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汚れた便器に触る映像を何度も見ることで潔癖症が緩和するという研究結果(英研究)

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(著) (編集)

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 強迫性障害(OCD)は、それが不合理な行動だとわかっていても自分の意に反して何度も反復してしまう精神障害の一種である。

 日本人の約1~2%がこの病気に苦しんでいるそうだが、そのうちの、ほぼ半数が汚れることへの異常な恐怖を抱いている。すなわち過度の潔癖症だ。

 こうした人たちは、たとえばドアノブに触れたりするだけで汚れてしまった感じがして、どうにも手を洗いたくて仕方なくなる。ひどい人になると血が出るまで手を洗い続けるようなケースもある。

 こうした症状に対する治療には、薬物療法(プロザックなど、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と認知療法が組み合わされることが多いが、それでも効果があるのは6割程度でしかなく、これとは別の治療法の開発が急務となっていた。

 最近発表された研究結果によると、自分が汚れた便器に触っている映像を見るだけで、一定の治療効果を上げることができそうだという。

潔癖症の人に汚れたトイレのトイレットペーパーを触ってもらう実験

 イギリス・ケンブリッジ大学のバランド・ジャラル氏らは、潔癖症の被験者93名を対象に研究を行った。

 なお、ここでの被験者は正式に強迫性障害と診断された人ではなく、一般よりも不潔さへの恐れが強い潔癖症の人のことだ。

 あえて本物の強迫性障害ではない人を選んだのは、実験によって、症状がさらに悪化してしまうような事態も想定できたためだ。

 実験では、まず被験者の潔癖の度合いを測るために、質問票に回答してもらい、さらに診察も行なった。

 ついで被験者を3グループに分け、グループごとに指示された作業を自分で行ってもらい、その場面を30秒間ビデオで撮影した。

 指示された作業は、汚れた便器そっくりに作られた模型に入っているトイレットペーパーに触れる、流しで手を洗う、好きな手のジェスチャーをする(対照群)のいずれかである。

 その後1週間、被験者には、スマホアプリにアップロードされた自分が汚いトイレを触る動画を、アプリから通知があるたびに毎日4回視聴してもらった。

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認知行動療法を映像で

 このトイレの動画視聴は、一般的な認知行動療法をよりストレス少なく、かつ時間と費用をかけずに済むようにすることを念頭に考案された方法だ。

 潔癖症の人を徐々に”不潔な物”に暴露させつつも、体や手を洗ったりはさせないようにする。

 こうすることで、手を洗わないでも、汚れによる不安を感じないでいられるようにするのである。

 一方、手洗いの動画は、手洗いの代替行為となり、実際に手を洗ったりしなくても汚れへの不安を緩和できるのではという期待から考案された。

トイレ動画と手洗い動画を見た被験者の潔癖症が緩和

 8日目、再度被験者の潔癖度についてイェール=ブラウン強迫神経スケールで確かめてみると、トイレ動画と手洗い動画を見たグループでは、どちらも潔癖症の度合いが大幅に低下していた。

 また状況の変化に応じて注意を向けるといった、認知の柔軟性の点でも向上が見られた。

 ちなみにテストの結果によれば、汚れに対する恐れそのものが薄れていたわけではない。

 しかし、それは彼らのそうした認知を変えるには1週間では短すぎるからではないか、とジャラル氏らは推測している。

 手洗い動画グループの被験者の1人は、この実験での体験について、「自分で手を洗っているように感じたので、アプリを見た後は実際に手を洗う必要がなかった」と報告している。

 またトイレ動画グールプの1人からは、「動画やそうした類のことがあまり気にならなくなった。普段ならキッチンを布巾で拭いた後は、汚れた感じが嫌ですぐに捨ててしまっていたが、アプリを使うようになってからは、使用済みのものでもまた使えるようになった」という報告があった。

