エンジニアリングマネージャー、私立小学校受験を経験する
前回の記事投稿からだいぶあいていますが、あいかわらずGAFAではない会社で働いています。前回から変わった点として、ソフトウェアエンジニアからエンジニアリングマネージャーになりました。今回は家を建てる以上に大変だった子どもの私立小学校受験の話を書きます。ちなみに、あいかわらずこの記事にエンジニアリング要素はほぼないので釣りタイトルになります、エンジニアリングマネージャーとしてのプロジェクトマネジメント能力やピープルマネージメント能力が活かせれば良かったですが、そんなものでは全く太刀打ちできませんでした。
注意事項: この記事は素人の個人的な意見や感想です。ここに記載する内容は昔過ぎて記憶があやふやな部分もありますし、子育てや教育方針はその家ごとに異なると思いますので、あくまで一個人のメモ程度に考えてください。また、公立小学校よりも私立小学校が良いという意見を持っているわけでもないです、各家ごとに多様な考え方があるかと思います。
(当時の)我が家の子どもの教育に関する基本的な考え方
この記事の前提として、私立受験を考える前の当時の我が家の基本的な教育に関する考え方を記載します。まず、夫婦ともに小中高と公立の学校に通い、大学は国立を選びました。塾も高校受験のときと大学受験のときにお世話になったくらいでした。親から勉強をしろと言われたことは記憶の限り一度もなく、自分達がやりたいから勉強して志望校も自分達で決めていたという感じです。自分達の子どもには習い事こそ色々させていましたが、学校に関しては自分たちと同じように勝手に勉強して入りたいところに入るだろうと思ってました。また漠然と、できるだけ公立や国立を選んでほしいなと思っていました。
我が家の家族構成
私: 幼少の頃は一回も勉強した記憶がない。習い事もしたことない。ゲームばかりしてた
妻: 塾や習い事には通っていたが、教養程度
長男: 別に特別賢いとか何もない普通の子どもだと思ってる。ある日、突然親の小学校受験熱が上がったせいで受験させられるはめになった
長女: 兄が受験したせいで、自然な流れで受験させられるはめになった
なぜ私立小学校受験を考えたのか?
はじめのきっかけは、長男が3歳の頃に妻が「都立の小学校ができるらしい」という話をどこからか聞いてきたことから始まったと記憶しています。当時、長男は公立小学校に入学させるつもりだった私としては、そこまで本気には考えず、まぁ公立と同じように授業料もかからずに賢い小学校に通えるなら選択肢としては悪くないかも程度に考えていました。それから妻が小学校受験について調べ、実際に国立や私立小学校などの説明会などに参加したり、受験塾に見学に行ったりして、いよいよ妻から「長男を塾に入れたい」と言われました。そこから、我が家の長い長い私立小学校受験がはじまりました。
なぜ私立小学校受験を決めたのか?
きっかけは都立小学校、国立小学校を検討しはじめたことでしたが、結局のところ我が家は私立小学校受験にかじを切りました。我が家なりのいくつかの理由があります。
家庭の方針にあった学校を選ぶことができる
当然ですが、公立小学校は学区で入学可能な学校が決まっています。私が暮らす地域では、特別な理由があれば別の学区の小学校にも通うことができそうでしたが、例外的な扱いでした。そして、当時我が家が住んでいたマンションは学区の端の端で、指定の小学校まで相当距離がある上に、通学路も朝夕と人通りが多い道を通る必要がありそうでした。そして、その小学校の様子や情報は全くわかりません。今でも、公立小学校に特色のある教育方針があるかどうかわかりませんが、少なくともそれを知る機会も入学前にはありません。そういった情報を知るためには、保育園やご近所付き合いのある小学生の親御さんたちから情報収集する以外に方法がないです。
一方、私立小学校に関しては、児童を募集する立場にあるので、非常に積極的に情報を開示しています。説明会や学校見学会では、学校の校舎の中を見てまわり、設備の充実度を見たり、学校の特色などに関する情報を知ることができました。また実際に学校に通う児童の勉強している様子や休み時間の過ごし方も見ることができました。子どもを連れて参加して実際の授業を体験できるイベントを開催する学校もありました。それらの情報を学校ごとに比べて、最も家庭の教育方針にあった学校を選択できる点が非常に良かったです。
