メインコンテンツにスキップ

ニモだけじゃなかった!刺胞動物を連れ泳ぐ幼魚たちの持ちつ持たれつな関係

記事の本文にスキップ

8件のコメントを見る

(著)

公開: (更新: )

この画像を大きなサイズで見る
口にイソギンチャクのような刺胞動物をくわえているアジ科の幼魚 / Image credit:Linda Ianniello
Advertisement

 映画『ファインディング・ニモ』で知られるカクレクマノミは、イソギンチャクと共生関係にある。一緒にいることでお互いに外敵から身を守っているのだ。

 だがこのような関係は、クマノミとイソギンチャクだけのものではなかった。同じように刺胞動物と共生している魚たちが他にも存在することが、アメリカ・バージニア海洋科学研究所によって明らかになった。

 夜の外洋を泳ぐ小さな幼魚たちが、イソギンチャクと近縁の毒をもつ刺胞動物の幼生を口にくわえたりしながら連れて泳ぐ行動が観測されたのだ。 

 小さな魚たちは刺胞動物を盾のように使って身を守る。一方、刺胞動物は魚に運ばれることで、より遠くまで移動することができる。これもまた、互いに利益を得る「相利共生」の一種と考えられている。

 この研究成果は『Journal of Fish Biology』誌(2025年9月5日付)に掲載された。

夜の海で観察された小さな魚と刺胞動物の不思議な関係

 バージニア州・ウィリアム・アンド・メアリー大学、バージニア海洋科学研究所に所属するガブリエル・アフォンソ氏を中心とした研究チームは、フロリダ州とフランス領ポリネシア・タヒチ島の外洋で、魚たちの行動を記録・分析するため、夜間の潜水撮影を行った。

 撮影には、外洋の暗闇にライトをぶら下げて生き物を引き寄せ、その姿をカメラで収める「ブラックウォーター・ダイビング」という技法が使われた。

 すると、さまざまな幼魚がイソギンチャクの仲間である、毒を持つ小さな刺胞動物の幼生を携帯し、行動を共にしている様子が記録された。

 観察されたのは、Filefish(カワハギ科、学名:Monacanthidae)やDriftfish(オオメメダイ科、学名:Ariommatidae)、ヒレジロマンザイウオ(シマガツオ科、学名:Taractichthys steindachneri)、そしてホースアイジャック(アジ科、学名:Caranx latus)といった魚たちだ。

 これらの幼魚が口にくわえていたのは、刺胞動物門に属するハナギンチャク(学名:Ceriantharia)やスナギンチャク(学名:Zoantharia)などの幼生だった。いずれも、触手に毒のある細胞を持ち、捕食者にとってはちょっと厄介な存在だ。

この画像を大きなサイズで見る
幼魚が連れ歩く刺胞動物の幼生  / Image credit:Rich Collins and Linda Ianniello Photos

幼魚のメリットは「身を守るため」

 幼魚が小さな刺胞動物の幼生をくわえたり、しまい込んだり、運びだりしながら連れ泳いでいる理由は何なのか?