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強迫性障害にも有効なのかどうかは、今後の研究が必要

 今回の研究は、強迫性障害ほどではない潔癖症の人を対象に行われたものだ。

 今後のステップは、この方法が本当に強迫性障害の治療として効果があるのかどうかを確かめることだ。

 ジャラル氏らによれば、この方法はただ安く、ストレスが少ないというだけでなく、患者それぞれに合わせたやり方で実施できるというメリットがある点で有望なのだという。

 この研究論文は学術誌『Scientific Reports』に掲載された。

References:Repeatedly watching a video of themselves touching a filthy bedpan reduced people’s OCD symptoms / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 47件

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  1. ・・・・・・(ーДー;)

    潔癖症のままで
    いいじゃないか

    • -30
    1. ※1
      本人も困ってるし、周りも困るんですよ。
      たとえば念入りにテーブルを拭くとして、時間がないのにちゃんと拭かないと気がすまないし、手は荒れ荒れになってひび割れて出血したり。出血のほうが問題じゃないかって指摘するともっとヒドいことになるから、周囲は言えないし。時間も手間も金(消毒関連を異常に買ったりという点で)も、無駄にかかるのです。本人も理性ではわかって、やめたくなってることが多いです。それを手助けしてくれるプログラムのようです。うまくいくことを期待してます。

      • +18
    2. ※1
      精神的な病気についてちょっと調べると分かるけど、
      「本人や周囲が害と思っていなければ、治療の必要はない。
      または、病気と認めない。」
      というのがあるから、自分が良いと思うならそれでいいのよ。

      これはあくまでも、もう少しどうにかしたい人にとっての灯火の記事だからね。

      • 評価
  2. >自分が汚れた便器に触っている映像を見るだけで

    私は潔癖症じゃないから分からんけど、はたしてそれは「だけ」なのだろうか…。

    • +2
  3. 今、ストーンズの「ベガーズ・バンケット」のジャケット写真見てます。

    • +3
  4. 治療の過程で精神に異常をきたしたりしないのかそれ
    潔癖じゃない人間だって自分がウ○コ握りつぶす映像を延々と見せられたら
    正気じゃいられない気がするが

    • +10
  5. 汚れた便器に触りだす~ 行き先もわからぬまま~

    • +5
  6. 昔、重度の潔癖症だったけど、ルームシェアしてる間に治った。
    今は汚れていても全く気にならない事が仇になって、
    一人暮らし始めてから部屋が汚いからなんとも。

    • +7
  7. まぁ、治るならそれに越した事は無いだろうな。日常生活がかなり楽になるんじゃないか?

    • +18
  8. 海外の本格サバイバルの番組見てたら良くなったとか言ってたやついたっけな
    比較する対象が下がるんだろうな

    • +10
    1. ※10
      確かに虫やカエル・ヘビを美味しそうに食べるサバイバル動画を見るようになって、虫への嫌悪感はそこそこマイルドになった
      カエル・ヘビなんかは食べてみたいとすら思うように

      大切なのはそれが普通(異常ではないよう)に見えることで、
      「うわ・・・」「キモッ!」「無理無理無理!」みたいな大袈裟に否定する反応がついてると逆効果だと思う

      • +6
    1. ※12
      病気と診断されるような潔癖症って実際の汚染がどうかって全然関係ないんよね
      小学生が白線だけ踏んで帰宅するルール、みたいなのをもっと深刻にやってる感じ

      だから潔癖症なのにゴミ屋敷に住んでるなんて人も存在する
      “汚れた”ものを洗ったり掃除するのが苦痛なんだって

      • +20
  9. 慣れっていうのは大事だよ
    自分も潔癖だったけど学生時代のバイトで本来しなくていいはずだった清掃させられて
    そのあと潔癖改善したんだ
    しばらく仕事もせずひとりで過ごしていたらまた潔癖が再発した
    常に社会に身を投じていないと病んでくる

    • +15
  10. 某サイレントヒルで汚水が入った便器に手を突っ込むシーン何回も見せたらどうなるの?

    • +4
  11. fallout3をプレイすればいいんだな
    トイレの水ゴクゴク

    • +3
  12. 汚い生活を送るよりは潔癖症のが万倍マシや

    • -13
  13. イギリスのトイレって汚いらしい 潔癖症を治すよりトイレ綺麗にする方が先では?

