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2025.11.19 16:00

平均年齢25歳の"若者帝国"が描く未来。5年8カ月で上場を果たした「yutori」片石貴展の勝算

歴史あるストリートファッションと時代の潮流をとらえたSNSマーケティングを掛け合わせ、わずか5年8カ月というスピードで東京証券取引所グロース市場への上場を実現したyutori。現在は「9090」「Younger Song」「PAMM」など33のブランドを運営し、2025年度の売上は110億円を目指す。創設者であり代表取締役社長を務めるのは“ゆとりくん”の愛称でも知られる片石貴展。近年はZ世代を代表する論客としてメディアに出演するなど、個人でも活躍の幅を広げている。平均年齢25歳(2025年9月時点)の“若者帝国”から生み出されるムーブメントの過去と未来に迫った。


音楽シーンから感じ取った90’sリバイバルの波

yutoriの前身となったのは、片石が24歳の時に立ち上げたInstagramメディア「古着女子」だった。当時、モバイルゲーム事業などを手がけるアカツキでメディア運営に携わっていた片石。サーチを兼ねてSNSを眺めていた際、下北沢に代表されるような古着文化を中心に発信するメディアがほとんど存在しないことに気がついたのだという。

「その頃は“インスタグラマー”という言葉に派手な響きがあって、ハイブランドなどの華やかなファッションばかりにスポットが当てられていました。一方で国内の音楽シーンに目を向けると、Suchmosやnever young beach、Yogee New Wavesといった1990年代のカルチャーとファッションに影響を受けたバンドが頭角を現していた。そこから古着がリバイバルしつつあるという予兆を感じ取り、『古着女子』を実験的にスタートしました」

当初はマネタイズを意識せずに始めた「古着女子」だったが、やがて事業化しビジネスの大海へと船を漕ぎ出した。経営者だった父親の影響もあり、いつか起業することは見据えていた。しかし、その領域がファッションになることは想定していたわけではなかった。それでも勝算があると思えたのは、学生時代に培ったカルチャーに対する愛と先見の明への自負だった。

「音楽にしてもファッションにしても、自分の興味や趣向は中高生の頃から何ひとつとして変わってないんですよね。次々とブランドを立ち上げているyutoriの代表だから“飽き性”だと誤解されることも多いんですけど、実は一度好きになったものを継続して好きであり続けるタイプです。言い換えれば、これから世の中で流行して、その後もひとつのムーブメントとして残り続けるものを発掘することが得意ということ。そんな自分だからこそ、新しいメディアを作って、メディアからブランドを立ち上げて、ブランドを宣伝すれば事業をスケールできるというビジョンを具体的に思い描けたんだと思います」

起業すれば“負けのない勝負”ができるという確信があった

yutori代表取締役社長 片石貴展
yutori代表取締役社長 片石貴展

とはいえファッション業界からすれば、経営の実績もない若者がゼロから始めたベンチャー企業。片石がボーカルを務めるバンド・69の楽曲「pool(feat.さらさ)」で自ら綴った「金なしコネなしスキルなし」という歌詞からも、立ち上げ当時の苦しい状況を窺い知ることができる。それでも、生き馬の目を抜くようなビジネスの世界で“負けのない勝負”ができるという確信が片石にはあった。

「世の中には無数の仕事がありますが、事業にかかわった個人の名前が表に出る案件って実はそんなに多くないんです。その中で会社に埋没していくよりも、起業して、外の世界に出て、自分の名前を売ったほうが“負けのない勝負”ができると思った。こういうことを言うとすごく大胆だと思われるけど、僕としては“負けない”という確証があったからこそ大きい挑戦ができたという順番なんですよね。たとえ会社が潰れてしまったとしても、目立っていれば次のチャンスがやってくるのは明らかですから」

自分と仲間たちが時代をとらえて動いていれば、必ず数字はついてくるだろう。そして、もし目論見が外れてしまっても、その経験が無駄になることはないはずだ。そんな自信と打算を持ってスタートしたyutoriは、アカウントのフォロワー数、そしてそれに追随するアイテムの売上という2つの数字を伸ばしながら急成長を遂げた。2020年7月に大手ファッションECを運営するZOZOグループの傘下入りを果たし、独立後の2023年12月にはアパレル業界最年少経営者として東京証券取引所グロース市場に上場。目覚ましい躍進の背景には、業界を冷静に見つめる片石の確かな戦略があった。

「ひとつのブランドで数100億円規模の売上を目指す事業は、ワールドワイドに活躍してきた業界トップの人々がようやく成せるものだとわかっていました。まだ何者でもない僕が同じ土俵で勝てるとはまったく思っていなかった。でも、若者のニッチな趣味嗜好をキャッチして複数ブランドを展開するビジネスモデルなら、自分でも戦えるんじゃないかという感覚があったんです」

