The Wayback Machine - https://web.archive.org/web/20091225155311/http://incidents.cocolog-nifty.com:80/the_incidents/2005/12/14br_cd2e.html

« 共謀罪を語る(6)
三宅勝久さん(ジャーナリスト)
| トップページ | 山岡俊介氏を誹謗中傷する記事に関連し
「武富士が現金を提供」という衝撃的な証言 »

2005年12月31日 (土)

警察庁記者クラブ事件(14)
韓国で記者クラブが廃止されたいきさつ

 近年まで韓国にも記者クラブが存在した。もともと日本が占領時代、持ち込んだものだ。

 戦後、韓国政府は情報とメディアをコントールするため、積極的に記者クラブを利用した。メディアも様々な便宜が受けられる記者クラブに依存するばかりであった。

 そこに批判される者と批判する者との対峙などなく、両者とも共存共栄で談合がくり返された。ひいては国民の「知る権利」が侵害され、税金の使途から見ても、特定メディアだけが便宜を受けることは問題があった。

 1990年代以降、インターネットが普及し、市民が主体的に情報をやりとりするようになると、記者クラブが「百害あって一利なし」と認識されてきた。正確な情報を伝達するうえで、記者クラブは障害でしかなかった。

 2001年3月、仁川(インチョン)国際空港オープンに際し、インターネット新聞『オーマイニュース』記者が、同空港公社の社長や副社長の記者室で行われるブリーフィングへ参加しようとした。しかし、記者クラブ加盟社記者らと公社職員らにより実力で記者室から排除され、取材ができなかった。

 既報〈日本でも『オーマイニュース』はつくれる!?〉〈『オーマイニュース』の現在と未来〉でも伝えてきたとおり、『オーマイニュース』は2000年2月に設立され、毎日、数十万人が閲覧している、大きな影響力があるメディアだ。それにもかかわらず、記者クラブに加盟していないという理由のみで、公的機関が行うブリーフィングから排除されたのである。

 2001年5月4日、『オーマイニュース』記者は仁川地方裁判所に、「仁川国際空港公社と記者クラブ、同加盟社各社は、自分が記者室に出入りし、取材することを妨害してはならない」という仮処分命令を申し立てた。

「申立書」は、呉連鎬(オ・ヨンホ)『オーマイニュース』最高経営責任者の許可を得て、全文後掲する(翻訳者は折山さえ子氏)。とても格調高い文章なので、ぜひ通読していただきたい。

 一方、『オーマイニュース』は、自社記者が仁川国際空港記者室から排除されたドキュメントも含め、たびたび記者クラブ問題を取り上げた。これにより、市民がますます記者クラブに対する批判を強めたのはいうまでもない。

 2001年7月24日、仁川地裁は仁川国際空港公社に対し、「『オーマイニュース』記者が記者室に出入りし、取材することを妨害してはならない」という仮処分命令を出した。記者クラブと同加盟社各社に対する命令が出されなかったのは、そもそもそれらが記者室を独占的、排他的に無償で使用する権利などなく、『オーマイニュース』記者を排除する権利などないことも、自明だったためと思われる。

 世論が記者クラブを強く批判していたこともあり、仁川国際空港公社は上訴できず、仁川地裁決定が確定した。

 以後、記者クラブは解体へ向かう。2002年12月、インターネットで支持を広げた盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏が大統領に当選すると、それは決定的となった。盧大統領は青瓦台(大統領官邸)や省庁の記者クラブを廃止し、その動きは公的機関、地方へ波及した。現在、韓国に記者クラブは存在しない。

 筆者は漆間巌警察庁長官の記者会見へ出席しようとしたが、警察庁と同記者クラブから妨害されたため、『オーマイニュース』記者と同様の仮処分命令を裁判所に申し立てている。しかし、これは東京地方裁判所と東京高等裁判所で棄却され、最高裁判所で係争中だ。

