「正倉院展」から古代世界への扉を開いて、古代奈良と唐王朝へ思いを馳せて見えてくるもの

毎年東大寺の正倉院の宝物が展示される正倉院展は、ロマンあふれる古代世界への扉を開く機会。日本随一のウォッチャーが、今年の展示をレポートする。

正倉院に惹かれる気持ち

まだうら若き埼玉・浦和高校の生徒だった頃、3年間クラス担任だった定年間際のM先生は、毎年この時節、勝手に1週間秋休みを取った。奈良国立博物館で開かれる「正倉院展」を観に行くためだ。呆れる生徒たちに告げた。

「君たちもオレの年齢になると、正倉院に惹かれる気持ちが分かるよ」

私もいよいよ、当時のM先生の年頃。加えて、正倉院とは縁深き中国ウォッチャーをしている。そこで初めて秋休みを取り、古都に足を運んだ。

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雨上がりの午後の奈良は、人気も疎らで、金木犀が香しい。そこここで憩う鹿たちを避けて進むと、見えてきました荘厳な明治期の西洋建築。

博物館に辿り着くと、全国から蝟集した人、人、人……。鹿もビックリの正倉院展ファンたちだ。

入館前からめげてしまったが、そこはおもてなしの街。張り巡らされた大型テントの中で銘菓さつま焼を頬張って寛ぐ。

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