複数のブランドを展開するメリットは、多様化する若者のニーズに対応できることだけではない。目まぐるしくトレンドが移り変わるファッション業界において、売れ行き不振となったブランドを速やかに撤退し、新しいチャレンジにつなげることができる。こうしたyutoriの新陳代謝を支えているのが、「Yリーグ」と呼ばれる独自のブランド管理制度。社員が中心となって新ブランドを企画し、承認されれば担当者となって運営の責任を負う仕組みだ。立ち上げから1年以内に「月次売上700万円」という目標を達成できなければ撤退することを原則として定めている。

「若い世代の衝動を高く評価している一方で、ビジネスとしての合理性を判断した上で損切りをしなくちゃいけない瞬間は訪れます。でも、それを経営陣が主観的に判断していると思われたら、企業としては理念と現実の間で自己矛盾に陥ってしまうんですよね。そのため、各ブランドを運営する責任は担当者に委ね、経営陣としては明確な基準に沿って管理する制度を導入しています」

古着MIXテイストのストリートブランド『9090』(NINETY NINETY)
古着MIXテイストのストリートブランド『9090』(NINETY NINETY)

テクノロジーの限界を感じ、身体感覚に情緒を求め始めた若者たち

片石の愛読する漫画『HUNTER×HUNTER』には、「幻影旅団」という盗賊団が登場する。彼らにとっては組織の存続が第一の目的であり、そのために定められた“掟”に沿ってパーツのように個人が動いているにすぎない。組織が成長するためには感情を排除したネガティブな意思決定も求められるという点で、そのあり方に片石は強い共感を覚えているのだと語る。「幻影旅団」には、社会的に存在を認知されていないはぐれ者たちが集っている。ここから連想せざるをえないのが、「ハグレモノをツワモノに」というyutoriの経営理念。片石はこの言葉にどのような思いを込めたのだろうか?

「yutoriのメンバーには、単にどこにも馴染まなくてよいという意味ではなくて、“ハグレモノ”のまま自分の好きなものを追求できる強さを持ってほしいと思っています。僕自身も人生を振り返ってみると、好きなものを誰かと共有できた経験っていうのがほとんどなくて。社会からすれば“ハグレモノ”であるのは間違いないんですけど、だからといって世の中に合わせることも、否定することもしたくなかった。自分の好きなものをストリートファッションという形で再提示するという逆転の発想があったからこそ、僕は経営者として“ツワモノ”でいられるんだと思っています」

片石の中には現実の自分と理想の自分像が共存しており、その理想像の期待を裏切らないことがビジネスにおける原動力のひとつになっているのだという。近年はZ世代を代表する論客としての役割も求められるようになった片石。社会との接点が増える中で実感したのは、技術革新やグローバル化の限界を悟った若者の間で醸成されつつある、自分たちの周囲にある幸せを大切にしようというムードだったという。その点、誰もが身に纏い自己を表現するファッションアイテムに、さらなる可能性を見出している。

「テクノロジーの進化によって全世界がつながり、平等に意見を発信したり自由に交流したりできる。そんな昔の人々が希望を抱いた未来の社会は、蓋を開けてみれば小さな液晶画面の中で分断が加速するディストピアでした。『技術が幸せをもたらしてくれる』という幻想を信じられなくなった今、若者は自分の置かれている環境や身体感覚に情緒を求めるようになっています。同時に、日常の中にある一瞬の“きらめき”を感覚的に追い求めている。そうしたムードから次はどのようなトレンドを生み出せるのか。枠に収まらないyutoriだからこそできることを“ぶちかます”ために、今後はますます腕が鳴るなという感じです!」


かたいし・たかのり◎株式会社yutori代表取締役社長。愛称は「ゆとりくん」。1993年、神奈川県生まれ。2017年12月にInstagramメディア「古着女子」を立ち上げ、2018年4月に初期投資0円の”インスタ起業”としてyutoriを創業。「9090」や「genzai」「PAMM」など複数のファッションブランドを運営。2020年、ZOZOグループへハーフジョイン。2023年、アパレル業界最年少経営者として東京証券取引所グロース市場に上場。2025年11月4日には初著書『若者帝国 好きな人たちと、好きなことに熱狂して働く』(KADOKAWA)を上梓した。

株式会社yutori( yutori, Inc. )
本社/東京都世田谷区北沢二丁目5番2号
URL/https://yutori.tokyo/
従業員/197名(2025年3月31日現在)


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