    • +1
  14. 勘違いされがちなのが、潔癖って「キレイ好き」なわけじゃなくて「キレイっぽくないと気が済まない」んだよ。似てるようで本質は全く異なる。

    実際に「殺菌、滅菌処理された状態」であるべきだとはほとんどの場合思ってなくて「私がキレイだと思う状態」でさえあればいい反面、そういった状態でない場合がとことんダメなんだ

    • +20
  15. 最初は触りたくないけど一旦触って掃除始めると全く気にならなくなって徹底的に綺麗にして、その後風呂に入って自分もさっぱりさせないとダメなタイプだわ

    • +3
  16. 潔癖症の問題とか、改善とかより…

    俺の部屋が汚いからなんとかしたいが、片づけたり整理する気があまりしない…

    • 評価
  17. 一回割り切ってみるのは大事だと思う。

    自分も強迫性障害で、1日何回も熱い湯で洗って手がカサカサになってから、このままじゃいけないと思い。

    思いっ切って汚いと思う部分を拭いてみたり、触ってみたりしていくうちに、ちょっとずつだけど改善しつつあったから、手洗いで苦しんでる人に割り切ってみる事お勧めしたい。

    • +6
  18. 潔癖症だろうがなかろうが汚いものは触るなって親から教育受けるのにねぇ
    仕事で触る場合は、しっかり対策してるんだし無理に触れるようになるっておかしい気が…

    • -11
  19. トレイン・スポッティング観るといいかも
    便器の中へご招待されるし

    • 評価
  20. 20年近く苦しみ続けて、ようやく最近改善の兆しが見えていた潔癖症が、出勤時に駅でお腹壊した人の汚物が広がった通路に遭遇して一気に逆戻り、というか以前より更に悪化してしまった。
    本人もどうしようもなかったのかも知れないけれど、恨まずにはいられない。
    私の場合は『ここ・これは綺麗だから大丈夫』と自分を納得させる事が出来るかどうかが大事なので、この療法で症状が改善する人とは根本が違う気がする。
    なので、いくら除菌してもその時駅で身に付けていた服や靴には未だに触ることが出来ない。

    • +2
  21. ダウンタウンの浜ちゃんがいた高校じゃないんだから、素手で触りたか無いよな🚽

    • 評価
    1. >>29
      頭脳優秀の中学校だかとこかで、素手掃除やっているよ

      当然、自分たちで綺麗につかうようになるし、掃除する人や周りに感謝したり、自力するメンタルにも良いそう

      • -4
  22. ただの荒療治かと思ったら仮想化する事で慣れさせるのか。
    発想が面白いな。

    • +6
  23. 潔癖症って、究極の自分ルールと思い込み、習慣なんだよね

    自分は口に入れるものがダメだった。繊維や小さーいほこり?が浮いてたりとか。絶対に取って飲んだり食べたり
    今は色んな店にあるアルコール消毒も、付けないとカートが汚い、触れないってなって
    ちょっと自分の感覚が怖くなったわ。
    それまでは、まだ触れてたのに

    悪化すると生活に支障をきたすから、カートは直で触る!って
    食べ物も、あえて気にしないようにして飲んだり調理するようにしたら改善したわ

    23
    自分も部屋は荷物が積み重なったままだ
    掃除や片付けができない

    • +7
  24. 潔癖症は思ったより重大な病気だったりするんだよね
    大抵の場合結果的に人間関係を崩壊させるし常にストレスと戦わないといけないわけだ
    しかも恐ろしいことに潔癖症を患ってる本人は自分こそ正しくて他の奴らがおかしいと思い込んでるわけだよ、ある種の選民意識の一種と言ってもいいレベルだな
    要は自分が潔癖症なのは「まわりの人」が原因で決して「自分」が原因ではないとね
    だから簡単には治らないわけだけどそのまま行くと身体的にも精神的にも自身の免疫力をどんどん落とす事になるわけ、それじゃ本末転倒だろ?そういう奴らが結局は流行性の病気や他の感染症を蔓延させてるんだよ
    潔癖症はちゃんと病院で治しましょう

