四輪車、二輪車、マリン製品などを幅広く手掛ける、輸送機器メーカー大手のスズキ。特に軽・小型自動車で強みを持ち、2024年度の軽自動車の新車販売台数でシェアトップを誇るほか、海外展開にも注力しており、インドの自動車市場では販売台数トップとなっています。
そんなスズキでは、将来的な持続的成長の実現を目指し、人事制度を全面的に刷新するなど、さまざまな改革を実行しています。人事制度改革の具体的な内容や、これからのスズキが目指す方向性などについて、代表取締役社長の鈴木俊宏氏に伺いました。

(お名前)
スズキ株式会社 代表取締役社長 鈴木俊宏氏(写真左)
株式会社リクルート HR 統括編集長、『リクナビNEXT』編集長 藤井 薫(写真右)
藤井薫編集長(以下、藤井) スズキでは、今年の2月に2030年度を最終年度とする中期経営計画を発表されました。2030年度末に売上収益(売上高)8兆円(2024年度は5兆8252億円)、営業利益8000億円(同6429億円)、営業利益率10%(同11.0%)を目指すという目標を立てておられます。インドを始めとする新興市場を含め、さらなる成長を掲げていますが、どのような将来像を描いておられるのでしょうか?
鈴木俊宏社長(以下、鈴木) 2025年度を最終年度とする中期経営計画を進めていましたが、すでに目標数字を達成できたことから、1年前倒しで新たな中期経営計画を策定しました。
中期経営計画を策定する際には、それぞれスローガンとなる名称も掲げていますが、今回の名称は「By Your Side」。お客様に寄り添い、そしてあなたに寄り添い、共に成長していく」という想いを込めています。
我々はものづくりの会社であり、お客様に評価され「こんなものが欲しかった」と言っていただける商品を作るのが使命です。
今から100年以上前、1909年に創業しましたが、当時は織機の製造からスタートしたスタートアップ企業でした。お客様の立場に立って要望を聞き、改良を繰り返すことで、今のような企業規模にまで成長してきました。そのため、中期経営計画を達成するためには、「お客様の立場に立つ」ことが何より重要だと考えています。
藤井 お客様視点でのものづくりの姿勢は、御社の行動理念にも表れていますね。
鈴木 おっしゃる通りです。当社が大事にしている「小・少・軽・短・美」という行動理念は、無駄を省いた効率的で高品質なものづくりの基本方針である「小さく」「少なく」「軽く」「短く」「美しく」を略したものであり、海外拠点を含め広く社内に浸透しています。
現場へ行き、現物を見たり触ったりして現実的に判断する「現場・現物・現実」、意思決定の速さ、人と人との距離の近さ、変化に対応できる柔軟性を重視する「中小企業型経営」も行動理念として掲げ、大切にしています。いずれもお客様に寄り添いスズキができることを考え、スピード感を持って決断していくという姿勢を示しています。

藤井 その中、人的資本の増強を目指し、昨年4月に人事制度を全面的に刷新したことが話題になりました。
鈴木 今回の人事制度改革のポイントは、職能資格制度の導入、評価制度の見直し、60歳以降の働き方の見直し、給与・手当・初任給の見直し、の4つです。成長戦略を描く中で、これまでの人事制度のままでは達成できないのではないか、時代に合わせた人事制度に刷新すべきではないかと考え、大幅な見直しを行いました。
これまでは、どちらかというと結果を出し、業績に貢献してきた人が評価されやすい傾向にありましたが、これからは「個の力」を高めることが重要であり、一人ひとりの能力そのものをしっかり評価できる制度設計にするべきだと考えました。
そのために、各職系・階層ごとの役割と社員一人ひとりの職務遂行に必要な能力要件を明確化した新たな職能資格制度へと移行し、業績と職務能力の向上をそれぞれ評価できるように変更。従業員一人ひとりの挑戦と行動を促すことで、「個の成長」の加速と「個の稼ぐ力」を強化し、組織全体の成長につなげたいと考えています。
藤井 目のまえの仕事において何が評価されるのか、どんな知識やスキルが必要とされるのかが明確化されると、働く個人にとっては進むべき方向がわかりやすく、能力開発に向けてのモチベーションも上がります。ただ、数多くの職種や役割がある中で、一つひとつの能力要件や評価ポイントなどを明確化していくのは大変だったのでは?
鈴木 人財開発本部のメンバーが主体となって取り組みましたが、確かに大変な作業でしたね。
これまではどちらかというと、「先輩の背中を見ながら必要な経験・スキルを身につける」というOJTがメインでした。しかし、すべての人が身につけられるとは限らず、難しさを感じていました。
会社として個の力の向上を目指すのであれば、必要とされる知識・スキル・ノウハウ・経験を明示するのは、職務能力の増強に不可欠です。その中で、「お客様が本当に欲しいものは何か?」を考え抜く力も磨かれるのではないかと考えています。
人事制度は一度作ったら終わりではなく、見直し、育てていくものだと捉えています。年功序列が長かったこともあり、人事制度を刷新してもしばらくはどうしても多少のひずみは生じることと覚悟しています。不具合や現状にそぐわない部分が見つかったら、すぐに修正・改善していくことで、人事制度も成長させていきたいと考えています。
藤井 御社では、早くから海外展開に着手されていて、200以上の国と地域で販売網を持っておられます。特にインド市場で圧倒的なシェアを誇っていることも有名で、今回の中期経営計画では、インドにおける自動車のリーディングカンパニーとしてシェア50%を目指すことも明文化されています。
インドを含めた海外の可能性について、ぜひ社長の見解をお聞かせいただけますか?
鈴木 インドや中東、アフリカなど、海外市場はまだまだ伸ばす余地があると考えています。特にインドには1982年にいち早く進出し、インドの自動車産業の成長と歩調を合わせながら進んできました。当社が現地での生産量を増やすことで、インドの自動車産業の成長に貢献してきたとも自負しています。そして、手ごろな価格の軽自動車をベースとすることで、インドの方々に愛され、国民車として広く認知されています。
一方で、インドの人口約14億人のうち、スズキはまだ4億人ほどしかつながりがありません。この4億人は富裕層が中心であり、残りの約10億人は主に農村部の人たちですが、10億人にスズキの自動車に乗っていただくためには、農村部の稼ぐ力や経済力を高める必要があります。
当社はかねてから、地域の文化やそこに住まう方々に寄り添い、ともに新たな可能性を探求する姿勢を大事にしていますが、インドの新たな可能性の一つとして着目したのが「牛」です。インドにおいて神聖な動物とされている牛は、国内で3億頭も飼育されていて、その3億頭の牛糞を活用すると、1日当たり3千万台の車を動かすことができると試算されています。そこで、牛糞からバイオガスを生成するバイオガスプラントを設置・運営し、生成されたガスをCNG車両(天然ガス自動車)の燃料として活用する事業に取り組んでいます。バイオガスの残渣も有機肥料として活用できるため、世界的な土地改良に利用されれば、農村部の所得が上がり、自動車の需要も高まるのではないかと期待しています。こちらも冒頭お話した、「現場・現物・現実」で、お客様に寄り添い、共に成長していくスズキの「By Your Side」の好例だと思います。
インドとは歴史があり関係性も深いため、これからもインドの経済力の底上げに尽力していきたいと考えています。

藤井 人事制度改革の一つに「60歳以降の働き方の見直し」が挙げられていますが、「60歳を過ぎても気力・体力・環境に問題がなければ、それまでの業務と給与を維持する」というのは、長く活躍したいシニア層にとってはかなりの朗報だったと思います。
多くの企業で、50代後半から60歳ぐらいで役職定年となり、仕事内容が大幅に変わり給与も下がるケースが多い中、シニア層への期待の大きさを感じます。
鈴木 以前の人事制度では、一定の年齢が来たら役職を降りなければならず、モチベーションが低下する人が多かったと思います。それまで活躍していた人が、急にやる気を失ってしまったという姿も見てきました。
しかし、重要な経験やスキルを持っている人には、可能な限り長く働いてもらいたいと考えており、その思いを人事制度にも反映した形です。
組織としては世代交代や若返りも必要ではありますが、シニア層に奮起してもらうことで、後進の育成や技術の伝承も進むことでしょう。ご自身の力を思う存分発揮してもらいながら、スズキの継続的な成長をサポートしてほしいと考えています。
藤井 これまでのお話を伺うと、スズキには働く個人にとってたくさんのチャンスがあり、打席も多いと感じています。現在は別の会社で働くベテラン層にも、経験を活かし活躍できるチャンスがあるのでしょうか?
鈴木 おっしゃるように、当社には国内外にたくさんのポジションがあります。中期経営計画のもと、さらなる成長を目指すためには、人手も技術も知見もまだまだ足りないと認識しています。スズキで育ち経験を積んできた既存社員はもちろん、シニアなどベテラン層を始め他社で活躍している方々も、これまでの経験・スキル、知見を活かせるポジションは多いと思います。活躍の場は広がっているので、他社で磨いてきたものを活かして、当社で得意分野を伸ばしてほしいですね。
キャリア採用の方に望みたいのは、「スズキに同化しないでほしい」ということ。これまでの勤務先のいい点と、入社して気づいたスズキのいい点をうまく融合して、これまでにない視点をもとに新しい風を吹き込んでほしいですね。当社は多様性を大事にしていて、社歴や立場、役職などに関係なく意見を言い合える風土があるので、自由に発信して周囲に刺激を与えてほしいと願っています。
自動車業界は、技術革新と急速な社会変化を受け「100年に一度の大変革期」にあり、モビリティサービスへの転換も迫られていますが、その分チャンスも大きいと捉えています。そのためには、多様な人財が切磋琢磨し合い、個の能力を高めることが必要。一人ひとりが「お客様にとって、これからのモビリティはどうあるべきか」を考え抜くことが、今までにない新たな商品・サービスにつながると期待しています。
藤井 社長のお話を伺っていると、イギリスの経済学者・シューマッハーの言葉「スモールイズビューティフル」を思い出します。資本力を活かして大量生産する装置産業としてのダイナミックな顔を持つ一方で、インドなど現地とともに小さな意思決定を繰り返したり、「小・少・軽・短・美」をもとに細やかに無駄を削り磨き上げたりすることにも注力されていて、まさに“両利き”の経営を成功させているという印象を持ちました。
従業員一人ひとりが多様性を発揮して個の力を高めつつ、さまざまな業界で知見を持つ人がジョインすれば、さらなる価値提供が期待できると感じました。本日はさまざまなお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
東京理科大学大学院理工学研究科修士課程修了後、1983年日本電装株式会社(現:デンソー)入社。1994年1月にスズキ株式会社に入社し、生産、商品企画、海外駐在など幅広い業務を経験。商品企画統括部部長、専務役員、経営企画室室長などを経て、2011年に副社長。2015年6月に社長に就任。
1988 年リクルート入社以来、人材事業に従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所 Works編集部、リクルート経営コンピタンス研究所などを歴任。デジタルハリウッド大学特任教授、千葉大学客員教員。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
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「IT企業からDX企業への転換」を打ち出し、企業変革に注力している富士通。いち早くジョブ型を取り入れ、抜本的な人事制度変革にも取り組んでいます。
富士通が目指す人事制度改革とは?そしてこれからの富士通が目指す人事制度の在り方や今後の戦略などについて、同社のSVP Employee Success本部長の阿萬野晋氏に伺いました。

(お名前)
富士通株式会社 SVP Employee Success本部長
阿萬野 晋(あまの・すすむ)氏(写真左)
株式会社リクルート HR 統括編集長。『リクナビNEXT』編集長 藤井 薫(ふじい・かおる)(写真右)
藤井薫編集長(以下、藤井) 阿萬野さんはこれまで一貫して人事畑を歩んでこられたと伺っています。簡単にこれまでのご経歴を教えていただけますか?
阿萬野 晋氏(以下、阿萬野) 「金額・規模・社会インパクト的に大きな仕事がしたい」という思いでIT産業の営業職を志望し、当時はまだ「コンピューターメーカー」だった富士通に入社しました。コンピューターは高額であり、進化の途中にありました。コンピューターの営業に携わることで世の中を良くできるのではないかと思ったのです。
しかし、入社後の配属は人事、しかもせっかく上京してきたのに大阪に戻れという。志望とは異なる配属に、もう辞めようかと思ったほどショックを受けました。でも、まずは与えられた仕事をやってみようと気持ちを切り替え、全力で臨んでみたところ、思いのほか面白く、やりがいを感じることができました。
本社ではなく、大阪という地域拠点にいたことも大きかったと思います。入社2年目ごろから、人の配置や採用育成などといった責任ある仕事をどんどん任せてもらいました。そのあたりから自身のアスピレーション(仕事に対する強い熱意)が営業から人事へと変わったと感じています。
人事は、直接的に利益を生み出す部署ではないので、人事の仕事に打ち込むにつれ自然と「売り上げを上げ、稼いでくれる人たちのために何ができるだろうか?」という発想になりました。現場の最前線で働く営業やSE(システムエンジニア)の皆さんを、人事としてどう支えればいいのか、考え続ける日々でした。
その後、東京に移り、ソフト・サービス事業の担当人事や本社機構で人事制度を担当しましたが、40歳の時に思いもよらず海外赴任のチャンスがあり、シンガポールに3年半駐在。アジアの国を束ねるリージョンのHRディレクターとして、現地法人への駐在だけでなく、プロパー社員の人材マネジメントにも携わり、グローバルな視点など大きな学びを得ました。そして帰国後は外国人上司のもと、グローバル人事や事業の構造改革支援、人事制度変革などを担当し、今に至ります。
藤井 日本のIT業界の事業変革と、それに伴う人事変革をまさに体感されてきたのですね。そんな阿萬野さんに、富士通のパーパスである「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」についてぜひ教えていただきたいと思います。
阿萬野 2019年に時田(隆仁氏)が社長に就任した際に、「IT企業からDX企業への変革」を宣言し、同時に富士通の存在を再定義するために新たなパーパスを定めました。そして2023年には、マテリアリティ(富士通として必要不可欠な貢献分野)の設定を行い、パーパスやビジョンを実現するために「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)の向上」の3つを定め、それらを支える土台として、テクノロジー、経営基盤、人材を定義しました。

このマテリアリティには、「人」という言葉が数多く出てきます。当社は以前から「お客さまへの価値源泉は人である」との考え方を持っていますが、最近その考えが顕著になっています。
社員一人ひとりがエンゲージメント高く、能力を最大限発揮して活躍し続けることが、本人と会社の成長ならびにパーパスの実現につながります。もともと富士通は多様な人材が働いている会社ですが、「社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業へ」をHRビジョンとして掲げ、それを体現する仕組みの一つとして、ビジネスや組織として最も大きなポーションを占める日本においてジョブ型人材マネジメントを進めています。

藤井 富士通のパーパスやHRビジョンは、阿萬野さんが率いる部署「Employee Success本部」の名称にも表れていますね。
阿萬野 Employee Success本部となる以前は、人事本部という名称でした。人事管理をしよう、人を育成しよう、スキルを開発しようなど、経営視点による「一つの機能」として名付けられていたと思います。
現在、富士通が人材配置における考え方は、パーパスや組織としてのビジョン、事業戦略などに基づいて組織を適切に設計し、ポジションごとの役割を明確にした上で、最適な人材を配置するという、適材適所ならぬ「適所適材」です。そして社員側は一人ひとりが自分ならではのキャリアオーナーシップを持って仕事に臨む。この両輪が回ってこそ、ビジネスでのパフォーマンスの最大化や、個人と組織の成長が実現できると考えています。
その中での我々人事部門の役割は、顧客価値の源泉である「人」にいかに成長してもらうか、いかにチャレンジングに仕事をしてもらうか、そして会社としてはいかにオポチュニティ(機会)を用意するか。社員全員にオーナーシップを持ってもらい、成功体験を繰り返してもらう、そのためにも、人事管理ではなく人の成長を支援するという姿勢を示す意味で、Employee Success本部と名乗っています。
この姿勢は、さまざまな取り組みにも表れています。

