働き始めてから、本を読む時間がどんどん減っていませんか?
朝はTech系ニュース、昼は公式ドキュメント、夜はQiitaやZennの記事……。
私たちエンジニアは、学び続ける日々の中で、気づけば本を開かなくなっていることがあるのです。
そしてある日、ふと気づきました。
「学んでいるのに、なぜか思考が浅くなっている」と。
それは、働く日常に追われ、考える時間と語彙を磨く時間が失われていたからです。
学ぶことに忙しくて、「考えること」を忘れていた
情報を追うスピードが上がるほど、
自分の頭で考える時間はどんどん削られていきます。
何か問題が起きれば、すぐ検索し記事を見たりAIに聞いたりコピペして解決。
それは効率的だけど、「なぜそうするのか」という思考を通過してしまう。
でもある日、なぜこのロジックにしたのか理由を聞かれて言葉に詰まったんです。
「なぜこの実装にしたのか」を説明できない。
コードは書けても、考えを言葉にできない。
そのとき初めて、「自分には語彙がない」と気づきました。
読書は“思考のデバッグ”だ
コードのバグを見つけるように、思考にもバグがあります。
読書は、それを浮き彫りにしてくれる行為です。
他人の文章を読むことで、
「自分ならこの表現をどう書くか」
「なぜこの人はこういう考え方をするのか」
という思考の分岐点に出会います。
たとえば哲学書を読めば、当たり前だと思っていた前提が壊れる。
小説を読めば、登場人物の“感じ方”に自分の視野が広がる。
ビジネス書を読めば、チームやプロダクトを俯瞰する視点が身につく。
読書とはつまり、他人の思考を借りて、自分のバグをデバッグする行為なんです。
読書が「語彙力」と「説明力」を鍛える
エンジニアの仕事には、説明がつきものです。
コードレビューで意図を伝える。
チームメンバーに設計思想を説明する。
お客様に「なぜできないのか」を言葉で納得してもらう。
そのときに“知識”はもちろん“語彙”も必要です。
どれだけロジックが正しくても、伝わらなければ意味がない。
「うまく言葉が出てこない」「正確に伝わらない」という場面ほど、
自分の中の“言葉のストック不足”を痛感します。
読書は、そのストックを増やしてくれる。
とくに小説やエッセイは、同じ感情や状況を多彩な言葉で表現します。
それに触れることで、「伝わる言葉」「届く言葉」を選べるようになる。
読書で増えるのは知識に加え、“言葉の精度”だ。
精度の高い言葉は、エンジニアにとって最も軽くて強力なツールになる。
語彙が増えると、レビューコメントが優しくなる。
質問が明確になる。
相手に伝わるスピードが速くなる。
それはチーム全体の生産性にも直結します。
ジャンル別に得られる“思考力”の違い
| ジャンル | 得られる力 | 例 |
|---|---|---|
| 小説 | 共感力・ユーザー視点・言語化 | 「この仕様は誰のため?」と考えられるようになる |
| 哲学書 | 抽象化・問題定義力 | 「本当にこの問題を解くべきか?」と問えるようになる |
| ビジネス書 | システム思考 | 技術を“価値”に変換する力がつく |
| 技術書 | 構造化・再現性思考 | 「なぜ動くのか」を説明できるようになる |
どの本にも“思考の型”が隠れています。
エンジニアリングは「論理の世界」ですが、
本を読むことで「人の世界」「社会の世界」「言葉の世界」に触れられる。
結果として、技術を使う人間への理解が深まります。
読書は“長期的な開発投資”である
読書は即効性のあるスキルではありません。
1冊読んでも、すぐ成果が出るわけではない。
でも、長期的には確実に効いてきます。
数年後、「なぜこの設計にしたのか」と問われたとき、
自信を持って説明できるようになっている。
レビューコメントを書くとき、相手の受け取り方を想像できるようになっている。
それは、読書が育てた“思考と言葉の筋力”のおかげです。
コードは1年で古くなる。
けれど、思考は一生使える。
読書は、あなた自身の“思考エンジン”をアップデートする行為です。
技術が変わり続ける時代だからこそ、「本を読むエンジニア」が強いのです。
最後に
この記事を読んだ今日だけでも構いません。
スマホを閉じて、紙の本を1ページだけ開いてみてください。
その1ページが、あなたの思考を静かにデバッグしてくれるかもしれません。
筆者の読書記録
読む本に困った時は以下も参考にしてみてください。
引用
タイトルのみ引用させていただきました。