一人で月に1億円を稼ぎ出した
10月7日夜、フィリピンの首都・マニラから南へ約100km離れた田舎町・キャンデラリアで大捕物があった。
敷地面積50m2ほどの2階建ての一軒家に、入国管理局の職員と警察官がなだれ込み、なかにいた5人の男女が一網打尽にされた。いずれも日本人で、同じ詐欺グループのメンバーだった。
筆者が入管から入手した逮捕時の映像には、悔しそうな表情を浮かべる一人の女が映っていた。この女こそ、グループを束ねていた岩本三矢子容疑者。現地では「アスカ」の名で知られていた人物だ。
アスカはリーダーでありながら、詐欺の電話をかける「かけ子」も行うプレイングマネージャー。アスカを知る詐欺組織関係者は、彼女を「詐欺の天才」と評する。
「長らく『かけ子』を見てきたが、アスカほどの才能の持ち主はいない。月に一人で5000万円は当たり前、精力的に働いた月であれば、1億円以上を稼ぎ出していた」
アスカは静岡県出身の34歳。20代中頃までの足取りは判然としないが、2018年頃、27歳の時から日本で詐欺のカネを受け取る「受け子」をするようになったという。
「アスカは身長160cm弱ですが、体重は100kg近くあった。見た目のインパクトはありましたね。ドロっとした雰囲気をまとっていて、性格もきつい。彼女は『若い時から仕事にありつけなかった』と言っていました」(同前)
「受け子」をしていくうちに、アスカはフィリピンから詐欺の電話をかける「かけ子」の仕事の誘いを受ける。被害者宅にカネを取りに行く際、堂々と嘘をつくその態度が「才能アリ」と判断されたのだ。アスカは、単身でフィリピンに渡った。
彼女が配属されたのは、日本人犯罪組織「JPドラゴン」の傘下グループだった。JPドラゴンはボスの吉岡竜司(55歳・今年6月に逮捕)を頂点に、複数のグループを抱える。グループは「箱」と呼ばれる事務所を持ち、そこに3~6人程度の「かけ子」が在籍。アスカは「ヤマダ」という男がトップを務める箱で働くことになった。