回転寿司の取材に同行していただいた有名鮨店のご主人は、ウニを食べたら気分が悪くなってしまった。「安くて旨い」は有り難い。しかし体に良くないものも多い。デフレ日本で今、人気の食べ物を実地調査した。
鯛はアフリカ産ティラピア、アワビはロコ貝。ネギトロ、玉子、ガリは特に要注意
「回転寿司店のネギトロはビンチョウマグロ、メジマグロ、キハダのトロの部分や中落ちなど、いろいろなものを混ぜて作られているものがあります。ネギトロは色が変わりやすいので、見た目を保つ添加物や、酸化防止剤も使われているはずです」
(銀座の有名寿司店のご主人)
勉強を兼ねて、このご主人は回転寿司店によく足を運ぶというが、このような理由で、ネギトロを口にすることはあまりないと話した。
今回は、ご主人とともに都内の回転寿司店を訪れた。
「いつもはサラダ巻きや海老マヨなど、普通の寿司屋では食べられないものを選びます。アジやサンマなど旬のヒカリものは、冷凍や養殖モノもない。旬を知っていると、回転寿司でも美味しく食べられます。この店ではアジとメジマグロがいいですね」
マグロ、タイなどを食べ進めていく中、ご主人が顔をしかめたのが穴子(230円)とウニ(520円)だ。
「この穴子は酸化したような脂の味がします。冷凍モノを加工業者が解凍して煮て、それをまた冷凍して出荷し、回転寿司店で二度目の解凍をして使っているんでしょう。だから脂が悪くなって、こんな味になってしまう。
ウニはケミカルな味がしますね。いまの季節だとロサンゼルスとかロシアで獲れたものでしょうから、やはり腐りにくくする酸化防止剤を使っているのだと思います。ウニを獲って木箱に入れた後、ミョウバン(硫酸アルミニウムの化合物)のスプレーをかけて形が崩れるのを防いでいる。
外国産のウニの場合、見た目がキレイなものほど、食べるとミョウバンの苦味がして、気分が悪くなることがあるんです」
「カビキラー」と同じ
ただし、回転寿司でもっと注意が必要なものが他にあるという。
「着色料や保存料が入っているガリです。タダなうえ、目の前に置いてあるのでついつい多く食べてしまいがちですが、ガリは控えめにしたほうがいい」
玉子も店で焼くということはあまりなく、加工業者から仕入れた製品には着色料や保存料が入っていることがある。
酸化防止剤や着色料といった添加物に関しては、ハマチやサーモンなど、養殖モノのネタにも危険が潜んでいる。エサに防かび剤や着香料が入っているケースがあるからだ。
添加物の危険性について、科学ジャーナリスト・渡辺雄二氏が説明する。
「食品添加物は合成添加物と天然添加物に分けられます。合成添加物は化学物質ですから、人間の身体で処理できないんです。分子量が小さいため分解されにくく、体内に吸収され、蓄積されるものがあります。
冷凍品に使われる酸化防止剤をネズミに食べさせる実験では、生まれた子どもに無眼症が認められました。エビなどのネタは加工段階で、殺菌剤の次亜塩素酸ナトリウムに漬けられていることがありますが、この添加物の主成分は洗剤の『カビキラー』や『ハイター』と同じです」
一方、最近は無添加を謳う回転寿司チェーンもある。愛媛県内に4店舗を構える『すし水軍』だ。専務の森松優子氏に聞いた。
「通常の回転寿司は、外国産の冷凍された寿司ネタを解凍して、酢飯に貼り付けるところがほとんどです。実のところ、どんな魚が使われ、どのように加工されているのかはっきりわかりません。
確かに旨味成分を添加した食品は、口当たりは大変いい。おまけに防腐剤などで長期間腐りにくい状態を保っています。しかし、私たちが美味しいと思っている食品は、実は原料そのものの味ではなく、化学調味料である可能性が高いんです」
無添加の食品は、手に入れにくく、高価なものが多い。森松氏は経営は苦労の連続だと話す。
「醤油も市販品は添加物を使ったものばかりです。慣れないと、無添加醤油は辛くて食べにくい。そこで、私どもの店では旨味を加えるため、本醸造の醤油に、昆布と鰹ぶしをふんだんに入れた自家製のものを出しています。味噌汁も、だしの素などは一切使わず、大量の昆布と鰹ぶしを使っています」