例えば「ポスティング制度」(会社が社内のポジションを公表して社員から応募を募る人事制度)。これまでは、上位ポジションへの異動は上司が部下を引っ張り上げるという意味合いが強くありました。しかし、社会課題を解決するための仕事には決して軽いものや受け身で良いものはなく、オーナーシップと責任感を持って臨むことが重要です。そこで、上から命令されてポストに就くのではなく、「このポストに就いてジョブに臨むことで自分は成長したい、組織に貢献する」という意志を持って自らコミットしに行くという形にしたいと考えました。
ポスティング制度では、グループ内の空きポジションが常に1,000ポジションほど公開されており、入社2年目以降であれば誰でも何度でも手を挙げてチャレンジできます。海外ポジションももちろんあり、チャンスはグローバルに広がっています。
そして、マネージャーへの昇格も、ポスティングで決まります。メンバーを率いてビジネスをけん引する立場こそ、自身のアスピレーションがないと務まりません。ビジネスの実行責任者である本部長も同様にポスティング制度を取り入れており、本部長になりたければ自ら手を挙げるケースが多いです。志があり、プロアクティブな集団にしたいとの思いが、このような制度につながった形です。
藤井 そして阿萬野さんご自身も、Employee Success本部長に手を挙げて就任されたとのこと。ご自身がまさにさまざまな制度を活用し、キャリアオーナーシップを体現されていると感じます。
阿萬野 ポスティング制度もそうですが、キャリアオーナーシップ実現に向けて、あらゆる制度をもって一昔前の会社と社員の関係について考え方を変えようとしています。上意下達のような縦の関係ではなく、「自律と信頼」でつながる横の関係を築けるようにさまざまなことに段階的に取り組んでいます。
キャリアオーナーシップを考える前に、まずは一人ひとりのパーパスを彫りだし、言葉にする対話のプログラム「Purpose Carving」を全社員が行い、そのパーパスに向かって自分で学びをディベロップするためのプラットフォームづくりや、そして自らやりたい仕事にチャレンジするため「ポスティング制度」や、期間限定の異動制度「Jobチャレ!!」などを整備しています。
これらの制度はどれも特徴的ではありますが、一つひとつ独立したものではなく、全体の流れに則ったもので、それぞれの施策がつながっています。
人事制度や仕組みを整備するのが人事の仕事ですが、国内外の12万4千人の社員に腹落ちしてもらい、実践行動に移してもらうための支援を行うことも人事の重要な役割です。当社のすべての人事制度や仕組みの変革は、一人ひとりの行動の変容を促すためのもの。ここに注力しないと意味がありません。
いくら良い制度を作っても、そう簡単には浸透なんてしません。何度も繰り返し伝え続け、一人ひとりにすり込んでいくことが重要です。この「すり込み」を行うのが、私たち人事、そして個人のキャリアオーナーシップを支えるマネジメント層です。
いくら本人にやる気があっても、チャレンジするための環境を整えたり、対話を通じて適切に目標設定や評価を行ったり、フィードバックを行ったりするマネジメント層がいないと浸透は不可能です。マネジメント層のアップスキリングに注力し、「社員のチャレンジを支えるのは人事だけでなく、皆さんです」と強調し続けていきます。
藤井 私たちが行った「キャリア自律」の調査でも、「上司が社外の視点でのアドバイスをしてくれた」「上司から、新しい業務、機会で得られる経験やスキルの説明がなされた」など、「上司の対話力」が個人の「キャリア自律意識」を高めることが明らかになっています。
上司や企業と個人が、個人のキャリア形成に共に向き合う在り方を、私たちは「キャリア共律」と名付けて調査発信していますが、そうした「キャリア共律」的な支援や職場での対話の質は、個人の「キャリア自律意識」、ひいては「仕事・組織への愛着や結びつき」を高めることもわかっています。
阿萬野 「上司の対話力」という面では、まだまだ課題は残っていますが、まずはマネジメント層が、メンバー一人ひとりと対話し、本人のアスピレーションを引き出す地盤はできてきたと感じます。マネジメント層とメンバーが向き合い、自身が成長するために必要なものは何か、1on1で対話(ダイアログ)する。そして、そこから生まれた新たな思いや発想をチャレンジにつなげ、そしてともに振り返り改善を繰り返すことで、自身と富士通の成長、パーパス実現につなげていく…そういう仕組みを確立したいと考えています。
藤井 これらの仕組みに対応するため、評価制度も新たにつくられたと伺っています。
阿萬野 おっしゃるとおり、グローバル共通の新たな評価の仕組み「Connect」を新設しました。我々は社会課題の解決を生業にする会社ですから、目標管理を目的としたものではなく、社会に対して、組織やチームに対してどれぐらいインパクトを出せたのか、パーパス達成に向けてどれぐらい行動できたのか、どれだけ学び、成長できたのかを対話し、可視化するツールと捉えています。
マネージャーとメンバーが、マンスリーの1on1に加えて四半期に1回、振り返りとリフレクション(内省)を行い、それを活かして次はどう行動すればいいかという「Connect Conversation」を行っています。
この取り組みはまだ始まったばかりですが、「対話をして次に向かう」というスタイルは次世代型のマネジメントとして重要だと考えています。上意下達ではなく、かといって傾聴だけしていればいいわけではなく、対話によって人を成長させる。それを体現する仕組みと考えています。


藤井 ジョブ型人材マネジメント、キャリアオーナーシップによって、富士通ではシニア人材が活躍していることもぜひご紹介したいと考えています。
阿萬野 日本ではまだ伝統的に定年の仕組みは残ったままの会社も多く、当社でも定年制度があります。ただ、年齢に関係なく活躍し続けたいという心意気や、絶えずスキルを磨こうとする姿勢、行動し続ける力があれば、何歳になっても組織に貢献できると考えており、シニア層にも働き続けてもらいたいというのが富士通の基本姿勢です。
それに伴い、管理職の役職定年は数年前に廃止しました。したがって、定年後60歳を超えても現役としてラインマネジメントをしている人もいるし、スペシャリストとして活躍しているシニアもいます。
なお、定年制を廃止していないのは、定年前に、いったん立ち止まって自身のキャリアについて考える機会は大切だと考えているからです。本来は20代、30代、40代でも自分の将来のキャリアは考え、行動していくことを期待しており、それを支援する仕組みも整備しています。。
藤井 シニアにどのような領域で活躍してもらいたいと考えておられるのでしょう?
阿萬野 代表的なのはお客様システムの「モダナイゼーション」領域です。モダナイゼーションとは、古くなったハードウェアやソフトウェア(レガシーシステム)を現代的なシステムへと刷新することを指す言葉です。基幹系システムの老朽化やIT人材不足などの問題が深刻化しており、モダナイゼーションで企業がDX化を進め、市場の変化に対応できるよう変革していく必要があります。
富士通では、お客さまのITシステムの変革を担うモダナイゼーションを、重要な事業領域として捉えています。
ありがたいことに、これまで官公庁や金融機関などのパブリック分野や様々な業種のエンタープライズ分野のシステムを多数扱ってきました。これらお客さまに、モダナイゼーションを進めていただき、さらなる事業成長につなげていただきたい。そのために富士通が全面的にサポートすることで、DX化も進めていきたいと考えています。
ただ、レガシーなシステムをひも解き、最新のものに刷新するには、汎用機の仕組みや当時の言語を理解している人でないと難易度が高いものです。設計書もマニュアルも残っていないケースもある中で、この仕事を任せることができるのは、実は50歳以上の方や、すでに一度現役を引退した人も含めたシニア層です。
この方々に活躍してもらうべく、2023年12月に導入したのが「モダナイマイスター制度」です。モダナイゼーションを推進するにあたり、必要なスキルとマインドを備えた人に「モダナイマイスター」の称号を付与し、独自の給与体系を適用。60歳の定年後も、一般社員同等の給与水準を維持します。また、再雇用の上限年齢(65歳)を超えて働き続けることも可能としています。
成果レベルによっては、定年を過ぎても報酬がむしろ上がる人もいます。これがジョブ型の良さの一つ。年齢に関係なく活躍する機会は、モダナイゼーションに限らず、今後もさまざまな領域であると考えていますし、専門性があり意欲的なシニアにはチャレンジし続けてほしいと期待しています。
藤井 全国には素晴らしいスキルを持っているのに埋もれているシニアがたくさんいますが、そんなシニアが勇気づけられる取り組みだと感じます。
阿萬野 当社で働くシニアにも、ぜひそのように感じてほしいですね。一方で、事業の移り変わりとともに富士通グループの中だけに必ずしも本人が希望するオポチュニティ(機会)があるとも限りません。
ただ、学びのプラットフォームをはじめとして、新たなキャリアの選択肢を増やすためのサポートは十分に行っていますし、ほかにチャレンジしたいことができればポスティングなどを活用したり、グループの外も含めてどんどん可能性を広げたりすることができます。これこそが、本当の意味でのキャリアオーナーシップであり、自分自身で自分が活躍する場所を決めるということになると考えています。
藤井 しかも、独りぼっちで選択するのではなく、「対話をして次に向かう」次世代型のマネジメントに挑戦されている。さらに、年齢に関係なく、スキルを磨こうとする姿勢、行動し続ける力があれば、組織に貢献できるという人への眼差しがある。切磋琢磨しあう仲間と共に、未来の自分にConnectしていく。そんな機会と関係を育む富士通の中で、多様な人材が活躍する未来が楽しみになりました。本日はいろいろな話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
1992年富士通入社。事業担当人事を経て、2004年より幹部社員・一般社員制度企画を主導。09年から約4年間、シンガポールに駐在し、帰任後はグローバル人事などを統括。20年から新たな働き方「Work Life Shift」を含む労務政策全体を統括し、21年4月より現職にて、ジョブ型人材マネジメントをベースとした採用から育成、キャリアオーナーシップ促進やポスティングなどの成長支援、制度企画、エンゲージメント、ウェルビーイング推進を主管。
1988年にリクルート入社後、人材事業の企画とメディアプロデュースに従事し、TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長などを歴任する。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わり、14年からリクルートワークス研究所Works兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長。2019年よりHR統括編集長就任。コーポレートコミュニケーション、コンテンツマーケティング、政策企画室調査室を兼務。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
セラミック技術をベースに、電力や自動車、電子機器などの製品を手掛けるグローバルメーカー、日本ガイシ。現在、海外拠点を含めた「NGKグループ」として、カーボンニュートラルとデジタル社会を見据え、大規模な事業変革、人事変革に取り組んでいます。
これからの日本ガイシ、およびNGKグループが目指す人事制度の在り方や今後の戦略などについて、執行役員人材統括部長である野崎正人氏に伺いました。

(お名前)
日本ガイシ株式会社 執行役員 人材統括部長 野崎正人氏(写真左)
株式会社リクルート HR 統括編集長、『リクナビNEXT』編集長 藤井 薫(ふじい・かおる)(写真右)
藤井薫編集長(以下、藤井) 野崎さんは、財務経理畑を中心に経験を積まれ、海外経験も豊富と伺っています。簡単にこれまでのご経歴を教えていただけますか?
野崎正人氏(以下、野崎) 1990年に新卒入社し、最初に配属されたのは経理部で、4年間経理業務を担当しました。その後、国内グループ会社の経理を2年間担当した後に、米国のNGKロックに経理兼アドミニストレーション担当として赴任しました。
初の海外であり勢い勇んで行ったのですが、最初は言葉がわからず苦労しましたね。ボルチモアの製造拠点に4年間務めた後に、バージニア州の拠点に移りましたが、そのあたりから何とか成果を上げられるようになりました。
2004年に帰国して電力事業本部の企画部に入り、事業企画や予算管理を担当。その頃、祖業であるがいし(碍子:電気を絶縁し、電線を支えるための器具)の国内での売れ行きが減少し、海外展開に注力するために中国の現地法人に経理とアドミニストレーション担当として赴任しました。
帰国後は電力事業本部のガイシ管理部長として、新たなビジネスプランの企画立案などに関わった後、2020年に人事担当となり、現在に至ります。
藤井 経理、アドミニストレーション、企画、人事…と、海外を含めいろいろな現場で経験を積まれてこられたのですね。
本日は、執行役員人材統括部長である野崎さんに、NGKグループビジョンに必要な「5つの変革」実現に向けた人材戦略などについて伺えればと思います。まずは、現在グループを挙げて取り組んでいる中長期ビジョン「NGKグループビジョン Road to 2050」について教えていただけますでしょうか?
野崎 ビジョン制定に先んじて、2019年、創業100周年を機に「社会に新しい価値を そして、幸せを」というNGKグループ理念を制定しました。
これまで当社は、独自の技術で社会に新しい価値を提供し、人々の暮らしの向上や産業の発展、地球環境の保全に貢献してきました。これからも、我々の取り組みが世界の一人ひとりの幸せにつながることを信じて活動を続けていこう…という姿勢を改めて言葉にしたものが、この理念です。
その2年後である2021年に策定したのが、中長期ビジョンである「Road to 2050」です。その中で、ありたい姿として「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」を、なすべきこととして「5つの変革により事業構成を転換する」を挙げています。
この中長期ビジョンのゴールは25年後の2050年ですが、NGKグループ全体の100年後、200年後までをイメージした上で、私たちが取り組むべき社会課題をカーボンニュートラルとデジタル社会と設定しました。2050年には、カーボンニュートラルとデジタル社会関連の事業が、売上高の80%を占める状態にすべく、事業転換を進める計画です。

これらの社会課題解決のために必要な変革が、「ESG経営」「収益力向上」「研究開発」「商品開花」「DX推進」の5つです。ESGを経営の中心に位置づけて「稼ぐ力」を高めて成長への循環を生み出し、研究開発と商品開花への取り組みを進めます。そして、全体変革の推力としてDX推進に注力する方針です。
藤井 社会課題に真摯に向き合うための、5つの変革なのですね。
野崎 日本ガイシが設立されたのは、国内で電力が普及し始めた1919年。送電時の重要なパーツである「がいし」の製品化に日本陶器(現・ノリタケ)が成功し、分離独立したのがスタートです。国家のため、そして人々の暮らしを支えるため、電力普及に伴う送電インフラ構築ニーズに応えたいとの思いで、がいし事業に取り組んできました。
その後、1976年には米フォード自動車への、セラミック技術を応用した自動車排ガス浄化用の触媒担体導入に成功。自動車の急速な普及による環境汚染を受け、排ガス規制が高まる中、当社の「自社の技術で社会課題を解決したい」との思いが実った格好です。これらに代表されるように、会社設立以来、社会の困りごとを当社の技術で解決することに注力してきました。
そして現在。これまでの成長領域が徐々に縮小していくことが予想される中、改めて「今後の社会の困りごと」は何かを考え抜き、カーボンニュートラルとデジタル社会に取り組むべきだと考えたのです。この2つのテーマにおいて、当社の技術で貢献できる領域は多く、第3の創業につながると捉えています。
具体的には、大気中に含まれるCO2を直接吸着・吸収し回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」向けの吸着材などが挙げられます。これは、自動車排ガス浄化用セラミックスで実績のあるハニカム構造体を応用したものであり、創業以来培ってきた技術を、新たな分野で活かすことができています。

