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『ザ・ホエール』ブレンダン・フレイザー、オスカー受賞よりも嬉しかった「一通の手紙」 ─ アカデミー賞裏話を語る【来日単独インタビュー】

ザ・ホエール

ブレンダン・フレイザー。『ハムナプトラ』シリーズ(1999 – 2008)や『センター・オブ・ジ・アース』(2008)で一斉を風靡したハリウッド俳優のフレイザーは長年の間、表舞台から姿を消していた。健康問題や結婚生活など、様々な事情が絡んだものだったが、後にセクハラ被害による鬱症状が大きな要因だったことが明らかになる。

そのフレイザーが、『ザ・ホエール』魂の演技と共に帰還した。演じたのは体重272キロ、極度の肥満症を抱えた男、チャーリーだ。自身の死期が近づいていると悟ったチャーリーは、疎遠になっていた娘との関係を修復するという、人生最後に思い残したことに向き合うことを決意する。過去の苦悩を乗り越えようとする姿が、フレイザーにも重なる。

この熱演でフレイザーは、第95回アカデミー賞主演男優賞を受賞。オスカー像を握りしめながらの感動的なスピーチは大きな話題を呼んだ。THE RIVERでは、受賞をひっさげて来日したフレイザーに、単独インタビューを行った。

『ザ・ホエール』主演 ブレンダン・フレイザー 単独インタビュー

ザ・ホエール

──アカデミー賞受賞、本当におめでとうございます。受賞の瞬間のあなたの反応がとても印象的でした。名前が呼ばれた後、恋人にキスをして、息子さんにハグをして、コリン・ファレルと握手をして、そしてステージに向かう間、頭の中ではどんなことを考えていましたか?

ありがとうございます。まるで幽体離脱をするようでした。あの時僕が考えていたのは、拍子抜けされるかもしれませんが……、”持ち時間は45秒しかないぞ!”ということでした(笑)。だからその時は、早くステージに向かわないと!って。

完全に驚愕していましたよ。それから、”申し訳なさ”というわけではないけれど、それに似たような感情が……。

なぜなら、今年のあの部門は、どれも力強い演技ばかりだったから。誰が選ばれてもおかしくなかった。コリンも素晴らしかったし、ビルも素晴らしかった。全員がそうでした。だから、本当は全員揃って受賞したかった。でも、そういうわけにはいかない。受賞できるのはたったのひとりだけなのです。

スピーチでは、みんなに伝えたかったんです。まず、僕がどれだけ深く彼らを尊敬しているか。それから、自分が選ばれたことがどれだけ光栄か。なぜなら、あの瞬間まで、誰が受賞するのか、僕たち全員、誰も知らなかったからです。本当に、誰も、誰も、誰も知らない。下馬評は一切関係ない。誰が受賞するのかという答えが、ようやく判明して嬉しかったです(笑)。

──どれくらい受賞できると思っていましたか?

僕ですか?全く思っていませんでしたよ。何も期待なんてしませんでした。ノミネートされただけでも、幸せで光栄でしたから。

ノミネートされると、受賞するかもしれない場合に備えて、準備をしておく責任が生じるんです。自分が選ばれる可能性があるのだから、受賞式で名前が呼ばれたときに、どう振舞うか、何を言うかを考えておくんです。表現とか、言葉とかフレーズとか、そういうのをね。僕にとっては、火事になった時とか、緊急事態用の、ガラスケースの中にあるハンマーみたいなものでした(笑)。

僕も今回ノミネートされて知ったんだけれど、ノミネートされた人は全員、そういう準備をしておくんです。カンニングペーパーをポケットに忍ばせる、まではしないものの、スピーチを空で言えるように、頭の中に叩き込んでおく。あとは最善の結果を期待して、心で語るのみです。

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──監督のダーレン・アロノフスキーとは、受賞後にどんなお話をされましたか?

個人間のやりとりに留めておきたいものばかりなんですけれど、これは言えます。ダーレンは大喜びで、こう言いました。”やったね。それも、あなたのやり方で”。それから、”あなたは大きな誇りです”とも言ってくれました。

彼のことは、フィルムメーカーとしてずっと尊敬していました。これまで、彼はいくつもの重要な作品を作ってきました。偽りなく、淡々と人間像に迫るような、目を逸させまいと観客に挑むような作品です。それが彼の行ってきたこと。極めて真摯な仕事です。

それこそが『ザ・ホエール』が求めたものでした。ただひたすら、ストーリーに邁進するということです。これはアクション映画ではないし、あまり画が動くタイプの作品でもない。ただ、心のアクション映画とでも言いましょうか、感情が大いに燃えている作品です。

ダーレンからは、二つのことを求められました。「最高の仕事をしてください」「弱者意識を持って万全の準備をして、リスクに挑んでください」というものです。

自ら危険に向かって突き進むようでした。人間の直感として、例えば何かが燃えているのを見たら、普通は逃げますよね。ただ、クリエイティブな場面では、その火に向かって突き進んでいき、”なぜ燃えているのか”を調べる必要がある。それこそが、ダーレンと映画を作るときに取り組むリスク。だからこそ最高の映画ができるのです。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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