特別企画

ガンダムホビー専門中古店「おたちゅう。秋葉原4号店」【ホビーショップ訪問】

ガンプラが商材の半分以上! 外国人人気が高まる中、来た人を楽しませる工夫に注力

【おたちゅう。秋葉原4号店】
場所:東京都千代田区外神田1丁目15-9 いちご秋葉原駅前ビル7F

 「おたちゅう。秋葉原4号店」は、全国27店舗以上展開している中古ホビー商品の販売を行う「お宝中古市場」グループの一店である。「おたちゅう」は、"お宝中古市場"の略である。お宝中古市場は秋葉原では5店舗あるほか、茨城、栃木、新潟など幅広い範囲で展開している。そのなかで「おたちゅう。秋葉原4号店」は“ガンダム専門店”として、ガンダムの商品のみを扱っている。

 ガンダム商品はガンプラからフィギュア、食玩、グッズなどそのジャンルは幅広い。とはいえ、ガンダムだけに対象を絞り、しかも中古商品を中心に運営するお店というのはどのようなものか非常に興味を惹かれた。さらに、昨今のガンダムホビーユーザーの動向はどのような特徴があるのか? お店としての工夫は? などなど、様々な疑問が浮かぶ。今回、「おたちゅう。秋葉原4号店」を取材させていただき、スタッフの吉川冬弥氏に話を聞いた。「おたちゅう。秋葉原4号店」を紹介したい。

話を聞いた店舗スタッフの吉川冬弥氏

お客が売ってくれたガンダムアイテムを販売、1,000円ガチャなど来店の楽しみを提供

 「おたちゅう。秋葉原4号店」は秋葉原駅電気街口みどりの窓口出口から道路を挟んで向かいの「いちご秋葉原駅前ビル」の7階にある。1階から4階まではアミューズメントセンターの「namco秋葉原店」となっており、かなりの好立地だ。土日はかなりのお客が訪れる。駅前立地ということもあり、平日でも店を訪れるお客は多い。

 “ガンダム専門店”としてオープンしたのは2022年12月。オープンの理由は「店長がガンダムが好きだから」というものが大きかったという。スタッフにも“ガンダム好き”が多く、商品の陳列や、販売に知識を活かしている。

【店内】
棚にはぎっしりと商品が並ぶが、レイアウトも凝っている。顔出し看板もあり、楽しい雰囲気だ
ショーケースにはフィギュアや完成品ガンプラを展示
POP以外にもガンダムキャラクターを配置したり、賑やかだ

 店舗立ち上げに際してはグループからのガンダム関連商品を集結させたのはもちろんだが、スタート時には“仕入れ”も行った。予算を設定し、目玉商品やラインナップを充実するために外部から買い集めも行いスタートした。

 現在、「おたちゅう。秋葉原4号店」の商品の8割はユーザーから買取を行った中古商品を販売している。新品を仕入れて販売も行っているが、メインは中古商品の販売となる。ユーザーが手放した商品を買取り、その販売を行う、というのが本店のメインの商品となる。

 販売する商品の中でも圧倒的に多いのがガンダムのプラモデル「ガンプラ」だ。現在は「機動戦士ガンダム ジークアクス」、そして映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」関連商品の取引が活発だという。また「機動戦士ガンダム」とその周辺、“宇宙世紀”、“一年戦争”といったキーワードの商品は根強い人気があり、買い取る商品も多いとのこと。

 「おたちゅう。秋葉原4号店」では施策として、様々な商品を相場の金額ではなくメーカー希望小売価格で販売しており、その中には「HG 1/144 マイティーストライクフリーダムガンダム」や「オプションパーツセット ガンプラ15(キャバリア―アイフリッド」などがあった。その他の現在流通が少ない商品はメーカー希望小売価格より1,000円や、それ以上価格を上乗せされて販売している。

 ガンプラに関しては新商品も扱っており、7月5日発売の「HG 1/144 エグザベ専用ギャン(ハクジ装備)」は初めて試験的に整理券を導入しての販売を行ったとのこと。新作ガンプラ販売時にはファンがチェックする店舗に加わっていることを実感しているという。

 もちろん「メタルビルド」、「ROBOT魂」といったフィギュアや、食玩、グッズなど幅広いガンダム商品も扱っている。その中でも、メタルビルドの一部商品や、再販の少ない商品はメーカー希望小売価格から上乗せされた金額や、大きい物では倍の金額のものがあった。その一方、再版もあり比較的市場に多く出ている物に関しては、メーカー希望小売価格とほぼ同じか、少し上といったところの金額で販売されていた。