藤井 既存技術の深化と探索を繰り返しながら、新たなビジネスへとトランスフォームさせる…事業領域はどんどん広がっており、御社で働く人々の「打席」もたくさん用意されていると感じました。それに伴い、人材育成方針も変革中にあるとのことですが、具体的な内容を教えていただけますか?
野崎 2019年の理念、2021年のビジョン制定を受け、2023年に人的資本経営方針を新たに打ち出しました。
事業変革を実行するのは「人」です。そこで、5つの変革を実現するための能力、マインドを持つ「人材像」を設定しました。具体的には、「高度な知識、技術、能力を身につけ、主体的に問題に取り組む人材」「チームワークを発揮し、粘り強く成果につなげる人材」「自律的に成長し、自身と会社を変革し続ける人材」の3つの人材像を掲げ、育成に取り組んでいます。
ここで挙げた能力、マインドは、当社の社員の多くがすでに持ち合わせているものではありますが、「自律」についてはこれからのテーマだと捉えています。皆で目線を合わせ、意識を高めるためにも「自律」という言葉を取り入れました。
藤井 「キャリア自律」はともすると、一人だけで選択や意思決定をしなければならない「キャリア孤立」になりがちです。私たちは、企業と個人が信頼関係を育み、個人のキャリア形成に共に向き合う「キャリア自律支援」の在り方を「キャリア共律」と名付けて発信していますが、調査では「キャリア共律」的な支援や職場での対話の質が、個人の「活躍実感」「キャリア自律意識」、ひいては「仕事・組織への愛着や結びつき」を高めることがわかっています。
御社が新たに、「自律的な成長」への変革を実現できる人材像を取り入れたことで、社員の自律をサポートする企業という姿勢が皆に伝わり、これまで以上に「キャリア共律」が成されるだろうと感じました。
野崎 おっしゃる通りですね。そして、人材像を明確化するだけでなく、これらの人材が自身の持てる力を十分に発揮できるように、職場環境の整備にも取り組んでいます。具体的には、「多様性を尊重し、さまざまな人が活躍できる職場」「豊かで活気あふれる職場」、そして「挑戦を後押しするオープンな職場」づくりに注力中です。
これらを敢えて明文化したのは、今の自社に不足している環境だと捉えているからです。
当社はこれまで「uniformity(ユニフォーミティー)」(画一性、同一性)を大切にしてきました。製品のバラツキを抑え、顧客に満足してもらえる高品質の製品を提供するべくユニフォーミティーを追求し続けるという、当社の品質管理の根幹をなす考え方です。これが、グローバルでの世界同一品質の実現へと受け継がれ、現在の我々の事業成長を支えてくれていると理解しています。
ただ、これからはユニフォーミティーだけを追求していては、新しいものが生み出せません。その思いが「多様性の尊重」という言葉につながりました。
これまで大事にしてきた考え方を切り替えるのではなく、新しいことを加えることになるため、当社にとってはチャレンジングではありますが、異なる文化で経験を積み、異なる考え方、異なるバッググラウンドを持つ人々が活躍できる環境をつくることが、5つの変革実現につながると考えています。
藤井 多様な人材を新たに採用するのはもちろんですが、すでに御社で働いている方々も「多様性」を内包しているケースが多いのではないでしょうか。環境が整備されることによって、一人ひとりが自身の多様性を発露しやすくなるかもしれませんね。
野崎 そうですね。多様性の発露を促すべく、環境整備と共に既存社員へも積極的にメッセージを出していきたいと考えています。そして、たくさんのトライアルをしないと、新しいものは生み出せません。社長の小林(茂氏)も常々、失敗を恐れるなと発信しています。「挑戦を後押しするオープンな職場」を実現することで、良いトライアルを増やすことができると考えています。
そして、これらを支えるのが、「豊かで活気あふれる職場」です。多様な人材が活躍するには、職場が豊かで活気あるものでなければなりません。当社のWell-being(ウェルビーイング)に関する考え方でもありますが、やりがいのある仕事と自身の成長、尊敬できる仲間、こころと身体の健康、働きに見合う報酬、家族や友人と過ごせる時間などの総和が、豊かさや活気につながると捉えています。

藤井 そんな中、人事制度の大幅な改革にも取り組んでいると伺っています。
野崎 大小さまざまな改革に継続的に取り組んでいますが、最も大きなものは、2025年4月に行った基幹職(管理職)の人事制度の改定です。
これまで1種類のみだった等級を複線化し、高度な専門知識やスキルの発揮に特化して業務を行うエキスパート等級や、組織マネジメントに特化したマネジメント等級を新設し、多様な人材が活躍できる体制を整えています。
そして、ジョブディスクリプションにより全ての職務を明確化し、担う職務に応じて等級を決定するとともに、年齢による処遇の低下や役職定年を廃止しました。
このほか、社内スカウト制度の新設、社内公募制度の全基幹職への拡大、評価制度において新たに「行動に対する評価」を導入するなど、年齢や在籍年数にとらわれず職務内容に応じた処遇を実現する内容となっています。
これに先んじて、全従業員に65歳定年制を導入し60歳以降も年収を維持、各人の努力や成果がより適正に反映される評価制度への改定など、一般従業員の人事制度も改定済みであり、有能な若手・中堅人材の創出へとつなげています。
藤井 基幹職向けの人事制度改定は、かなり踏み込んだ内容ですね。
野崎 「なぜこの改革が必要なのか」を発信し続けるのは大変でした。なぜならば、今この瞬間だけを見れば、当社の業績は順調であり、これまで培ってきた技術や守ってきた経営方針が、現在も大きな成果をもたらしてくれているからです。そのため、大きな改革は必要ないのでは?との考えを持つ人も少なくなかったのです。
しかし、事業環境は目まぐるしく変化しており、2050年どころか10年先20年先を考えても、当社が成長し続けるにはこの改革が必要不可欠です。その思いや考えを発信し続けることで、皆に目線を高く持ってもらえるよう意識しています。
藤井 どの取り組みも抜本的でありチャレンジングだと感じますが、特に60歳定年を見直して65歳定年制にする、60歳以降も年収を維持するといったシニア活躍への取り組みには、非常に感銘を受けました。労働力不足の中、シニア活躍は大きな社会課題ですが、年齢や属性に限らず多様な才能を開いていくチャンスがある点が魅力的だと感じました。
野崎 定年延長には早くから取り組んでいましたが、実は「58歳での役職定年」は変えていませんでした。60歳定年の時は、58歳で役職定年し、残り2年で引き継ぎなどを行ってもらうイメージでした。しかし定年が延びたことで、「7年間、何のポストもない」状態になり、しかも段階的に年収が減ってしまうことで、どうしてもモチベーションダウンしてしまう人が多かったのです。考えてみれば、誰しも頑張る意欲を失いかねないおかしな制度なので撤廃しました。これは、シニア人材に活躍してほしいという思いの一つの表れでもあります。
実際、役職定年撤廃を機に、イキイキ楽しそうに働いているシニア人材が増えたと感じますね。60歳でグループマネージャーに就任した例も複数ありますし、60歳を過ぎて一度は離れた部長職に返り咲いた人もいます。
なお、シニアが活躍できる環境整備に伴い、ミドルシニア人材の中途採用も積極的に行っています。新規事業を展開する上で、当社では手薄の経験・スキルを持った50代のエンジニアや、最先端部材に関する開発経験のある50代スペシャリストなど、数多くのベテラン層を採用しています。

藤井 さまざまな変革とチャレンジを行っている御社に、興味を持っているビジネスパーソンも少なくないと思います。ぜひ最後にメッセージをお願いします。
野崎 私が初めて人事の仕事に就いたのは2020年、54歳のときです。経験のない分野であり、最初の数カ月間は半泣きでしたね。これまでの人事変革の資料を読み込み、自分でも人事の仕事を独学して、それをもとに自分なりに考えて…を繰り返しました。
その結果学んだのは、「いくつになっても何とかなる!」ということ。やる気があれば、50を過ぎてもまだまだチャレンジできる。なので、若い人はもちろん、ミドルシニア層にもぜひチャレンジしに来てほしいですね。
転職うんぬん抜きにしても、私と同世代のミドルシニア層には「まだまだこれから」と伝えたいですね。人生100年時代においては、あと40年ぐらい活きる可能性もある。まだまだ先は長いので、自分のスキルを磨き続けてどんどん現場で活かしてほしいし、持っていないスキルがあれば新たに身につける時間も十分にあります。
人生における幸せはいろいろありますが、個人的には「成長すること」と「目標を達成すること」はかなり大きな幸せではないかと思っています。ミドルシニア人材もぜひ学び続けてほしいし、アップグレードしてほしい。そして、その場所として当社を選んでいただけるのであれば、とても嬉しいですね。
藤井 これまでのお話を伺っていると、御社にはシニア人材はもちろん年齢に関係なく多様なチャンスがあり、挑戦もできる、そして評価もフェアネスであるとわかりました。そして、5つの変革に伴い活躍のフィールドも広がっている点も、改めて魅力的だと感じました。本日はさまざまな話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
1990年4月日本ガイシ入社。経理部管理課で約4年間にわたり全社の予算取りまとめや月次の業績報告などを担当。その後、NGKロックなど海外を含めたグループ会社への出向を経験。2011年、電力事業本部ガイシ事業部管理部長に就任。2017年電力事業本部企画部長、2020年人材統括部企画部長、2022年人材統括部ダイバーシティ推進部長兼企画部長、2023年より現職。
1988 年リクルート入社以来、人材事業に従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所 Works編集部、リクルート経営コンピタンス研究所などを歴任。デジタルハリウッド大学特任教授、千葉大学客員教員。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
ビジネススキルとは、ビジネスシーンに必要な技能のこと。ビジネススキルを、種類ごとに分類し、スキル名・概要・習得するメリット・活用イメージを一覧で紹介します。さらに、今身につけたいビジネススキルの人気ランキング、年齢やキャリアごとに必要なスキル例も解説します。自分が習得すべきスキルの選び方や身につけ方などを、人材育成と組織開発のプロ、千秋毅将さんがアドバイスします。

