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何でもは積んでないわよ。積めることだけ。プロジェクタ内蔵タブレット「Blackview Active 12 Pro」

Active 12 Pro

 Androidスマートフォンやタブレットを続々リリースしているBlackviewから、市場の常識を覆すような“規格外”とも言えるスペックや装備のタブレット「Active 12 Pro」が登場した。OSにAndroid 15を搭載した“タブレット”だが、5G通信機能、30,000mAhの超巨大バッテリや最大120型相当まで投影可能なプロジェクタを内蔵するほか、IP69K準拠の防水防塵設計やMIL-STD-810H準拠の堅牢性も備えた、ありとあらゆる機能を詰め込んだ意欲作だ。

 8月18日より正式発売となり、記事執筆時のAliExpress価格はメモリ12GB+ストレージ256GBモデルが7万5,299円、16GB+1TBモデルが8万1,305円で、クーポンコード「JPAE60」利用でさらに9,300円割引となる。このたびサンプルを入手したので、レビューをお伝えしよう。

【16時40分追記】AliExpressでの価格を更新しました。

何でもは積んでないわよ。積めることだけ

 Blackviewは中国深センに本社を構えるShenzhen Doke Electronicのブランドである。XiaomiやOPPOなどの大手と比べれば製品数は少ないため、知名度は高くはないが、このところ低価格帯でのスマートフォンやタブレット製品を相次ぎ投入し、販路はAmazonやAliExpressといったECサイト限定ながらも、各製品において日本国内での展開に欠かせないTELECやPSE認証もしっかり取得するなど、日本市場に意欲的な姿勢を見せている。

 筆者も最近Blackviewのタブレットのサンプルをいくつか試しているが、どの製品も丁寧に作ろうという心意気が伝わってくる。低価格な製品はコストを切り詰めるため、液晶品質がイマイチだったり、目につかないところで言えばバイブレータや照度センサー、電子コンパスを省略したり、付属品もACアダプタ+SIMトレイイジェクトピン+USB Type-C充電ケーブルと最低限なものにしたりするのが常套手段なのだが、Blackviewの製品は意外にもそういった品質や機能面で妥協をせず、本来別売りとなるであろうタブレットカバーやガラス保護フィルム、タッチペンを添付してくれる。

 ではそんなBlackviewが、機能満載の高価格帯タブレットを作ったらどうなるのか?という答えの1つが、今回紹介するActive 12 Proだ。本製品に搭載される特徴的な要素を1個ずつ丁寧に紹介したらいくら時間があっても足りなさそうなので、まずはかいつまんでリストアップする。

  • 最大120型相当/200lmのプロジェクタを内蔵(!)
  • 30,000mAhの超巨大バッテリを内蔵
  • IP68/IP69K準拠の防水防塵とMIL-STD-810H準拠の堅牢性
  • Dimensity 7300搭載で5G通信対応、最大メモリ16GB+ストレージ1TB
  • 着脱可能なキックスタンド付き

 筆者は「タブレットなのにプロジェクタ内蔵」というポイントを聞いただけでも「は!?」と反応してしまったが、通常利用では無尽蔵と言えそうな30,000mAhバッテリや、アウトドアでも使えるタフネス性、大容量のメモリとストレージなどもありますと言われると、「搭載できそうな要素や部品を全部詰め込んでみました」感しか漂ってこない。

 そんなActive 12 Proは果たして単なるキワモノに終わるのか?それとも新しい市場を切り開くデバイスなのか、1個ずつ要素を見ていこう。

本製品の核。プロジェクタ機能の実力を探る

 では、まずは本機の最大のウリである内蔵プロジェクタ機能について見ていこう。仕様としては1,920×1,080ドット(フルHD)解像度で、輝度は200lm。外部センサーによるオートフォーカス機構と、上下20度/左右60度ずつ台形補正も搭載しているため、実用性はかなり高い。

 持ち運び可能な小型のプロジェクタは一般的に解像度と輝度が低い(HD程度+100lm未満)ため、「どうせオマケ程度の機能だろう」と高を括っていた筆者だが、その考えは良い意味で完全に裏切られた。壁に投影された映像は鮮明かつ明るい。夜間の室内なら文句なし。そして昼間のような明るい部屋でも、照明を落としてカーテンを閉めれば、十分に楽しめる視認性を確保していた。