 もはや日本にしか存在しなくなった、「百害あって一利なし」の記者クラブは、直ちに廃止しなければならない。

出入り及び取材妨害禁止仮処分申立書全文

5月4日 インチョン地方裁判所提出

出入り及び取材妨害禁止仮処分

申立人 チェ・ギョンジュン

被申立人 インチョン空港出入り記者団他22

インチョン地方裁判所御中

出入り及び取材妨害禁止仮処分

申立人 チェ・ギョンジュン
(住所略)

上記申立人の代理人 法務法人 タサン総合法律事務所
スウォン市 パルタル区 ウォンチョン洞 81の6 ポプチョンビルディング 210号
担当弁護士 キム・チルジュン、イム・チャンギ、チェ・ミョンジュン、チェ・ガンホ、パク・テヒョン、ソン・ナンジュ

被申立人 別紙の通り

被保全権利 公共施設利用権及び言論の自由(取材の自由)に基づく申立人の取材権

申立の趣旨

 被申立人らは、申立人がインチョン広域市 チュン区 ウンソ洞 2172の1所在 インチョン国際空港庁舎2階出入り記者室に出入りすることを妨害したり、上記の場所で取材することを妨害してはならない、という裁判を求めます。

申立理由

1.序文
イ.最近、言論改革が我々の社会の熱い話題となっています。
 周知の通り、過去の独裁権力は、自身の体制を強固にするために、“飴と鞭”で言論社主(オーナー)を飼い慣らし、言論を統制してきました。大部分の言論は政権の広報媒体に転落し、言論の自由はどこにもありませんでした。
 やがて、我々の社会に民主主義が進展し、それと同時に国家権力の力による統制は弱くなりましたが、言論は依然として、国民の知る権利を実現する、本当の言論に生まれ変わることはできませんでした。何者かによって、はるかに隠密な方法で操られ、統制されてきたのです。
 今、言論を統制しているものは、一体何なのか。
ロ.今まで、我々の社会では、少数の巨大な言論社(報道機関)が言論市場を支配してきました。これらの言論社は、自分達の支配力を利用して、自分の意図に沿って世論を創り出し拡散させ、このような力をもとに強大な言論権力を手にすることができました。
 また、このような言論社の後ろには、常に言論社主がいました。言論社主達は、独占的な所有支配構造を通じて言論社を支配し、言論社の編集方向はもちろん、具体的な記事の取捨選択に至るまで、何かにつけて影響を及ぼしてきました。言論権力と言っても、実際は彼ら言論社主の権力だったのです。それ故、一部の記者達は、社主から編集権の独立を守り通すために、困難な闘いを繰り広げてきました。
 このような状況において、言論社主の所有支配構造の改革と、巨大な言論社による言論市場の独占を改善することが、言論改革の焦点にならざるを得なかったのです。
ハ.しかし、言論改革の根本目標は、情報民主主義と国民の知る権利を実現することです。言論界の所有支配構造を改革するだけでは、言論改革が成功したとは言えません。間違った取材慣行だけでなく、取材の第一線で活躍している記者自らが、変わらなければならないのです。
 事実、権言(権力と言論)癒着は、言論社主と政治権力の癒着だけを意味する訳ではありません。最前線の取材記者達と、彼らが出入りする政府機関との癒着も、国民の知る権利を歪める重大な権言癒着です。出入り記者団と出入り記者室は、このような意味で、権言癒着を媒介するものでした。
 また情報民主主義は、取材源や、取材源が提供する情報に接近できる機会が、誰にでも公平に与えられた時に実現します。これまで、出入り記者団と出入り記者室は、出入り記者団に属さない記者や国民が情報に接近するのを制限することによって、独占的な地位を享受し、情報民主主義と国民の知る権利を侵害してきたのです。
ニ.さて、申立人はこの事件の申立を通して、これまで出入り記者団が出入り記者室を閉鎖的に運営してきた実態を明かし、それがどのように言論社の取材の自由、国民の知る権利を侵害しているか、明らかにしようと思います。
 そして、この事件の申立が出入り記者室を改革する契機になり、言論を改革するのに少しでも役立つことを希望します。

