Infostand海外ITトピックス

OpenAIが企業再編しIPO目指す Microsoftとの関係には新たな節目
2025年11月4日 11:05
OpenAIが営利・非営利の二重構造を再編して新しい体制を発表した。1年以上の調整の末、非営利財団が営利部門を持ち株で統制する「ハイブリッドモデル」が確立され、これに伴ってMicrosoftとの戦略的契約も見直された。クラウドホスティング、API提供権、そしてAGIアクセスといったインフラレイヤーの条項に変化が生じている。
営利子会社をPBCに転換して規制をクリア
OpenAIは10月28日、企業再編の完了を発表した。2019年に設立した営利子会社を「OpenAI Group PBC」という「公益目的会社(Public Benefit Corporation=PBC)」に転換し、その株式の26%を非営利団体「OpenAI Foundation」が保有する。PBCは、経済利益と公共利益の両立を目指す米国の法人形態だ。
保有株26%の評価額は約1300億ドル。企業価値の上昇に伴い持ち分も増える仕組みだ。Bret Taylor取締役会長は「成功するほど非営利部門の資金が増え、慈善活動を支える」と新構造の意義を語った。
再編はカリフォルニア州とデラウェア州の審査を経て実現した。OpenAIは当初、営利部門の完全独立を目指したが、両州の承認を得るためにPBCという形態を選んだ。非営利団体には、現在取締役会の傘下にある「安全性およびセキュリティに関する委員会」も残る。今回の再編についてデラウェア州のKathy Jennings司法長官は、「長く集中的な交渉」だったと振り返った。
しかし、批判は根強い。非営利団体Public CitizenのRobert Weissman共同会長は、「OpenAIの非営利としての義務を果たさず、上場企業に付随する基本的な株主責任からOpenAIを隔離するもの」と再編を非難。カリフォルニア州とデラウェア州の司法長官に対し、OpenAIの非営利部門を解散して資産を慈善団体に再分配するよう求めた。
また、営利化は設立時の契約に反するなどとして訴訟を起こしているElon Musk氏の弁護士Marc Toberoff氏は「OpenAIは裁判官の意向に反して強行した。陪審ではなく政治家(司法長官)によって決定されたことは問題だ」とThe Registerに述べ、今後も法廷で戦う姿勢を見せている。