一貫校を選ぶことで、中学受験や高校受験をスキップできる
一貫学校のほとんどが小中高と内部進学できる制度があり、子どもの中学受験や高校受験での苦労をスキップできるという点も大きな魅力です。数は少ないですが、大学まで所有している法人の私立小学校に関しては、小中高大と16年間の一貫教育を打ち出している学校もあります。しかも、有名な学校が多く、慶應義塾幼稚舎、早稲田実業学校初等部、青山学院初等部などは小学校で入学してしまえば、それぞれ慶応大学、早稲田大学、青山学院大学への内部進学の制度で大学までいけてしまいます。そこまでいかずとも、普通に受験するには困難な人気の高い中学や高校に内部進学できる小学校にあらかじめ入学できるというのは大きな利点です。昨今、特に都内では中学受験は激戦を極めており、人気のある学校に合格するために、小学4年から3時間近くの授業を週2で受け、小学5年から週3回になり、小学6年からは志望校別の講座もはじまるのでほぼ毎日塾にいると聞いています。また、宿題も大量にあり家庭での時間もほぼ勉強になります。当然ですが、他の習い事に行く時間どころか、友達と遊ぶ時間も家族と過ごす時間もない状態になるようです。本人はもちろん、家族も強いプレッシャーにさらされ続ける状態が長く続きます。こういった苦労をスキップできるのは非常に良い点です。
(中学校受験について詳しく知りたい方は、「二月の勝者」という漫画を読むことをおすすめします)
教育にかける熱量とカリキュラムの充実度がすごい
私個人でもいくつも私立小学校に見学に行きましたが、例外なくどの小学校も子どもたちへの教育の熱量が非常に高かったです。先生1人1人が児童をしっかりと見ていますし、児童へのケアもしっかりと行き届いていると感じました。それぞれの学校が打ち出す教育カリキュラムも充実しており、英語教育やICT教育、課外活動の時間も多く、子どもの教育に非常にプラスになると感じられることが多かったです。また、我が家は検討しませんでしたが、いわゆる中学受験校と呼ばれる小学校も人気が高いです。こちらは、小学校の授業のカリキュラムに中学受験対策が組み込まれており、有名私立中学校への高い進学実績を持っています。このように、私立小学校はそれぞれで特色あるカリキュラムと教育にかける熱量の高さが非常に良い点です。
児童の学力・教養のレベルが高く、保護者同士も考え方が似ている
当然ですが、受験を経て合格を得るまでに、すべての児童がかなりの量の勉強をしています。面接がある学校も多いので、礼儀作法や話し方、聞き方に関しても非常にレベルが高いです。そういった児童が同級生になるという点で、自分の子どもにも良い影響があることを期待できます。また、保護者も子どもに対してかなりのコストをかけて教育をしているので、その熱量であったり考え方が似ていて、コミュニケーションがスムーズにできます。公立小学校に通わせていないので厳密に比較することはできないのですが、個人的には児童同士のトラブル、保護者同士のトラブルも公立小学校に比べれば少ないのではないかと思っています。
私立小学校受験の基本
ここでは私立小学校受験って結局なにをするの?という基本的なことを解説します。
受験する小学校
全国の私立小学校の数は現在243校です。東京都で見ると55校と、その数だけで見ると非常に少ないですね。国立小学校は都内だと6校、都立小学校に至っては1校しかありません。また、すべての学校に受験できるわけでもありません。当然、小学生が通学できる限度があるため、それぞれの学校で通学可能圏内の定義があります。そんな親はなかなかいないと思いますが、学校側も例えば小学生が片道90分かけて電車バスで通学するのは認められないと考えている学校が多いです。国立小学校でおそらく最も人気がある筑波大学附属小学校は、通学圏内と認めているのは「東京都の23区、西東京市、埼玉県和光市のいずれかの区域」と定めています。そこまで、考えるとさらに現実的に受験できる(通える)小学校というのは数えるほどしかありません。とはいえ、実際に小学校受験の世界に飛び込んでみると「受験のために区内に住む場所を用意して住民票も移した」みたいなとんでもない話を聞いたりもします。