2、この事件の当事者の地位
イ.株式会社オーマイニュース(代表理事 オ・ヨンホ)は、2000年2月2日、インターネットサイト(http://www.ohmynews.com)を通じてニュースを供給する目的で設立された会社であり、オーマイニュースは、上記の会社で運営するインターネット総合新聞です。
 オーマイニュースは、既存の言論社のニュース供給―需要文化の廃止を実践することにより、言論文化の民主主義を達成し、特に、一般市民が記事を消費するだけでなく、生産の主体になることによって、詰め所文化を改革するということを、その目標としています。そのために、伝統的な記者の概念はもちろんのこと、記事の形式や内容に至るまで、すべてにおいて既存のものとは異なっています。
 まず、オーマイニュースは、少数のプロの記者だけでなく、多数の市民記者達も、対等に取材と記事作成に携わることにより、伝統的な記者の概念を変えました。記事の形式において、既存の型にはまった記事体をはなれ、多様な形式の記事を試みており、記事の内容においても、社会的な問題を深く掘り下げて取材するだけでなく、名もない市民の日常的な生活体験も、重要なニュースとして扱っています。
 その結果、オーマイニュースは、市民はもちろん他の言論社の記者達からも、爆発的な関心を呼び集め、既存の言論に代わるものとしての立場を、確かなものにしてきました。2001年4月現在、オーマイニュースは、1日の平均接続件数250,000件(最高接続件数は360,000件)、一日の平均ページビュー(実際に記事をクリックした数)が、約600,000件に達しています。それだけでなく、2000年末頃、時事ジャーナルが韓国のメディアの影響力を評価した結果、すべてのメディアの中で10位を記録しました。
 現在オーマイニュースは、名実伴ったマスメディアであり、この時代の言論の使命と役割を全うする新たな言論であるという点について、誰も異を唱えることはできないでしょう。
ロ.申立人チェ・ギョンジュンは、創刊当時の2000年2月頃から現在に至るまで、オーマイニュースに所属して活動してきた、常勤のプロの記者です。
 申立人は、2000年夏、京畿道 ファソン郡 メヒャン里で、アメリカ空軍爆撃場問題が起きた時、34日間そこに詰めて、メヒャン里の住民達の闘争生活をリアルタイムで報道し、メヒャン里問題を全国的な問題にすることに寄与しました。市民や、“不平等SOFA改正国民行動”等、多くの市民団体が、申立人が報道したニュースを通じてメヒャン里の状況に接し、申立人がオーマイニュースに載せた記事と写真で、資料集を作ったりもしました。
 また、同年9月19日、クンサン市の売春街で火災が発生し、大惨事になった時にも、申立人は15日間そこに留まって、売春婦の人権の実態を告発する記事を書きました(いわゆる特ダネでした)。当時大部分の言論が、事件発生初期に、単なる事件記事として報道するにとどまりましたが、申立人は最後まで残って、上記の事件の裏側にある問題を追及し、報道したのです。
