『君に友だちはいらない』著者・瀧本哲史氏が語った 現代を生き延びるための、本当の仲間づくり=”チーム・アプローチ”の必要性

「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」基調講演にて 〔PHOTO〕池田末次

「ダメな友だちのなかにいると、自分もダメになっていく。自分とつながっている人間こそが、自分を規定するんです」

東京の渋谷ヒカリエで11月20日から7日間にわたって行われた連続ワークショプ「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」。「これからの働くをつくろう」をテーマとする基調講演の冒頭で、京都大学客員准教授の瀧本哲史氏は上の言葉を述べた。

つながるべきは、自分が属する組織と違うコミュニティの"橋"となる人

瀧本氏は「つながっている人が自分を規定する」と断言する。

その証拠として挙げたのが、「肥満は伝染する」というアメリカの研究だ。

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ハーバード大学医学部が、1万2000人以上を対象に、肥満傾向の人が持っている人的なネットワークを30年以上にわたって調査したところ、「太った友だちがいる人は、自分も太る傾向が強くなり、肥満はあたかもウィルスが伝染するかのように広がっていく」ということが統計的に証明されたのである。

しかもその傾向は、食生活や遺伝といった、より肥満との相関が高そうなファクターよりも明らかに高いこともわかった。肥満の"友人"がいる人が、太る確率は57%。それに対して配偶者間では37%、兄弟間では40%の相関しか見られなかったのだ。

肥満の友人がいることで、「太っていることは普通である」という考えをいつの間にか受け入れてしまうことが原因であると、調査にあたったニコラス・クリスタキス教授は分析した。

〔PHOTP〕池田末次

瀧本氏も「だからダメな友だちのなかにいると、ダメであることが当たり前になるんです。つながるべきは、自分が属する組織と違うコミュニティの"橋"となる人。自分の会社のなかに閉じこもっているだけでは、これからは生き残ることはできません。"ノマド"などといって、同じような若者がシェアハウスに集まって暮らすのも、まったく意味がない」ときっぱり言う。

生き延びるために、卓越したチームをつくる

さらに瀧本氏は今の日本をとりまく構造の変化を、「綱引きから将棋にゲームが変わろうとしている」と分析する。

「綱引きというゲームは、たとえ自分たちの力が弱くて、相手が相撲取りやプロレスラーのような力持ちであっても、20人が1人にかかれば勝つことができる。しかし将棋のようなゲームでは、羽生善治氏一人に、アマチュア棋士が何十人挑んだとしても、勝てる可能性は皆無です」

現実のビジネスにも、これと似た構造変化が起きている。わずかな人数のチームによるプロジェクトが圧倒的な勝利を得て、残りのほとんどのチームが敗者となるか、勝ったチームの「おこぼれ」に預かるしかなくなるのである。

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「例えばiPhoneなどの革新的な製品を生み出し続けるアップルで、デザイナーとして働くのはたった20人ぐらいの人々です。アップルの何兆円にものぼる付加価値のほとんどは彼らが作り出しています。

彼らの指示に従って、中国の工場で働く何万人もの労働者の中には、優秀な大学を出た人もいるそうです。極小数の卓越したチームと、その下で働く"コモディティ化"した人々との間で、圧倒的な差が生まれているのです」

だからこそ我々も、この時代を生き延びるために、卓越したチームを日本で生み出していかねばならないのだ。

「やりたい仕事、属したい組織がなければ、それを作るほかない」

それでは「ありがちなチーム」と「卓越したチーム」を分けるものとは何なのだろうか。瀧本氏はかつて自分が所属していたコンサルティングファーム・マッキンゼーで学んだ「チームアプローチ」という概念について説明する。

チームアプローチでは、「よいチームはたいていの場合、次の5つの特徴をもつ」と定義する。

1.少人数である
2.メンバーが互いに補完的なスキルを有する
3.共通の目的とその達成に責任を持つ
4.問題解決のためのアプローチの方法を共有している
5.メンバーの相互責任がある

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前例がまったくない、解決の方法がわからない不確実性の高い問題にチームとして挑むときには、この5つの要素が必須となると瀧本氏は述べる。

まずメンバーの選定は少数精鋭が基本。なるべく多様なスキルをもった人物をそろえ、能力が重ならないようにする。さらにチームの目標(解決すべき課題)は、非定型的であり、達成するには困難をきわめる。どういう取り組みをすべきかも簡単にはわからないが、チームの各人が何をしようとしているかはメンバー間で共有されている。

そしてチームのメンバー全員が「自分にとって痛いカネ」を張り、「負けたらチームは即解散」「ひとりの失敗が、即全員の失敗になる」という責任感と緊張感が、プロジェクトに成功をもたらすというのである。

