「声優・松来未祐がもどかしい」
今月の10月27日
声優・松来未祐が逝って10年になる。早い。
毎年 彼女の命日には彼女を偲んで、松来の好きだった焼き肉を食べている。
1人で食べたり、家族と食べたり、そうとは伝えないままに誰かを誘って食べてみたり‥。とにかく10月27日は、ちょっと多めに肉を焼いて食べている。それでも、だんだん焼ける量が減ってきたのは許してほしい。
この年まで現場でやっていれば「声優さん」の知り合いも少なくはないが定期的にお酒の席を一緒にして頂いている声優さんは、5人いないと思う。松来・松来ちゃんはその中でもとにかく一緒に飯食ってた1人だった。
初めて一緒に仕事させてもらったのは僕が27歳、2個下の同中世代の松来ちゃんが25歳の時か。
「男女の友情は成立するか?しないか?」なんてバラエティで散々こすられたどうでもいいテーマになぞらえるなら松来ちゃんとはすごく友達だった。
僕が当時 大型バイクの免許を取ったもんで、とにかく誰かを後ろに乗せたくて家まで送らせてもらったり、それがいつからか車で送るルーティンにもなったり、彼女の30歳のはきゅんどきゅんなバースデーイベントを「ギャラ:焼肉代」で構成してみたり、僕が調子に乗ってハワイで上げた挙式にも来てもらったり。とにかく友達だったと思う。それが突然逝ったから、10年なんて大人にとっちゃすぐだから今なお「友達だ」の体感すらある。
違うって言うなら出てきて欲しい。めっちゃ謝る。
メールで次の仕事のことや相談なんかをしていた中で、松来ちゃんは突然逝った。最後は、9月29日にメッセージをもらっている。
「なにをおっしゃる笑笑。回復したら連絡します!」ってのが松来からの最後のメール。
7月くらいからのやり取りはまだ残っている。松来の声もしっかり覚えているから、まだあの声で脳内再生できる。
ただ、問題がひとつある。
健在でも10年会わない人もいる。くわえて未だ現場で毎日が忙殺な人生なので松来のことで過度に感傷的にはならないが、僕には松来未祐の思い出を語る相手がいない。だから、どうしても記憶・知識が薄まっては来てしまっている。もどかしい。年々もどかしい。親戚の命日・法事ならば なんだかんだで、おじ・おば・いとこ等と記憶をお互いに上塗りすることも可能なのだが、松来ちゃんのそれを何とかする術が僕にはない。その現実は致し方なく、だんだんと「焼肉を食べるだけの1日」にはなってきた。そういう現実・状況がいわゆるお炊き上げというものに繋がっていくのかなあとか受け止めつつ―やっぱりもどかしい。
とりあえず今年も10月27日に肉を焼く。
松来に今言いたいこと。
「カルビはもはや1,2枚で十分になっていくんだゆ」