プロジェクタの部分
投影しているところ

 ちなみに投影距離などについて製品情報で記述されていなかったのだが、実際に試したところ約1.5m離れた状態からの投影で画面サイズは約52型、約3.2mで約106型相当となった(若干角度が付いている)。

 本機は著作権保護のWidevine L1に対応しているため、Netflixのような動画配信サービスではフルHD解像度で内容を楽しめるわけだが、それに見合うスペックのプロジェクタを備えている。本機のテストのために、ダイニングの壁に「孤独のグルメお正月スペシャル」を投影して楽しんでいた筆者だが、気づいたら家族が集まり、1話をがっつり鑑賞してしまった。

 個人的におすすめなのは「寝ながら天井シアター」という使い方。これが最高の一言に尽きる。大型のプロジェクタでは容易にこれを真似できないだろう。ゴロ寝しながら天井に50型級のスクリーンが現出する様は、まさに至福。一度この怠惰な快楽を味わってしまえば、もう後戻りはできない。

床置きで天井に投影したところ。天井に近いベッドだとここまで大画面にはならないが迫力は満点だ

 過去には寝ながらコンテンツを鑑賞するならメガネデバイスもアリだとは思ったのだが、目の周りに意外な重さのしかかってストレスになるほか、そのまま寝落ちしてしまうとデバイスが破損する可能性もあって結局やめた経緯がある。プロジェクタならそのような心配はない。

 シアターのみならず、ゲームコントローラをつなげて「寝ながらゲームプレイ」という使い方もおすすめだ。タブレットやスマートフォンだと仰向けの姿勢では腕が重力に逆らうためどうしても疲れるが、コントローラだけならリラックスした姿勢で操作可能なためゲームが捗る。後述するが、本機に搭載されるSoCのDimensity 7300はある程度の3Dゲームプレイに耐える性能を備えているので、なおさらおすすめである。

壁さえあれば、どこでも大画面ゲーム。コントローラを繋げれば寝たままでも快適プレイ

 また、企業内においても、小規模な会議室なら、これ1台でプレゼンが完結できそうだ。この時点で、本機がただのエンタメマシンとしてだけでなく、さまざまな用途に利用できることがお分かりいただけるはずだ。

 なお、投影に関しては専用アプリ「プロジェクター」を利用し、それでプロジェクタの電源を投入するだけ。数秒後にAndroidの画面がクローンの形で投影される。輝度調整やオートフォーカス/マニュアルフォーカスなどの設定もこのアプリから行なう形だ。一度起動すれば半透過のバブルで常駐するため、即座に呼び出すことが可能だ。プロジェクタ利用中は一定時間が過ぎると液晶のバックライトがオフになるが、プロジェクタ側はオフにならず投影が続けられる。液晶画面が暗くなってもちょっとタッチするだけで復帰する仕組みだ。

アプリ「プロジェクター」で投影を行なう
投影中は画面にバブル(スクリーンショット左やや上の青いバブル)が表示される。しばらくすると半透過になるので目立たない
バブルをタップするとすぐにさまざまな設定が行なえるので便利

 オートフォーカスが有効な場合、本体を動かしたりすると自動で再度フォーカス調整が行なわれるのだが、これに5秒程度時間がかかり、その間調整専用画面が表示されるので、コンテンツがいったん非表示になってしまう。本体を大きく移動しないのであれば、最初だけオートフォーカスを利用し、その後は機能を切ったほうが良いシーンもあった。

 本機はプロジェクタのLEDを冷却するために冷却ファンを内蔵している。このファンは今回の使用中継続的に回転するのではなく、一定の周期で回転しはじめる。ファンの回転数がそこそこ高く筐体も薄いためか音は気になった。ここはできれば今後のチューニングで回転数を一定に抑えて連続動作してほしい。

アクティブな使い方にマッチするタフな筐体

 そのほかの特徴についても追っていこう。まずはその重厚なデザインからだ。本体サイズは280.4×172.9×21.8mm、重量は1,522g。ハンドルをつけると1,681gに達する。一般的な11型タブレットが500g前後であることを考えると、約3倍の重量であり、カバンに入れて気軽に持ち運ぶ……というよりは、しっかりと「据えて」使うためのデバイスだ。