『すし水軍』は、ネギトロは220円、本マグロの大トロは2貫で735円と決して安くはないが、安心できるものを食べたほうがいいだろう。
回転寿司にはもうひとつ、大きな安さの秘密がある。それが"ウソネタ"だ。食品ジャーナリスト・岩館博人氏が語る。
「アフリカ産のティラピアを鯛として出している店は少なくない。エンガワはヒラメではなく安価なカレイやオヒョウを使っているケースがある。見た目や味が似ているから、お客さんは気がつかないんです。
アマダイは南アフリカなどで獲れるキングクリップという魚。スズキはアフリカの淡水魚ナイルパーチ。カンパチは亜熱帯で獲れるスギ。ホタテは中国で養殖されているアメリカイタヤガイが"化けて"いることもある」
'07年、このようなウソネタの蔓延を防ぐため、水産庁が魚介類の名称のガイドラインを出した。しかし、強制力があるわけではない。ウソネタは他にも、アワビが南米に生息するロコ貝、鰆が南半球で獲れるバラクータというケースもあるという。
店側にすれば、本物の名前を表示すれば客が注文しなくなってしまう。利益を優先するからこそ、消費者側に親切な表示にはならないのである。
スーパーの「刺身盛り合わせ」が危ない理由
「スーパーに並ぶ単品の刺身を見ると、養殖や冷凍といった表示がされています。ところが、刺身盛り合わせなど2種類以上が入ったものは、生鮮食品ではなく、加工食品扱いになる。そうなると、冷凍、養殖、原産地といった表示をしなくていい決まりになっているんです。
そのため入っているネタすべてが、どんな魚なのか、はっきりわからない。国産に比べ、外国産は売れにくいから、盛り合わせにして売ってしまえばいいという、売る側の逃げ道が残されています」
(『食政策センタービジョン21』主宰人・安田節子氏)
ついお得だからと、買ってしまうことが多いが、確かにスーパーの刺身盛り合わせは、産地はおろか、ネタの名前すら書かれていないものがある。ちなみに、下の写真の刺身盛り合わせの表示は『刺身盛り合わせ4点(498円)』のみ。どこで獲れたかわからないネタを知らず知らずのうちに食べていたとは、たしかに恐ろしい。
「たとえば海外で海洋汚染があった場合、きちんと産地が表示されていれば、消費者は購入の判断材料にすることができます。しかし、現状ではどこで獲れた魚かまったくわからないため、非常に怖い。一概に外国産が悪いということはありませんが、国内産でないことを承知したうえで、消費者に食べてもらえばいいんです」(前出・安田氏)
ちなみに、フグは下関産がもっとも有名だ。この産地表示にもこんなカラクリがある。
「高知沖で獲れても、新潟沖で獲れても下関産と表示されています。これはフグを捌さばく専門技術を持った加工工場が下関に多く、そこで加工されたフグはすべて下関産と表示されているからです」(食品ジャーナリスト・岩館博人氏)
知っておくべきことはまだ他にもある。スーパーによる供給過多の問題だ。
「生鮮食品の売り上げは気候によって変化しますから予測が難しい。他店との競争という意味でも、品切れは、売る機会を逃すことになるので絶対に避けたいというのがスーパーの本音です。そのためどうしても多めに仕入れてしまい、売れ残りが出るんです。
売れ残ったものは損になるだけですから、そこから利益を得たいという誘惑に駆られてしまう。そこで、売れ残った生鮮食品を二次利用できないかと考えてしまうんです」
(消費者問題研究所代表・垣田達哉氏)
一昨年は神奈川県で、昨年10月には静岡県のスーパーで、消費期限切れの鮮魚の日付を改ざんし、販売していたことが明らかになっている。大手スーパーのイオン、ダイエーの両社は「消費期限は遵守している」と話すが、大手以外のスーパーの一部ではまだなくなってはいないのが現実だという。
「消費期限が切れたものをそのまま出すわけにはいかないので、惣菜に使うことはあります。リパックという形で、売れ残りを加工し、別の商品として次の日の日付で出すんですね。これは一番簡単な偽装と言えます。売れ残りをチラシ寿司に入れてしまうこともあります」(前出・垣田氏)
