メインコンテンツにスキップ

3000万匹に1匹!希少なまだら模様のロブスターが捕獲される

記事の本文にスキップ

14件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 2025年夏、希少な青いロブスターの「ネプチューン」が、マサチューセッツ州のノースイースタン大学の海洋科学センターに寄贈された。

 そして秋。同じセンターにまたしても珍しいロブスターがやってきた。

 この新入りは、鮮やかなオレンジ色と黒のまだら模様になっていて、3,000万匹に1匹という、青いロブスターよりもレアな模様なのだ。

オレンジのまだら模様のロブスターが海洋科学センターに

 このロブスターは2025年10月上旬、マサチューセッツ州グロスターを拠点としているロブスター漁師、マイク・タフツ氏によって捕獲されたものだそうだ。

 彼はネプチューンのいる海洋科学センターのアウトリーチ・プログラム・コーディネーター、シエラ・ムニョスさんに直接連絡を取って来たのだという。

ある日、彼は私にこの美しいロブスターの写真付きのメッセージを送ってきて、私たちの水槽に「もう1匹、美しくて珍しいロブスターを入れるスペースがある?」と尋ねてきたんです。

私は「もちろん大歓迎です」と返事をしました。私たちの科学教育プログラムにとって、これほどうれしい寄付はありませんから

 シエラさんはこのロブスターに「ジャッキー」という名前をつけた。

 その体色のオレンジ色が、ハロウィンのカボチャのお化け、ジャック・オー・ランタンを連想させたからだ。

この画像を大きなサイズで見る

 同センターでは既に、美しいブルーの殻をもつロブスター「ネプチューン」が飼育されている。

 今回やって来たジャッキーも、ネプチューンの仲間入りをすることになるが、2匹は別々の水槽で暮らす予定だそうだ。

 なぜなら、ロブスターは縄張り意識が強く、同じ空間で飼育すると、激しく争ってしまうからである。

 この2匹の珍しいロブスターたちは、科学教育の現場において貴重な教材となり、来館者や子供たちに海の多様性を伝える役割を担うことになる。

この画像を大きなサイズで見る

 これまでにもノースイースタン大学では、こうした希少な個体を保護し、遺伝学的な解析を進めてきた。

 その目的は、特異な色の成因を明らかにすることだけでない。深刻な影響を及ぼす気候変動や、乱獲といった人為的影響から、種をどう守るかを考えるためだ。

珍しい「オレンジ色のまだら模様」の秘密とは

 ロブスターの殻の色は、主にアスタキサンチン(カロテノイド)という赤い化学物質によって決まる。

 生きているロブスターの殻は、赤橙色のアスタキサンチンが青い色を持つクラスタシアニンなどのタンパク質と結びついて、茶色や緑がかった色になっている。

 だが茹でると熱でタンパク質がほどけて結合が外れ、アスタキサンチン本来の赤橙色が前面に出るため、ロブスターは赤く、エビはピンク色に代わるのだ。

 だがジャッキーの場合、このアスタキサンチンが他の色素やタンパク質と独特の組み合わせを起こしているとみられる。

ジャッキーのような模様のロブスターは、アスタキサンチンが他の色素やタンパク質と独特な方法で結合し、珍しいまだら模様を生み出しているのです

この画像を大きなサイズで見る

その希少性は3000万匹に1匹

 ジャッキーは主に明るいオレンジ色の地色に、黒と黄色の斑点が散りばめられているが、関節部分にはうっすらと青みがかっている。

 この青は前述のクラスタシアニンによるもので、青いロブスター・ネプチューンの殻と同じ成分である。

 ネプチューンの場合は、このクラスタシアニンが過剰に供給されているおかげで、鮮やかなブルーの殻をしているのだ。

 その希少性は3000万匹に1匹というから、約200万匹に1匹の確率の青いロブスター、ネプチューンよりもはるかに高い。

Meet ‘Jackie’, the Jack-o-lantern-looking lobster

生徒たちを魅了する生きた「海の教材」

 2匹が暮らす海洋科学センターは、地域社会と深く結びついた教育施設で、年間約5,000人の子供たちがここを訪れ、海洋生物や環境保全について学んでいる。

 スタッフが地元の小学校に出張授業を行う際には、ネプチューンを専用のキャリーケースに入れて連れて行くこともあるそうだ。

生徒たちは本当に楽しんでいます。子供たちは珍しい生き物を通じて、それがどんなに特別な存在なのか、海にはどれほど多様な生き物阿木るのかを学びます。たくさんの質問がどんどん出てきて、みんな夢中になるんですよ

中でも子供たちからよく出る質問のひとつが、「ジャッキーの赤ちゃんはどんな色になるの?」というものなんです

 残念ながら、科学者たちもその答えはよくわからない。

 ジャッキーやネプチューンの色には、遺伝的な要素が深くかかわっていると考えられているが、自然界での発生率があまりにも低いため、系統的な観察を行うことが難しいのだ。

生まれた子供がジャッキーに似た色になる可能性はあります。でも、こんな派手な色は外敵に見つかりやすいので、生存率は低いかもしれません

 ジャッキーはネプチューンとは別の水槽で、カレイの仲間やタマガイの仲間など、地元の海の生き物と共に展示される予定である。

この画像を大きなサイズで見る

気候変動も影響しているのか?

 気候変動によって海水温が上昇し、酸性化が進む現在、ロブスターの生態も変わりつつある。

 色彩の異常はもしかすると遺伝子だけでなく、環境ストレスによっても引き起こされる可能性がある。

 海洋科学センターでは、こうした希少個体のDNA解析を通じ、環境要因と遺伝的要素の関係を探ることを目指している。

私たちの水槽展示は、生徒たちに海の世界の息吹を体感させると同時に、ノースイースタン大学の科学者たちが研究を通じて解明しようとしている科学的な問いへと、彼らを導く役割を果たしているんです

A one-in-30-million lobster was donated to Northeastern. Meet Jack-O’-Lantern!

 ロブスターは、健康であれば100年生きることもあるという。老化による細胞の劣化が遅いとされ、もしウイルス感染や物理的な損傷がなければ、半世紀以上生き続ける個体も珍しくないんだそうだ。

 ネプチューンやジャッキーを見て目を輝かせた生徒たちのうちの何人かは、いつか研究者となってこのセンターに戻ってくるかもしれない。

 きっとその時、2匹は今と同じ姿で彼らを迎えてくれるのではないだろうか。

References: Rare 1-in-30-million calico lobster makes her spooky debut

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 14件

コメントを書く

  1. 素晴らしい。大阪のおばちゃんが着てそうな柄ですわね。

    • +6
  2. 希少性は分かるんだけど、3000万分の1って確率はどこから計算したんだろ
    遺伝子的にこうなる可能性がある、ってのが分かるんかな

    • +4
  3. 飲めば飲むほど強くなったり時計塔から飛び降りたりするんかな(違うジャッキー

    • +1
  4. 青いのはともかく
    この色だったら
    日本人は躊躇う事なく食べちゃうね

    • -1
  5. 黄金のロブスターだ
    カエルさんおたまさんにもいるね
    かわええのお

    • +1
  6. 最初からこういう種類のロブスターに見える
    茹でたらどうなってしまうのか
    濃い赤と薄い赤のまだら?

    • +2
  7. 対戦型FPSゲームの銃のレアスキンにありそうな

    • +2
  8. ジャック・オー・ランタンより
    べっ甲か琥珀って感じ

    • +2

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

動画

動画についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

水中生物

水中生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。