私立小学校の試験について
児童が幼稚園・保育園でいう年長の年の秋にあります。埼玉校が9月、神奈川校が10月、東京校が11月です。東京の日程では11/1に開始し、11/7頃にはほとんどの私立小学校の試験日程がおわります。この一週間に都内のほとんどの学校の試験が詰め込まれているので、併願するのはかなり厳しいです。ただ、学校ごとに試験の特徴が違うので、一般的にはそれほど多くの学校を併願するのは現実的ではないです。
試験の内容は大きく、ペーパー、巧緻性、運動、絵画制作、行動観察、そして面接が出ます。ペーパーは、プリント形式で出される問題を解いていくスタイルです、ただ当然多くの児童はまだ読み書きができないため、問題は口頭で出され、書く内容も「正解に丸をする」「正解の数だけ丸を書く」というスタイルが多いです。巧緻性は、物を使って指示通りの操作をする、生活習慣に関する課題などです。運動は、走る、跳ぶ、バランスなどの運動能力を見るための課題が出ます。絵画制作はその名の通り、指示通りに絵を描くものになります、この際に合わせて試験管に自分の描いた絵の説明も要求されます。行動観察では、児童が集団で集められて、その中で指示通りの活動を行い、その様子を採点されます。気になる方は、有名私立小学校の名前で入試問題を検索してみてください。保育園児が解けるとは思えない問題ばかり出てきます。数の分野の問題でいうと、数式は出てきませんが足し算引き算は当たり前で、普通に掛け算と割り算も概念として出てきます。
小学校受験に馴染みがない方は、上記のような試験内容の勉強を高校受験や大学受験の共通テスト(センター試験)のように満遍なく勉強して、総合的に高得点を取れば良いと想像するかもしれません。ところが、私立小学校の入試問題は学校ごとに全く傾向が違います。有名なところでいうと、慶応幼稚舎ではペーパー、巧緻性、面接がありません。運動、絵画制作、行動観察ですべてが決まります。そのため、慶応幼稚舎を受けるならば、その3項目をとにかく極めていかないといけないです。しかし、早稲田実業学校初等部の試験ではかなりハイレベルなペーパー、巧緻性問題が出ます。すべてを満遍なく伸ばすというよりは、その志望校の試験項目を志望校の合格レベルに上げていく戦略が必要になります。もちろん、国立小学校の受験なども考えると、結局は満遍なく上げていくことにはなりますが、強く希望する志望校があるならば、その志望校の試験に特化した勉強をする必要があります。
次に、特徴的なのは面接です。これも普通の方は児童が小学校の先生から質問されたことに対して受け答えするだけという想像をするかもしれません。実際に、そういう学校もあります。しかし、一般的には小学校受験の面接は親子面接で、学校側は親の受け答えをより注意深く確認しています。つまり、親も試験されるのが小学校受験なのです。私も小学校受験の面接を何回もこなしましたが、かなり苦戦しました。一般的な面接のように、聞かれたことに対して自分のアピールをしつつ回答するのではなく、その回答自体が子どもや家庭のアピールになっていないと、小学校で面接されている意味がありません。その変則的な思考をしないといけないこと、また時には完全に想定外の質問をされることもあったため、面接前にはかなり緊張しました。
このように、私立小学校の試験は一筋縄ではいけません。上記のような試験以外にも、そもそも5~6歳の児童が大人から引き離されて数時間大人の指示通りに行動する、机に1時間座ってプリントをこなすことすら訓練が必要です。なんなら、子どもだけではなく、親も塾で(面接の)勉強をする必要すらあります。この対策のために、私立小学校専門の塾に通うことは基本的には必須だと思います。
私立小学校受験塾について