 「おたちゅう。秋葉原4号店」では特に食玩は他の店舗でも扱っていないような多彩な品揃えを実現しており、セールスポイントの1つとなっている。食玩は、一般的に中身が見えないブラインドボックス形式で販売している商品だが、「おたちゅう。秋葉原4号店」ではあえて中身が見えるように販売しており、欲しい商品を購入できる機会を増やしているとのことだ。

完成品フィギュア「METAL ROBOT魂」は昨今のラインナップが充実
「METAL BUILD」も様々な商品を販売
グッズ、プライズ系も幅広く扱っている

 ちなみに現在の高額商品としてはフィギュアの「METAL STRUCTURE 解体匠機 MSN-04 サザビー」を40万円で販売している。またガンプラの高額アイテムでは2万円ほどのものがいくつかある。昨今では「ガンダムビルドファイターズ」とそれに連なるシリーズの関連ガンプラなどが、再版されないこともあり高額で取引されているという。

 加えて、お店ではユーザーが組み立てた「完成品ガンプラ」の買取、販売も行っている。店内では店員やユーザーが作った作品だけでなく、商品として完成品ガンプラも展示販売している。これらは特に外国人客に人気だ。ガンプラは魅力的だけど作れない、作ったことがない、という海外客にとって完成品ガンプラは、比較的安価で購入できるアイテムだ。組み立て済みガンプラを購入するお客も多い。日本人客でもコアなガンプラファンはジャンクパーツ用に組み立て済みガンプラを購入する人もいる。吉川氏はかつてガンプラの部品を流用し、アクセサリー製作するお客にも出会ったという。

 完成品ガンプラはそれこそ値段はまちまちだ。きちんと塗装し凝ったものもあれば、未塗装素組み、半完成品のジャンクパーツなどもある。定期的に作品を売りに来るお客もいる。形がしっかりしているものでも1,000円程度で販売している商品もあり、組み立て済みガンプラは人気商品の1つと言える。

【完成品ガンプラ展示・販売】
アクションベースの使用例としても活用。組み立てられたガンプラを販売している
大型の組み立て済みガンプラも

 さらに、「おたちゅう。秋葉原4号店」では"来て楽しいお店"を目指している。入り口にガンダムキャラクターの顔部分をくりぬき、そこから訪問者が顔を出して記念写真が撮れる「顔はめパネル」や、商品の展示以外でも、店員や、来客から提供してもらった完成品ガンプラを飾り立てたり、ディスプレイにこだわっている。テーマパークのように展示を見て楽しめる要素も意識しているという。

 もう1つ、"ガチャ"がある。1回1,000円で回せるガチャを用意し、ガンプラやグッズなどを景品としている。好きな商品を買うだけではなく、ガチャに挑戦して高額商品ゲットに挑戦できる、といった遊びの要素も盛り込んでいると吉川氏は語った。

【1,000円ガチャ】
ガンプラやフィギュアなどが当たる1,000円ガチャも人気だ

工具や完成品を買う”ガンプラ初心者”の外国人客

 昨今では海外のお客が非常に増えたという。コロナ禍が終わり海外のお客が秋葉原は特に増えた。その中でガンダム、ガンプラは非常に魅力的で、外国人のお客に受けている。店舗でも昨今では特に外国人の訪客が目立っている。オープン当初の2022年に比べ、現在は爆発的に増加している。中国、アジア系の方が多い印象だが、欧米系の来客も非常に増えている。

 海外客に限らず、好評なのが組み立てるための工具として「ニッパー」、簡単な塗装を行うための「ガンダムマーカー」、飾るための「アクションベース」だ。ガンプラがメインの商材になっていく中で、最小限の関連商品を販売したところ非常に好評だった。

【工具なども販売】
ガンダムマーカーの効果や、ニッパーの有効性なども説明

 「商品の近くには海外向けの英語でのPOPなども用意しています。ガンプラを作るためにニッパーが必要なことなども書いているんです。イラストをつけてわかりやすくしています。店内の説明だけでなく、公式ページは英語、中国語、韓国語バージョンを作って情報発信を行っています」と吉川氏は語った。特に外国客が購入する商品の特徴としては主人公機や、有名な機体の売れ行きは伸びている。

 こういった状況の中、他の店舗もそうだが、外国人客による売り上げの伸びは昨今非常に大きい。その上で現在、全体的な相場として価格は上昇傾向にある。他の秋葉原の店舗では対象を外国人に絞り、高額商品に注力したり、他の商材も軒並み高額な値付けをする店も見られるとのこと。

