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陰謀論に飲み込まれ崩壊……「財務省解体デモ」の報道されなかった裏側

3月14日、霞ヶ関・潮見坂で行われた「財務省解体デモ」

3月14日、霞ヶ関・潮見坂で行われた「財務省解体デモ」

 今年の前半、「財務省解体デモ」なる社会運動が話題となったことを覚えているだろうか。東京・霞ヶ関の財務省庁舎をはじめ各地の財務局周辺に「財務省解体」を主張する人々が集まり、街宣活動が行われた。3月14日の「全国一斉財務省解体デモ」は千人単位の参加者を数え、複数の大手メディアでも報道された。  果たして、「財務省解体デモ」とは何だったのか? 11月28日刊行の『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』の執筆者の1人である山崎リュウキチ氏は、この運動を最初期から観察してきた人物だ。山崎氏がこの運動に注目した理由は、もともと観察対象にしていた反ワクチン・陰謀論コミュニティとの距離の近さを感じだからだという。山崎氏の予想通り、「財務省解体デモ」は陰謀論と排外主義に飲み込まれ崩壊、その後の反移民運動へと結びついていった。前編では、国民民主党の榛葉賀津也幹事長をして「いてもたってもいられない国民の悲鳴」とまで言わしめた「財務省解体デモ」の、報じられなかった「裏側」について解説してもらった。

「ディープステート」の代替概念としての財務省

2024年12月24日、財務省正門で行われた第一回「財務省解体デモ」

2024年12月24日、財務省正門で行われた第一回「財務省解体デモ」

 「財務省解体デモ」のきっかけは2024年11月にSNS上で巻き起こった財務省バッシングであった。もともとネット上の一部にみられた「財務省悪玉論」的な言説が、国民民主党代表の玉木雄一郎による10月30日のX投稿をきっかけに一気に噴出し、「財務省解体」がトレンドワードとなった。翌月17日、X(旧Twitter)上のあるユーザーが「財務省の解体を実現する」と宣言し「風の吹くまま市民団体」を旗揚げ、街宣への参加者を募った。これが「財務省解体デモ」の始まりである(その以前に経済評論家の池戸万作も財務省前での街宣を行っていたが、当初はお互いの活動を認識していなかったとみられ、直接的な接点はない)。  このユーザーはれいわ新選組の支持者ではあったものの政治活動の経験はなく、ネット上でも無名の人物だったが、反ワクチン系のインフルエンサーが投稿を拡散し、折からの反財務省トレンドに乗って注目を浴びた。反ワクチン系のインフルエンサーが拡散に協力したのは、このユーザーが反ワクチン傾向の人物でそうしたコミュニティへの呼びかけを行っていたこと、そして反財務省言説と陰謀論の親和性の高さが関係している。  税制や財務行政に対する直接の批判とは別に、財務省に対する「予算を人質に取りあらゆる国家機関を裏から支配する黒幕」というイメージを拡大解釈し、何らかの陰謀を実行する秘密結社のように扱う言説もまた広く見られている。2022年にワクチン接種会場襲撃事件を引き起こした反ワクチン団体神真都Qも、この当時はデモ行進で「国民の敵は財務省!」と主張していた。彼らにとって財務省は「影の政府」という本来の意味での「ディープステート」を代替する概念なのである。
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そして財務省前は「混沌」と化した
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陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点 陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点

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