 何よりも申立人は、“ユ・ジョングン全羅北道知事の華麗な外出”という特ダネ記事で注目を集めました。ユ知事は、2000年12月初め、冬季オリンピックと世界伝統芸能の祭典の広報活動のために日本に行きましたが、道費で旅費まで負担し、20名あまりの記者を同行させました。これは、国民の血税が間違って使われている典型的な事例であるにもかかわらず、他の言論社は、自分達が関係することだったため、まったく報道しませんでした。しかし申立人は、国民に知らせなければならないという信念のもと、1ヶ月間に及ぶ粘り強い取材の末に、上記の事実を報道しました。
 申立人は、国民の知る権利を十分に満たすために最善を尽くして活動している、正々堂々たる記者なのです。
ハ.被申立人、インチョン空港出入り記者団は、京郷、東亜、大韓毎日、世界、朝鮮、ハンギョレ、韓国、国民、中央、連合ニュース、毎日経済、韓国経済、コリアヘラルド、文化、ソウル経済、KBS、MBC、SBS、YTN、CBS等、20の言論社に所属する、インチョン空港出入り記者らで構成された、法人格のない社団です。
 上記の記者団は、元々キムポ空港出入り記者団として活動していましたが、インチョン国際空港が開港する1週間前に、インチョン空港出入り記者団に名称が変わったものです。
 一方、被申立人、ハン・デグヮン(京郷新聞社)、同ソン・ジンフプ(東亜日報社)、同ソン・ハンス(大韓毎日新聞社)、同キム・グィス(世界日報社)、同チェ・ホンニョル(朝鮮日報社)、同チェ・へジョン(ハンギョレ新聞社)、同イ・ファン(韓国日報社)、同チョン・ビョンドク(国民日報社)、同キム・チャンウ(中央日報社)、同パク・チャンヒョン(KBS)、同イ・ジンヒ(MBC)、同ナム・サンソク(SBS)、同イ・ヒジン(CBS)、同コ・ウンソク(連合ニュース)、同ホ・ジンソク(毎日経済新聞社)、同アン・ジェソク(韓国経済新聞社)、同ハン・ヨンイル(ソウル経済新聞社)、同ハン・ピョンス(文化日報社)、同イ・ジュヒ(KH)、同オ・ジョムゴン(YTN)、同パク・チンソン(MBN)は、皆上記の記者団に所属する記者であり、上記コ・ウンソク(連合ニュース)は、現在上記記者団の代表(幹事)を務めています。
★上記インチョン空港出入り記者団の法的性格について
 上記インチョン空港出入り記者団は、現在20の言論社のインチョン空港出入り記者らで構成され、構成員が明確に特定されていて、記者団の重要議事決定は、記者団の総会で行われています(たとえば、新しくできた言論社の記者が、新たに会員として加入申請する場合、加入を承認するかどうか、記者団総会で投票によって決定します)。また、記者団の幹事が、対外的に記者団の代表の役割をします。
 従って、上記のような事実に照らして見た時、インチョン空港出入り記者団を、法人格のない社団、あるいは組合と認定することに、何ら不足はありません。
ニ.被申立人、インチョン国際空港公社は、インチョン広域市 チュン区 ウンソ洞 2172の1所在、インチョン国際空港庁舎の所有及び管理主体として、記者達の取材の便宜のために、旅客ターミナル2階に、中央記者室と放送機材等の保管室(合計52坪)を用意しました。

