冷静に考えて、私(サンジュン)は「老害プロレスファン」なのだろう。プロレスに熱中したのは30年ほど前の中高生の頃。Xのタイムラインに流れてくるプロレス動画も当時のものが圧倒的に多い。

そんな老害プロレスファンが超久しぶりにプロレスを観に行った話については以前の記事でお届けした。その興行で私はあるプロレスラーにハートを鷲掴みにされてしまったのである──。

・老害プロレスファン

中高生の頃、私は長州力こそ世界最強だと信じてやまないピュアな少年であった。ここだけの話、長州力が好きすぎて「俺の本当の父親は長州なのでは?」と意味不明な幻想に捉われていた時期もあった。

長州の鬼神の如き強さに憧れていた私は、当然ながらゴリゴリの新日本プロレス派。全日も観ないわけではなかったが、いわゆる “インディー” を下に見ていたことは正直にお伝えしておく。

あれからは数十年が過ぎたが、今でもプロレスが好きではある。一方で「今のプロレスが好きか?」と言われたら、素直に「好き」と言えないのが老害プロレスファンの面倒くさいところなのだろう。

・今のプロレスを体感

そんな私はつい先日 “今のプロレス” を体感すべく「プロレスリングZERO1」の大会に出かけた。聖地・後楽園ホールでの熱闘は想像を上回るもので、素直に「今のプロレスもスゴイな」と感じた次第だ。

特にメインイベントの「ハヤブサ vs 清宮海斗」は試合としての完成度が異常に高く、私が重視する “気持ち” が見えたことも大きい。その他の試合も見所が多かったと言っていいだろう。


そんな中……


私のハートを鷲掴みにしたのだが……


黒潮TOKYOジャパンである!


後から知ったことだが黒潮TOKYOジャパンは「世界一入場が長い選手」だそうで、マジで全ッ然リングインしねえ! 想像を絶するしつこさに根負けした私は、気付けば黒潮TOKYOジャパンから目が離せなくなっていた。

かつて私が憧れた超1流のプロレスラーたちは、ほぼ全員が「観客をコントロールする能力」に長けていた。「さては彼も超1流なのでは……?」とあの日以来、黒潮TOKYOジャパンから目が離せなくなっている。

・黒潮TOKYOジャパン

さて、ここで黒潮TOKYOジャパンのプロフィールを簡単にご紹介しておこう。私も日が浅いため不確かなこともあるかもしれないが、Wikipediaによれば黒潮TOKYOジャパンはこんな選手のようだ。


「プロレス好きの両親の影響でプロレスラーになる(お父さんはスペル・デルフィン推し)。最初のトレーナーはTAJIRIで、その後は船木誠勝や近藤修司に師事。WRESTLE-1に所属後、フリーになり2020年にはWWEへ。

2023年に帰国し、現在は「プロレスリングアップタウン」を設立。アップタウンで興行を行う傍ら、様々な団体に出場。愛称は “イケメン” の33歳。ジャケットを着ながら戦う」


経歴を見る限り、私の大好物 “ストロングスタイル” の遺伝子は薄いようだが、TAJIRIや近藤修司の達人ぶりは誰もが認めるところ。引退間際の武藤敬司が「期待するレスラー」として彼の名を挙げていたこともあった。

前置きが長くなったが「アップタウンでも観に行ってみようかな~?」と考えていたところ、なんと以前の記事をご覧になったアップタウンの関係者の方から「良ければご招待します」と連絡が。

これは渡りに船……というわけで、11.29新宿FACEで開催された「1カ月遅れのハロウィンホラーナイト」に足を運んできた次第である。

・初アップタウン

で、興行名の「1カ月遅れのハロウィンホラーナイト」からもお分かりの通り、全体を通していわゆるコミカル路線の内容。ストロングスタイルの気配はほぼ無かったと言っていいだろう。だがしかし……。


バラモン兄弟(と黒潮たち)の水攻撃に怯え……


「フリーザー vs 魔人ブウ」のコスプレマッチに見入り……


てか、魔人ブウは鈴木みのるやぞッッ!


会場を揺るがす「雑魚チ〇コ」コールに笑い……(どんなコールだよ!)


なぜか「ごぼうシバキ合い対決」まで!!


気付けば時間はあっという間に過ぎ去っていた。個人的には立花誠吾選手が「いい選手だな~」と感じ、児玉裕輔選手もフリーザじゃない試合を1度観てみたい。

また観客の一体感を生み出していたという意味ではブラスナックルJUN選手も印象的。正直ほとんどが初見のレスラーたちであったが、いずれも見応えのある内容であった。

・空気感の良さ

私がそう感じたのは選手の力量もさることながら「観客の参加するぞ感」が強かったことが大きい。この日、新宿FACEにいた観客の多くは「プロレスを観に来た」というより「アップタウンに参加しに来た」という感覚ではなかっただろうか?

ポイントポイントで起こるコールもそう、選手の動きと連動した掛け声もそう。決して広くはない新宿FACEの隅々まで、お客さんたちの「参加するぞ感」があふれていたのが最も印象的だ。


なお、メインイベントの「黒潮TOKYOジャパン vs 征矢学」は……


やっぱり黒潮が全然リングインしねェェエエエエ!


1曲どころか2曲目でも入場しNEEEEEEEE!!!!!


3回目でやっと入ったと思ったら……


次は試合が始まらねぇぇぇえええええ!!!!!


ほぼ何もしてないのに「試合時間5分経過」には笑った。


実はこの日、私は小学3年生の娘を連れていたのだが、娘も黒潮TOKYOジャパンの入場には「ああ! また入らない!!」と釘付けになっていた。プロレス初見の小学生すら手のひらで操ってしまう黒潮TOKYOジャパン、恐るべし。

※ 余談ですが娘は「水攻撃」と、ブレーンバスターなどの投げ技が怖かったようです。帰宅後は母や祖母に黒潮TOKYOジャパンの入場をYouTubeで見せていました。


メインイベントは筋肉隆々の実力者・征矢学に引っ張られ、黒潮TOKYOジャパンの実力が一瞬垣間見えた……気がする。

黒潮TOKYOジャパンの運動能力及びにプロレス脳が高いことはわかっていたが、それを改めて試合で確認できたことは推し活の一環として良かった。じゃないとWWEには行けないよねぇ~。

・MVPは観客

結果的に老害プロレスファンでもおよそ2時間半の興行を楽しむことが出来たし、その間「今のプロレスはけしからん!」と感じることは1度も無かった。

無論、私の苦手な「選手の会話」や「パチン」も多くあったが、それを自然と受け入れられたのはアップタウンに参加してる観客たちの空気感が非常に大きい。

彼らがそれらを受け入れているどころか望んでいるのであれば、老害である私がヤイヤイ言うことではないからだ。むしろ決して広くはない新宿FACE級の会場では有意義なテクニックなのかもしれない。

というわけで、老害プロレスファンでも会場に足を運びさえすればきっとプロレスを楽しめるハズ。しばらく生観戦していない方は、どこかの会場へ足を運んでみてはいかがだろうか?


【告知】プロレスリングアップタウンは12.27と12.28の土日、新宿FACEで2連戦を開催するとのこと。初日は鈴木みのるがタイトルマッチやるってよ! 翌日はその勝者と黒潮が戦うってよ!! チケットはこちらからどうぞ。


取材協力:プロレスリングアップタウン(公式X)
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.