 「おたちゅう。秋葉原4号店」では新しい「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」関連商品はほぼメーカー希望小売価格と同額で販売、公式ページで積極的にアピールしているように、状態のいい商品はメーカー希望小売価格以上の値付けがされている。ガンプラの中古商品の販売価格はメーカー希望小売価格より1,000円からそれ以上上乗せされた価格も多い。

 「現在多くの商品はどうしてもメーカー希望小売価格以上の値付けにはなってしまいます。買取、販売で商売を展開していく中で、お店として業務を続けるための価格設定にはなってしまうので、ご理解いただきたいと思います。昨今では外国人のお客向けに高額商品を前面に出す傾向が秋葉原では見られますが、既存のお客が購入できる値付けを当店では意識しています」と吉川氏は語った。

 昨今のインバウンド需要は秋葉原を変えつつある。その中で「おたちゅう。秋葉原4号店」が大事にしたいと考えているのは「これまでのお客」だという。商材の多くはお客からの買取品だ。日本人であるお客が興味を失うような店舗運営をすれば、買取はストップし、商売が続けられなくなってしまう。だからこそ日本のお客が手に取れるような値付け、楽しい店舗の雰囲気、1,000円ガチャのような楽しめる仕掛けは重要なのだ。

 このため"イベント"も実施している。LINE登録したお客を対象にガンプラが当たる抽選イベントを行ったり、作例を募集するガンプラコンテストなども開催している。お客にお店に親しみを持ってもらう仕掛けも積極的に行っていきたいと吉川氏は語った。

ユーザーやスタッフの作例も。プロフィールを提示し、交流の場のにもなっている

 「おたちゅう。秋葉原4号店」にとって、やはりユーザーに大きくアピールしたいポイントは「もっと多くのユーザーから商品を買取したい」というところだと吉川氏は繰り返しコメントした。お客からの買取がなければ商材は減り、お店の魅力は減ってしまう。昨今は売り上げも好調で棚に空きが目立つこともあるという。公式ページでは買取のリストも積極的に公開しているので、ぜひ売ってほしいとのこと。

 ガンプラは組み立ててないものを箱のまま売りに来る、というユーザーが多い。購入したはいいけど、作れない、作らない、という商品を売りに来る。特に「引っ越しシーズン」は買取希望が多い。「おたちゅう。秋葉原4号店」は店舗での買取だけではなく、配送での宅配買取も実施している。現在はその際にかかる送料は無料で、買取額に上乗せしてお返しする方式で行っている。

 現在は直接店舗を訪れて売りに来る人、郵送で商品を送ってくる人の数はおよそ半々。ただ郵送のユーザーは大型ダンボール数箱など規模が大きい買取もある。店舗の売り場も半分以上の面積がガンプラに割かれている。“ガンダム専門店”において、ガンプラはメイン商材であるとのことだ。

 ガンプラの取引の傾向としては、やはり現在流通しているものが品数として多くなる。比較的新しい商品が買取に出され、その商品が店頭に並ぶと速いペースで売れていく。

 「買取させていただくものよりも、需要、つまり商品をほしがる人の方が多い、というのがガンダム商品では顕著だと思います。時には貴重なアイテムも入荷しますが、そういった商品はあっという間に売れてしまう。店頭に並ぶものは比較的数が多い最近の商品、というものが多くなります」と吉川氏は語った。

中心となる商材はガンプラ。しかし売れ行きが好調で、最近はちょっと在庫が減っているという
Zガンダム関連ガンプラ。商品の配置にも工夫がされている
プレバン限定商品も中古商品として販売されている

 「ぜひ本店にお越しください。お店に来るにはガンプラやフィギュアを売らなくてはいけない、何か買わなければいけない、ということはありません。店を見て回って、色々な商品が販売されていることを知ってほしいですし、フィギュアやプラモデルのカッコイイ造形に改めて触れてほしいです。スタッフもガンダム好きなので話しかけていただくのも大歓迎です。ここに来ればガンダムファンと出会える。たとえ言葉は交わさなくても、好きを共有できる場所だと思います。ぜひ遊びに来てください」。最後に吉川氏は読者へのメッセージとしてこう語りかけた。

公式ページでは細かく商品の買取金額が調べられる

 ンダムアイテムは筆者も積極的に購入しているが、改めてガンプラの存在の大きさや、中古市場で売買されるアイテムの多さ、多彩さを実感することができた。

 加えて”秋葉原”という独特の立地での面白さも感じた。「ガンダム専門店」という非常にとがったコンセプト、外国人人気が秋葉原そのものを変えようとしていく中、その流れに流されすぎると既存のお客の興味を失いかねないという経営の舵取りの難しさも感じた。店舗によって様々なコンセプトと事情がある。今後も様々なお店の話を聞いていきたい。