特集 2025年11月6日

金歯を売る

奥歯にはめていた金歯が不要になったので街の買い取り屋さんで売ることに。果たしていくらで売れたのか。そもそも買い取ってもらえたのか。

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

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私の奥歯

以前から左下の奥歯に虫歯があり、長年の治療の中で金歯をかぶせていた。しかし、それでもダメで、ついには抜歯し、インプラントをすることになった。

私の奥歯遍歴。最初の詰め物の段階で虫歯を食い止められていればよかったのだが、徐々に虫歯が進行し抜歯となってしまった。上京して良い歯医者さんに出会えなかったのか、はたまた自分の歯磨きが悪かったのか(たぶん後者)

 いまはインプラントによって人工的な歯が装着され、快適な食生活を送れている。しかし、これまでの治療で何十万もかかってしまった。計算するのが怖いぐらいの金額だ。

抜歯の際に返却してもらった金歯。重みがある。

 ちょうどニュースで金の価格が高騰し、1gあたり2万円と言っていた。そうだ、あのときの金歯、売ったらいくらになるんだろう。ひょっとして、結構な額になるんじゃないか?

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値段を予想する

売る前にある程度値段を予想しておこう。なぜならその方が面白いから。

私の金歯は4.6gだ。

金は1gあたり2万円なので、4.6gで9.2万円ってこと?やった~!……と言いたいところだが、そう甘くはない。

実は、この金歯には金以外の部分もある

ファイバーコアという、金歯を歯茎に固定するための軸がある。

 ファイバーコアと金が混ざった状態で、金の質量だけを知るにはどうすればよいか?算数のつるかめ算を使えばいい。数学で言えば連立方程式だ。中学1年生の内容。

そのためには等式が2つ必要である。一つはファイバーコアと金の質量の和が4.6gというもの。もう一つの等式は何かというと、この金歯の体積だ。ファイバーコアと金の密度がわかっているので、質量と体積の相互変換が可能である。なので、金歯の体積さえわかれば連立方程式が解ける。

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金歯の体積を求める

金歯の体積を求めるにはどうすればよいか。パッと思いつくのは、コップに水を満杯に張り、金歯をそーっと入れて溢れた水の質量を測定するというものだ。

パッと思いつく方法

しかし、水滴は扱いづらいし、コップの水面に表面張力が働くこともあり、正確に測定するのは難しい。

もっといい方法がある。アルキメデスの原理を使う方法だ。アルキメデスは、金の王冠に不純物が混ざってないかを調べるよう言われ、浮力を用いて王冠に不純物が混ざっていることを明らかにした。

アルキメデスの原理を簡単に言うと、次のようなものである。

左右の「?」は同じ大きさの力を示している。

アルキメデスの原理によれば、先ほど「正確に測定するのは難しい」と言った「金歯をそーっと入れて溢れた水の重さ」は、水中の金歯の浮力と同じということになる。

つまり、水中の金歯の浮力を測れば、金歯の体積が分かる。浮力が2g重なら体積は2㎤、浮力が3g重なら体積は3㎤といった具合だ。

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金歯の浮力を測定する

では金歯の浮力はどうすればわかるだろうか。そのためには作用・反作用の法則を用いる。

人が壁を押すとき、壁も人を押している。作用と反作用。2つは同じ大きさだ。

 金歯の浮力は言わば「水が金歯を押す力」であり、その反作用として「金歯が水を押す力」がある両者は同じ大きさだ。実は、この「金歯が水を押す力」は、はかりで測定することができる。

物理の授業っぽい感じで図と式を書くとこうなる。

要は、金歯を水に入れると、金歯が水を押す力の分だけ、はかりの示す値は大きくなる。

実際にやってみた。

水を入れたコップの質量は165.0gだったのが、水に金歯を完全に浸からせ糸で浮かせると、はかりの示す値は165.7gに。

増えた0.7g分は浮力の反作用によるものだ。つまり「金歯が押しのけた水の重さ」は0.7g重であり、金歯の体積は0.7㎤である。

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連立方程式を解く

金歯の質量は4.6gであり、体積は0.7㎤である。また、調べたところ、金の密度は15g/㎤で、ファイバーコアの密度は2.5g/㎤だ。この4つの値を使って金歯に含まれる金の質量を求める。

連立方程式を解くと、金歯に含まれる金は3.4gと出た。
つるかめ算で解きたい小学生は面積図を使おう。

 この金歯には3.4gの金があることがわかった。

ただし、この金は純金ではなく、18金として計算している。一般的に金歯は純金ではなく、耐久性を上げるために銀や銅を混ぜている。18金に含まれる金の割合は75%だそうだ。つまり、3.4gの18金には、純金換算で 3.4 × 0.75 = 2.6gの金が含まれていることになる。

現在の金相場は1gあたり2万円なので、この金歯には約5万円の価値があるということになる。うれしすぎる……。

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買取価格を予想する

この金歯に5万円の価値があるからといって、買い取り業者がこれを5万円で買い取ってくれるわけではない。当たり前の話だ。金歯から金を取り出すための手間賃、買い取り業者のテナント代、その他もろもろの費用が、買い取り業者のマージンとして発生する。

なんとなくだが、実際の買取価格は半分ぐらいではなかろうか。

私は買取価格を2.5万円と予想した。

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