3.この事件の経緯
イ.被申立人インチョン国際空港公社の副社長であるイ・ピルウォンが、2001年3月28日、インチョン国際空港の開港前日、中央記者室でブリーフィングをすることになり、申立人チェ・ギョンジュンは、取材のため中央記者室に入り、席について上記のブリーフィングを聞いていました。
 ところが、ブリーフィングが始まって5分もたたないうちに、被申立人オ・ジョムゴン幹事が、突然ブリーフィングを中断させると、申立人を見ながら、「この席に出入り記者として登録されていない人がいたら、今すぐ外に出て下さい」と言いました。
 これに対して申立人が、「記者室に登録されていない人は、どうして外に出なければならないのですか? ここは個人のオフィスでもないし、記者の便宜のために空港が提供した公共の場所ではないのですか。あなたに何の権利があって、私に出ろとか出るなとか言うのですか?」と反問すると、前述のオ・ジョムゴンは、「ここは誰でも出入りできる場所じゃないんだ。我々も、ここを金を出して使ってるんだよ。長々と説明している時間はないから一旦出ろ。あんたのせいでブリーフィングができないじゃないか。」と言って、退去を要求し続けました。
 これに対して、申立人が再び「私がブリーフィングの邪魔をしましたか? なぜ私が出て行かなければならないのか説明して下さい。」と言って退去を拒否すると、オ・ジョムゴンは、「ああ、まったくいらいらするなあ。」と言いながら左手を頭の横に振り上げ、1メートル前まで駆け寄って来ました。結局申立人は、オ・ジョムゴンの退去要求に従って、中央記者室の外に出るしかありませんでした。
ロ.申立人は、イ・ピルウォン副社長のブリーフィング終了直後、再び中央記者室に入りました。すると、上記オ・ジョムゴンが再び、「おい、ここは記者室で、記者には記者の“ルール”っていうものがある。その“ルール”は守らなきゃならないんじゃないのか! 本当に記者室に入りたいんなら、正式に登録申請をするんだな。そうすれば、我々が審査して、登録について判断するから。」と言って、申立人を再び追い払いました。
 結局オ・ジョムゴンは、申立人がインチョン空港出入り記者団所属の記者ではないという理由で、前述のように申立人をインチョン空港中央記者室から強制的に退去させ、それにより、申立人はこの日、インチョン国際空港公社のブリーフィングを取材することができなくなってしまったのです。
ハ.翌日である同年3月29日14時20分頃、申立人は、インチョン空港中央記者室で、空港側のブリーフィングが行われるという話を伝え聞き、これを取材するために出入り記者室に入りました。当時、被申立人である公団の社長カン・ドンソクは記者室で、当日の10時30分に発生したノースウエスト航空便の手続き遅延について解明するブリーフィングを行なっていました。申立人は、記者手帳を取り出して、取材を始めました。
 この時、記者団所属の一人の記者が申立人に近付いて来て、「オーマイニュースの記者、また来たな。昨日あれほど言ったのに、まだわからないんですか。ここは登録した記者しか出入りできない所だから、出て行って下さい」と言って、強制退去を要求しました。
 これに対して申立人は、「記者室に登録していない人は、このブリーフィングをどうやって取材しろと言うのですか? 誰でも来て取材できるようにするべきではないのですか?」と反問しました。二人がこのように言い争いをしている間に、ブリーフィングは終わってしまい、そのため申立人は、まったく取材をすることができませんでした。
ニ.申立人はその後再び、記者室で報道資料を配布する業務を担当する、インチョン国際空港記者室室長であったパク・ヒョンユンに近付いて、机の上にあった「ノースウエスト航空便 手続き遅延解明」というタイトルの報道資料を見せてほしいと要求しました。
 すると、パク・ヒョンユンは、「記者室に登録していない人には、資料をあげることはできません。」と言って、申立人の要求を拒否しました。そして、「入る時に、ドアに出入り禁止と貼ってあったのが見えませんでしたか? 字も読めないんですか? 早く出て行って下さい」と言って、申立人に退去を要求しました。結局この日も、申立人は取材を拒否されたまま、強制的に退去させられるしかありませんでした。
 ただ申立人は、この日記者室の外で、日本のNHKの記者から上記の報道資料をもらうことができました。当時、上記NHK記者は、申立人が記者室で、広報室の職員と言い合いをする場面を黙って見ていましたが、その後直接記者室に駆け込み、報道資料をもう1部受け取って、申立人に手渡してくれたのです。上記のNMK記者はもちろん、インチョン空港出入り記者団に登録されていません。
 このような事件があった後も、インチョン国際空港公社や出入り記者団は、依然として申立人に、記者室の出入りを許さずにいます。

