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飛びながらしかフンをしない、海鳥「オオミズナギドリ」のトイレ習慣が明らかに

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オオミズナギドリ/ Image credit:東京大学 大気海洋研究所 Yusuke Goto (CC BY-SA)
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 日本に生息するミズナギドリの仲間のなかで最大種となる「オオミズナギドリ」には、ちょっと変わったトイレ習慣がある。

 東京大学の研究チームが腹部に小型カメラを装着して観察したところ、彼らはなんと飛行中にしかフンをしないことがわかった。しかも、4〜10分ごとという驚くほど正確なリズムで排泄を繰り返していることも判明した。

 映像からは、着水中にはフンをせず、わざわざ飛び立ってから空中で排泄して再び水面に戻るという行動も確認された。

 オオミズナギドリのフンには、海の栄養循環を支える成分が豊富に含まれている一方で、感染症を広げる経路ともなり得るという。

 この研究は『Current Biology』誌(2025年8月18日付)に掲載された。

腹部に小型カメラを装着し、「トイレ事情」を観察

 東京大学大気海洋研究所の上坂怜生特任研究員と佐藤克文教授らの研究チームは、オオミズナギドリの腹部に小型のビデオカメラを装着し、排泄の習慣を記録した。

 オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)は、西太平洋北部の温帯域に広く分布する中型の海鳥で、体長は約50cm、翼を広げると1m以上にもなる。

 羽毛はオス、メスともに同じ色で、上面は暗褐色、羽の縁が淡く縁取られ、白い波状の模様が見える。翼を広げて飛ぶと、上面に「M」のような模様が現れるのも特徴だ。

 長距離を滑空しながら移動するのが得意で、日本でもは伊豆諸島などで春から夏にかけて繁殖し、繁殖期以外は海上で生活する姿が見られる。

 今回の調査では、15羽の個体腹部に小型カメラを取り付け、排泄腔付近を撮影し続けるというユニークな方法で観察を実施。

 合計で約36時間にわたる映像から、195回の排泄を記録した。そのほとんどは飛行中に行われており、着水中の排泄は195回中わずか1回だけだった。

 中には、水面で休んでいる最中に一度飛び立ち、空中でフンをしてからまた戻るという動きも確認された。

 エネルギーを消費してまで飛びながら排泄する理由について、研究チームは、羽を汚さないためや、天敵から身を守るための可能性を挙げているが、詳細は今後の研究課題としている。

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(左)小型のビデオカメラを装着したオオミズナギドリのイラスト (右)糞の瞬間の映像の切り抜き / Image credit:東京大学大気海洋研究所

正確なリズムで繰り返される排泄

 映像を解析したところ、オオミズナギドリの排泄には驚くほど正確な周期性があることが判明した。

 多くの個体が4〜10分ごとの間隔を守り、1時間あたり平均5.2回の頻度でフンをしていた。重量に換算すると1時間に約30g、体重の約5%に相当する量を海へ落としていたことになる。

 普通は、体内に食べ物がたまると時間ごとに排泄の間隔が変わるはずだと考えられる。

 たとえば食べた直後は排泄の回数が増え、消化が進めば少なくなる、といった具合だ。

 オオミズナギドリが一定の間隔でフンをするのは、体の中で食べ物を消化してエネルギーを作る過程が、規則正しいサイクルで進んでいるからかもしれない、と研究者は考えている。

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オオミズナギドリが糞をしたタイミングを表す時系列グラフ  / Image credit:東京大学大気海洋研究所

生態系と感染症への影響

  海鳥のフンには、窒素やリンなどの栄養塩が豊富に含まれている。これは海の生態系にとって重要な栄養源となっており、オオミズナギドリが飛行中にまき散らすフンは、いわば「空からの栄養補給」として海洋の栄養循環の一部を担っている。

 とくに、オオミズナギドリが集団で採餌している海域では、局所的に栄養濃度が高まることで、植物プランクトンの増殖を促し、それを食べる小魚や動物たちの活動も活発になる。小さなフンが、海の豊かさを支えているのだ。

 クジラが深海で得た栄養をフンとして海面に運ぶ「ホエールポンプ」という現象が知られているが、数億羽といわれる海鳥たちもまた、同じように海の循環に大きな役割を果たしている。

 ただし、フンには栄養だけでなく、病原体も含まれている。近年では、鳥インフルエンザなどの感染症が野生の海鳥を介して海上でも拡大しており、排泄がその媒介手段となっている可能性が指摘されている。

 排泄のタイミングや頻度を知ることは、こうした感染症の拡大経路を解明する上でも重要だ。とくに、繁殖地の異なる個体が同じ餌場に集まり、集団で排泄を繰り返す場面では、病原体の拡散リスクが高まるかもしれない。

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Photo by:iStock

今後はGPSやセンサーで追跡する計画

 今回の研究は、海鳥がどのように海洋に栄養を供給しているのか、そして感染症がどのように広がっているのかを理解するための第一歩である。

 研究チームは今後、GPSや長時間稼働するセンサーを用いて、より大規模で精密な調査を進める計画だ。

 「最初はただ面白いと思った映像が、実は海の生態系を理解する大きな手がかりになった」と上坂氏は語る。

 ユーモラスでありながらも奥深い海鳥のトイレ事情は、まだまだ私たちに多くの発見をもたらしそうだ。

References: Sciencedirect / U-tokyo.ac.jp / Cosmosmagazine

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この記事へのコメント 13件

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  1. 水中で排泄しないのは
    体内への海水逆流防止のためかな

    • +10
  2. 衛生意識があるかどうかはわからないけど排泄物混じりの水に浸かりたくはないんだと思う。数分毎にフンをするうちのインコも狭いところに潜って遊ぶときだけフンをしない。外でしたのは平気で踏んづけるのに⋯

    • +19
    1. 少なくともプールでおしっこする人間よりは賢いってことだな

      • +6
  3. 海鳥じゃないけど
    合宿で同級生が鳥に制空権取られてた(フン爆撃)のを思い出した

    • +9
  4. 大空を飛びながら排泄、、、気分爽快やろなぁ、、、

    • +11
  5. 力んだり、腹圧がかからないと出せないとかあるし、筋肉の構造とかも影響するんやない?

    • +6
  6. 多くの人の目に留まると色んな意見が出てくるのが面白いね
    ネット記事を読む醍醐味
    カラパイアは割と科学的な見地に立った意見が多めなのが興味を惹いてくれる

    • +3
  7. 飛びながら糞してるとかコサギとかダイサギっぽい。

    • 評価
  8. ガンバたちを乗せてる時もフンしながらだったんだ…

    • +1

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