レビュー

シンプル・ミニマルで禅の境地 ~小説執筆に特化したWin/Mac向けエディター「MirrorShard」

お気に入りの壁紙、癒されるBGM、タイプ音の演出で気分も上がる

「MirrorShard」v1.2.1

 「MirrorShard」は、日本語での小説執筆に特化したクロスプラットフォーム対応のテキストエディターだ。「GitHub」でホストされているオープンソースプロジェクトで、ライセンスは「MIT」。リリースページより、Windows版とMac版を無償でダウンロードできる。編集部では、Windows 11で動作を確認している。

 「MirrorShard」の特徴は、没入感を重視したミニマルなデザインであること(「Left」という海外製ツールにインスパイアされたようだ)。フレームレスなウィンドウには一般的なテキストエディターにあるメインメニューやツールバーは見当たらず、タイトルバーの小さなアイコンだけで機能が表現されている。各アイコンの機能は、左から順に以下の通り。

左寄せのアイコン

  • ZENモード
  • 新規ファイル
  • ファイルを開く
  • 文字を小さく
  • リセット:文字のサイズを既定サイズへ戻す
  • 文字を大きく
  • フォント切り替え
  • 次の曲へ:BGMが再生される。初期状態で4曲が内蔵されており、音楽ファイル(mp3/ogg/wav/m4a)を加えることが可能
  • 再生・停止
  • タイプ音のON/OFF:キーを押したときに効果音を発し、メカニカルキーボードを操っているかのような感覚を演出

右寄せのアイコン

  • エクスポート:ePUB、PDF、HTML形式でファイルを出力
  • 高度な設定
  • 素材(resources)フォルダーを開く:背景画像(壁紙)やBGM、フォントを管理するフォルダーを開く
  • 半透明ウィンドウ:壁紙が見やすいように、テキストを右端へ寄せるモード
  • 縦書きプレビュー:編集中のテキストを別ウィンドウで縦書き表示
  • ダークモードへの切り替え
  • 背景の切り替え:4種類を内蔵。ユーザー側で追加も可能
  • ウィンドウの最小化
  • フルスクリーン
  • ウィンドウを閉じる

 一番左にある[Z]アイコンをクリックすれば「禅」(ZEN)モードとなり、タイトルバーすら[Z]アイコンだけになるシンプルさだ。各コマンドにはショートカットキーが割り当てられているので、それを覚えればさらに作業効率は向上するだろう。

「禅」(ZEN)モード+ダークモード

 また、お気に入りの壁紙を設定したり、バックグラウンドでヒーリングミュージックを流したり、メカニカルキーボードのようなタイプ音を演出できるのも面白い。縦書きプレビュー機能を備えているので、書いている小説をフレッシュな気持ちで読んだり、校正したりもできる。

壁紙が見やすいように、テキストを右端へ寄せる半透明ウィンドウ
縦書きプレビュー

 機能面では、Markdown記法とそれで書かれたドキュメントのアウトライン表示、複数ドキュメントのタブ切り替え、青空文庫形式のルビ、数十万行におよぶ巨大なテキストなどに対応しているのが目に付く。画面左のナビゲーションパネル([Ctrl]+[Shift]+[O]キーで開閉)はMarkdownアウトラインとマルチドキュメントタブを兼ねており、小説の章をファイルで、節を見出しでわけるといった運用でも使いやすい。

Markdownアウトライン(オレンジ枠)とマルチドキュメントタブを兼ねたナビゲーションペイン

 また、ファイルの保存にアトミックセーブと呼ばれる仕組みを採用しており、停電やPCのクラッシュといった不測の事態があってもファイルが失われにくい設計になっているのもうれしいところだ。

 さらに、できあがった小説はテキスト変換ライブラリ「Pandoc」を用いてePUB、PDF、HTML形式でエクスポート可能。本ソフト自体は印刷に対応していないが、縦書きでのPDFエクスポートも可能なので、「Microsoft Edge」などのPDFビューワーで印刷すれば問題ないだろう。

ePUB/PDF/HTML形式でエクスポート
縦書きPDFドキュメントとして出力。「Microsoft Edge」などで閲覧・印刷できる

 なお、「Pandoc」は別途ダウンロード・インストールし、そのパスを本ソフトの[高度な設定]ダイアログで指定する必要がある。既定のユーザー単位でセットアップした場合、「pandoc.exe」は「C:¥Users¥<ユーザー名>¥AppData¥Local¥Pandoc」にある。

[高度な設定]ダイアログで「Pandoc」のパスを指定

 最後に、本ソフトの大半は「Gemini 2.5 Pro」で書かれているとのこと。こうした本格的なデスクトップアプリですら生成AIで開発されるようになったかと思うと、AIの進歩には舌を巻くばかりだ。

ソフトウェア情報

「MirrorShard」
【著作権者】
DroicheadNua 氏
【対応OS】
Windows/Mac(編集部にてWindows 11で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.2.1(25/09/21)