なにはともあれ、小学校受験に対応した塾に入塾させないことにはなにもはじまりません。ごくたまに専用の参考書と家庭学習のみで合格したみたいな嘘か真かわからない話も耳にしますが、普通に考えて志望する学校を狙うなら塾は必須です。では、いつ頃から入塾するかというと幼稚園・保育園でいう年少の学年の秋頃が最速に近いと思っています、多いのは本番の1年前の年中の秋頃という言説も見ますが、我が家は年少の秋から入塾しました。あとで月齢の話もしますが、早生まれの我が子は年中から入塾していたら確実に間に合わなかったと思います。塾にもよりますが年少、年中ではそこまで多くなく、週1回2時間程度です。年長クラス(ちなみに小学校受験塾でいう年長クラスは年中の11月からスタートです)になると、週1~2で5時間、それに学校個別の講座を重ねていると+1~2時間加算されます。季節ごとに、春期講習、GW講習、夏期講習、冬期講習、直前講習など、特別講習も入ってきます。また、塾ごとにも特色があります。塾に子どもを預けて親は外で時間を潰して、授業が終わる時間に迎えにいくものが一般的です。長男のときはこのような一般的な塾を選択し、預けている時間は仕事ができたので、裁量労働やリモートワークに救われました。ただ、一方で授業の様子や実際にどこで苦労したのかといった点のフィードバックが少なく、子どもの学力のどの部分を改善すればいいかわからず苦労することが多かったです。それに対して、長女は親が必ず授業に同席する某有名塾に通わせることにしました。この塾の特徴は、親が実際に授業を参観するスタイルのため、子どもが授業のどこで躓いているか、子どもの授業中の様子(姿勢、よそ見、話を聞いているか等)をリアルタイムでフィードバックを得られることです。また、先生がどのように子どもに教えているのかを知ることもできるので、家に帰っても先生の真似をして子どもに教えることができます。素晴らしい点ばかりに感じますが、とにかく親側の疲労がとんでもないです。当たり前ですが、平日は不可能なので、休日にすべてのコマを集めて、親が付きっきりになります。しかし、その苦労に見合う価値があったと思います。
また、上記以外の特色として、同じ系列の塾でも校舎によってまた異なる特色があります。それは、その校舎がどの学校に特化した校舎ということです。例えば、早稲田実業学校初等部を受験するなら、学校がある国分寺市内の国分寺校舎や近隣の国立校舎などにしか学校別講座がない場合があります。そのため、区内からわざわざ国分寺校舎まで通っているというケースも多いです。他の学校についても同様で、志望校があるなら、塾選びはその学校の近隣の校舎を選択することが多くなると思います。
私立小学校 vs 都立小学校/国立小学校
我が家が私立小学校受験にかじを切ったので、私立小学校の話ばかりしていますが、元々は都立小学校志望でした。私立のような高額な授業料がなく、人気のある中高への内部進学制度もある都立小学校と国立小学校がなぜ我が家の一番の本命にならなかったのかも含めて説明します。
まず大前提として、都立小学校と国立小学校は倍率がかなり高いです。みなさん、かなり高いと聞いていくつを想像しましたか?3倍ですか?5倍ですか?いいえ、都立小学校の倍率は24倍です。国立の筑波大学附属小学校の倍率は30倍と言われています。そもそも、これらの小学校は受験することすら困難です。試験を受ける前に抽選があり、本当に確率だけの勝負で、志願者の6~7割が落とされます。そして、運良く試験を受けることができて、試験で合格基準を満たしたとしても、そこから更に抽選で3割が落とされます。この制度をはじめて聞いたとき、年単位で勉強して準備しても抽選で落ちるのはあまりに辛すぎると感じました。このような理由から、子どもの受験プロセスを進めるなかで、自然と我が家では私立小学校を主眼に考えるようになりました。ちなみに一応、応募はしてみましたが、1次抽選で落ちました。
また、当然ですが都立小学校と国立小学校はお金に余裕があるわけではありません。某国立小学校を見学しましたが、私立小学校に比べて施設はかなり老朽化していました。また、私立小学校ほど学校独自の特色というのも感じづらかったです。そのあたりはほぼ公立小学校と同様でした。ただ、人気があるため、口コミや学校の特徴を解説する情報がインターネットで見つけやすいので、学校の特徴や様子が完全に不明というわけではないです。また、実際に小学校の説明会で聞きましたが、とにかく保護者の出番が多いらしいです。保護者の大きな協力を前提として、学校運営が成り立っているようでした。
