。我々もコミュニティの声を聞こうと努力していますし、今後のプロジェクトでは、そこをもっと強化していくつもりです。

ケヴィン氏:
今の世界には、「ひたすら質の低いコンテンツが大量に消費されている」という問題があります。その対極に位置するものを提供できていることを願っています。娯楽の域を超えて、世界の見方に影響を与えたり、新しいことを学ぶきっかけを与えたりできていれば、とても嬉しいです。

スコット氏:
実際に、『Total War』を教育の現場で使っている教師の方もいます。たとえば「都市の衛生管理をどうするか?」といった、一見地味な問題を、ゲーム内のビジュアルを通じて興味深いものとして提示できる。そうした点で、我々は単に“娯楽”の枠を超えた価値も提供できているのではないかと思います。

――最後に日本のプレイヤーの皆さんへメッセージをお願いします。

ケヴィン氏:
『Total War』は日本ではまだ十分に知られていないかもしれません。もしよければ、お友達と一緒に先ほどおすすめしたものから遊んでみてください。マルチプレイなどで一緒に遊ぶのに、とても適したゲームだと思います。そして、皆さんのサポートが、我々にとって本当に大きな支えになっています。引き続きよろしくお願いします。

スコット氏:
過去に日本のコミュニティから、『Total War: Shogun 2』は歴史的な描写が丁寧で、きちんとリサーチされている」といった声をいただき、本当に嬉しかったです。もちろん、あくまでゲームである以上、できることには限界があります。それでも、他のタイトルも含めて、皆さんに何かしら「学び」や「発見」があればいいなと思っています。自分は古代ローマに生まれたわけではありませんが、『Total War: Rome II』をプレイするのが大好きですし、そこから多くのインスピレーションを得ています。同じように、日本の皆さんにも、それぞれのタイトルから何か面白いものを感じ取ってもらえたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

Steamでは現在、12月12日3時まで「Total War Showcase Sale」が開催中だ。『Total War』シリーズが全作品お値引きされているので、気になるタイトルがあったらチェックしてみよう。

[聞き手:Amber Vještica]
[翻訳・執筆:Motoharu Ono]
[編集:Aki Nogishi]

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