ビジネススキルとは、日常の業務遂行から経営の意思決定まで、幅広いビジネスシーンに必要な技能を示す言葉です。
スキルという言葉が使用されるときには、「特定の物事を成し遂げるために習得する高度な技能」との意味を持つことがあります。つまりビジネススキルは、先天的な能力ではないので、学習や訓練によって取得することが可能です。
ビジネススキルには多くの種類があり、その分類方法もさまざまです。
ここでは以下の3つの分類法ごとにビジネススキルの種類を紹介します。
「カッツ理論」は一般的にもよく知られているビジネススキルの分類法です。アメリカの経済学者であるロバート・カッツ氏が提唱し、ビジネススキルを以下の3つに分類しています。
テクニカルスキルは業務を遂行するための技能全般を指し、特定の作業・処理を実行したり、顧客に対応したりする際に役立つものです。テクニカルスキルのなかには、各業界・職種に限って求められる専門型の技能や高度な特化型技術をはじめ、幅広いビジネスシーンで活用できる汎用型の技能もあります。
コンセプチュアルスキルは、さまざまな問題や事象を本質的に捉えるために必要とされる「概念化能力」とも呼ばれる技能です。コンセプチュアルスキルを身につけることで、現状を深く分析したり、知識や情報をもとに仮説を立てたりなど、ビジネスで求められる課題解決ができるようになります。
ヒューマンスキルは、さまざまな立場の人との良好な人間関係を構築するのに役立つ、対人に関する技能です。例えば同僚・上司・部下など社内の仲間との連携を強める、顧客からの信頼を得るなどに大きく影響します。
厚生労働省では、各業種・職種における「職業能力評価基準」を設定しており、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術」と「ポータブルスキル(職務遂行能力)」を分けて整理しています。そして、「ポータブルスキル」を高めることが、キャリアチェンジやキャリア形成において大切だと紹介しています。
なお、ポータブルスキルとは、職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルのことです。カッツ理論のコンセプチュアルスキルと、ヒューマンスキルをまとめたような内容で、「仕事のし方」と「人との関わり方」によって構成されるスキルです。
出典:厚生労働省のホーページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23112.html)
人材育成と組織開発を提供するリクルートマネジメントソリューションズでは、カッツ理論のヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルを、よりイメージしやすいように細分化し、全部で5つの種類に分類しています。
カッツ理論と同じような考え方で、業務を遂行するために必要なスキルのことです。
考えるスキルとは、課題や問題などに対してどう取り組んでどう解決するか戦略を立てたり思考したりするスキルのことです。
実行するスキルとは、課題や問題などに対して、実際に対応・行動する時に必要になるスキルのことです。
人を動かすスキルとは、周りの人と効果的に意思疎通するスキルのことです。対人スキルとも言えるでしょう。
自己をコントロールするスキルとは、セルフマネジメントのスキルを指します。ここ数年注目が集まっているスキルの種類の一つでしょう。
ここでは、リクルートマネジメントソリューションズによる分類法に従って、ビジネススキルを一覧で紹介します。
※各スキル名をクリックすると、記事内で詳しく紹介している場所に移動できます。
課題や問題などに対してどう取り組んでどう解決するか戦略を立てたり思考したりする「考えるスキル」には以下のようなものがあります。
ロジカルシンキングとは、物事を結論と根拠に分けて整理と理解をするスキルです。「論理的思考法」と呼ばれることもあります。
ロジカルシンキングができると、聞き手にわかりやすく物事を伝えられたり、問題解決に役立ったりするため、様々なビジネススキルの向上を支えるスキルとしても注目されています。
なお、ロジカルシンキングを応用したスキルに、伝えるべき内容を整理し、その内容を資料に落とし込んでわかりやすく伝える「ロジカルプレゼンテーション」と、論理構成を意識した文章を作成する「ロジカルライティング」があります。
<習得するメリット・活用イメージ>
クリティカルシンキングは、物事に対して疑いの目を持って考えることで、本質を見極める思考スキルです。現状の問題は本当に問題なのか、本質的な課題は何か、それに対する仮説・回答は何かといったことなどを網羅的に、かつ深く考え抜きます。批判的思考とも呼ばれ、分析、推論、伝達といったクリティカルシンキング・スキルは円滑なビジネスコミュニケーションにおいても重要とされています。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000040/)
ラテラルシンキングとは、既成の概念にとらわれず、さまざまな視点からラテラル(水平)に考える思考スキルのことです。合理的かつ論理的に1つの結論を導き出すロジカルシンキングとは異なり、答えが1つとは限らないところが特徴と言えるでしょう。新しいアイデアを生み出すことに長けた思考法で、水平思考とも呼ばれます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000192/)
戦略を分析したり策定したりする戦略思考は「自社はどのような外部環境変化の影響を受けるのか」、「外部環境変化や自社の内部資源を踏まえて、どのように競争環境を勝ち抜くのか」、「どのような事業ポートフォリオを目指すのか」を決めたり、分析したりするスキルのことです。戦略思考を活用することで、自社や事業が生き残るために、限られた経営資源を生かし、何をやり、何をやらないのかを考えることができるようになるでしょう
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T002/)
マーケティング思考とは、顧客が求める商品・サービスをつくり、届け、使い続けてもらう活動を行うために必要なスキルです。なお、マーケティング思考は、マーケティング部門や開発部門のみに求められるものではなく、営業部門や管理部門などあらゆる部門で求められる思考です。
マーケティング思考をつけることで、顧客と顧客価値を明確にしたり、競争相手との差別化ポイントを見つけたりできるようになるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000140/)
(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T005/)
問題解決思考(課題解決思考)とは、問題を特定し、原因を究明し、対策を立案するスキルのことで、新入社員から経営者までありとあらゆるビジネスパーソンが担う業務に必要となる思考スキルです。
問題解決は、ビジネスパーソンが仕事を円滑に進めていく上で必要な「仕事の手順」ともいえるため、問題解決思考を磨くことで、仕事の質やスピードがあがり、あなた自身の業務効率の向上が期待できるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T119/)
情報編集力とは、情報を自在に扱い、発想力を高めるスキルのことです。 必要な情報を集めて、関係づけ、構造化して企画や構成に生かし、表現を最適化して演出する力とも言えるでしょう。情報編集力を鍛えることで、既存の枠に捉われない企画やアイデアを生み出せるようになります。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T137/)
ビジネス数字力(ビジネス数学力)は、数値のデータを見て必要な情報を大まかに読み取り、わかりやすく表現する力のことです。論理的思考力のベースにもなり、現状の状況をつかむ把握力、データから情報を導く分析力、未来をシュミレーションする予測力、最適な意思決定を行う選択力、相手に的確に伝える表現力で構成されます。
ビジネス数字力を強化することで、数字の使い方や統計の見方が身につき、問題解決を進めやすくなるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T129/)
ビジネス文章作成スキルとは、上司への報告書やメールなどのビジネス文章を書くときに、読み手に負担をかけずに、必要な情報を分かりやすく正確に伝える力のことです。日本語の文法、熟語、慣用句、ビジネス特有の言い回し、敬語の使い方などを正しく活用する力とも言えるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T079/)
課題や問題などに対して、実際に対応・行動する時に必要になる「実行するスキル」には以下のようなものがあります。
やり抜く力とは、自分の目標に向かって粘り強く取り組む力のことです。非認知能力の「グリット」としても注目されています。なお、やり抜く力は、なんでも一人で解決しようとする力のことではありません。自分ひとりで仕事をすることに固執せず、周囲と協力しながら目標達成を目指すことも重要です。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/interview/0000000566/)
段取り力とは、ゴールを明確にして計画を立て、実行し、振り返りをする仕事の進め方に基づいて、仕事を確実に正確に進めるスキルのことです。段取り力を向上させることによって、期限や納期を守って仕事を進めることができるようになります。
<習得するメリット・活用イメージ>
プロジェクトマネジメントとは、定められた期間内に目的達成を目指す取り組み(プロジェクト)を成功に導くための管理手法のことです。柔らかく言うと、複数の人と一緒に進める仕事の段取り力とも言えるでしょう。マネジメントする対象としては、プロジェクトに参加する人員やスケジュール、コスト、品質などが挙げられます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000296/)
タイムマネジメントとは時間管理の意味ですが、ビジネスにおいては平等に与えられた「時間」のなかで「出来事(業務や作業)」をうまく管理して、生産性を上げるといった意味もあります。
仕事の絶対数を減らす、作業するタイミングや方法をまとめる、仕事の順番を変える、マニュアライズやビジュアライズなどによって仕事を仕組み化して簡単にする力とも言えるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000205/)
周りの人と効果的に意思疎通するために必要な「人を動かすスキル」には以下のようなものがあります。
ビジネスマナーとは、ビジネスシーンで求められる作法や立ち居振る舞いのことです。マナーを守ることで、相手に好印象を与えることができます。そのため、仕事を進める上でのやり取りがスムーズになるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000320/)
ビジネスコミュニケーションスキルとは、相手の立場に立って傾聴し、自分の役割を意識して相手と理解し合うための質問を行い、目的を意識して伝えることで相手の納得と信頼を得る対話スキルのことです。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T050/)
アサーティブ・コミュニケーションスキルとは、相手を尊重しながら自分の意見や要望を気持ちも含めて伝えるスキルのことです。このスキルを活用することで心理的に伝えづらいことについても、相手を不愉快にさせず、自分もストレスを感じずに意見交換することができます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000202/)
コーチングとは、相手の意欲や能力を最大限に引き出すことで、目標達成や成長を促すコミュニケーション手法です。相手の可能性を信じるなどのスタンスに加えて、相手に自分で考えることを促し、答えを「引き出す」ことで人材育成をする力のことです。相手を深く理解するための傾聴スキル、相手の思考や認識を深めるための質問スキル、相手の自己信頼を高めるための認知・承認といったスキルが必要になります。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000036/)
(https://school.recruit-ms.co.jp/course/detail/s00118/)
ファシリテーションスキルとは、立場の異なるメンバー全員の相互理解を助け、各自が建設的に議論できるようサポートしていくスキルのこと。会議やミーティングで出すべき「結論」にたどり着けるようガイドし、議論の生産性をアップさせたり、組織内の日常のコミュニケーションで発言しやすい雰囲気を作ったりすることに役立ちます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000190/)
交渉力とは、話し合いによって合意形成をする力のこと。ビジネスにおいては、駆け引きにより相手をうまく丸め込むのではなく、お互いのメリットや利益を実現してWIN-WINの関係を構築することが求められます。相手と自分がともに満足できる着地点を見出す力とも言えるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T051/)
異文化・多様性受容力とは、グローバルビジネスで起こりうるコミュニケーション摩擦を解消するために役立つ力で、価値観やものの見方の違いを分析し、理解を深め、そのギャップを埋めるのに役立ちます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/T093/)
「自己をコントロールするスキル」には以下のようなものがあります。
セルフリーダーシップとは、自分自身を率いるスキルのこと。これにより、自分自身で目標を定めて物事の優先順位を考えることができるようになります。自らのキャリアアップについての目標と目標到達までの道筋を考え、日々の業務や勉強を通じて研鑽を積むことにもつながります。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000195)
メンタルヘルスケア(セルフケア)スキルとは、心身を健やかに維持できるように工夫する力のことです。例えば、自分自身でストレスを軽減できるようにしたり、十分な休息を取って体調をコントロールしたりするなどの自己管理する力とも言えるでしょう。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000198)
アンガーマネジメントスキルとは、怒りや苛立ちの感情をコントールし、心理的な衝動を抑えるスキルのこと。アンガーマネジメントによって、感情を適切にコントロールし、怒りを後悔しないこと、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようにすることができると言われています。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000183/)
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000198/)
マインドフルネスとは、日々の心配事や不安な気持ち、仕事や他人からの評価など、つい頭に浮かんでしまうことを鎮め、「今」だけに集中できるような精神状態を意識的につくっていくスキルのこと。今の瞬間だけに目を向けることで、不安やストレスから解放され内省して自らの感情をコントロールできる効果が見込めると言われています。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000191/)
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000198/)
レジリエンスとは、逆境やプレッシャーなどに柔軟に対応し、大きなストレスがかかったとしてもすぐに立ち直るスキルのこと。レジリエンスを高めることで、苦手な仕事や、新しい課題、多様な人との協働など、初めはストレスに感じやすいことも、ビジネスパーソンとしての成長につなげていくことができます。
<習得するメリット・活用イメージ>
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000203/)
(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000198/)
業務を遂行するために必要なテクニカルスキルは、業界・職種・所属する企業によっても大きく異なります。そのため、一つ一つのスキルの詳細な紹介は割愛しますが、以下のようなものが例として挙げられるでしょう。
幅広いビジネスシーンで活用できる汎用型スキルの例
各業界・職種に限って求められる専門型スキルや高度な特化型スキルの例
ビジネススキルの身につけ方、磨き方として、以下の4つの習得方法をメリット・デメリットで解説します。
先輩や上司など職場で活躍している人の仕事の進め方を参考にすると、その業界や職種で必要とされるビジネススキルを、職場で好まれるやり方に合わせて身につけることができます。「資料作成はAさんから、商談の進め方はBさんから教えてもらう」などと、スキルごとに優れている人を探して相談していくのがおすすめです。
ただし、教えてくれた人にしかできないような特殊なやり方になっているケースもあります。教えてもらった内容が自分に合っているかどうか見極めながら身につけていきましょう。
研修やセミナーは、専門家から要点を教えてもらいながら学んだことをアウトプットして確認し、フィードバックを受けてまた学びを深めることで、PDCAを回す経験がしやすいのが特徴です。無料で参加できるものや、社外のビジネスパーソンと接する機会にもなる対面講座、場所を問わずに参加できるオンライン研修、自由な時間に受講できるビデオセミナーなど、さまざまなプログラムがあるので、興味があるビジネススキルのテーマで調べてみると良いでしょう。
場合によっては高額な費用がかかるケースや、座学が中心でアウトプットしづらいケースもあるので、事前に何にどのくらいかかるのかを確認してから申し込みましょう。
例えば国家資格や民間検定などの取得を目指して、集中的に勉強をすることでスキルアップを図る方法もあります。特に業務を遂行するために必要なテクニカルスキルは、関連する技能検定も多いため、自分の業界や職種に活かせる資格がないか調べてみるのも良いでしょう。
資格を取得するとある一定以上のスキルの習熟度を証明できるため、将来的な転職活動の際に役立つケースもあります。
ただし、資格の種類によっては年に数回しか試験がないケースもあり、タイミングによっては取得までの時間がかかることを念頭においておきましょう。
特定分野に詳しい専門家によるビジネスキル習得のノウハウ本も多数出版されています。これらの書籍を読みながらスキル習得を目指すのも一つの方法でしょう。
本で勉強するメリットは、いつでも必要なときに読み直すことができ、自分の好きなタイミングで再学習しやすい点です。迷ったときや困ったときの助けとなります。
一方で、要点を自分でつかむ必要があるため、スキル習得まで時間がかかりやすいのがデメリットとなります。
また昨今ではビジネススキルの種類や習得方法を簡単に説明した無料動画も多く流布されています。無料動画は手軽に、気になったときにすぐ見ることができるというメリットがあります。
一方で何の監修も受けずに流布されているため、内容の真偽に注意する必要性は書籍や研修などに比べて高いということがデメリットとなります。
習得すると良いビジネススキルは「年齢やキャリア」「時代背景」「自分の価値観や環境」によっても変わります。
新社会人として入社してから、ベテラン層や管理職になるまでの各ステップで、特に重要なスキルを優先して身につけたい場合は、「年齢やキャリア」を意識してみると良いでしょう。
また、市場価値を高めたい人や、先の見えない不安定な時代に備えたい人は「時代背景」を意識して選ぶのがおすすめです。
個別にパーソナライズして今の自分に必要なスキルを知りたい人は「自分の価値観や環境」に意識を向けてみましょう。
<この記事の中で紹介しているスキルの選び方3選>
ここでは、年齢やキャリアに応じて身につけたいビジネススキルの一例を、「具体的なスキル名」と「スキルアップのために意識したい行動例」で紹介します。
なお、同じ年齢やキャリアでも、企業によって求められる役割には差が生じます。そのため、自社でのキャリアアップに必要なスキルを知りたい場合は、上司に確認することをおすすめします。
新入社員など20代前半は、自分ひとりで仕事を最初から最後まで進めることが難しく、上司や先輩に相談しながら進めるケースも多いでしょう。そういったときに、特に必要となり役立つスキルは以下の通りです。
<新入社員など20代前半に必要なビジネススキル>
| 考えるスキル | ロジカルシンキング「基礎」 ・事実と解釈を分けて整理する ・適切な報告、連絡、相談ができるようになる |
| 実行するスキル | 段取り力 ・期限や納期を守る |
| 人を動かすスキル | ビジネスマナー ・相手に不快感を与えないよう心掛けて敬意を払う |
| 自己をコントロールするスキル | セルフマネジメント「公私を区別する力」 ・言っていいこと、悪いことをきちんと理解する ・SNSに仕事の詳細を載せないなど守秘義務を守る |
ほかにも、新入社員としてスキルアップするために以下を意識して行動してみましょう。
20代後半になると、新人を卒業して若手社員としてひとり立ちすることになります。指示通りに動く仕事だけではなく、自分で考える仕事の割合も増えてくるでしょう。そういったときに、特に必要となり役立つスキルは以下の通りです。
<若手社員など20代後半に必要なビジネススキル>
| 考えるスキル | 問題解決思考力「基礎」 ・設定された課題に対して取り組む |
| 実行するスキル | (周囲の助けを借りながら)やり抜く力 ・一人でやることに固執しない |
| 人を動かすスキル | ロジカルコミュニケーション ・PREP法などを用いてわかりやすく伝える |
| 自己をコントロールするスキル | セルフマネジメント「振り返って次に生かすスキル」 ・自らフィードバックを求めて自分を改善し続ける |
ほかにも、若手社員としてスキルアップするために以下を意識して行動してみましょう。
30代になると、中堅社員として扱われるケースも多くなり、さまざまな関係者と協働しながら仕事を進める機会も増えるでしょう。現職での役割や期待が増える一方で、転職を考え始める人も多くなり、隣の芝生が青く見えだす時期でもあります。そういったときに、特に必要となり役立つスキルは以下の通りです。
<中堅社員など30代に必要なビジネススキル>
| 考えるスキル | 問題解決思考力「発展」 ・自ら問題を見つけ、周囲を巻き込んで解決する ・組織や顧客、製品、サービスの課題を発見する |
| 実行するスキル | プロジェクトマネジメントスキル ・上司や後輩、他部署などとの仕事を円滑に進める ・関係者を巻き込み計画を立て、遂行する |
| 人を動かすスキル | アサーティブコミュニケーション ・後輩への注意や上司への提言をできるようになる ・伝えづらいことでも率直に誠実に伝える |
| 自己をコントロールするスキル | セルフマネジメント「自己を客観的に見つめる力」 ・自分の強みや弱みを認識する ・仕事に関する満足や不満の要因を認識する ・現職のキャリアで得られることを冷静に判断する ・転職するとどうなるかを冷静に考える |
ほかにも、中堅社員としてスキルアップするために以下を意識して行動してみましょう。
40代になると、ベテラン社員として扱われたり、管理職になったりするケースも多いでしょう。何かを判断する機会、部下の指導をする機会、上層部と部下とつなぐ機会が増える時期でもあります。そういったときに、特に必要となり役立つスキルは以下の通りです。
<中堅社員など30代後半に必要なビジネススキル>
| 考えるスキル | 戦略立案スキル ・自分で戦略を立てる ・上層部が立てた戦略を理解して部下に伝える |
| 実行するスキル | 判断と意思決定スキル ・自分の中での軸を持って判断する ・判断基準を明確にして周囲に伝える |
| 人を動かすスキル | ファシリテーションスキル ・日常の中で部下が発言しやすい雰囲気をつくる ・組織としての心理的安全性をつくる |
| 自己をコントロールするスキル | セルフマネジメント「プレイヤー業務とマネジメント業務のバランスをとる」 ・部下の仕事に手を出しすぎない ・自分がやった方が早い仕事も我慢して部下に任せる ・管理職しかできない仕事に集中する ・部下に育つ機会を与える |
ほかにも、ベテラン社員や管理職としてスキルアップするために以下を意識して行動してみましょう。
最後に、年齢やキャリアを問わずに身につけておくと良いスキルを紹介します。
これらの力は仕事を進める上での基盤となるスキルとも言えるでしょう。
| 人を動かすスキル | ファシリテーションスキル 交渉力 |
| 自己をコントロールするスキル | メンタルヘルスケア |
必要とされるビジネススキルは、時代によっても変化するでしょう。ここでは、現代のビジネスパーソンが注目しているビジネススキルの例を紹介します。
法人向けの公開型社員研修・社員教育サービス「リクルートマネジメントスクール」の各研修への申込人数を比較したところ、3時間で受講できるビジネススキルコースの人気ランキングは、以下のようになりました。
上位にランクインしているコースの傾向から、「仕事を効率的に進めるスキル」や「思考力に関するスキル」の需要が高いことがわかります。
<ビジネススキルコースの人気ランキング>
| 1位 | Excel(エクセル)徹底活用術<1>基本編 |
| 2位 | Excel(エクセル)徹底活用術<2>応用編 |
| 3位 | 任せる技術 |
| 4位 | クリティカルシンキング入門 |
| 5位 | わかりやすく説明する技術 |
| 6位 | 使える!ロジカルシンキング |
| 7位 | アンガーマネジメント |
| 8位 | コーチング・コミュニケーションの基本 |
| 9位 | 戦略的思考を強化する |
| 10位 | ファシリテーションの基本 |
出典元:リクルートマネジメントソリューションズ 公開研修サービス リクルートマネジメントスクール
調査データ:ビジネススキル3時間コースの申込人数
集計期間:2024年4月1日~2025年3月10日
「今の自分」に必要なビジネススキルを見つけたいと考えている人は、自分の価値観や環境に注目してみましょう。具体的には、以下の3つのような方法で、価値観や環境に応じたスキルを見つけ出すことができるでしょう。
先輩や上司に、今の自分に必要なビジネススキルをフィードバックしてもらいましょう。
より効果的なアドバイスをもらうコツは、あなたのことをよく知り、組織の方向性も熟知している人を相談相手に選ぶことです。普段の仕事を進める様子と所属企業で期待されている役割をもとに、伸ばすポイント、克服すべきポイント、現職で活躍するために必要なビジネススキルなどを具体的に教えてくれるはずです。
相談するときに、将来やってみたい仕事や、なりたい姿などの目標を共有すると、キャリアアップにも近づけるでしょう。将来像が明確になっていない場合は、「この会社で活躍するためには、どんなスキルを身につければいいですか?」と相談するのがお勧めです。
転職エージェントなどのキャリアアドバイザーに、身につけると良いビジネススキルを相談する方法もあります。転職エージェントでは、転職活動に興味がある人に対して面談などを行い、キャリアのアドバイスをしてくれるケースもあります。
あなたのこれまでの経歴や仕事経験をもとに、同年代のほかの求職者や、同じような経歴を持つ人と比較しながら、身につけると良いビジネススキルを教えてくれるでしょう。
例えば、「管理職として転職するためには、どのようなビジネススキルが必要ですか?」などと、相談するのも良いでしょう。転職市場で求められるスキルと、自分が持っているスキルとのギャップを確認することができるかもしれません。
まずは自分ひとりで、比較的簡単な手法で必要なビジネススキルを知りたい、という場合は、自己分析診断ツールを使ってみると良いでしょう。自分の強みや、仕事選びで大切に価値観、性格などがわかるので、強みをさらに強化したり、苦手を克服したりするきっかけが見つかるかもしれません。
例えば、リクナビNEXTでは、以下の2つの無料自己分析診断ツールを提供しています。
「仕事選びの価値観」と「隠れた性格」がわかる「適職診断」は、リクルートが開発した、短時間でできる社会人向けの自己分析診断ツールです。
<適職診断の特徴>
自分の価値観に合いそうな転職先を探したい人にもお勧めの自己分析診断ツールです。
転職活動中の人や、今の職場に違和感があるけれど自分に合った仕事の探し方がわからずに困っている人は、ぜひ試してみてください。
自分の隠れた強みや才能に気がつける、社会人向けの自己分析診断ツール「グッドポイント診断」は、リクルートがこれまで培ってきたキャリア開発のノウハウを活かして開発しました。
<グッドポイント診断の特徴>
自分の良いところに目を向けるきっかけにもなるので、自己肯定感を上げたい人にもお勧めの自己分析診断ツールです。「自分には長所も強みがない」と捉えがちな人、自分に自信を持ちきれずにいる人は、ぜひ試してみてください。
最後に、ビジネススキルを高めることがなぜ重要なのかを、人生100年時代・VUCA時代と言われる現代の状況と、市場価値の観点からお伝えします。
厚生労働省が発表した「人生100年時代構想会議中間報告」によると、ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、国としても、労働者が何歳になっても必要な能力・スキルを身につけていくリカレント教育機会の拡充に取り組んでいます。
さらに、現代は、生成AIやDX活用などテクノロジーの進化や社会情勢の変化が激しく、ビジネスにおいても将来の予測が困難なVUCA時代と言われています。時代にとりのこされずに過ごしていくためにも、ビジネススキルを磨いておいて損はないはずです。
スキルを磨くことは、時代の変化に対応しやすくなったり、将来の選択肢を増やしたりすることにも繋がっていくでしょう。
出典:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207430.html)
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000210/)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ西日本エリアの通信ネットワークを支えているNTT西日本。社員の自律的なキャリア形成をめざし、業務を15分野に分けた専門分野別人事制度や、管理職を対象にしたジョブ型人事制度の導入など、さまざまな取り組みを行っています。
これからのNTT西日本がめざす人事の在り方や今後の戦略などについて、常務執行役員総務人事部長CHROの梶原全裕氏に伺いました。