それに対して「ダメなチーム(ありがちなチーム)」では、役職や年次でメンバーが選ばれ、必要以上の人数がいる。一度チームの一員となれば、基本的にクビになることも、能力の高い別の人にその地位を脅かされることもない。責任の所在が曖昧で、「仕事はやったふり」「仕事をしたつもり」でも問題とならない。えてしてそういう組織ほど、外部から他力本願的に有識者を招いて知見を求めたり、ビジネス書で読みかじった「SWOT分析」などの「コンサルタントごっこ」にうつつを抜かす。

このような「ダメなチーム」は日本のあらゆる組織に見ることができるだろう。

現在の日本の企業が直面する問題も、そのほとんどが前例がなく、どういう取り組みをすればいいか簡単にはわからない。チームアプローチの考え方は、すべての組織に今こそ必要とされているものなのだ。

瀧本氏も自らのキャリアを「やりたい仕事、属したい組織がなければ、それを作るほかない」という姿勢で作ってきた。そのなかでこのチームアプローチの考え方が非常に役に立ったという。

「チーム」に集まる人々のポテンシャルを見て、その将来に賭ける

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瀧本氏は現在、京都大学で若い学生たちに「起業論」「交渉論」などを教えながら、エンジェル投資家として国内外の優良ベンチャー企業を育てることを仕事としている。エンジェル投資とは、自己資金を「事業アイディアと創業者しかいない」ような極めて初期ステージ、できたてホヤホヤのベンチャー企業に投資するという仕事だ。

ベンチャー企業の黎明期では、事業テーマや商品が時流に合わせて変化していくことは珍しくない。そのため株式投資などとは違い、エンジェル投資では「その会社がどんな事業をやろうとしているのか」という「テーマ」ではなく、その会社に集まる人々のポテンシャルを見て、その「チーム」が将来成功するかどうかに賭ける必要がある。

「つまり人に投資すること自体が私のメインの仕事なんです」

そう言う瀧本氏は、その経験を通じて、これまでずっと人を観察し、どんな「チーム」であれば成功できるか、身銭を切って学んできたのだ。

世界を変える最高のチームの作り方

その瀧本氏の「チーム論」を一冊にまとめた本が、『君に友だちはいらない』というタイトルでこの11月に出版されている。

『君に友だちはいらない』というセンセーショナルなタイトルをつけた理由について、瀧本氏は「2011年に刊行した『僕は君たちに武器を配りたい』という自著に寄せられた一つの感想がきっかけだった」と説明する。

同書は同時に刊行された『武器としての決断思考』(星海社新書)とともに発売からすぐに増刷を重ね、翌年のビジネス書大賞を受賞、10万部の売れ行きとなった一冊だ。瀧本氏のデビュー作であり、無名の著者が同時に二冊のベストセラーを出したと話題となった。

しかし多くの読者からの好評を得るなかで、あるときツイッターで瀧本氏はこんな声を目にする。

「若者たちはそんなもの(武器)より友だちが欲しい、誰かと繋がりたい、承認されたい、とうめき声をあげている。『僕は君たちに"友だち"を配りたい』が読みたい!」

この『君に友だちはいらない』という本は、その声に対する瀧本氏からの"解答"だという。

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本書のタイトルを額面通りに受け取れば「友だちをつくらずに孤独に生きろ」というメッセージの本に思えるが、そうではない。

副題の「The Best Team Approach to Change the World」(世界を変える最高のチームの作り方)こそが本書の"真のテーマ"である。

「経済のグローバル化が猛烈な勢いで進行し、"本物の資本主義"の大波に翻弄されるいまの日本に必要なのは、"小さなチーム"があちこちで新しいチャレンジを試みることだ」と瀧本氏は考える。

「ブラック企業」によって労働力が安く買い叩かれ、「人間のコモディティ化」が進行する日本で、若者がどうすれば生き延びることできるのか。

同書ではその潮流と戦うための方法論として、「武器としてのチームづくり」を提唱し、さまざまな成果を挙げているチームの実例とともに、「本物の仲間」を作るにはどうすればいいのかを詳説する。11月15日の発売から即ベストセラーとなり、現在も全国書店の売り上げランキングで上位を占める。

〔PHOTO〕池田末次

「日本中に小さなチームが生まれて、あちこちで変革が起こることをサポートすることが、自分の使命であると考えています。小さな変化が積み重なっていけば、日本は変わっていく。この本もそのための手段の一つです」

瀧本氏はイベントの最後にそう語った。

あらゆる人が、それぞれの場で仲間を集め、「小さなチーム」を作り、目標に向かって動き出していくこと。そうすれば日本は、確実に少しずつ良い方向へと向かっていくはずだ。

 

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著者: 瀧本徹史
君に友だちはいらない
(講談社、税込み1,785円)
グローバル資本主義が本格的に上陸し、戦後、奇跡の復興を遂げた日本やその躍進を支えた会社などの組織が解体され、新たな仕組みが再構築される「夜明け前」の今を生きるための「チームアプローチ」論。ほんとうの友だちとは? 真の仲間とはなにか?

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