4.これまでの記者団と記者室の構成及び運営実態
 被申立人らの、申立人に対する記者室出入り妨害行為と取材妨害行為に対して、法的な検討をするに先立ち、これまで記者団と記者室が、具体的にどのように構成され運営されてきたのか、どのような問題点があったのか、ご説明申し上げます。
イ.政府機関はこれまで、記者達に取材の便宜を提供することによって、国民の知る権利を実現するために、出入り記者室という空間を用意してきました。
 ところが、該当政府機関を担当する既存の言論社の出入り記者らは、自ら記者団を構成した後、その記者団に加入していない記者は出入りできなくする等、出入り記者室を排他的に占有、使用してきました。その過程で、出入り記者団に所属する記者らは、該当政府機関が提供する各種情報を独占することができ、該当政府機関も国民に情報を公開する場合、これら記者団を積極的に活用してきました。出入り記者団と政府機関のこのような関係は、いつからか一つの言論慣行として固定してしまいました。
 このような言論慣行は、記者が記事を作成し送稿できる空間を確保し、この空間を通じて、政府機関が提供する情報の安定的な確保を可能にした一方で、政府機関が国民に知らせたい事柄を、出入り記者室や記者団を通じて効果的に知らせることができるようになったという点で、言論社、政府機関双方に、とても都合のよいものでした。
ロ.この便利な慣行は、国民が出した税金で支えられています。
現在、青瓦台をはじめとする中央省庁とソウル地域の警察署の記者室31ヶ所(青瓦台3、政府省庁17、警察署11)の総面積は約971坪です。各出入り記者団は、現在上記の記者室に対して、賃貸料を払わずに使用しています。
★第一線の警察署の記者室の面積は、5坪から15坪まで多様なため、平均10坪で計算しました。
 上記の記者室に対する賃貸料は、現在の不動産の相場で換算した場合、年間725,400,000ウォン(971坪×62,255ウォン×12)になり、これに各地方の記者室の賃貸料と、記者室の事務員の給与を合算すると、数十億ウォンに達するものと推定されます。従って、記者室運営と関連して毎年支出される数十億ウォンのお金は、国民の税金であり、これは当然国民のために公正に使われなければならないものなのです。
ハ.しかし、出入り記者室と出入り記者室を運営する記者団の慣行が、単純な便宜を通り越して、権言癒着の通路になり、時には記者を買収したり腐敗させる機能までして、国民の知る権利を侵害していた実態を、我々は過去に経験しています。
 具体的にその問題点を指摘してみましょう。
(1)まず出入り記者団が、該当政府機関が提供する情報を、ある程度独占してきたという事実です。
 この事件の経緯でも言及した通り、政府機関は国民に知らせなければならない事柄を、出入り記者室で出入り記者団に報道資料を配布したり、ブリーフィングをする方式で知らせる場合が多く、また非公式に情報を提供する場合にも、出入り記者団を通じて行なう場合が大部分です(政府機関と出入り記者団との会食や酒の席も、同じような役割をします)。
 このような慣行によって、出入り記者団に所属しない記者達は、政府機関が提供する情報に接近するのが困難になり、反対に、出入り記者団は情報を独占できるようになります。そして出入り記者団は、新しくできた言論社に所属する記者の、出入り記者団加入を制限したり難しくすることによって、自分達の独占を強化していきました。
 このような状況で国民は、出入り記者団所属の記者らの考え、ひいてはその記者が属する言論社の立場によって取捨選択された記事と情報だけに接するしかありません。出入り記者団という言論慣行の中には、最初から国民の知る権利を侵害する可能性が潜んでいるのです。
(2)しかし、より深刻な問題は、権言癒着です。
 出入り記者団が一定の独占力を持っている場合、政府機関がその出入り記者団と癒着関係を維持したい誘惑を感じるのは、あまりにも当然のことです。国民に知らせたい情報だけを、自分の好みに合わせて伝えたり、少なくとも、自分達が望まない視点で報道されることを、ある程度統制することができるからです。