(お名前)
西日本電信電話株式会社 常務執行役員 総務人事部長 CHRO
梶原全裕(かじわら・まさひろ)氏(写真右)
株式会社リクルート HR 統括編集長、『リクナビNEXT』編集長 藤井 薫(ふじい・かおる)(写真左)
藤井薫編集長(以下、藤井)
梶原さんは、1991年の入社以来、主に人事畑を歩んでこられたと伺っています。簡単にこれまでのご経歴を教えていただけますか?
梶原全裕氏(以下、梶原)
出身は福岡、大学は東京で、最初は北九州の支店に配属されました。当時はまだNTT再編成前で1社体制だったため、4年目に東京にあるNTT本社に異動して労務を担当。再編成後はNTT西日本の労務部門の主査などを担当しました。
その後、人事部門に移り、人事制度設計や配置など一通りの業務に携わり、課長、部長職を経験。そこからホールディングスで人事の統括などを経験し、今に至ります。途中、四国や九州で営業部長や支店長に就いていた時期もありますが人事・労務畑がメインになります。
藤井
入社以来30年超、主に人事の側面から日本経済の変動や災害からの復興などを支え、人事変革に向き合ってこられたのですね。
本日は、現在CHRO(最高人事責任者)を務める梶原さんに、「事業戦略と人材戦略」「戦略実現に向けた制度改革への取り組み」、そして「具体的な採用・登用戦略」などについて伺えればと思います。
まずは、NTT西日本の事業戦略について伺います。2021年に “「つなぐ」その先に「ひらく」あたらしい世界のトビラを”というパーパスを定めておられますが、このようなパーパスを作った背景・課題感などを教えていただけますか?
梶原
このパーパスはNTT西日本の存在意義を明文化したもので、社員全員で作り上げたものです。いろいろな部門、さまざまな年代の社員が意見を出し合い、精査して練り上げました。
パーパスには、「つなぐ」「ひらく」という2つのキーワードがあります。
「つなぐ」は、通信会社としての基本的な使命、すなわち日々通信ネットワークを皆さんにしっかりお届けし、生活環境や働く環境を支え続けるという我々のミッションを示しています。もちろん災害などの非常時には、即インフラを立て直すべく行動し「つなぐ」に力を注ぎます。
そして、あたらしい世界のトビラを「ひらく」は、お客さまとともにより良い未来につながるべく歩み続けるという姿勢を示しています。今は、北村亮太社長が策定した中期経営計画―「NTT西日本の持続的な事業成長に向けた5本柱の取り組み」―である、(1)光サービスの成長・拡大、(2)レガシー系サービス等からの着実な移行、(3)公共分野等における社会基盤ビジネスの拡大、(4)成長事業の更なる拡大、(5)CX向上とコスト競争力強化、の5つに本腰を入れて取り組み、アウトプットを出し続ける考えです。
パーパスは当社にとって普遍的な存在であり、いわば永遠の目標と言っても良いかもしれません。われわれ総務人事部の役割は、このパーパスに則り、経営戦略を実現するために最適な人材の採用・育成・配置に注力することだと捉えています。

藤井
NTTグループでは現在、2027年を最終年度とした中期経営計画を進めておられます。今がちょうど中間地点のあたりかと思います。クラウド、セキュリティ部門を新設して、専門人材を現在の約3,000人から、2027年度に約5,000人に増やすというチャレンジブルな目標を発表されていますが、組織全体のケイパビリティを上げるために、具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
梶原
ネットワークで地域を支え、お客さまの価値創造につなげていくことが我々のミッションですが、そのためには各々が自身のスキルを高め続けなければいけないと考えています。特にクラウドやセキュリティ、生成AIやDXなど、高度な付加価値がついたプロダクトを作り続けないと、お客さまにご納得いただくことはできません。そこで、社員一人ひとりが常に専門性を磨き、高度なスキルを身につけてもらうために、さまざまな取り組みを行っています。
もちろん、キャリア(経験者)採用にも力を入れていますが、これらの高度なスキルを持つ専門人材は、当然ながらいろいろな会社から引っ張りだこであり、採用難易度が高いのが特徴。そのため、キャリア採用に注力しつつも、現有勢力である既存社員それぞれにスキルレベルを高めてもらいたいと考えています。
そのために取り組んでいることは主に2つあります。
NTTグループの18の専門分野のうち、NTT西日本では15の分野を専門分野と定めています。そして、社員は主に、この15分野のいずれかにカテゴライズされています。そのカテゴライズされた専門分野について、各々がスペシャリティを高めるための仕組みづくりを進めています。

もう1つは、まさに今注力していることですが、セキュリティ、AI、クラウド等の7領域を中期経営計画を達成するための主幹領域と捉えて、CoE(Center of Excellence)組織に専門人材の育成・配置を任せています。
これまで育成や配置は総務人事部が一元して行っていましたが、CoE組織に権限を委譲し、われわれ総務人事部はそれをサポートするという体制に切り替えました。総花的ではなく、注力分野に集中して育成することで高い成果につなげたいと考えています。
これまでは、どちらかというと「何でもできるジェネラリスト」を中心に育成してきましたが、市場環境や事業環境が目まぐるしく変化する中で、このままではお客さまのご要望に応え切れないと実感しています。これらの取り組みを通じて、組織全体のスペシャリティを高め、価値提供の精度を高めたいと考えています。
藤井
ジョブ型の人事制度についても、お伺いできればと思います。NTT西日本では、課長級以上の管理職において、ジョブ型の人事制度を導入していますね。
梶原
はい。以前は完全に年功序列の体制で、「今年は○年入社の人が昇格する年だ」などと決まっていました。当然ながら若手の抜擢機会や、ましてや早期の役員登用もなく、非常に不自由でした。
そんな状況を変えるために、2020年7月から部長級以上にジョブ型の人事制度を導入、2021年10月から課長級以上の管理職全体に対象範囲を広げました。これにより、実力がある人がふさわしいポストに配置できるようになり、人材の活用幅が徐々に柔軟になってきたと感じます。
ジョブ型にすると、年齢や経験年数等に関係なく実力がある人がポストに就くことができます。もちろん、転職してきて間もない人であっても昇格できるので、キャリア採用者にイキイキ働いてもらうための基盤にもなっていると思います。
これまでの体制だと、課長昇格は早くても35~6歳でしたが、現在は30代前半の管理職が増えています。早晩、20代の管理職も現れるでしょう。その体制はすでにできています。
NTTグループでは人事給与制度が統一化されています。ジョブ型への見直しは私がホールディングス在籍時に行ったのですが、年功的要素のある職能型人事制度からジョブ型への人事制度の移行は大がかりな制度改革なので、グループ各社の理解・共感を得つつ、結果としてスピード感をもって対応できました。最初は、正直「大丈夫かなぁ…」と不安を感じる部分もありましたが、蓋を開けてみれば、今やジョブ型のほうが馴染んでいる。変わることが必要なのであれば、まずはチャレンジしてみることが大切なのだと学ばされました。
藤井
ここまでのお話を伺いして、NTT西日本には年齢に関係なくスキルアップの機会があり、スキルをベースに評価する態勢が整っていると感じました。そしてさらに、新しく専門人材グレード制も作られたと伺っています。
梶原
その通りです。これまで昇進昇格というと「管理職への任用」が中心でしたが、管理職以外にも道を開くべく、専門性を重視し適正な評価につながる人事制度を導入しました。
⼀般社員については、15の分野ごとに求められる専門性や行動レベルを明確化した「グレード基準」を設定。専門性の獲得・発揮度に応じて昇格・昇給する仕組みを作り、自律的なキャリア形成と、エンプロイアビリティ(働く人の就業能力)の高い専門性の獲得をめざしています。
そして、管理職ではなくても、非常に高度な専門性を有す社員に、ふさわしい処遇・格付けを行う「スペシャリストグレード」を創設。社員のキャリアの選択肢を広げ、更なるモチベーションの向上やパフォーマンスの発揮をめざしています。

