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26年間目撃例のなかった地域的絶滅種、オオノコギリエイの死骸を浜辺で発見(南アフリカ)

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(著) (編集)

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image credit: Africa Affair Journal
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 2025年9月19日の朝、南アフリカ東ケープ州ビルハ川の河口の砂浜に、オオノコギリエイが打ち上げられた。体長は2.93mほどで、まるで巨大なギターのようだ。

 同国沿岸では1999年以降、目撃例はなく、「地域的絶滅」とみなされてきた。例え見つかったのが死骸といえども、この付近にオオノコギリエイがまだ存在することを示している。

 この発見が報道されると、南アフリカの別の海岸で目撃したという報告が相次いだそうだ。

南アフリカのビーチで「幻の魚」が発見される

 このオオノコギリエイ(学名:Pristis pristis)は、ビルハ村の住民のマイク・ヴィンセント氏が発見したもので、ビルハ川河口(川が海に注ぎ込む部分)近くの砂浜に打ち上げられていたという。

 発見時には既に死亡していたが、彼はこの死骸の写真を撮影し、イーストロンドン博物館の自然科学者、ケビン・コール氏に送った。

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image credit: Facebook @What’s On in and around East London

オオノコギリエイであることを確認

 すぐに現地に赴いて直接死骸を確認したコール氏は、すぐにその死骸を調べた。

 体には何者かに捕食された痕跡があり、腹部の大部分と内臓が失われていたという。また、後頭部も切り裂かれており、大きな肉片と皮膚が欠損していた。

 これは死後にナイフで切断された可能性があるという。

 そして、背ビレの位置が腹ビレの少し前にあることを確認し、ノコギリ状の吻(ふん)の歯を数えた。

 その結果、歯は左右それぞれ21本(欠けあり)ずつ存在した。これらの結果から、コール氏はこの死骸がオスのオオノコギリエイであると判断したという。

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image credit: Africa Affair Journal

 すでにオオノコギリエイは腐敗が進んでおり、コール氏が到着したときには、多くのカモメたちが死骸をついばんでいた。

 そのため、正確に大きさを計測するのが困難だったため、歯のある吻の先端から尾ビレの付け根までの長さを測定したところ、2.93mだったという。

 サイズ的に、この個体は幼魚ではなく若い成体と見られている。また、吻の長さは、先端から付け根までで約70cmもあったそうだ。

 コール氏は死骸の皮膚と筋肉のサンプルを2か所採取したのち、保存して研究するために頭部を切り離して持ち帰った。

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Image credit: Africa Affair Journal

26年間目撃例がなかった地域的絶滅種

 実はコール氏は最初のうち、この「オオノコギリエイ発見」という事実の重要性を理解していなかったという。

サメ学者のジェレミー・クリフ氏から連絡を受け、2015年に発表された科学論文を紹介されるまで、私はこの発見の完全な重要性に気づかなかったんです。彼はさらにメールでこうコメントしてきました。

「これは非常に重要な出来事だよ。南アフリカ沿岸でオオノコギリエイが最後に目撃されたのは1999年に捕獲された時、つまり26年も前のことなんだ」(コール氏)

 クリフ氏によると、オオノコギリエイは吻の部分が長いため、刺し網に絡まってしまいやすいのだそうだ。

彼らは海底に生息し、主に貝類などを捕食します。平らな歯は貝の殻を砕くのに適しており、口は比較的小さいのが特徴です。

また、小魚の群れは危険を察知すると球状に集まりますが、オオノコギリエイは吻の先でそのボールを切り裂くのです(コール氏)

 この狩りで吻に刺さった小魚を、オオノコギリエイは砂のこすりつけて外して食べるのだとか。

死因の特定はDNAの検査待ち

 オオノコギリエイの死因については、まだはっきりと特定するには至っていない。

 腹部が大きくえぐられていることから、シャチやサメなど海に住む捕食者に襲われたのかもしれない。

 あるいは発見時、カモメに食べられていたことから、死後に腐肉食の生き物に食べられた可能性もある。

 現在のところ、死骸からは捕食者のDNAが検出されていないため、このオオノコギリエイがなぜ死んで打ち上げられたかについては、推測するしかないようだ。

 クリフ氏はコール氏が採取したサンプルの遺伝子検査を行うことで、このオオノコギリエイの死因を特定したいと考えているとのこと。

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image credit: Facebook @What’s On in and around East London