 このために政府機関は、出入り記者団との会食や酒の席を設けたり、いろいろな理由をつけて外遊させる等、権言癒着を企てるのです。
★一つの例を挙げましょう。
 2001年3月末頃、労働省出入り記者団が参加費を払わずに、集団でチェジュ島のセミナーに出席し、労働省の関係者らから接待を受けた事実が、オーマイニュースに報道されました。
 当時、労働省傘下の労働教育院は、チェジュ島グランドホテルのクリスタルルームで、「2001年度 労使関係の現況及び展望」というセミナーを開催し、その席に、労働省の次官ら高官と、労働省出入り記者20名等、40名が出席しました。
 この時、労働省出入り記者らは、労働教育院で用意してくれた航空券でチェジュ島に行き、教育院で用意してくれたホテルに宿泊しました。それだけでなく彼らは、この日の夜、さしみ屋で150万ウォン相当の食事と酒、続いて飲み屋でも200万ウォン相当の接待を受け、一部の記者は翌朝、労働省の官僚らと一緒にゴルフまでしました。しかし、労働省出入り記者らが、チェジュ島で労働省の官僚達から接待を受けている間、ソウルの都心では、生存権を奪われた1万名あまりの労働者が、生存権の保障を要求して大規模な集会を開き、警察と激しく衝突していたのです。
 政府機関がなぜ、労働省出入りの記者達を集めて労使関係の現況と展望という題で説明をし、国民の税金でこのような接待をするのか、その理由は明らかです。それこそ、労働関連記事の取材方向に、政府機関の意図を反映させるために他なりません。
 当時この席にいた記者らが、それ以降取材をする時に、政府機関の意図を反映したかどうか、確言することはできません。ただ、労働問題を扱うに際して、労働者の立場と政府機関の立場を公正に扱うより、政府機関に偏る可能性がそれだけ高くなるのは間違いないでしょう。そして、過去にこのような接待が何の効力も発揮しなかったなら、こういう接待の慣行は、とっくに消えていたはずなのです。
★問題は、前述のような事例が、決して異例のものではないという点です。
 最近、産業資源省傘下の原子力文化財団が、放射線廃棄物の施設を見学させてやるという名目で、4,000万ウォンの予算を費やし、出入り記者10名を8泊9日間ヨーロッパに行かせた例や、申立人が取材していた、ユ・ジョングン全羅北道知事が、2000年12月初めに、冬季オリンピックと世界伝統芸能の祭典の広報活動で日本に行く時、道費で旅費まで負担して20名あまりの記者を同行させた例も、政府機関が一定の意図のもとに、出入り記者団と密着を試みた代表的な事例なのです。
 もちろんこのような場合にも、記者がどのように記事を書くかは記者個人の倫理にすぎないと、抗弁することもできます。しかしそれは、記者個人の倫理問題ではなく、言論慣行の問題であり構造の問題です。政府機関が提供する情報を、出入り記者団が独占する構造がなくなれば、政府機関の方も、このように出入り記者達との密着に努める理由はなくなるでしょう。そうなった時はじめて、真のジャーナリストになろうという固い決心で言論社に入社した大部分の記者達は、いつまでも初心を失わずに、正義感あふれる記者の道を歩いて行くに違いありません。
(3)さらに、出入り記者団と該当政府機関は、癒着関係を超えて、腐敗の鎖でつながる可能性があります。
 去る1991年11月、新聞と放送をはじめとする言論各社がひっくり返るような大騒ぎになった、いわゆる「保社省記者団寸志事件」がありました。
 保健社会省に出入りしていた新聞・放送・通信社の記者団が、1991年の中秋節前後、製薬・製菓・化粧品等の業界と団体、そしてテウ財団とヒョンデ・アサン財団等、財閥や財団から、中秋節のお供え料と海外旅行費の名目で、合わせて8,850万ウォンあまりを集めて分配した事件です。この事件が世間に知れ渡ると同時に、各省庁出入り記者団の寸志授受と腐敗慣行が相次いで明るみに出て、これを非難する世論が全国で沸き起こりました。上記の事件は、出入り記者団と出入り先が、単純な癒着を超えて腐敗の鎖で絡み合っていた事実を、克明に見せてくれました。
 これに、<朝鮮>、<東亜>、<中央>をはじめとする<国民>、<世界>、<韓国)、<京郷>等、12の新聞とKBS、ソウル放送等、窮地に追い込まれた言論各社は、相次いで記者団脱退を宣言したり、各社なりの収拾対策を発表して、国民の前に謝罪するしかありませんでした。