では、なぜそこまで圧倒的に人気があるのか、もちろん一番最初に来るのは金銭面です。公立小学校にはない教育制度や内部進学制度があるにも関わらず、授業料は無料です。この一点のみでも、とりあえず願書くらいは出しておくかと思うご家庭も多いと思います。また、内部進学できる中学校が都内でもトップクラスに人気のある中学校であることも大きいです。上記で話題にあげた筑波大学附属小学校の内部進学先は筑波大学付属中学校です。この学校は首都圏の中学校のなかでもトップクラスの共学校です。そのような学校に内部進学が可能であることが大きな人気の理由になっていると思います。しかし、落とし穴もあり、特に都内の国立小学校において内部進学は全員が進学できることを保証するものではありません。保証するどころか、中学、高校と上がるにつれてかなりの人数が内部進学を諦めて外部進学するらしいです。都立小学校の方に関しては基本的には内部進学可能らしいですが、まだ出来たばかりの学校のため実績はないです。
このように、私立小学校に比べて都立小学校と国立小学校がどういう特色があるか示しました。多くのデメリット要素もある都立、国立ですが、私立小学校の受験日から1ヶ月弱遅く試験がはじまるので、併願しやすく、第一志望の私立小学校で合格をもらった児童でも、国立と都立は受けるという子どもも多いです。
私立小学校受験して良かったこと
私立小学校自体の利点についてはすでに書きましたので、実際に私立小学校受験を通して良かったことについて書きます。まず、第一に子どもがすごく成長しました。小学校受験の試験項目は、先に記載したとおり、ペーパー問題だけ見ても小学校以降も必要になるような算数の能力や記憶力、言語能力、図形把握能力などが伸びます。また、巧緻性などで課される教養を身につけることができる、身体の動かし方やなわとびやボールなどの運動能力、複数人でのグループワーク、面接などで大人との話し方などなど、今後も必要になる能力が軒並み伸びます。そういった面でわかりやすく子どもの成長を実感できますし、また単に未就学児が1時間机に座ることができるようになることすらもすごいことだと感じました。
そして、受験勉強を通して、勉強の習慣がつくだけでなく、子どもたちが勉強自体を楽しいと感じるようになっていったのも良かったです。小学校受験自体が、単に子どもの頭の良さを見るわけではなく、子どもの好奇心や想像力などを見ている場合も多く、学習のなかで楽しく学べる要素が多くありました。一度間違えた問題も、次にやるときには解けるようになっている子どもたち自身の成長も、子どもたちはしっかりと感じ取りながら、学習を進めることができていたと思います。また、長男は受験制作が好きでしたし、長女は受験運動がとても好きになっていきました。自分の得意分野で、しっかりと成果を出して、そのフィードバックが得られることも、子どもたちが幼いうちに体験できて良かった点だと思います。
次に、早い段階で子どもの教育について真剣に考えることができた点も良かったと思います。まだ幼いながら、自分の子どもたちにはどういう適正がありそうか、どういったことが苦手なのか、親として子どもたちがどう育ってほしいのかを真剣に考えた期間でした。もちろん、小学校受験をせずともそんなことは親として当たり前に考えていたかもしれませんが、受験塾での自分の子どもの様子と他の子どもとの違いを見たり、私立小学校に通う子どもたちの様子を授業公開や発表会で見ることで、より鮮明に子どもの将来について考えることができたと感じています。
あとは結果論ですが、志望校に合格して子どもたちを自分たちが良いと考える小学校に通わせることができたことも受験して良かった点です。また、実際に長男はもう数年私立小学校に通っていますが、想定通り素晴らしい点が多いです。学校説明会にも何度も通い確認したので、入学前と入学後のギャップもほとんどなかったです。むしろ、良い方向に予想外だった点も多かったです。
そして、長男も長女も内部進学のルートがある小学校のため、中学校受験に対する一定の安心感があります。もちろん、より良い中学校への外部進学というルートもないわけではないので、これからまた中受が待ち受けているかもしれませんが、それはもう少し先の話になりそうです。
私立小学校受験して辛かったこと