 研究に協力したフロリダ自然史博物館のリッチ・コリンズ氏は、「ある種の幼魚は、有毒な刺胞動物を防御の道具として使っているように見える」と語っている。

 コリンズ氏は長年ブラックウォーター・ダイビングを行ってきたが、魚がクラゲなどの毒を持つ生物をくわえる例も見てきたという。

 実際、ヒレジロマンザイウオの幼魚の一種は、スナギンチャクを腹びれのあいだに挟み込むようにして保持していた。

 また、カワハギ科の幼魚は、スナギンチャクを口にくわえたまま、短い距離を移動する様子が観察された。

 何度かコリンズ氏がスナギンチャクを取ろうとしたが、魚はすぐには逃げず、守るようなそぶりさえ見せたという。

 最終的にスナギンチャクは放されたが、傷も擦れもまったくなかった。

この画像を大きなサイズで見る
口にスナギンチャクの幼生をくわえて泳ぐカワハギ科の幼魚 / Image credit:Linda Ianniello

 つまり幼魚たちは、刺胞動物を攻撃したり食べたりするのではなく、身も守るための盾のように利用していたと考えられる。

 アジ科の幼魚も、似たような行動を示していた。

 ハナギンチャクの幼生を自分の前に置き、カメラから身を守るように泳ぎ回っていたという。

 刺胞動物の毒は、幼魚の天敵となる魚にとって、必ずしも致死的なほど強力なものではない。

 だが「口に入れてもおいしくない」存在であり、不快な味や刺激があるだけでも、捕食者にとっては十分に避けるべき対象となる。

刺胞動物のメリットは遠くに運んでもらえる

 では刺胞動物の方はどうなのか?

 論文の筆頭著者であるガブリエル・アフォンソ氏によれば、魚たちの行動は、刺胞動物にとっても利点がある可能性が高いという。

 ハナギンチャクやスナギンチャクのような種は自力での遊泳能力が低く、基本的には海流に流されることでしか移動できない。

 しかし、幼魚にくわえられたり、体に密着する形で一緒に移動することで、より遠くの場所まで運ばれる可能性がある。

 このように魚と一緒に移動できれば、刺胞動物の幼生は新たな生息地を獲得できる可能性が上がる。

 結果として、分布域を広げ、定着先を増やすことにつながるのだ。

この画像を大きなサイズで見る
口にハナギンチャクの幼生をくわえるヒレジロマンザイウオの幼魚 / Image credit:Linda Ianniello

持ちつ持たれつ、相利共生の関係

 こうしたことから、研究チームはこの関係を「相利共生」の一例とみている。

 相利共生(そうりきょうせい)とは、生き物同士が互いに利益を与え合いながら共に生活する関係のことを指す。

 どちらかが一方的に利益を得る「寄生」や、一方のみが利益を受け取る「片利共生(へんりきょうせい)」とは異なり、双方にとってプラスになる関係だ。

 アフォンソ氏は、「私の知る限り、外洋で魚が刺胞動物を物理的に運んでいる事例を観察したのは今回が初めてです」と語っている。

 また、カクレクマノミとイソギンチャクのように特定の場所に定着して暮らす共生関係とは異なり、今回観察されたのは、移動をともなう一時的な共生だ。

 外洋という変化の激しい環境の中で、小さな命が生き延びるために互いに助け合う「持ちつ持たれつ」の関係は、私たちがまだ知らない海の生態系の奥深さを物語っている。

追記(2025/10/26)本文中の魚の科の名称の誤りを訂正して再送します。

References: Onlinelibrary.wiley.com / Eurekalert / VIMS

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 8件

コメントを書く

  1. イソギンチャクを持ち歩くと聞いてキンチャクガニを思い浮かべたけど、魚類にもいるとは驚きです。
    しかもイソギンチャクにとっても、運んでもらえるメリットがあるんですね。
    自然界も人間社会と同じく助け合いで成り立っているのだと、改めて感じます。

    • +5
    1. 敵に出会った時、ブンブン降られるイソギンチャクの気持ちって。。。

      • 評価
  2. お気に入りのぬいぐるみ持ち歩いてるみたいでかわいい

    • +11
  3. 「弱肉強食は自然界の掟」とよく言われ実際間違いではないんだけど、そのようなゼロサムゲームだけでなく、両者ともに得をするウィン―ウィンの関係もまたしばしば見受けられる。奥が深いよね、自然界って

    • +6
  4. これを行うのが一種類の魚ではないというのが驚きですね
    きちんと調べないと気が付かないことはたくさんあるんだって思い知らされます

    • +6
  5. ひどいな。
    Monacanthidaeはカワハギ科でモンガラカワハギ科ではないしAriommaはオオメメダイ科。ヒレジロマンザイウオはマトウダイ科ではないし。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

水中生物

水中生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。