〈PR〉

免疫反応疾患「移植片対宿主病(GVHD)」を知る

画像

後藤さんは仕事のかたわら、語りべとして活動中。「患者さんからの反響に、逆に励まされています」

血液がんに対する治療法の一つが、骨髄移植などの同種造血幹細胞移植。移植後には「移植片対宿主病(GVHD)」と呼ばれる合併症のリスクがあるが、あまり知られていない。
そこでGVHDの詳細や治療の展望などについて、自治医科大学医学部の神田善伸教授と、GVHD経験者の後藤千英さんに、AERAブランドプロデューサーの木村恵子が聞いた。

文/内藤綾子 撮影/簗田郁子 デザイン/スープアップデザインズ 制作/朝日新聞メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA DIGITAL AD セクション

移植したドナーのリンパ球が患者の臓器を攻撃する免疫反応

神田善伸 先生

神田善伸 先生

自治医科大学内科学講座血液学部門教授。1991年、東京大学医学部を卒業。同附属病院、都立駒込病院、国立国際医療センター、国立がんセンター中央病院(いずれも当時の名称)などを経て、2007年に自治医科大学附属さいたま医療センター教授、2014年から現職。

木村移植片対宿主病(以下GVHD)は、どのような病気なのでしょう。

神田骨髄移植などの同種造血幹細胞移植後に起こる、合併症の一つです。移植したドナーさんの細胞 (移植片)に由来するリンパ球が、患者さん(宿主)の臓器を異物とみなして攻撃する免疫反応により、さまざまな臓器が障害されます。

木村GVHDには、「急性」と「慢性」があるそうですね。

神田移植後2~3カ月以内に出やすい急性GVHDでは、主に皮膚や肝臓、消化管に障害が起こり、発疹、黄疸、腹痛、下痢などが見られます。一方、移植してから3カ月以降に出ることが多い慢性GVHDは、皮膚のかゆみ・乾燥・色素沈着・硬化、脱毛、口腔や眼の乾燥、黄疸、吐き気・嘔吐、下痢、喘息のような呼吸困難、筋肉痛、関節痛など、さまざまな症状が出ることがあります。

木村主な治療法を教えてください。

神田免疫抑制剤で予防しますが、それでもGVHDが出現した場合はステロイドなどで治療を行います。皮膚に対する保湿剤や外用ステロイド剤、眼に対する点眼薬のように、局所療法もよく併用します。

木村あらゆる症状や、それに合わせた治療法があるのですね。それではGVHDを経験した後藤さんに、これまでの経緯について伺います。

後藤私は、血液がんの一種である「骨髄異形成症候群」という病気でした。そもそもの始まりは17歳の頃に、突然手の甲が腫れたこと。整形外科で受けた血液検査の結果から総合病院の血液内科を紹介され、骨髄異形成症候群と診断されました。運良く30歳を過ぎるまでは急激に症状が悪化することはなく、通院して経過観察を続けながら社会人になり、普通に、山登りやジムトレーニングなどを楽しんでいたんですよ。

木村でも、症状が再び表れたのですね。

後藤30歳を過ぎた頃から、数分立っているだけで疲れる、階段を上っただけで息切れするといった状態になり、血液内科を受診したところ、主治医から骨髄移植を勧められました。兄と弟がいるのですが、残念ながら骨髄の型が一致せず。そのため、34歳で骨髄バンクのドナーさんから造血幹細胞移植を受けました。

顔が真っ赤にただれて鏡を見るのもつらい

神田移植を受けてから、どのようなGVHDの症状が出ましたか?

後藤「急性」では下痢や肝機能の低下などが出ましたが、特につらかったのは、皮膚の症状です。全身がかゆくてたまらないし、顔が真っ赤にただれたようになって鏡を見るのもつらい。見た目の変化に相当落ち込み、「この不調をずっと抱えて生きていくの?」と不安が尽きませんでした。「慢性」では、目や口腔内がひどく乾き、皮膚のかさつきも激しかったので、免疫抑制剤やステロイドの内服を4年ほど続けました。

後藤千英 さん

後藤千英 さん

GVHD患者。1995年に骨髄異形成症候群と診断される。2009年頃から体調が悪化し、12年6月に同種造血幹細胞(骨髄)移植を実施。13年から社会復帰し、現在は語りべとして活動。

木村症状がつらいとき、どのようなことが励みになりましたか?