一方で、やはり私立小学校受験で辛かったこともたくさんありましたので、正直にそれらのことも書いていきたいと思います。
私立受験を通して、私の心のなかでずっと悩んでいたことが「園児が勉強とかおかしくない?」ということでした。冷静に考えて、3~4歳の子どもが勉強をはじめて、年長になると毎日保育園から帰ってきてずっと勉強する生活をするのは不健全に感じていました。土日のどちらかは受験系の用事で埋まるので遠方へ遊びに連れて行くのも難しかったです。幼い子どもの勉強を見ながら、受験なんてやめてただ遊ぶだけの生活を送ってほしいなと何度も考えました。これは今でも答えは出てないです。長男は小学校を気に入ってますし、受験勉強をしたことは覚えていますが、それを辛かった思い出とは思っていないようです。しかし、もし受験勉強せずにめいいっぱい遊んだり、もしくは別の習い事をして公立小学校に入っていたら、どうなってただろうか、と考えていまいます。私立小学校受験は、どうしても子どもの意志ではなく、親の意志で子どもの時間を奪ってしまうので、受験期間を通して、また受験が終わったあともずっとこの悩みと向き合う必要があります。
次に、共働きと専業の問題です。我が家は共働きですが、受験塾に通わせて感じたのは、専業の家庭がやはり多いなということです。そもそも塾に通わせること自体、平日も視野に入れる必要があるので、どうしても共働きだと難しいです。また、毎日の家庭学習でも取れる時間がかなり限られます。一方で、専業の家庭では、子どもは幼稚園に通わせて午後3時には迎えに行き、塾にそのまま連れて行くなり帰って家庭学習をするなりと、取れる時間の余裕が段違いです。そういった点で、共働き家庭は不利だと感じることも多かったですし、実際に受験期間だけ両親のどちらかが仕事をセーブ(実際に受験に集中するために退職してしまった話も聞きました)するという話もよく耳にしました。一方で、我が家ではそういった戦略は取れなかったです。
そして、月齢の問題です。小学校受験では、どうしても子どもがいつ生まれたのかが重要になってきます。4月に生まれた児童と、3月に生まれた児童は実質的には1歳差がありますが、同じ試験問題を解いて同じ水準で評価されます。そして、幼児期の1歳差は本当に大きなギャップがあります。はっきり言って、早生まれの子どもは圧倒的に不利です。もちろん、完全に能力のみで見ると受験が必要な小学校には遅生まれの子どもたちばかりになってしまい、多様性に欠けますので、月齢考慮がある学校もあります。そういった学校は、月齢別で評価して満遍なく合格を出したり、試験問題を月齢ごとに変えている学校もあります。ただ、そうではない学校もありますし、受験を通して他の遅生まれの子どもと明確に差が出てしまうので、総じて早生まれは不利に働くと思います。そして、うちの子供たちは2人とも早生まれですので、本当にこの点は辛かったです。
次に、塾の掛け持ちについてです。これは業界用語で併塾と言うそうです。意味としては、そのままいくつもの塾を掛け持ちして通うことです。1つの塾だけでも週何時間も授業があることは先に記しましたが、それを単に2倍にしたりすることわけではないです。試験問題の話で触れましたが、学校によって出る問題や難易度が大幅に違います。例えば絵画制作に点数の比重が大きい学校を志望校とする場合、メインの塾以外に、絵画教室に通わせたりすることが多いと聞きました。また、我が家ではメインで通っている塾に、志望校別の授業がなかったため、志望校に特化した講座がある別の塾にも直前期には通わせていました。このように、必要に応じて掛け持ちするわけですが、中には本当にメインと同じレベルで別の塾に通わせていたり、家庭教師を雇っているケースも聞きました。我が家では、そもそもそんな時間が親側になかったこともありますし、金銭的な負担の面もあり、難しかったです。