藤井
この流れでもう1つ伺いたいのが、働き方の多様化を図り、社員のキャリア自律を支えるための「制度面」についてです。社内ダブルワークや社外副業、1000を超えるスキルアッププログラムなど、さまざまな制度を整えておられますが、その内容や目的を教えていただけますか?
梶原
最初に着手したのは、フレックスタイム制度の改革です。当社グループではおよそ30年前にフレックスタイム制度を導入したのですが、研究開発職にしか適用されておらず、ごく限られた人のみが利用できる制度でした。現在は、多くの社員が利用できるようになっています。
働く時間が自由になると、育児や介護など、時間に制約のある社員も自分のペースで働けるようになります。例えば15時でいったん仕事を中断し、19時まではプライベートな時間に充て、19時以降また仕事を再開して1日7時間半勤務を担保するというような「分断勤務」の社員も増えています。
そして、リモートワーク制度も整備しています。在宅勤務制度は元々ありましたが、東京オリンピックに向け2018年ごろに制度がより柔軟で使いやすくなるよう見直しました。ただ、当初は利用者がほぼなく、在宅勤務も広がりませんでした。しかしコロナ禍で一気に利用が拡大。すでにリモートワークの制度は整備され、さらにこれが重要ですがIT環境も一定整備できていたので、在宅シフトは比較的スムーズに進みました。全国どこからでもリモートワークで働ける制度「リモートスタンダード」も導入し、今では多くの社員がリモートワークを取り入れ、柔軟に働いています。ジョブ型人事制度を導入したからこそ、職務に対して期待される役割が明確になり、社員一人ひとりが自律的に業務を進められるようになりました。これにより、柔軟な働き方自体も促進できるようになっています。
他には、社内ダブルワーク制度も紹介させてください。現在の部署に勤務しつつ、NTT西日本グループ内の別の部署でダブルワークを行うというもので、例えば支店に勤務しながら、週1回は本社のスタッフ業務を担当する、などがあります。社員のインプット向上や、視野拡大、人脈形成などを目的とした制度ですが、手を挙げる社員が多くうれしく思っています。
それぞれ本来の仕事で目標やミッションを抱える中、プラスアルファの業務に携わることになるので、かなり自律的な働き方が求められますが、うまくスケジューリングを行い、相乗効果を発揮している人が多いようです。
なお、社外副業の制度もあります。実は昭和の時代から、届け出し承認をもらえれば兼業は可能でしたが、なかなか行う人がいませんでした。社内ダブルワークと同様、社外の業務経験を通して人脈形成やイノベーション創出、学びの拡大などをめざし、副業を推進する姿勢を打ち出していることから、挑戦する社員も増えています。
そのような組織や会社の枠をこえて活躍する社員を発掘し、賞賛する仕組みとして「E-1グランプリ」(E=越境活動)という総務人事部長表彰を開始しました。「E-1グランプリ」のイベントでは、越境活動をする社員だけでなく、活動を応援する上長も賞賛することで、新しい挑戦を後押しするための企業文化をつくっています。
藤井
キャリアを考える上でのサポートは、どのように行っているのですか?
梶原
代表的なものは、キャリア支援制度。キャリア相談窓口を設け、キャリアコンサルタントの資格を持っている社員がダブルワークで、社員のキャリア相談に対応しています。
また、通信教育やe-learning、社外公開講座、社内研修など、1000を超えるスキルアッププログラムを用意。ICTに関する知識やファイナンス、語学など、さまざまなテーマを準備し、社員の学ぶ意欲をサポートしています。
藤井
社内ダブルワークに社外副業など、NTT西日本では社内だけでなく社外にもチャンスが広がっていて、社員一人ひとりが自分でイニシアチブを取れる状態にあると感じました。
梶原
キャリア自律を推進し社外に「ひらく」ことにも注力すると、外から入りやすくなる一方で、中から外に出る…すなわち人材流出もしやすくもなります。
NTT西日本グループで働く意味・意義をどう提供して、遠心力を求心力に変え、「つなぐ」か?は、今の総務人事部の課題でもあります。定期的にエンゲージメント調査を行い、社員の意識を可視化しつつ、対話を続け、挙がってきた要望に応え、必要に応じて制度化するなどの取り組みを行い続けたいと思います。
また、アルムナイ(退職者)の方々とつながり続け、貴重なインプットをもらい、ともに新たな価値を創造し続けるためのプラットフォームとして、アルムナイコミュニティも運用開始しています。
藤井
「キャリア自律」はともすると、一人だけで選択や意思決定をしなければならない「キャリア孤立」になりがちです。私たちは、企業と個人が信頼関係を育み、個人のキャリア形成に共に向き合う「キャリア自律支援」の在り方を「キャリア共律」と名付けて発信しています。調査では、「キャリア共律」的な支援や職場での対話の質が、個人の「活躍実感」「キャリア自律意識」、ひいては「仕事・組織への愛着や結びつき」を高めることがわかっています。
社内ダブルワークに社外副業で、社内外にキャリアの機会を「ひらく」。社員の方とのキャリア相談で信頼関係を「つなぐ」――御社の「キャリア自律支援」は、働く個人の不安を取り除き、未来の機会に歩みだしたくなる、まさに「キャリア共律」的な支援だと感じます。
パーパスにある2つのキーワード、「つなぐ」「ひらく」は、「キャリア自律支援」の在り方とも響き合いますね。今後の深化が楽しみです。
藤井
最後に、NTT西日本の人材採用・登用のニーズについてもお聞かせください。
梶原
キャリア採用において特に注力しているのは、コンサルティング、プロジェクトマネジメント、DXなどの「高度領域」と呼ばれる分野です。そして採用の際には、応募者のスペシャリティはもちろんのこと、どのような分野のバックグラウンドを持っているかも重視しています。
当社のお客さまは、あらゆる業界に渡ります。一例ですが、モビリティ、観光や農業などは、社内に知見が少なく、かつお客さまの課題解決になり得る分野。そのような分野で経験を積んできた人は大いに歓迎しますし、多方面で力を発揮できると思います。
藤井
スペシャリストグレードを中心に、ミドルシニアの登用にも力を入れていると伺いました。
梶原
先ほどお話しした「グレード基準」の中の、主に「スペシャリストグレード(SG)」において、ミドルシニアを積極登用しています。ミドルシニア層の中には、経験を積み専門性を磨いてきた方が少なくありません。何らかの秀でたスペシャリティがあれば、SGとして高い処遇を得ながら、専門性を突き詰めることが可能です。
なお、当社は60歳が定年で、61歳から再雇用になりますが、60歳までのスキルを見て再格付けを行い、グレードを設定しています。65歳以上も高いスキルやノウハウを持っていれば、70歳まで1年更新で雇用しています。
これらの取り組みは、「60歳で終わり」ではなく、スキルを磨き、高め続けてほしいとの思いから行っているものです。この取り組みに適した処遇も、早期に整備したいと考えています。
藤井
社歴が長く専門分野を極めてきたシニア層は、その分野や地域で圧倒的なリレーションを持っていたりします。若手、シニアに関係なく、力を発揮できる場とスキルアップの機会を提供するため、柔軟に対応し続けている点が、NTT西日本の魅力なのだと改めて感じました。本日は、ありがとうございました。
1967年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年にNTT入社。2008年10月総務部門担当部長。09年7月NTT西日本四国事業本部営業部長。11年7月人事部担当部長。14年7月NTT総務部門担当部長(人事/人事制度)。21年6月執行役員九州支店長。23年7月執行役員総務人事部長。24年7月より現職。
1988 年リクルート入 社以来、人材事業に従事。TECH B-ing 編集長、Tech 総研編集 長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所 Works 編集部、リクルート経営コンピタンス研究所などを歴任。デジタルハリウッド大学特任教授、千葉大学客員教員。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。
仕事が辛くて会社に行くのがしんどい――誰しも思ったことがあるのではないでしょうか。中には、「仕事が辛いと思うなんて、甘えではないか」と自分を責める人もいるようです。
この記事では、これまでに1万人超のメンタルを救ったという「金髪アフロと赤メガネ」がトレードマークの精神科医&メンタル産業医・井上智介先生が、仕事が辛いと感じる原因や対処法、辛くてもやらないほうがいいことなどをアドバイスします。

仕事が辛いと感じている人の中には、「仕事が辛くてしんどいと感じるのは甘えではないか、自分が悪いのではないか」などと捉える人がいます。「仕事は辛くて当たり前」と、自分の気持ちに蓋をしてしまう人も少なくありません。
しかし、誰しも一度は「仕事が辛い」「もう働きたくない」と思うものです。つまり、仕事が辛いと思うのは極めて当たり前のことであり、まったく甘えではありません。まずはその認識を捨てるところから始めてください。
誠実で責任感が強い人ほど、仕事に辛さを感じやすい傾向にあります。仕事がきつくても投げ出せず、心身ともに限界を迎えてしまう人や、自分も忙しいのに周りの人の分までサポートしてしまい、バーンアウトしてしまう人などを数多く見てきました。
仕事が辛いと感じるのには、何かしらの原因が必ずあるはずです。「仕事が辛いのは甘えだ」と自分のせいにしてあいまいにやり過ごすのではなく、原因としっかり向き合い、対処法を考えることが大切です。
仕事が辛いという状況を変えたいと思ったときは、次の3ステップで考えてみましょう。辛い気持ちに向き合うことで、現状を変える方法が見えてくる可能性があります。
大前提として、仕事が辛いという気持ちを一人で抱え込まないことが何より大切です。同僚でも友人でも、もちろん上司でも構いません。誰かに頼り、アドバイスを得て、場合によってはサポートしてもらうことが必要です。
仕事の辛さを一人で解決するのは難易度が高いものです。今の状態を変えたいならば、原因ごとに頼るべき相手を考え、相談してみましょう。
そもそも、人に頼ることに抵抗感があるという人もいますが、こと仕事においてはそのハードルを下げてほしいですね。たとえ原因の根本解決にならなくても、誰かに相談するだけで心が軽くなる効果があり、辛さが軽減できるでしょう。
仕事が辛いという現状を受け止め、原因を整理してみましょう。「何となく仕事が辛い」という人もいますが、原因は必ずあるはずです。もやっとしたまま放置していると、辛さの解消法もわからないままストレスを溜め込んでしまうことになります。
自分の気持ちに向き合い、何に辛さを感じているのか、紙などに箇条書きでいいので書き出してみましょう。些細なことでも書き出してみると、どんどん心の奥底にある思いが引き出されるかもしれません。
仕事が辛い原因が見えてきたら、どういう方法を取れば辛さが軽減できるのか考え、行動に移していきましょう。
以下の項目で、仕事が辛いと感じる主な原因と、その対処法について紹介します。自分に当てはまるものを、ぜひ試してみてください。
仕事が辛いと感じる主な原因は、大きくわけて7つ挙げられます。それぞれについて解説していきます。
上司や先輩、同僚や後輩、クライアントなど、仕事で日常的に接する相手にストレスを抱え、辛いと感じている人は非常に多いです。私のもとに相談に訪れる人も、その大半が人間関係の悩みを抱えています。
中でも多いのは、上司やお客さんとうまくいかず悩むケースです。仕事で必ず関わる相手であるだけに、日々ストレスを抱え、仕事への意欲も湧かなくなる人は少なくありません。
過剰な業務量や時間外労働の多さから、辛さを抱えている人も多いです。常に仕事に追われている感があり、気持ちが休まらないとの声もよく聞かれます。
明らかに自分のキャパシティを超えた業務量で疲弊しているのに、「仕事が多くて辛いと感じるなんて、自分は能力が低いのではないか」と自分を責める人もいます。
主に営業職においては、ノルマや事業目標が高く設定されて、達成するのがキツイ…という悩み、不安を抱える人が多いようです。
結果的にノルマ、目標を達成できなかった場合、「営業力が欠けているからだ」と自分を責め、辛さを覚えてしまうケースもあるようです。
仕事で思うような成果が上げられず、会社や上司からの期待に応えられない自分に辛さを覚える人もいます。成果を上げている周りの人と自分をつい比べてしまい、落ち込み自信をなくしてしまう人も少なくありません。
仕事にやりがいを感じず、毎日が辛いという人も多いようです。希望していない部署に配属されてしまい、やりがいを感じないというケースのほか、自分の仕事が誰かの役に立っている実感がないという人もいます。
同じ仕事の繰り返しでやりがいはもちろん自身の成長も実感できず、毎日が苦痛だというケースもあるようです。
一生懸命仕事に臨み、自分なりに成果を出しているのに、いい評価がもらえないという場合も、辛さを感じやすいようです。どれだけ頑張っても報われないという無力感が、会社への不信感につながっているケースも見受けられます。
「この会社で頑張り続けても将来がない」という焦りから、日々の仕事に辛さを感じる人もいるようです。
自分のせいで大きなミスをしでかしてしまった場合も、仕事に辛さを感じるものです。周りに迷惑をかけてしまう申し訳なさや、評価が下がってしまう不安などから、心理的ストレスを感じて辛さを覚える人もいます。
仕事が辛いと感じる原因別に、具体的な対処法をご紹介します。
職場の人間関係で悩み、思いつめ、自分で自分を追い込んでしまう人は少なくありません。視野が狭まり、「相手が悪い」「自分が悪い」と0か100でしか考えられなくなり、被害者思考が極端に強まってしまうケースも見受けられます。
視野を広げ、現状を変える一歩を踏み出すためにも、まずは一人で抱え込まず友人や同僚など信頼できる人に相談することをお勧めします。人と話すことで違う視点が得られ、気持ちが軽くなる可能性があります。客観的なアドバイスももらえ、今の自分に合った解決策が見えてくるかもしれません。
苦手な相手とは無理に関わるのではなく、距離を取るのもいいでしょう。フリーアドレスであれば遠くの席に座る、在宅勤務を取り入れてみるなど、物理的な距離を置くのもいいですし、業務上のやり取りを対面で行うのではなく極力メールやチャットなどのオンラインにするのもお勧めです。ストレスが減り、辛い気持ちが軽くなる可能性があります。
上司が部下一人ひとりの業務量を把握し切れておらず、不均衡になっている可能性があります。業務量が多い、残業が多いなどの場合は、まずは上司に現状を報告して判断を仰ぐのが鉄則です。
その際、「業務量が多いので減らしてほしい」などとザックリと伝えるのではなく、具体的に伝えることが大切。「平均して○時まで働いているので、残業を減らして○時までには退社したい」「○○の業務が多いので誰かに割り振れないか」などと相談すると、上司が判断しやすくなり、状況がすぐに好転する可能性があります。
そのためにも、まずは自身の業務をすべて洗い出し、優先順位をつけてみましょう。そして優先順位が下位のものについて、別の人に割り振ることができないか尋ねてみるといいでしょう。
ノルマや目標が厳しいという場合も、まずは上司に現状を報告しましょう。プレッシャーが強すぎるのであれば、辛さを一人で抱え込んでいても状況は変わりません。上司に相談して目標を変えてもらったり、ノルマを軽減してもらったりすることが大切です。
この場合も、単に「目標が高すぎるので軽くしてほしい」と伝えるのではなく、具体的に伝えることが大切です。たくさんの目標を追わねばならず疲弊しているのであれば、「今の自分のキャパシティでは、すべての目標をクリアするのは難しいので、○○の目標は外してもらい、△△の目標に力を注いで成果を上げたい」などと相談すると、上司も具体的な行動に移しやすいでしょう。
ノルマが厳しすぎるので軽くしてほしいという場合も、「A社の業績が厳しくアップセルの難易度が高い」など、現状を具体的に伝えると、窮状を理解してもらいやすくなるでしょう。
毎日何か1つ小さな目標を設定し、それに向かって取り組んでみましょう。「午前中に伝票整理を終わらせる」「今日中に1つ資料を作る」など、1日で完結するような簡単なものでOKです。自分で設定した壁を越えていくことで、「自分は成果を出している」という実感につながります。自分に自信がつくことで、仕事に対するモチベーションも回復すると期待されます。
同じ仕事をしている上司や先輩に相談するのも一つの方法です。上司や先輩も過去に、成果が上がらず苦しんだ経験を持っているはず。相談を持ち掛ければ、自分の時はその辛さや苦しみをどう乗り越えたのか、仕事をうまく進めるポイントやコツなどを具体的に教えてくれるでしょう。
仕事に価値が感じられないという場合は、自分の仕事の前後が何につながっているのか、思いを馳せてみることをお勧めします。たとえ雑務であっても、必ず何かの仕事につながり、誰かの役に立っているはずです。そして、さらにその先をたどっていけば、エンドユーザーのためになっていることに気づき、介在価値を感じられるかもしれません。
思いを馳せるのが難しい場合は、上司や先輩に聞いてみるのも方法です。会社の中で、自分はいったいどの部分を担っているのか、そして会社全体にどのような影響を及ぼしているのか、質問してみましょう。仕事の全体像と自分の立ち位置が見えてくれば、自身の仕事の重要性を理解でき、やりがいも感じられる可能性があります。
別にやりたい仕事があるから、今の仕事にやりがいを感じないという場合は、キャリア面談や1on1などの場で、上司に伝え続けましょう。自ら発信することで、やりたい仕事につながるような新たなチャンスが回ってきたり、研修の機会が得られたりするかもしれません。
また、この場合も「小さな目標を設定し、それを達成する」のは効果的です。1日でクリアできそうな目標を設定し達成し続けることで、自己肯定感が高まり、日々の仕事にもやりがいを感じられるようになるでしょう。
頑張っているのに評価されないという場合は、「自身の頑張り」と「会社に求められているもの」の方向性がずれている可能性があります。
例えばですが、自分は「顧客とじっくり関係性を築きながら成果を上げている」けれど、「会社はもう少しスピード感を持って数字に向き合ってほしい」と考えている…など、何らかのギャップが生じているかもしれません。
キャリア面談や1on1などの場で、上司に「自分にはどういう働きが求められているのか」を確認し、もしズレがあったらそれを埋める行動を意識するといいでしょう。評価基準も具体的に確認しておけば、無駄なく評価につながる動き方ができると思われます。
大きな失敗をしてしまった場合、誰しもメンタル的に落ち込んでしまうと思います。もちろん、失敗を反省することは重要ですが、ネガティブになり過ぎる必要はありません。仕事において失敗はつきものであり、デキる上司や先輩も過去に必ず何らかの失敗を経験しています。失敗を成長の機会と捉え、「この失敗を次に活かそう」という姿勢を示すことで、上司の評価も変わり、適切なアドバイスももらえるでしょう。
なお、ミス発覚を恐れて隠そうとする人がいますが、ミスが起こった時点で迅速に共有すべきです。一人で抱え込み、自分で何とかしようとしても、たいていの場合は事態が大きくなってしまい、ますます辛さを感じるようになります。部下のミスのフォローやリカバーも、上司の仕事の一つです。まずは素直に相談し、指示を仰ぎましょう。
これらの方法を試してみても現状が変わらないという場合は、社内異動や転職などで、働く環境を変えたほうがいいかもしれません。一人で抱え込むと視野が狭くなる可能性があるため、例えば転職エージェントのキャリアアドバイザーなど第三者のプロの力を借りると、解決の筋道が見えやすくなるでしょう。
なかなか辛い状況が改善せず、心身ともに追い込まれている感じがしたら、早めに産業医や医療機関などに相談しましょう。誰かに辛い気持ちを明かすことで、心が軽くなるだけでなく、話す過程で辛い気持ちの中身が整理され、自分に合った対処法が見えてくる可能性もあります。
いくら仕事が辛くても、やらないほうがいいことがあります。辛いという気持ちが強まると、次のような行動を取りがちなので注意しましょう。
辛い気持ちを一人で抱え込んでしまう人は、とても多いです。前述のように、誠実で責任感が強い人ほど「自分一人で解決すべきだ」と捉え、誰にも相談せずに解決しようとする傾向がありますが、辛い理由に一人で臨むのは限界があります。場合によってはどんどん自分を追い込み、心身ともに疲弊してパンクしてしまう恐れもあります。
まずは友人でも家族でもいいので、誰かに相談してみましょう。心の内を明かすだけでも気持ちが軽くなりますし、別の視点でのアドバイスを得ることで解決の糸口も見えやすくなります。
仕事に辛さを覚えると、つい周りと自分とを比べてしまうようになります。「あの人は成果を上げているのに、自分はできていない」「あの人は上司とうまくやっているのに、自分はぎくしゃくしている」など。辛いときに周りと比べても、自信が喪失しモチベーションが低下するだけです。
このような「人との比較」は無意識に行ってしまうことが多いため、意識的に「人は人、自分は自分」と考え、割り切ることが大切です。
比べるならば、周りの人とではなく、「過去の自分」と比べること。今が辛くても、過去の自分に比べて少しでも成長できていると実感できれば、心が軽くなるでしょう。
辛い気持ちを解消せぬまま溜め込んでしまうと、朝起き上がれずどんどん時間ばかりが経ってしまい、会社に連絡もせず無断で休んでしまう…という事態に陥る場合があります。無断欠勤は誰もが悪いことだと理解しているのに、辛さを溜め込みすぎると「休むことへの罪悪感が強すぎて、連絡できない」「休みの連絡をしたら怒られるかも」」という極端な思考に陥ってしまい、無断欠勤してしまう可能性があるのです。
ただ、1回でも無断欠勤してしまうと、職場での信頼を失い、辛い状況にますます拍車がかかってしまう恐れがあります。心身ともにしんどく、出社が難しいと感じたときでも、せめて会社に一報だけは入れましょう。
ここまでさまざまな対処法や考え方を紹介しましたが、仕事が辛すぎて会社に行くのがしんどい、辛すぎて仕事が手につかないという場合は、自分で対処できるレベルを超えています。くれぐれも無理はせず、早めに人事や産業医に相談したり、医療機関を受診したりしてほしいですね。
責任感が強い人ほど「辛いなんて甘え」「休むなんて逃げだ」などと自分を追い込みがちですが、休むことも人生の選択肢の一つです。一時的に充電期間だと捉えて心身を休めることに集中することで、状況は確実に改善するはずですよ。
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メンタル産業医・精神科医 井上 智介さん兵庫県出身。島根大学を卒業後、大阪を中心に精神科医・産業医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、一般的な労働の安全衛生の指導に加えて、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。さらに、すべての人に「大ざっぱ(rough)」に、「笑って(laugh)」人生を楽しんでもらいたいという思いから、SNSや講演会などで心をラクにするコツや働く人へのメッセージを積極的に発信中。『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)など著書多数。
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ビジネスシーンでは、往々にして「忍耐力」が求められることがあります。ビジネスで価値を生む忍耐力とはどのようなものか、忍耐力がある人の特徴、忍耐力の活かし方・鍛え方などについて、ビジネススキル研修を手がける株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ代表の高田貴久氏にアドバイスをいただきました。