タフな筐体は重さとトレードオフ。1,681gは14型で軽めのゲーミングノートPC並みだろう

 しかし、この重量は、プロジェクタ機能はもとより、堅牢性とトレードオフにある。筐体は強化複合素材で設計された「IronShell」で覆われ、四隅はさらに厚く補強されている。USB Type-CポートやNano SIM/microSDカードスロットは、防水性を確保するためにゴム製のカバーでしっかりと保護されている。

付属品。そもそもCorningのゴリラガラス5なのでさすがにガラス保護フィルムは付属していないが、タッチペンやSIMトレイイジェクトピン、マイナスドライバなどが付属する。ACアダプタは海外市場向けで、日本向けに出荷されるものは別途用意される
いかにもタフそうな背面
付属のキックスタンド装着時
本体上部。音量調節ボタンやショートカットボタン(カスタマイズ可能)、プロジェクタのレンズと距離自動調節用のカメラ、排気口などを備えている
インターフェイスはカバーでしっかり保護。USB Type-CとSIMスロット、microSDスロットも装備

 このため、米国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」に準拠し、(あくまでもラボでの計測とのことで実利用では異なる注釈付きだが)高さ1.5mからの強い衝撃落下や、高さ12mからの自由落下、2.2tの圧力、-20~60℃の温度に耐える。防水防塵性能もIP68に加え、高圧水流に対するIP69Kに対応しており、アウトドアや粉塵の舞う現場など、過酷な環境でも躊躇なく使用できるだろう。さらに、UL94 HB難燃性認証も取得しているとのことだ。

 通気口が見えるファンを内蔵しているのに、このような仕様をどのように実現したのか、正直ちょっと目を疑うレベルなのだが、手荒にデバイスを扱うシーンを想定しているか否か……というより、いざという時の安心感を高めた仕様に仕上げたと言えるだろう。

 背面には、ネジ穴が4個用意されている。標準ではU字型の堅牢なキックスタンドが付属し、特にプロジェクタ投影時の角度調整にも便利なようになっている。一方でオプションではハンドストラップやショルダーストラップが用意されるとのことで、さまざまな形態で運用できる。

 また、背面上部左右には合計303個のLEDによるキャンプライトが搭載されており、最大400lmの照明になる。この機能は「ツール」の中に用意されており、輝度は3段階に調節可能だ。なお、過熱を防ぐためかタイマーが必ず有効となっており、標準では5分、最長で30分の照射が可能。また、連続照射に加え、SOS信号モードおよび点滅モードも備えている。

303個のLEDによるキャンプライト
最大400lmのLEDライトも内蔵する

 ディスプレイは1,920×1,200ドット/90Hz表示対応の12型。最大輝度は600cd/平方と明るく、視認性は良い。カメラのハードウェアにもこだわっており、背面は最大1億800万画素のSamsung HM6センサー(1/1.67インチ)、前面は最大5,000万画素のSamsung JN1センサー(1/2.76インチ)となっている。ただ、実際に撮影できる写真はのっぺりしている印象なので、過度の期待はすべきではない。

Dimensity 7300搭載でタブレットとしての基本性能も優秀

 プロジェクタ機能に目が行きがちだが、タブレットとしての基本性能も非常に高いレベルにあるのも、Active 12 Proの特徴だ。

 SoCは、TSMCの4nmプロセスで製造されたMediaTekのアッパーミドルSoC「Dimensity 7300」を搭載。高性能コアCortex-A78(2.5GHz)×4と高効率コアCortex-A55(2GHz)×4で構成されるオクタコアCPUと、Mali-G615のGPU、そしてMediaTek独自のAPU 655が内蔵されている。これに加えてメモリは最大16GB、ストレージは最大1TBとなっているので、容量に関してもハイエンドスマートフォン顔負けのレベルだ。