安全な食は消費者自らが選んでいかなければならないのだ。
カロリー表示は実は当てになりません
ある民間の食品検査機関が、複数の工場で作られた同じ内容のコンビニ弁当のカロリーを測定したところ、数値がバラバラで、最高値と最低値の差は100Kcal近くあったという。
肉や魚は脂肪の含有率に個体差があり、使う部位によっても脂質の量は異なるので、カロリーも変わってくる。そのため、「同じ弁当でも20%程度の差が出ることがある」と専門家は言う。弁当に表示されている数値は、正確でない場合があるのだ。
そもそも、カロリーとはエネルギー(熱量)の単位。1Kcalは1㎏の水を、143.5度から153.5度にまで上げるのに必要なエネルギーとされ、食品に含まれる「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」の量で算出される。たんぱく質はアミノ酸に分解され、身体の新陳代謝を促す。脂質は臓器や骨、神経などを守り、免疫力をつける。炭水化物は消化吸収されて糖になり、体や脳を働かせる役割を担っている。これらは、人間の生命を維持するために欠かせない・大栄養素だ。
ご存知のとおり、赤身肉に他の具材を混ぜるハンバーグより、脂のついた肉そのものを食べるステーキのほうがカロリーは高い。肉しか油を吸わない鶏の素揚げより、パン粉に油が吸収され、肉自体も鶏より油が入りやすいトンカツのほうがカロリーは高くなる。
が、カロリーの算出法となると、知っている人は意外に少ない。そこで、カロリー算出を行っている財団法人・日本冷凍食品検査協会関西事業所を訪ねた。
「分析依頼は週に20~30件ほど、依頼元は食品製造メーカーがほとんどです。商品の栄養成分表示や品質管理などに利用されます」
その工程は実に地味なもの。手作業が多く、商品を包丁やフードプロセッサーで細かく刻み、硫酸や塩酸などで分解し、たんぱく質、脂質などの量を測っていく。
見た目は理科の授業の実験のようだ。依頼してから結果を受け取るまで、通常1週間ほどかかる。
次々新商品が出るファミレスのメニューやコンビニの商品にもカロリーが表示されているが、このように緻密な計算を行っているのだろうか。財団法人・日本食品分析センターに聞いてみた。
800でも1200でも同じ
「検査機関を使っているところもありますが、業務用に販売されているカロリー計算機を使ったり、文部科学省が出している『日本食品標準成分表』を見て決めているところが多いでしょう。成分表は18の食品群に分かれていて、野菜や肉などの素材ごとに100gあたりの栄養素の含量が載っています。食材は自然なものなので季節や地域によって数値に幅があり、それらを平均したものです」
成分表で算出された数値は、食材の個体差は勘案されないので、正確とはいえない。
表示する側も正確な数値を出すことは難しいとわかっているので、たとえば、ファミレスで1000Kcalと表示されたサーロインステーキは、実際は、1200Kcalであることも、800Kcalであることもありえるという。
「商品に表示されている数字のプラスマイナス20%まで、実際の商品のカロリーの幅が認められているんです。国や保健所が調べて、その範囲に収まっていなければ注意、ひどいケースでは勧告されることになります」(日本食品分析センター)
同じメニューであっても、その時の調理の仕方によって油の量も違えば、食材の個体差もあるため、緩い幅が設けられているのだ。
ちなみに、カロリーを摂取しすぎると太るという理屈は人間の身体のこんなメカニズムによる。体重60㎏の人が一日に必要とするエネルギーは、約1800Kcal。これ以上のカロリーを摂ると、消費しきれない分が脂肪として体内に蓄積され、太ってしまう。では、アルコールもやはり肥満の原因なのか。女子栄養大学・根岸由紀子准教授が答える。
「アルコールの吸収、分解は速く、完全に分解すれば炭酸ガスと水になる。また、体温上昇や代謝で消費するので、脂肪として蓄積されにくい。おつまみなど、アルコールと一緒に食べたものが蓄積されるのです」