最後にお金の話です。小学校受験には様々なお金がかかります。まず第一に受験塾の費用、模試や追加教材の費用、子ども親含めお受験用の服の費用、小学校に払う入試費用や合格時の手付金などなどです。一番大きいのが当然、受験塾に払うお金ですが、長男の受験時に合計500万、長女の受験時に合計300万ほどかかりました。とんでもない金額ですね。おそらく一般的には長女の300万程度で済むはずですが、長男のときには色々勝手がわからず志望校を増やして志望校別講座をたくさん取ったり、多くの模試を受けたせいで金額が跳ね上がっていきました。長女のときには、その点を反省して、早めに志望校をしぼったことで出費をだいぶ抑えました。しかし抑えて、これです。我が家は共働きで、特にお金のかかる趣味もなく、私自身も一般的なIT企業に務めるサラリーマン平均よりは年収は高いと思っていますが、本当にしんどかったです。
私立小学校受験の向き合い方
この記事も終盤ですが、上記に述べたような良かったこと、辛かったこと様々なことがあるなかで、私自身がどう私立小学校受験に向き合ったか、子どもとどう向き合っていたかについても触れたいと思います。
まず子どもの前に、親のほうの目的意識をはっきりとさせることが重要です。受験には、金銭面、拘束時間の負担は当然ですが、常に受験に対する不安とも戦わなくてはいけません。そして、実際に親子面接で親自身も評価されます。そのような負担や精神的なプレッシャーのなかで、子どもを志望校に入学させたい理由や将来どのような子どもになってほしいかといった考えを明確に持ち、またそれを夫婦でよく共有することが重要だったと思います。他にも、受験の合格のみが絶対の評価基準であると考えることは出来る限りやめました。受験を通して、着実に子どもが成長していく様子を日々見ることができていたので、子どもの出来ることが1つ増えていくたびに、その1つ1つをノートに書き留めて、気持ちを前向きにできていました。
次に子どもとの向き合い方です。まず大前提として、親が子どもを私立小学校に入れたいと思うのは、子どもから見ると親のエゴでしかないと思います。そのなかで、出来る限り子ども自身が、小学校受験を自分ごとと思うことができるかは重要だったと思います。実際に、子どもを連れて説明会や体験授業に何度も通い、子どもも「ここに通いたい」という思いを持ってもらうことが大切だと思います。また、受験学習において、常にポジティブな発言のみを言うように心がけました。学習過程では、はじめての問題や難易度の高い問題を解くことが多いので間違えることが当たり前ですが、子どもにとっては「また間違えた」「いつも自分は失敗している」と感じてしまいます。そうならないように「ここは間違えているけど、ここは合っててすごいじゃん」とか「ここすごくおしかったから、次は絶対できる」といった声掛けをし、すべて正解したときには大きなリアクションで子どもを褒めるようにしました。
思い返すと、子どもの様子をしっかり観察して、子どもがうまく出来たことはすぐに褒めるようにしたことが、親にとっても子どもにとっても良かったと感じます。
下記は子供の様子を書き留めたメモ帳の一部抜粋。
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結局、私立小学校受験ってどうなの?
正直に申し上げて、普通の家庭では全く考慮する必要はないです。素直に、やめたほうがいいです。一番大きな理由は、金銭面です。辛かったことでも書きましたが、とにかくとんでもないお金がかかります。もちろん、かけたお金以上のリターンがあったとは思いますが、他のことはすべて二の次で子どもの教育にとにかくお金をかける覚悟が必要です。次に、時間の問題です。リモートワークや有給休暇が取りやすい会社だったので成り立ちましたが、普通の会社で共働きだと純粋に時間が足りません。それらの2つの問題をクリアしている方には、私立小学校受験をおすすめします。メリットは先に述べていますが、やはり小学校の時点で子どもに合った優れた教育を受けさせることができる点もそうですが、中学校受験に対して公立の小学校よりもアドバンテージを取れる点が多いのが大きいです。内部進学プロセスがあるのであれば、中学受験自体をスキップできますし、外部進学を推奨する人気の小学校では中学校受験対策を学校でしてもらえます。私立小学校受験のきっかけは、ふわっとした理由からでしたが、子どもたちと小学校受験をして本当に良かったと思っています。この記事を読んでくれている皆さんが、ご自身の子どもの教育に関して考える一助になれば良いと思いますし、私立小学校受験も子どもの進路の選択肢の1つになれば良いなとも思います。