IT企業のCTOという立場から回答します。ご指摘のように、ITエンジニアの持続可能なスキルについては会社側に責任があり、業務に必要なスキルはもちろんのこと、将来にわたってエンジニアとしての業務が遂行できるための技術や知識を習得し続けるために、業務時間内にトレーニングを受けてもらうことや、そのためのカリキュラムの策定、予算確保などを行う必要があります。
すべての会社で十分上記ができているとは思えませんが、仮にできていたとしても、会社側で責任を持つということは、勉強の内容やトレーニング方法等についての主導権は上司や経営側が持っています。質問主さんたちに、将来どういう業務を担ってほしい、そのためにはこういう勉強が必要だよねということから、トレーニングの内容が決まるということですね。
「ベテランの人たちはどうお考えなのでしょうか」というご質問なので私自身の経験を書きますが、会社の時間とお金で受講したトレーニングというのは、あくまで直近の業務に必要なものと、担当業務の理解に必要な周辺の知識に関するものが主でした。それでも、周囲の同僚社員よりも手厚い教育機会を与えられていたように記憶しますが、それは「徳丸は勉強熱心で理解も早い」という評価があったからだと思います。
また、入社当初は工場勤務で朝の8時から夕方5時前には業務が終わっていて夜は時間がありましたので、そこでは自分の興味の赴くままに、業務とは関係のない勉強をしていました。アルゴリズムや多種のプログラミング言語、コンパイラ作成、計算幾何学(計算機科学ではない)・・・そうすると、勉強をしたから給料を上げてやろう、ということには当然ならないわけですが、不思議なことに、自分が勉強をしたことが直接役に立つ業務が目の前に現れる、あるいは「その分野は徳丸が知っているらしい」という風評がたって社内で私がその担当になるということが何度もありました。その段階でも給料は増えませんが、そういうことの積み重ねで給料がよくなるということはありました。つまり、プライベートな勉強と報酬は時間差があるわけです。これはそういうものでしょう。たとえば、プロスポーツの選手が自主トレをしてもその時間の報酬はもらえませんが、自主トレの結果プロスポーツ選手としての力量が上がれば、少し遅れて彼の報酬がアップする、そういうことがITエンジニアでも起こり得ます。
仮に今の会社で給料が上がらなくても、転職する場合には、勉強熱心な方は採用されやすいと思います。
ただ、報酬も大切だとは思いますが、エンジニアとして長く働く上で、将来自分がどういうエンジニアになりたいかというビジョンを持って、それは上司とも相談して会社から支援を受けられればよいですが、プライベートでも将来やりたい技術分野の勉強を進めると、より良い未来をつかみやすくなるのではないかと思います。