後藤主治医や看護師さんには、常に声をかけていただき本当に支えられました。入院中の患者仲間にも愚痴を聞いてもらい、「分かる、分かる!」と共感されるだけで救われたと思います。実は仮想空間でアバターをつくり、GVHD患者のユーザーとも交流していたんですよ。患者同士での「この保湿剤がいい」といった情報交換や、会話が気分転換になりました。

神田造血幹細胞移植を行っている病院では、移植を受けた患者さんやご家族の困り事や不安に対して、移植に詳しい看護師などが対応する「長期フォローアップ外来」を設置していろいろな相談に対応していますので、そちらも役に立つかと思います。

木村仕事を含め、現在はどのような状況ですか?

後藤骨髄移植を受けて13年経ちますが、おかげさまで薬も服用せずに元気に過ごしています。仕事は移植後、1年間休職し、復帰後は会社の勧めで一般事務から営業へ配置換えに。一般事務は締め切りがあって休みづらい一方で、営業は自分で予定管理ができて、突発的な通院や病欠にも対応しやすいんです。

木村後藤さんは、「急性」も「慢性」も経験されています。GVHDになりやすい人の傾向はあるのでしょうか。

神田後藤さんのように、「急性」が発症すると「慢性」にもなりやすいです※1。女性ドナーさんから男性患者さんへの移植でも慢性GVHDが増加します※1。近年は医療の発展により、両者のHLA(白血球の血液型)が一致していなくても移植できる方法が開発され、移植の選択肢が増えました。GVHDに対する新しい治療薬も各社で開発されています。しかし、今でもGVHDは一定の頻度で発症する合併症で、多くの患者さんがGVHDで困っています。

木村慢性GVHDの患者さんに対し、私たち周囲ができることは?

神田血液がんで骨髄移植などを行い、その後も活躍されている著名人やスポーツ選手などを見ると励みになると思います。しかし、誰もが「移植をすれば元と同じように元気になる」というわけではありません。GVHDのように、移植後には本人の努力で解決することのできない合併症が生じえるということを周囲の皆様にも知っておいていただきたいと思います。ですので「あの人はあんなにがんばっているんだから」というようなプレッシャーは控えてほしい。移植を受けてからも、長期にわたって合併症と闘い続けている患者さんがいるのです。

マスク着用に手洗い・うがい衛生意識の向上に期待

木村恵子

木村恵子

AERAブランドプロデューサー

後藤周囲に慢性GVHD患者がいたら、まず病気を知ることから始めてみてください。また免疫を抑制する治療をするので、患者は感染症には常に気をつけています。マスク着用や手洗い・うがいといった衛生意識が社会全体で向上してほしいです。

木村今後の展望をお聞かせください。

神田GVHDにはよい面もあります。同種造血幹細胞移植後は、ドナー由来のリンパ球が、患者さんの体内に残っているがん細胞を攻撃する効果(GVL効果)が出現するのですが、GVHDが出るとこの効果が強くなります※2。しかし、やはり慢性GVHDは患者さんの生活にマイナスの影響を及ぼすことが多いので、うまくコントロールしていくことが重要です。最近は、移植医とかかりつけ医の病診連携が活発化しており、うまく利用していただきたいと思います。

後藤私は治療中に「元気になった人の話を聞きたい」と思っていたので、現在は経験を生かした語りべとして活動しています。SNSで情報発信するほか、高校や大学、看護学校などで講演することも。「投稿を読みました」「励まされました」といったメッセージが届くと、本当にうれしい。これからも「GVHDになっても元気になれる。未来はある」と伝えたいです。

木村10月は「骨髄バンク推進月間」です。移植後の患者さんに対して社会に正しい理解が広がることが、患者さんを支える力になると感じました。

※1 出典:Kanda J, et al.: Bone Marrow Transplant. 2014; 49(2): 228-35.
※2 出典:Kanda Y, et al.: Leukemia. 2004; 18(5): 1013-9.
● 紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。何らかの症状がみられた場合には、主治医にご相談ください。

Meiji Seika ファルマ株式会社

抗菌薬やワクチンを開発し、安定供給を

 Meiji Seika ファルマは、1946年に医薬品の製造を開始した明治グループの医薬品事業会社。抗菌薬やワクチンの開発・安定供給を通じ、公衆衛生上の社会課題の解決に取り組んでいる。

 さらに感染症と関連性の高い免疫炎症領域、うつなどの精神・神経系領域、ジェネリック医薬品を国内外に展開するなど、幅広い人々の健康課題にも着手。近年では、感染症予防における新たなワクチン開発を積極的に推進している。

画像

提供:Meiji Seika ファルマ株式会社

問い合わせ

Meiji Seika ファルマ株式会社

東京都中央区京橋二丁目4番16号

☎03-3273-6030

画像