    • -7
    1. ※33
      自分が正しいと本人が納得してやっている場合は、
      残念ながら病気ではありません。
      単なるそういう性格の人です。

      強迫性障害は、「無意味だと頭では理解しているのに、
      やらないと落ち着かなくて他の事が手に付かなくなる。
      困っているので、この衝動を何とかしたい」という状態です。

      • +7
      1. ※37
        社会性がない環境だと、比べる相手がいないので自分が正しいと思ってしまう
        自分が少しおかしいんじゃないか、と気がつくというのが治療の第一歩

        • +1
        1. ※44
          そもそも、絶対的な「正しさ」なんて無い。

          何日か前の、足までの長髪の人の記事で
          「シャンプーどうしてんの?」
          →「高温多湿の日本とは気候条件が異なるのでは?」
          →「その日本でも、少し前まで毎日シャンプーするような習慣は無かった。さらに遡れば、風呂や着替え・洗濯だって毎日ではなかった」
          という方向へ話題が発展していたりした。

          その昭和中期ぐらいに、「私は毎日シャンプーしないと気持ち悪くて堪えられない!」という人がいたとして、「お前は社会性が無い。精神的な病気だから、皆のようにシャンプーは2~3日に一度に留めるよう『治療』しろ」と強制すべきか? 本人が自分にはそれだけの洗髪が必要だと思ってやってるなら個人の勝手だし、「他の皆が不潔すぎる、自分は正常」という感覚も、時代が移ればそっちの方が“普通”になっただろ。

          • +1
  25. 凄くわかる
    スーパーのカゴとか触りたくないしコンビニに買い物する為に車降りたら買い物後に除菌ペーパーで手と財布を常に拭いてしまうし他人の履いたスリッパとか絶対履けないし帰ったらまず風呂に直行して足を洗う、外の椅子とかに座ったジーンズとかで床に触れない
    上で書いてあった通り、「自分がこれで綺麗だ」と思った状態でないと辛くなる
    ここまで書いてみると改めて自分の異常さが分かる
    なんだけど仕事でフットケアはしてるんだな、もちろん終わった後は滅茶苦茶手を洗うけど
    いい加減すぎる

    • +3
    1. ※38
      一瞬「口づけ」の方かと焦ったが「J・P」の方だと
      気がついた(この間、0.02秒)

      • 評価
  26. トイレはいつも清潔にしましょう。汚い便器はトイレがかわいそう。トイレに感謝しよう。

    • 評価
  27. 自分も強迫性障害の気がある。
    トイレそのものに限らないんだよ、人体から発生するあらゆる垢的なものとか糞的なものとかも対象だし、嫌いな人の触ったものも触れないし、実際に相手が触ってなくてもイメージが付随するものは触れない。
    汚いものの名称を聞くだけでも手や口内が汚れた感覚が発生するし、
    今もうこの記事見ただけで自分の手が汚れている感覚になってる。
    何も触っていないのに。
    今この手で食べ物は触れないし、今飲み物を飲んだら口からその汚いものが入ってしまう気がして飲めない。汚いイメージがわいてしまったときは唾液を飲み込まないようにティッシュに唾を出す(汚いものを飲み込みたくない一心)←強迫行為
    頭の中から追い出そう追い出そうとしても執拗に浮かんできて、しかもそれらは繰り返し浮かぶうちにリスト化されてひとつきっかけがあると全部ずらずらと頭に押し出てくる。

    結局これは「過剰に意識が向いてる」状態だから、うまく別のことに気を逸らせれば全然平気になったりするんだけど、いつも一人だから気が逸れないっていう…(悲しい)
    病院行くほどじゃないだろうとずっと苦しみつつやり過ごしてきたけど、
    「手を洗う映像」はすごく代替えにできそう!いいヒントをありがとう。

    • +3
  28. インドで一年過ごせば治る。
    ちょっと腹を壊すかもしれないが最終的には逆に強くなるからへーきへーき。

    • 評価
  29. だれも絶対的な正しさの話なんてしないなくない?

    • 評価
  30. 強迫症のほとんどが潔癖症っていうのは嘘

    • 評価

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