単純に「忍耐力」というと、必要とされるシーンはさまざまです。では、ビジネスシーンで必要な忍耐力とはどのようなものでしょうか。
それは「長期的なメリットを得るために、短期なデメリットをあまんじて受け入れる力」だと言えると思います。
昔から「損して得とれ」という言葉があります。私が会社員時代にも、営業本部長がいつもこう言っていたのが印象的でした。これは目先の損失をいとわず、将来の大きな利益につなげようとする考え方です。
つまり、耐えた先にメリットがあってこそ耐える意義があるのであり、耐えた先に得るものがなさそうであれば、異動なり転職なり、その環境から早々に逃れるのも有効な手段なのではないでしょうか。その状況を適切に判断し、耐えるべき場面で耐えられることが重要です。
「忍耐」について、より具体的なシーンを分類してみましょう。
例えば、お客様から叱られている場面で、腹が立つ言い方をされているものの「営業成績のため」「自分の成長のため」と捉えて耐える。これはビジネスによくあるシーンであり、望ましい行動と言えます。
例えば、お客様のカスハラ・パワハラが度を越えているにも関わらず、営業成績のために耐え続けることもあるでしょう。しかし、理不尽な要求に対しては、毅然とした態度で言うべきことをしっかり言うことも重要です。
例えば、お客様に叱られている場面で、怒って反論するのは好ましくありません。その場はぐっとこらえ、理論的に納得がいかない点については、日を改めて冷静に説明するなどした方が、良好な関係を継続しやすいでしょう。
例えば、カスハラ・パワハラが度を超えているお客様に対し、「それはハラスメントです」と指摘をした上で、本社のしかるべき部門に報告するといった行動です。本来は望ましい行動ですが、「耐えるべきか否か」の判断を誤ると、【3】と捉えられることもあるでしょう。
これは組織と個人の価値観によってギャップが生じることもあります。自分は「耐えるべきではない」、上司や会社は「耐えるべき」と、明らかに価値基準が異なっているのであれば、そうした組織からは離れた方がいいかもしれません。
ビジネスシーンにおいて「忍耐力がある人」とは、どのような人なのでしょうか。一例を挙げてみましょう。
目先の厳しい状況も、長い目で見ればプラスだと理解できている人です。例えば、不本意な異動や転勤を命じられたときなど、「飛ばされた」「もう未来はない」と絶望するのではなく、「新たな経験を積むチャンスを与えられた。それが将来のキャリアにつながる可能性がある」と、中長期視点で捉えます。
つらいことがあっても「続けていけばきっと良いことがある」と考えて継続できる人です。途中で失敗したときも、投げ出すことなく、失敗の要因を分析して改善につなげていきます。
「目的」を明確にとらえ、「達成するためにはどうするか」を考えることに集中できる人です。周囲から見ると厳しい状況に立たされていても、本人には「耐えている」という自覚がないかもしれません。
つらさや厳しさを認識した上で、感情をぐっとこらえ、理性でカバーできる人です。ストレスを受けたときに耐えることはもちろん、ストレスをかわしたりうまく発散できたりする人も、自分の感情をうまくコントロールできるという点で忍耐力に優れていると言えるでしょう。
上記を踏まえ、忍耐力を鍛える方法をお伝えします。
私がコンサルティングファームに勤務していたころの体験談を例に挙げてみましょう。ある上司は、「全然ダメ」「何考えているの」など、非常にきつい言葉で指摘し、嫌味なボイスメールを送ってくることもありました。最初はつらくて仕方なかったのですが、以下のように長期的目線に変えて捉えると、耐えられるようになったのです。
なお、その上司は仕事中こそ厳しく当たるものの、飲みに行った場ではにこやかに話してくれていました。「仕事と人格は別なんだ」と思えば、厳しい言葉も受け入れられるようになりました。
忍耐力を鍛えるということは、「するべき忍耐」「するべきでない忍耐」を見極められるようになることであるとも言えます。そこで、自分が所属する組織の価値観と自分の価値観が一致しているかどうか、常日頃から意識してみましょう。
自分が「嫌だな」「つらいな」と思うことが、なぜ組織の価値観ではまかり通るのか、自分はその価値観に合わせることができるのか、を考えるのです。それがあまりにもズレていて、合わせることができないのであれば、その先に未来はなく、耐える価値がないかもしれません。
仕事で関わる人から耐えがたいことを言われたり対応をされたりしたとき、つい感情的に反論してしまうタイプの人は、「その場ではぐっと飲み込む」ことを心がけてみてください。言い返さずにいられない場合は、「明日に話そう」「別の機会に改めて話そう」と、冷静に対処しましょう。
私もあるメーカーに勤務していた時期、「おかしいんじゃないか」「間違っているんじゃないか」と思うことをストレートに指摘したことがありました。それに対し「正論であるが、黙っておいてくれ」と、よく言われたのです。
「間違いを指摘して何が悪い」と納得がいかなかったのですが、ふと社内を見渡してみると、さまざまな立場や考え方の人がさまざまな思いを抱えて働いていることに気付きました。なるほど、正論をぶつけることによって反発する人を生み出すより、通常どおり事業を回していくことが先決だと、腑に落ちたのです。
そして「自分はこの環境に一生いるのか。いや、そうではない。限られた時間なのだから、世の中を知る意味においては有意義な時間だ」と、長期的な視点で捉え直すと、気持ちに余裕が生まれました。
上記とは逆に、言うべきことを言えずに黙り込んでしまうタイプの人は、一見すると忍耐力があるように見えますが、「正しい忍耐」ができていないケースもあります。そのようなタイプの人は「信頼できる別の誰かに相談する」「対話は苦手なので、メールで伝える」など、伝達の相手と手段を変えてみるといいでしょう。
「耐えなければ」「忍耐力を鍛えなければ」と考えている方は、「そもそも耐える必要があるのか」を確認してみましょう。長い目で見て自分にとってのプラスにつながらない、自分の価値観に合っていないような忍耐を迫られるのであれば、その環境から逃れた方がいいとも考えられます。
たとえつらくても、「将来プラスになる」「いつか役に立つ」というポジティブな気持ちで取り組めるような仕事、あるいは職場を見つけてはいかがでしょうか。
東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛けている。
自分に向いている仕事(適職)とは、才能や特性、経験スキルなど、自分の得意分野を生かして成果出すことができる仕事のことです。この記事では、自分に向いている仕事がわかる診断ツールの具体例と活用方法、適職を見つけることによって得られるメリットを、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが解説します。
なお、記事中で紹介する適職診断はわずか3分ででき、「仕事選びの価値観」「隠れた性格」「おすすめの求人検索ワード」がわかります。短時間でできるので、ぜひ試しにやってみてください。

自分に向いている仕事を見つけることは、転職活動中はもちろん、現職でキャリアを積んでいる人にとっても有益です。
ここでは、自分に向いている仕事や適職を見つける4つのメリットを紹介します。
自分に向いている仕事やタイプ、具体的な求人などの情報収集や整理を通じてキャリアを整理して考えることがしやすくなる。
自分に向いている仕事や適職によって、キャリアの方向性がわかると、今後身につけると良い経験やスキルの目標が立てやすくなります。今やっている仕事の位置付けも明確になるので、「なんとなく言われた仕事をする」のではなく、仕事の意義や目標を感じながら働くことができるでしょう。それにより仕事でもプライベートでも、モチベーション高く過ごすことができるかもしれません。
自分に向いている仕事や適職がわかり、明確な目標やキャリアの方向性に向かってモチベーション高く仕事に取り組むことができれば、成果が出しやすくなり、スキルアップもしやすくなるでしょう。
結果として、目標とするキャリアを着実かつ早期に実現することにもつながるかもしれません。
自分に向いている仕事や適職を探すことで、日常の仕事や生活の中で忘れていた価値観や、感情よりも効率性などを重視して優先順位をつけていたことなどを、立ち止まって考えるきっかけにもなるでしょう。
これまで気がついていなかった自分らしさに出会い直し、視野や思考を広げることができるかもしれません。
自分に向いている仕事は、モチベーショングラフなどを使った自己分析やキャリアの棚卸し、上司や同僚からのアドバイス、転職エージェントとの面談、キャリア研修、関連書籍、生成AIとの壁打ちなどによって、知ることも可能でしょう。
しかし、これらの方法は、どれも膨大な時間と手間がかかりがちです。
自分に向いている仕事がわからないときは、まずはオンライン上で簡単にできる「適職診断」などを活用してみると良いでしょう。向いている仕事や職種、企業選びのヒントを得られるかもしれません。
一般的に適職診断とは、自分に向いている仕事探しのヒントを提供する自己分析診断ツール全般を指します。様々な企業や、団体がオリジナルの適職診断を提供しているでしょう。
その中でも、以下のような特徴を持つ「リクナビNEXTの適職診断」は、企業選びの軸づくりや、自分に合う求人探しにピッタリ。質問内容は答えやすい簡単なものですが、診断結果は第二新卒などの若手社会人から、キャリアに悩んでいるビジネスパーソンまで幅広く活用いただけます。
リクナビNEXTの適職診断は、仕事選びの価値観に加えて、今まで忘れていたような幼少期の性格なども踏まえて、向いている仕事を分析します。そのため、自分でも想定していないようなアドバイスや分析結果が得られるかもしれません。
これは、「自分から見た自分」と「他者から見た自分」を分析するジョハリの窓のうち「未知の窓」に当たります。本来は自己分析ワークを複数回やって自己理解を深めても見つけにくいようなことが、たった3分の診断で比較的簡単に分析できるかもしれないチャンスとも言えるでしょう。
また、自己への解釈が多様で豊かになることで、転職での仕事探しの幅が広がったり、現職での目標が見つかったりする可能性もあります。キャリアビジョンやキャリアプランが明確になるので、モチベーションも高まりやすくなるでしょう。
リクナビNEXTの適職診断の結果では、「仕事選びの価値観」、「隠れた性格」、「おすすめ求人検索ワード」がわかります。ここでは、診断結果の一部を紹介し、自分に向いている仕事を見つける方法を以下の通り詳しく紹介します。
リクナビNEXTによる適職診断の結果では、仕事選びの価値観として「重視している条件」を紹介しています。その中でも「最も大切にしている価値観」は、診断結果に違和感がないのであれば、社会人の転職の軸として設定できるくらい具体的な言葉で表現されているのが特徴です。
「自分の価値観に合う企業特徴」や、どんな仕事ならばイキイキと働くことができるかなども解説しているため、転職だけに留まらず将来的なキャリアパスの選択に役立つはずです。
リクナビNEXTによる適職診断の結果では、「生まれながらにして持っている性格」に近づくために、環境に影響されにくい幼少期を振り返り、隠れた性格を分析します。
もともとの気質や性格がわかれば、力を発揮しやすい環境・人・カルチャーなどを選びやすくなるでしょう。現在の職場や学校でも、自分の考えを貫くための環境づくり、周囲との関係性の構築や、自分の考えを貫くことを良しとする場の見極めなどに役立つかもしれません。
そのほか、診断結果内で、自分のタイプに向いている具体的な職種例も紹介しているので、異職種への転職、現職でのキャリアチェンジなどの参考になるでしょう。
リクナビNEXTによる適職診断の結果では、仕事選びの価値観や性格タイプに基づいて「おすすめ求人検索ワード」を紹介し、キーワードに当てはまる実際の求人をワンクリックで確認できます。
紹介されるキーワードは、「転勤なし」などの労働条件だけではなく、「コミュニケーション能力」などの活かせるスキルや「正当な評価」「おもてなし」などの自分では思いつきにくいものまで様々。多角的に適職を見つけるアシストしてくれるので、思いがけない企業との出会いが見つかるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
思うように成果が出なかったり評価されなかったり。ビジネスパーソンであれば、モヤモヤを抱えながら「今の仕事に向いていないのでは…」と不安に思った経験があるのではないでしょうか。
仕事が向いていないと感じるタイミングやサイン、その後取るべき対処法などについて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが解説します。

