参院予算委員会が11月12日に開かれ、立憲民主党からは田名部匡代、蓮舫、羽田次郎、杉尾秀哉各議員が質疑に立ちました。

■田名部匡代議員

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 田名部匡代議員は、(1)クマ被害対策(2)働き方改革(3)物価高対策(4)介護問題(5)コメ問題――などについて高市総理らに質問しました。

 冒頭で田名部議員は「課題が山積だが、この国会の質疑を通して課題を共有し、解決に向け一歩でも二歩でも、共に前進させられたらいい」と、高市総理に述べました。

 クマ被害対策を取り上げた田名部議員は「わが党は、クマ被害緊急対策の要望を10月28日には政府に提出している」とした上で、猟友会や自治体職員らが中心になって必死の思いで対策にあたっている。自治体の予算的にも限界にきている。国から自治体への財政支援の状況についての政府の対応を質問しました。高市総理は「政府として近く、クマ被害対策施策パッケージを取りまとめる。その中で、自治体が必要とする経費も拡充していく」などと答えました。田名部議員は「行楽シーズンを迎え、客足が減るなどの影響も出ている。さらに、専門的な技能も無くクマに対応するととても危険だ。対応にあたる現場の安全対策にはしっかりとあたってほしい。加えて、他の鳥獣被害対策にも対応を求めたい」などと訴えました。

 労働法制については「働き方改革の原点は過労死防止と長時間労働の是正にあった。その立脚点が揺らいではいけない」と指摘した上で、「『生活費を稼ぐために、慣れない副業で健康を損ねることにならないか懸念』などと高市総理は衆院の質疑で答弁しているが、そもそも本業で食べていけない、残業や副業をしなければ生活が苦しいという賃金水準であることこそが問題だ。政治の役割は、残業や副業に頼らなくても普通に生きていける社会を作っていくこと。今のルールの枠内で生活が守られ、生産性を高めて日本の経済を成長させることだ」と強く指摘しました。 

 最後に、農業政策・コメ問題について田名部議員は「日本の食料安全保障というのは、輸入を国産に置き換えることが基本だ。その基本を忘れないでほしい」と強く求めました。鈴木農水大臣は「国産で賄えるものはしっかりと賄っていく。その方向でしっかりと頑張りたい」と答えました。


■蓮舫議員

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 蓮舫議員は高市総理に対し、政治資金問題について厳しく追及し自民党地方支部を通じた企業・団体献金の問題を取り上げました。蓮舫議員はAIによるデータベース化で明らかになった実態を提示。企業・団体献金総額の96.4%、約81億円を自民党が受け取り、そのうち33億円が全国7757の地方支部に流れている実態を指摘しました。

 さらに、1994年と99年の法改正で政治家個人や後援会への企業献金は禁止されたが、政党支部は除外され続けてきた経緯を説明。「地方支部を迂回した献金で透明性が失われている」と指摘し、国会議員並みの情報公開を求めました。

 また自民党埼玉県連の元幹事長が、6年間で約2794万円を私的流用していた事例を挙げ、「5万円未満の支出は明細不要という仕組みが私的流用を可能にしている」と制度の欠陥を追及しました。

 蓮舫議員は、石破前総理が約束した令和9年(2027年)1月1日までに企業・団体献金改革の結論を得るという合意を確認。高市総理も最終的に「合意は守る」と答弁しましたが、「まず自民党と維新で議論する」として与野党協議の設置には消極的な姿勢を示しました。

 蓮舫議員は「入りの透明化だけでなく出の部分、つまり支出の透明化も一緒に改革しなければ問題は解決しない」と訴え、「これからも提案していく」と改革への強い意欲を表明。高市総理の「検討」を繰り返す答弁に対し「今日は非常に残念でした」と質疑を締めくくりました。

■羽田次郎議員

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 羽田次郎議員は(1)農業政策の補助率引き上げ(2)安全保障関連経費とその財源(3) 外交・国際情勢、パレスチナ国家承認――等について質問しました。

 まず羽田議員は、資材高騰に苦しむ生産者の負担軽減を求め、共同利用施設や土地改良事業への補助率(現行約60%)を引き上げてほしいと訴えました。

 次に防衛政策については、防衛費の拡大に懸念を示し「財源確保が進まない中での予算膨張は問題だ」と指摘しました。さらに補正予算に多くの防衛経費を計上する理由を質問し、それに対して小泉防衛大臣は、自衛隊員の待遇改善やドローン対策、防衛産業支援の必要性を説明しました。

 また外交政策について羽田議員は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交とは何を指すのか」と質問。高市総理はTPPや日EU経済連携(EPA)、日米豪印戦略対話(クアッド)などを挙げ「同盟国と連携し日本の存在感を高めていく」と答弁しました。パレスチナ国家承認については「承認するかどうかではなく、いつ承認するかの段階にある」との見解を高市総理は示しました。

■杉尾秀哉議員

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 杉尾秀哉議員は、(1)生活保護(2)教育勅語・憲法改正・河野談話(3)総務省文書問題・森友文書問題(4)太陽光パネル・リサイクル義務化法案――等について、高市総理をはじめ関係大臣の認識を質問しました。

 杉尾議員は生活保護費を大幅に引き下げた2013年の基準改定を「違法」とした最高裁判決に関連して質問。「引き下げの引き金となったのが、自民党の生活保護キャンペーンだ」として、取組みの先頭に立っていた片山さつき財務大臣が、2012 年当時「ホームレスが糖尿病になるという状況。生活保護は生きるか知るかのレベルの人がもらうもの」などと発言したことを問題視しました。片山大臣からの「私の発言でご不快な思いをされた方がいたら申し訳ない」などとの答弁に対し杉尾議員は「不快な思いなどということではなく、傷つき・自殺された方も出た事態であり、尊厳に関わる問題だ」として強い反省を求めました。その上で、7日の衆院予算委員会で高市総理が生活保護基準を引き下げた国の対応を「深く反省し、お詫びしたい」と述べた点を取り上げたのに対し、片山大臣は「内閣の一員として同様の立場」と述べるにとどまりました。杉尾議員はまた、高市総理が2012年8月にブログで「偽装離婚などによる生活保護費の不正受給を例に、道徳心なき行為が福祉医療制度を後退させている」などと発信している点も問題視しました。

 杉尾議員は不正受給は全体の0.3~0.4%に過ぎない実態を示すとともに、生活保護受給は受給有資格者であるにもかかわらず、誤認識や無理解の前に、受給を拒む自制心を働かす人が多い実態を指摘。「そうした中で本当に厳しい思いをされている人がたくさんいる」「当時の一連の自民党有力政治家の発言が生活保護への偏見を生んで生活保護基準の引き下げにつながり、貧困を再生産させてきた」と厳しく指摘しました。

 杉尾議員は、原告が改定前基準との差額の全額支給を求めているにも関わらず、政府が再び減額改定案を検討している点を挙げ、全額支給を求めましたが、高市総理は専門委員会で議論をしている旨を答弁するにとどまりました。