その後も目撃談が相次ぐ

 オオノコギリエイの生息数は世界的に見ても激減しており、その原因として人間による乱獲と、開発による生息域の減少が挙げられる。

 ある程度の個体数を維持しているのはオーストラリアのみであり、IUCNのレッドリストでは近絶滅種(CR)に分類されている。

 南アフリカ沿岸では、1999年以降、目撃の記録は途絶えていた。

 だが今回の「発見」のニュースが流れると、コール氏の元に、イーストロンドンから約35km離れたカイザーズ・ビーチで、同様の魚を目撃したとの報告が複数寄せられたという。

 もしかすると住民たちが気づかなかったり知らなかったりしたために、貴重な目撃例がこれまでにもいくつも埋もれていたのかもしれない。

(目撃例に)写真があれば理想的です。疑いの余地がなくなりますから

 研究者らはメディアやSNSを通じて、オオノコギリエイを見たり捕まえたりした場合、すぐに連絡をするよう呼び掛けている。

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「ノコギリザメ」と「ノコギリエイ」の違いとは

 ちなみに「ノコギリザメ」という生き物もいて、よく混同されているのだが、この2種は似て非なる存在だ。

 見た目も生息域も、身体の大きさもまるで違う。だが特に英語では両方とも「sawfish(ノコギリ魚)」と呼んで、一緒くたにしているのをよく見かける。

 具体的には、この2種はこんなに違うのだが。

ノコギリエイ
エラ:身体の下部
トゲ:規則正しい間隔で生えており、一度折れたら元には戻らない
ヒゲ:なし
体長:最大で7m
生息場所:汽水域
英名:Largetooth sawfish

ノコギリザメ
エラ:胸ビレの横
トゲ:不規則で折れてもまた生えてくる
ヒゲ:吻の付け根にある
体長:最大で1.5m
生息場所:深海
英名:sawshark

 写真を比べると、「ノコギリザメ」は「ノコギリエイ」に比べ細くてこじんまりとしている感じ。吻の部分もそれほど刺々しくないし、ひょろんと髭が生えている。

 こうして並べてみると、別の生き物というのがよくわかるのではないだろうか。

追記(2025/10/03) オオノコギリエイを誤ってノコギリザメと表記した部分を訂正して再送いたします。

References: ‘Extinct’ 3m largetooth sawfish washes up on Eastern Cape coast

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この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. 裏から見るとまだ生きてるように見えるなあ
    「む、無念じゃ…」とか言いそう

    • +23
  2. アレは目じゃないと理解してるんだけど顔にしか見えないw

    • +54
  3. 苦悶の表情を浮かべるQ太郎にしか見えぬ
    (目じゃないのはわかってるんだけど)

    • +9
  4. これだけ大きいとノコギリもノコギリとして使えそうだな

    • +13
  5. ナイフの跡って事はアフリカの漁師が網に絡まったこのエイをナイフで殺して外したのかな
    可哀想に

    • +4
    1. 死後にナイフで〜ともあるし、網にかかったときには息絶えてたのではないかな

      • +7
  6. でかいフライングV持ってるのかと思ったら顔があった

    • +10
  7. 「研究者らはメディアやSNSを通じて、大ノコギリザメを見たり捕まえたりした場合、すぐに連絡をするよう呼び掛けている。」
    って、「大ノコギリザメ」→「オオノコギリエイ」では?

    • +2
  8. エイに見えないのにエイの仲間なんだな・・・

    • +1
  9. 人間が漁場にしてる海域では壊滅した結果、見つかりにくいところで細々と生存してるのかもね。

    • +3
  10. どうみても墜落したUFOから脱出して死んだ宇宙人

    • +3
  11. 演奏のしやすさガン無視した高中正義の新作ギターか?

    • +1
  12. この魚ではないけどエイみたいな結構大きめの魚打ち上げられてるのは何回か見たことあるな。

    大阪のマーブルビーチ。あそこ一見綺麗だけど、頻繁に通ってると結構打ち上がった魚だらけで、たまにトビエイみたいな大物も打ち上がってる。大体もう時間経ってるものばかりだけど。

    • +1

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