「今の仕事は自分に向いているのだろうか」と、ふと立ち止まって考えてしまう。
そんな経験は、多くのビジネスパーソンが持っているものです。仕事を始めたばかりの時期や、仕事に慣れてきたころなど、悩みを抱えるタイミングは人それぞれ。時期ごとにどのようなサインが表れるのか、傾向を見ていきましょう。
新卒入社でも中途入社であっても、入社した直後は、新しい環境に慣れないことで「仕事が向いていない」と感じやすい時期です。
それまでの仕事内容や仕事の進め方と違う上に、人間関係もゼロから築いていかなければならず、勤務地や勤務体系の変化により新たな生活習慣にも適応する必要があります。ストレスを感じるのは仕方がないといえるでしょう。
また、「入社前にイメージしていた業務内容と現実が違っていた」「すぐに仕事で評価されるだろうと思っていたが違った」など、期待値とのギャップにより、向いていないと思ってしまうケースも少なくありません。
入社当初は緊張感もあり、とにかく環境に馴染もう、仕事を覚えようと必死だった人も、だんだんと余裕が生まれて周りが見えてきます。日常的な仕事に対応できるようになるからこそ、「思うような成果が出せない」「評価が受けられない」「同年代や入社同期などと比較して活躍できていない」など、社内の自分の立ち位置を意識するようになり不安を感じる人も出てくるでしょう。
また、「1年経験してみて、想像していた仕事内容とずれがあることに気づいた」「目指していたキャリアパスが歩めないと感じるようになった」と思う人や、人間関係に違和感を覚える人、仕事の進め方や周りとのコミュニケーションなどがうまくいかず「社風が合わない」と感じる人なども出てくるようです。
業務に慣れが出てくる反面、仕事に新鮮味がなくなる(マンネリ化する)時期かもしれません。同じような難易度の仕事が続き、成長実感やスキルアップ感が得られないことで物足りなさを覚える人もいます。「新しいプロジェクトにアサインされない」「同年代と比べて、自分だけリーダーポジションを任されない」など、周りとの比較による焦燥感も、「自分だけ評価されていない。今の仕事には向いていないのではないか」と思う要因になります。
入社3年目になると、大型案件などの新しい仕事を任されたり、後輩指導やリーダーポジションなどの役割に就いたりすることも増えるのではないでしょうか。周りからの期待値が高まると、うまく対応できないことで力量不足だと感じ、「せっかくもらったチャンスに応えられない。向いていないのかもしれない」とストレスをため込んでしまう人もいます。
ほかにも、人間関係でうまくいかないケースや、今の仕事を続けた先のキャリア展望が開けないといった不安感も、向いていないと思う要因になるでしょう。
同年代の同僚や友人の活躍の幅が広がっていくため、差を感じやすくなる時期です。例えば「中途同期のAさんはマネジャーに昇進し、Bさんは希望のマーケティング部署に異動して新しいキャリアを築いている。後輩のCさんは営業トップの成績を取っているのに、自分はいつも平均点で営業リーダー止まり。差がついてしまった…」など他者のキャリアとの比較で不安や焦りを感じてしまいます。
周りに転職や独立する人もいる場合は「自分はこのまま今の仕事を続けていていいのだろうか。そもそも、自分に合っているのだろうか」と立ち止まって考えることも多くなるかもしれません。仕事内容の責任の重さや広がりへの負担感、業務のマンネリ化、成長感やスキルアップ感のなさ、将来のキャリア展望の不透明さなどから不安を抱くことは、入社4年目以降も続いていくでしょう。
どの年次にも共通して「仕事が向いていない」と思う要因にはどんなものがあるのでしょう。
同世代の友人や同期が順調に成果を上げていると、自分だけ遅れているような焦燥感から「向いていない」と思ってしまう場合が該当します。
経験年数は重ねているものの成長している実感が得られなかったり、そもそも「仕事を通じてスキルアップしたい」「学びたい」という意欲が湧いてこなかったりする場合もあるでしょう。
自分はできていると思っているのに評価されず、逆に自分よりもできていないと思う同僚などが会社から高く評価されている場合、評価制度や評価者への不満を抱くようになります。自信を失い「自分は向いていない」とモチベーションも下がってしまうでしょう。
今の仕事がこれからのキャリアにどうつながっていくのか道筋が見えなければ、仕事への熱意は徐々に失われていきます。その結果、パフォーマンスも上がらず「自分には向いていない」と思うようになってしまいます。
向いていないと思っていながらも仕事を続けると、ストレスを感じることで心身に不調が生じ、モチベーションやパフォーマンスの低下、それによる評価の低下、上司や同僚など人間関係の悪化…といったように影響が広がっていく可能性があります。
評価が上がらないと自信がなくなり劣等感を抱くようになるかもしれません。するとますます仕事に集中できずにミスを繰り返してしまうこともあるでしょう。昇進や重要な仕事を任される機会が減ってしまうことで、成長実感が得られないという悪循環にもつながりかねません。
では、今の仕事が向いていないと感じたときにはどのような対処法があるのか、考えていきましょう。
まずは、自分が仕事のどの部分に対して「向いていない」と感じるのかを理解することが大切です。不満を感じたり、自信を持てないと思ったりするときはどんな場面なのかを振り返りながら自己分析を進めていきましょう。家族や友人、転職エージェントなど第三者に話を聞いてもらうのも一つの方法です。
すぐに仕事内容や職場環境を変えることが難しくても、仕事のやり方を見直すことはできます。今とは違った仕事の進め方ができるかどうか、まずは上司に相談してみましょう。
具体的に仕事のやり方を変えるには、例えば以下のように進める方法があります。
同じ仕事で成果を上げている同僚や先輩はどんなやり方をしているのか。自分との違いを分析し、ハイパフォーマーが取り入れている工夫をすべて真似してみるのもいいでしょう。
異動の機会があるのなら、自分の適性がある仕事にジョブチェンジできるといいでしょう。自分の適性をしっかり見極める上で、自己分析を深めるほか、自分をよく知る上司や先輩にアドバイスを求めたり、人事の意見を聞いたりするのもいいかもしれません。
資格取得などを通して自分を磨き、「できる・分かるようになった」という範囲を広げていくのもいいでしょう。社外の勉強会、会社が提供するリスキリングの研修などを積極的に利用するのもおすすめです。
自分に向いている仕事や環境を探るために、副業に挑戦するのも一つの方法です。本業とはまったく違う仕事内容に挑戦することで、「自分にはこんな強みがあったんだ!」と気づき、自信を取り戻す機会になるかもしれません。
今の仕事が向いていないのなら、自分に合う環境へ転職したほうがいいのではないか。そう考える人もいるでしょう。
ただ、早急に会社を辞める決断をするのではなく、まずは冷静に、現状を分析することが大切です。漠然とした不安や焦り、環境への不満感から「向いていない」と感じている人、周りから「向いていないのではないか」と言われてそう思うようになった人などもいて、適性があるかないかの判断がしづらいからです。
現職を続けながらできることに取り組むのも一つですし、転職活動を通じて社外の会社や仕事情報に幅広く触れ、社外の人からアドバイスを受けることで、選択肢を広げてみてもいいのではないでしょうか。
仕事が向いていないと思いながら続けるのは、誰にとってもストレスになります。環境を変える方法を探り、自分の働き方を見直しながら、「向いていない」状態を改善できるといいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
推しや好きな人のことに執着してしまって他のことが手につかない、過去に成功したコトを忘れられずに次のステップに進めない…。そんなふうに何かに執着してしまうことはありませんか?
執着心はなぜ生まれるのか、その原因と手放す方法(ステップ)を心理カウンセラー(公認心理師)の小高千枝さんが解説します。

執着とは、ひと言で言うと、人やモノ、コトに心がとらわれて離れない、離れられなくなっているって心の状態です。人間の心の欲求や願望に深く結びついているもので、一般的には、ネガティブな状態として捉えられています。
例えば、以下のように人に対する羨望が度を越し、嫉妬や妬みの感情を持ってしまうなど、人にはさまざまなこだわりがあります。
恋愛も仕事も、夢中になるものや熱中することがあるのは、本来はステキなことですが、心がとらわれすぎることで、生活の中で苦しみや悩みを生み出すきっかけになってしまうのが執着なのです。
人への執着や、モノに固執したり自分の行動に強くこだわったり、対象はさまざまですが、いくつかの理由が考えられます。
理由の一つが、自分が今これをしなければだめになってしまうのではないかという強迫観念です。例えば、出かけるとき、この順番で仕度をしないと悪いことがあるのではないかと不安で、うっかり順番を間違えるとやり直したくなるなど、強い不安や恐怖感などがあることで、やり過ぎと思える行動であっても止めることができなくなっているのです。
人から認められたいと願い、人から認められることが自分の存在意義のように思ってしまうことによる執着もあります。例えば、推しのアーティストを応援するためにライブ配信やSNSで送金する「投げ銭」。より多くの投げ銭をすることで、自分が誰よりも推していることを認められたいという歪んだ方向に転じてしまうこともあります。
完璧主義であるあるがゆえに、失敗したら自分のことを認めてくれる人がいなくなるなどの思い込みをもち、とにかく失敗を避けたいと思うことも理由の一つ。失敗したくないために、過去の栄光や昔の成功体験に心の中ですがってしまい、前進することや次のステップに踏み出すことを阻んでしまうのです。
他者評価へのこだわりが強く、人からどう思われるかを気にしすぎてしまう人もいます。他者から拒絶されることへの恐怖から、これまでと違う髪型にしたら否定されるのではないか、自分がやりたいようにやったら嫌われるのではないかと思うあまり、今に執着し、自分の行動を制限してしまいます。
今の自分に自信がなく、自分なりの評価基準をもてないから、外にある幸せや人の持ち物、やっていることを理想化して、こだわったり依存したりしてしまうケースもあります。依存し執着することで自尊心が維持できると思い込んでしまい、自分の存在意義を他者に求めて、自分を幸せにしてくれる人や物と思い込み、失わないようにしがみついてしまうのです。
このように、さまざまな理由がありますが、SNSでは理想化された関係性や幸せが投稿され、それを自分の現実や関係性に押しつけてしまうことがあります。
例えば、パートナーといい関係を築けているのに、SNS上にアップされるカップルのキラキラしている姿を見て、自分のパートナーに同じように求めてしまう。同じモノをコレクションしている人のアップする画像を見て、同じくらい所有しないと自分の価値や存在意義が劣ってしまうように思いこんでしまうのです。
すると本当の幸福感や充足感を見失い、執着から抜け出せない状態に陥ってしまいます。
そうした思い込みや執着から解放されるための方法を考えてみましょう。
では、執着を手放すための方法をステップ方式でご紹介します。
執着の対象は、人・モノ・コトがありますが、その対象からまず物理的に距離を置くことが重要。特に難しいのが、対象が人である場合です。モノやコトには感情がありませんが、対人間の場合、相手の感情まではコントロールできないからです。
例えば、恋愛でも夫婦関係でも、うまくいっているときはお互いが歩み寄り合えていたのに、仕事の忙しさや健康状態など何か歯車が狂ったときに、そういう時期もあると受け止めることができればいいのですが、距離を取ることができずに今すぐ過去の良かった関係に戻ることに執着してしまうことがあります。
するとどんどん過去を理想化して、当時の姿に戻れるよう相手をコントロールしたいと思う、一方、相手にしてみれば今の自分を見てほしいと思い、ハレーション(周囲への悪い影響)などが起きてしまいます。
負のスパイラルに陥らないためにも、まず物理的に離れて、執着している自分と対象を客観視する意識をもってみましょう。
失敗を恐れてついつい過去を見ていたり、どう思われるかが気になって知らず知らずのうちに自分の行動にブレーキをかけていたり、執着が強い人はマイナス感情にさいなまれて、自分を抑圧してしまいがちです。
抑圧している感情と向き合い、内省する時間を設けましょう。お勧めしたいのは、自分の心の状態を、なにがきっかけで、どう思って、何をしたのかなど紙に書いて、可視化・言語化してみることです。書いて振り返ってみると、自分を俯瞰することができ、SNSの情報がきっかけになっていたとか、上司の注意は私一人に向けられたものじゃなかったといったことに気づけます。
「1」の物理的に離れて客観視すること、「2」の自分の感情と向き合うことをで、執着でざわついてしまう心のベースを整えましょう。すると、執着の理由が見えてきたり、こだわっていると思い込んでいただけの自分に気づいたりします。自分なりの軸や価値観が見えてくるのです。
ここまでできたら、執着することによって自分は何を得ていたのかなと考えてみましょう。もちろん得たものもあるでしょう、一方で、こだわり続けたことで費やしてきた時間やお金、そしてネガティブな思いにとらわれることで気持ちまで浪費していたことにも気づくはずです。
無駄にしてきたエネルギーを認識し、そのエネルギーをより建設的かつ、心が豊かになる方向に向けられるように意識しましょう。
一つのことに執着をしていると、それがなくなったら生きていけないような精神状態になってしまう人もいます。特定の対象への過度な依存を避けリスクを分散するためにも、まず質の高い人間関係を築きましょう。人・モノ・コトのうち、自分ではコントロールできない対人こそ、複数方面に安心して喜びや楽しみを共有できる友人やパートナーがいることが大きな助けになります。
自分にはいつもこの人がいないとだめ、何もできないという思い込みの重しを外しましょう。今まではいつも誰かと一緒だったところにも一人で行ってみる、散歩をする。まずは自宅で何かを楽しむなど、“一人の時間をゆっくり過ごせる自分”を育てましょう。自分の軸が定まって、一つの人・モノ・コトへの固執を手放しやすくなります。
ここまで執着のマイナス面を見てお話してきましたが、執着がすべて悪いわけではありません。
例えば、職人や専門性のある人は、ある部分への強いこだわりや執着が、技術を高め成長させてくれるものになっているはず。こだわりをもつことで、自己成長のきっかけや朝鮮への原動力、生きがいや目標になることもあります。
ただし、執着の中に自分のネガティブな感情が生まれていると感じたら、原点に立ち返ることが大切。Step1~3を行ってみてください。
ストレス社会で生きる現代人の「心の免疫力」を高めるセッションを提供。個人カウンセリングや企業におけるメンタルトレーニングなどを行うほか、企業顧問として人事支援・育成アドバイザーとしても携わる。メディアでも活躍。著書に『心理カウンセラーがこっそり教える やってはいけない実は不快なしぐさ』(PHP研究所)、『本当の自分を見失いかけている人に知ってほしいインポスター症候群』(法研)など。