 参考までに「PCMark for Android」、「3DMark」のWild Life、「Geekbench 6」などを実行したところ、同じDimensity 7300を搭載したJelly Maxの性能を上回った。本製品は筐体サイズに余裕がある分放熱設計も高度だ。熱拡散ジェルは417平方mm、グラファイト面積は1,215平方mm、ヒートパイプ面積は1,100平方mm、銅箔は10,300平方mmなどとされているほか、3,800rpmのファンも内蔵している。高CPU負荷時でも温度は39℃だといい、速度低下はまったくないと謳われているので、当たり前と言えば当たり前だ。

PCMark for Android
3DMark Wild Life
Geekbench 6のCPUベンチマーク
Geekbench 6のGPUベンチマーク

 3Dゲーム「崩壊: スターレイル」や「ゼンレスゾーンゼロ」をプレイしてみたところ、グラフィック設定を「中」にすれば、いずれも滑らかな動作が可能だった。ゲーム体験については、同じDimensity 7300を搭載したUnihertzの「Jelly Max」に似通っている。メモリは16GBと容量が大きくストレージも高速なUFS 3.1規格を採用しているほか、Wi-Fiのアンテナも強いためか、ゲームのアップデートから起動まで、スムーズそのものだった。しかし、先述の通りプロジェクタを使えば大画面でプレイできるので、スマートフォンゲームをこれまでにない体験でプレイできるのが本機のポイントだろう。

 さらに30,000mAhという大容量のバッテリを搭載しているため、バッテリ駆動時間も驚異的。実際に崩壊: スターレイルを輝度95%の状態で投影しながら1時間20分ほどプレイした(画面タッチ操作なので画面も点いているが)ところ、容量は20%強ほどしか消費しなかった。タブレット単体での利用や、動画だけの投影ならもっと緩やかに消費していくことだろう。これなら「プロジェクタはバッテリを消費するから本当に使う時だけ使おう」ではなく、より積極的に利用しようという気分にもなるはずだ。

 ちなみにOSはAndroid 15をベースとして独自カスタマイズを施した「DokeOS_P 4.2」が採用されているが、そのカスタマイズは控えめで素のAndroidのような操作感で利用できる。オマケ(?)として、AIアシスタントアプリ「Hi Doki」や、AI写真編集ツール「ImageX」、AIビデオ編集ソフト「VidGen」がプリインストールされているが、いずれもサブスクリプション形態のアプリなので、ここでは紹介を省く。

唯一無二の価値を持つ「遊べる実用機」

 「Blackview Active 12 Pro」は、一見すると詰められる機能を全部詰め込んだキワモノ製品のように見えるかもしれない。しかしその実態は、堅牢なタフネス性能という土台の上に、高性能で5G通信も可能なタブレット、そして実用的なプロジェクタという3つの要素を高いレベルで融合させた、ユニークで完成度の高い製品だ。

 「5Gタブレット」で「プロジェクタ付き」というのは確かに本製品が初だが、実はプロジェクタ付き4Gタブレットや5Gスマートフォンなら、かのUnihertzのサブブランドである「8849」から既にリリースされていたりするので、ジャンルとしては意外と「需要がある市場」だったりする。

  • アウトドアキャンプで、家族や友人と大画面の映像や写真を楽しむ
  • 建設現場や工場で、図面や資料をその場で投影し共有する
  • 寝室やダイニングをシアターまたはゲーム部屋に変える

 このような、これまで複数の機材が必要だったシーンを、本機1台で完結させることができるのが製品の存在理由だろう。もちろん「約1.5kgのタブレット」という重量の前提では確かに人を選ぶが、ほかでは得られない体験がある。特にコストパフォーマンスが高い16GB/1TBモデルは、タブレットをガッツリ使いたいユーザーにとっても魅力的だ。

 筆者はプロジェクタの可能性が好きだ。ありとあらゆる場所がスクリーンになるからだ。しかしいざ導入となると、(ポータブルだと)輝度が不足していたり電源がネックだったり、(据え置きだと)設置場所が邪魔だったりとハードルが高かった。Active 12 Proはそんなプロジェクタのハードルを引き下げて、新たな可能性を見出させてくれる。

 つまりこれは単なるタブレットではなく、あらゆる場所を仕事場や遊び場に変えてしまう可能性に満ちたポータブルソリューションだ。新しいガジェット体験を求めるすべてのユーザーに、一度手に取ってみてほしい。

【8時30分訂正】タイトル修正しました