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世界初:ヒトの体内細菌がロケット打ち上げと再突入に耐え、火星上陸への期待を高める

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(著)

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Swedish Space Corporation/Youtube
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 人間の体内に存在し、健康を支えている細菌が、宇宙の過酷な環境でも生き延びられることが世界で初めて証明された。

 オーストラリアの研究チームが、ヒト由来の細菌をロケットに搭載し、打ち上げから無重力状態、そして地球への再突入という一連の極限状況を経ても、細菌が生存していたことを確認したのだ。

 この成果は、将来の火星上陸に向けた長期宇宙ミッションで、人間の健康を支える“善玉菌”たちを共に連れていける可能性を示しており、宇宙移住への現実味を一歩高める結果となった。

この研究成果は、科学誌『npj Microgravity』(2025年10月6日付)に発表された。

人間の健康を支える体内の細菌「枯草菌」

 細菌と聞くと、「病気を引き起こす悪い菌」が思い浮かぶかもしれない。だが私たちの体の中には健康を守る良い菌も存在しており、腸内環境を整えたり、病原菌の侵入を防ぐ免疫の働きを助けてくれている。

 そのひとつが今回、オーストラリア・メルボルンにあるRMIT大学の研究チームの宇宙実験で使われた枯草菌(こそうきん / Bacillus subtilis)である。

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枯草菌とその芽胞(緑) / WIKI commons CC BY-SA 3.0

 自然界では土壌や枯れ草に広く分布し、ヒトの胃腸管を通過する際に、腸内細菌叢のバランスを整える働きをし、腸内で有害菌が増えるのを防ぐとされている。

 また、免疫系へも作用する。枯草菌の一部の株は、腸の粘膜に存在する免疫細胞に刺激を与え、体内に侵入したウイルスや細菌に対する防御反応を高めることが報告されている。

 さらに、枯草菌の一種である納豆菌は、血栓を分解する酵素「ナットウキナーゼ」を生成することでも知られており、血管の健康を保つ働きがあるとされている。

 枯草菌は、過酷な環境に耐えるために「芽胞(がほう)」という特殊な休眠状態をつくることができる。

 芽胞とは、細菌が生き延びるために体の中に形成する細胞構造のことで、栄養がなくなったり、乾燥や高温、紫外線、放射線といった極端な環境に置かれても、活動を停止してじっと耐え、再び生育に適した環境になると元の状態に戻ることができる。

 今回、世界初となる、枯草菌の芽胞が極限状態となる宇宙環境においても生存可能かどうかを確かめる実験が行われた。

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Swedish Space Corporation/Youtube

ロケットの打ち上げと再突入に耐えた枯草菌の芽胞

 RMIT大学の研究チームは、枯草菌の芽胞をロケットのペイロード(搭載実験装置)に搭載し、実際の宇宙飛行に送り出した。

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ロケットのペイロード/ Image credit:Gail Iles/RMIT University

 ロケットは打ち上げ時に最大13G(地球の13倍の重力)の加速力を受け、高度およそ260kmの宇宙空間で6分間の微小重力状態(ほぼ無重力)を維持。

 その後、地球への再突入時には最大30Gの減速と、毎秒220回転という超高速スピンが加わるという、想像を絶する極限環境となった。

 それにもかかわらず、芽胞は無事に地上へ帰還した。

 回収後の調査では、正常に成長し、構造にも異常が見られなかったことから、宇宙空間のストレスに耐えうる生命力を持つことが証明された。

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Swedish Space Corporation/Youtube

火星への有人飛行に希望をもたらす

 宇宙空間、とくに火星を目指すような長期ミッションでは、放射線や無重力の影響により、人間の体調だけでなく腸内環境にも大きな負荷がかかる。

 こうした状況下では、体内で健康を支える細菌の存在が、免疫力の維持や体調の安定にとって欠かせないものとなる。

 1961年以来、650人以上の人間が宇宙旅行をしているが、一定の重力と加速度の変化を伴う火星への長期宇宙飛行の環境に微生物がどのように反応するかについての研究は限られていた。

 だが今回の実験で枯草菌の芽胞が打ち上げから再突入までを生き延びたことで、こうした細菌たちが人間とともに宇宙を旅し、火星という未知の環境でも“体の内側から健康を支える存在”になり得ることを示している。

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組立台に置かれた探査ロケット / Image credit:Gail Iles/RMIT University

地上での医療や抗菌研究にも広がる可能性

 RMIT大学の宇宙科学者ゲイル・アイルズ博士は、「この細菌が高加速度、微小重力、そして急減速という宇宙環境を耐え抜いたことで、持続可能な生命維持システムの実現に近づいた」と語っている。

 さらに、極限環境に耐える微生物の研究は、地球上でも活用が期待されている。

たとえば、新しい抗菌薬の開発や、薬剤耐性菌への対策など、医療・バイオテクノロジー分野への応用が見込まれている。

 研究チームは今後、さらに繊細な微生物を使った宇宙実験を進める予定だ。

 火星移住の実現には、食料や酸素だけでなく、こうした“見えないパートナー”の存在がますます重要になる。

References: Nature / Rmit.edu.au / Eurekalert

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この記事へのコメント 9件

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  1. 1mとか5mに巨大化した大腸菌やアクネ菌が
    人間の体内や皮膚に潜り込もうと襲い掛かってくる
    B級トラブルが発生するのか…

    • +4
  2.  テラフォーミングの最初の尖兵は芽胞かっ! それともクマムシかっ!
     仮に人類が地球以外のところで発酵食品を食べるときに納豆は食べられそうね。←大豆は?

    • +1
  3. 細菌には大したことないかもだけど毎秒220回転て

    • +1
  4. 価値のない実験だ

    過酷な環境の中でも人体の中で生存できるかどうかが問題なのになにも理解していない

    • -7
    1. 科学のことも宇宙のことも何も理解していない
      これほど価値のないコメントも珍しい。

      • +6
  5. まあ芽胞なら行けそうな気はする
    でも肝心の人体の方がなあ

    あと良い細菌とか悪い細菌とかいう表現はなんかなー…

    • +1
    1. (ニンゲンに都合の)良い細菌、(ニンゲンに都合の)悪い細菌、という所だよね
      結局やつらも一生懸命生きてんだ

      • 評価

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