『ARC Raiders』が「基本プレイ無料」をやめたのは、“プレイヤーのやりこみペースを抑えなくて済む”から。クラフトの待ち時間も撤廃したかった
Embark Studiosは11月29日、ドキュメンタリーシリーズ「The Evolution of ARC Raiders」のエピソード2を公開した。

Embark Studiosは11月29日、ドキュメンタリーシリーズ「The Evolution of ARC Raiders」のエピソード2を公開した。『ARC Raiders』が現在のPvPvE脱出シューターとして形作られるまでに辿った困難な歴史が明かされている。
『ARC Raiders』はPvPvE形式の脱出シューターだ。ソロプレイまたは最大3人でのチームプレイに対応。本作の舞台はARCと呼ばれる謎の機械によって荒廃した未来の地球。プレイヤーは「レイダー」と呼ばれるならず者のガンマンとなり、ARCや敵対するほかのレイダーなどと地表で戦う。戦闘や探索を通じて手にした貴重な物資を、地下居住区「スペランザ」へと持ち帰ることを目指す。
前回のエピソード1では、当初の純PvE作品から大幅な方向転換を果たした経緯が紹介された(関連記事)。今回の内容は、その後に開発陣が直面した“再構築”の全容に迫るものとなっている。
“地球にいる”ことを伝えるマップ作り
本作は、かつて「Pioneer」と呼ばれた巨大なオープンワールドPvEゲームとして制作が進んでいたそうだ。しかしPvPvE化を決断した後、開発チームは、それまでに構築した世界観やアート資産の一部を引き継ぎつつも、ゲームプレイ面ではほとんどすべてを一から作り直す必要に迫られたという。たとえ地形や構造物を流用できたとしても、それらは敵AIや戦利品システム、遮蔽や視界、プレイヤー同士の交戦を前提とした設計には対応しておらず、結果として全面的なレベルデザインの再考を余儀なくされたとのこと。

代表的な例が、初期から存在していた「ダム戦場」と「宇宙港」のふたつのマップだという。これらはもともと、広大な地形の中心へとプレイヤーを徐々に追い込んでいくバトルロイヤル的な構造として設計されており、建物内部には家具もなく、扉もなく、落下ダメージすら存在しなかったそうだ。というのも、当時のゲームは「屋外で巨大ロボットとぶつかり合う」ことを主眼としていたため、室内探索の必然性がなく、PvPvEに不可欠な密度や動線の管理とは無縁だったとのこと。開発陣は、これらの地形をそのままでは活かせないと判断し、視界や死角、接近ルートを読み直しながら、PvPを成立させるための大幅な改修を施したという。
その一方で、現在の3つ目のマップとして実装されている「埋もれた街」は、PvPvE化後に初めてゼロから設計されたフィールドであるそうだ。舞台は南イタリアの風景を深く参考にした半砂没都市で、旧市街の石造建築と現代的なショッピングセンターや病院が崩れ合う複雑な地形が特徴だ。砂に半ば埋もれた建物の屋根からそのまま内部に入れることもあれば、別の出口は砂丘へと続き、さらにその先が街路へ繋がることもある。プレイヤーは同じ建物内で上下階の足音を聞き分けたり、外から内部の音を察知したりしながら、静と動の緊張感に満ちた探索を強いられる。開発陣は、初期のマップと比べたときに、現実の地球を舞台としているということが明確にわかるように、また通常アメリカ中心である他のアポカリプス的な世界と区別したいという狙いからこうしたマップを用意したと語っている。

「基本プレイ無料」との相性
また今回のエピソードで特に大きく扱われているのが、「なぜ基本プレイ無料モデルをやめたのか」という決断だ。従来の基本プレイ無料の設計では、プレイヤーを長くゲーム内に留める必要があり、進行速度を意図的に遅らせたり、クラフトに待機時間を課したりといった“粘着性”のある設計にしなければならなかったという。しかし、探索と脱出を繰り返す本作において、進行テンポを人為的に抑える手法はストレスの要因でしかなかったそうだ。買い切り型へ移行したことで、クラフトの待機時間を撤廃されるなど、プレイヤーは労力に見合った結果を得られるようになったとのこと。
一方で、買い切りタイトルとして持続的な収益をどのように確保するかという課題も新たに生じているという。開発陣はユーザーが略奪的(predatory)だと感じないマネタイズ方法を模索しているそうだ。

エピソード2ではそのほか、目だけでなく耳からも情報を伝えるための音響へのこだわりなども語られた。PvPvE作品への大規模な改修が決定してからは、ほぼ一から再スタートを切ることとなってしまった本作。それでも、Embark Studios独自の哲学をもとに、より面白い脱出シューターを作るべくブラッシュアップされていったことが伺える。
次回のエピソード3では、本作の象徴ともいえる“巨大ロボット”の構築過程と技術的な挑戦が取り上げられる予定だ。欠損によって動作が変化するロボットの挙動や、物理演算による破壊表現の裏側など、シリーズ中もっとも技術寄りの内容となることが予告されており、こちらも見逃せない回となりそうだ。
『ARC Raiders』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。




