自然の中で長く過ごしていると、奇妙な光景を目にすることもある。サケを帽子のようにかぶるシャチや、ウォンバットの立方体のふんなどだ。しかし、ロシェル・コンスタンティン氏がニュージーランドのハウラキ湾で調査船に乗っていたとき、これは新たな発見だと確信する出来事があった。目の前を猛スピードで通過した体長約2.75メートルのアオザメの頭に、巨大なオレンジ色のタコがくっ付いていたのだ。
「まさに幸運な一日でした」と、ニュージーランド、オークランド大学の海洋生態学者であるコンスタンティン氏は振り返る。
サメとタコは同じ海の動物だと思うかもしれないが、氏によれば、両者の生息環境は全く異なる。例えば、アオザメはほとんどの時間を海の中層部で過ごすが、この海域にすむマオリタコは生まれてから死ぬまでほぼ海底で暮らす。(参考記事:「タコを飲み込もうとしてイルカが窒息死」)
「両者がどのように出合ったのか、全く意味がわかりません」と氏は話す。
コンスタンティン氏らは約10分間にわたって観察し、英語のサメ(シャーク)とタコ(オクトパス)をもじって2匹に「シャークトパス」という愛称を付けた。最終的に、この奇妙なカップルはどこかに泳ぎ去った。
「彼らをそっとしておきました」と氏は言う。
シャークトパスは科学者と一般の人々を同じように驚かせたが、動物がほかの動物に“ヒッチハイク”する行動は生物学ではよく知られている。この行動は「便乗」または「運搬共生」と呼ばれており、昆虫などの無脊椎動物をはじめ、自力で分散するのが難しい小型動物によく見られる。(参考記事:「ノミがハサミムシにヒッチハイク、奇妙な理由」)
タコの便乗は知られていないが、吸盤を持つことから、その能力は高いと思われる。
「アザラシ、アシカ、イルカ、サメなど、タコが便乗しそうな動物はすべて、タコを食べる動物でもあります」とコンスタンティン氏は話す。通常、天敵に便乗することはないため、その点でも、シャークトパスは不可解だ。(参考記事:「ウミガメの背に10万もの生物がヒッチハイク、研究」)
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