では最近、巷に溢れるゼロカロリーを謳う食品や飲み物はどうなのか。
「カロリーと甘みは別物です。ちなみに、100gあたりの熱量が5Kcal未満なら『カロリーゼロ』と表示できます。低カロリー、低エネルギーを謳うには、食品100gあたり40Kcal以下という規定があります」(前出・日本食品分析センター)
カロリー表示はあくまで参考程度に。ダイエットに夢中になるあまり、数字にばかり振り回されるのはちょっと恥ずかしい。
「カルビ一皿280円」安いのにはウラがある
宮崎の口蹄疫騒動が、これほどの大パニックに発展する前のことである。5月12日、栃木県警生活環境課と大田原署は、3人の容疑者を食品衛生法違反の疑いで逮捕した。
もともと埼玉県熊谷市で牛内臓卸売販売業を営んでいた3人は、大田原市の食肉処理場「那須地区食肉センター」に出入りし、肝炎などの病気にかかった牛の内臓を不正に持ち出して、精肉店に販売していたというのだ。
食品汚染に詳しいジャーナリストの郡司和夫氏が、指摘する。
「その内臓は食品検査で不合格になったため、本来、処分しなければいけなかったのですが、センター内の冷蔵庫に貯蔵していた。そして、その一部を2000円で売っていたようです」
現在、焼き肉店業界は不況の煽りを受け、苦境に立たされている店舗が多い。そこで一般的な焼き肉店に代わり、近年、目に見えて増加しているのが、ホルモンを扱う店だった。食肉業界関係者が解説する。
「廃業した焼き肉店の跡に、新たにホルモン屋が続々出店しています。居抜きでそこを購入するか借りれば、焼き肉のロースターや煙を吸い込む換気扇がそのまま使える。つまり、出店資金が低コストで済むのです」
ホルモンは串にさしてホルモン焼きとして出してもいいし、野菜などと炒めて出しても人気がある。廃棄ロスのリスクが少ないのも、ホルモン屋が増加している要因だという。
前出の食肉業界関係者が続ける。
「古くから肉質にこだわっているホルモン屋の多くは、商社や問屋などを経由した輸入モノではなく、国内の牛や豚を使ってきていた。
それなのに栃木のような事件が起きてしまえば、ホルモンだけでなく、牛肉全体への信頼を失いかねません」
病気にかかった牛の肉を出すほどではないにせよ、タチの悪い焼き肉店というのはまま存在する。牛脂などが注射器で注入された「インジェクションビーフ」を扱っている店だ。
この手法は、もともとハムなどに植物性タンパクや水を注入して、重量を増やすためにとられてきたやり方だった。
「食の安全を考える会」の野本健司氏が話す。
「注意したいのは、肉を軟化させるために酵素を注入して『やわらか加工』を施したりしたハラミなどです。
ファミリーレストランや焼き肉チェーン店などのメニューに、『やわらかハラミ』などと書かれてあっても、最初から肉質がやわらかいハラミなのか、やわらか加工が施されたハラミなのか、見分けることは相当難しい。
また、オーストラリア牛に和牛の牛脂を注入して、人工的にさしを作ることもある。霜降り肉なのか、霜降り加工肉なのか、これも、見た目ではなかなかわかりません。飲食店では表示義務がないからです。
値段を見たとしても、高いから絶対に大丈夫とは限らない。しかし少なくとも、安すぎるものには何か訳があることは間違いないでしょう」
ちなみに焼き肉チェーン店などで牛タンを注文すると、ほとんど同じ形をしたタンが皿に並べられて出てくる。あれも、実は舌を折り曲げて結着加工を施し、形が整えてあるためだ。
「折り曲げた部分は火が通りづらいため、結着加工したタンはよく火を通す必要があります」
ますます競争が激化する焼き肉店の場合、よほど立地条件がよかったり、大ヒットメニューが出たりしない限りは、前年よりも売り上げが落ち込むのは必至だ。その結果、価格の下落が進み、いまや「280円カルビ」なんてメニューもザラにある。
カルビだけに限らず、霜降りステーキにしろホルモンにしろ、激安価格の時こそ、本当に安全なのか、慎重を期すべきである。