 ところが、出入り記者団と出入り先との腐敗した関係は、それ以後も続いていたのです。
 ある記者の独白を引用しましょう。
「・・・・それで、“記者室から出る寸志”というのも、ばかにできない金額だった。おそらく月20~30万ウォンぐらいにはなったと思う。出入り先の詰め所で初めて迎えた中秋節の時は、実に100万ウォンをはるかに超える寸志が、“記者室を通じて公式に”出た。担当区域内にある病院や大学、企業体等が、お供え料として持って来たものだった。
 もちろん、出入り先の幹部達がくれたものもあった。このようにたくさんの寸志をポケットに入れたまま、不安な気持ちで編集局に戻った時だった。市役所に出入りしていた一人の先輩がそっと私を呼んで、“祝日だけど、警察は別に何も出ないだろう?”と言いながら、10万ウォンが入った封筒をポケットにねじ込んでくれるのだった。しばらくすると、また別の先輩も、やはり同じことを言って封筒をくれた。・・・・私の堕落の絶頂は、95年の地方選挙と96年の総選挙の取材班にいる時だった。“記者室を通じて出る寸志以外は受け取らない”という原則(?)を破ったのだ。」(記者職10数年、私が受け取った寸志の数々。キム・ジュワン記者)
 今この瞬間に、出入り記者団と出入り先が、寸志をやりとりしていると断定することはできません。
 ただ、出入り記者団が情報を独占できて、その出入り記者団が属している言論社が世論を動かせるだけの力を持っている限り、寸志授受や腐敗の事実が存在する可能性が、それだけ高いということは断言できます。
ニ.上記のような諸問題のために、出入り記者団と記者室を改革した事例もあります。
(1)まず、クミ市役所の出入り記者室を、出入り記者団に所属しない記者達が一丸となって無くした例があります。
 クミ市役所の記者室は、去る1993年頃から、テグに本社をおき、記者協会に加入する言論社の記者だけが出入り記者団に加入できるようにする内規を設け、会員と非会員を区分し始めました。クミ市の公務員達も、出入り記者団所属の記者はA群、非会員はB群と区別し、差別待遇しました。それにより、B群に属する記者達は、市役所の記者室にも入れないまま廊下でうろうろするしかなく、そのために「廊下記者」と呼ばれる侮辱まで受けたのです。
 さらに会員の記者らが、記者室に入って来る報道資料や情報を独占する場合が多く、非会員記者達は、記者室を情報独占室だと批判して、問題を提起しました。結局、クミ市役所の記者室は無くなり、クミ市の文化広報担当官室の事務室に吸収されました。(記者室ならぬ情報独占室、我々はこのようにして廃止に追い込んだ/オーマイニュース、2001年3月31日、イ・ソンウォン記者)
(2)また、地方自治体の長が直接乗り出して、記者室を閉鎖した事例があります。
 慶尚南道、ナムヘ郡の郡守キム・ドゥグヮンは、1995年10月4日、電撃的に記者室を閉鎖し、裏で寸志形態で支給されていた新聞広報費と新聞購読料も、全額削減しました。「地方自治体の記者室は、公務員の無事安逸と住民の知る権利を取引する“密室”だった。公務員と駐在記者らは、住民が必ず知らなければならない、そして批判と暴露が必要な事案をひそかに取引して、徹底的に隠蔽した。」というのが、キム郡守の考えでした。
 翌日以降、地方日刊紙の紙面から、ナムヘ郡守の動静とナムヘ郡の消息が姿を消しました。ありとあらゆる批判と非難の記事がその場所を埋め、記者室閉鎖以後6ヶ月の間、およそ200件以上の批判と非難の記事があふれました。その中には、報復記事もありました。
 しかし、ナムヘ郡と出入り記者団との戦争は、公務員の姿勢を変えました。公務員の小さなしくじりも言論が見逃さなかったため、緊張感を持って業務に臨みました。官治行政に慣らされていた公務員達の姿勢が、いつの間にか自治行政にふさわしく変化していったのです。
 記者室が閉鎖されてから6年が過ぎた今、悪意に満ちた非難の記事を書く記者は、もういなくなりました。ナムヘ郡と出入り記者達の関係が、今はもう“生産的な緊張関係”として確立されたのです。(“記者室との戦争”その後6年/オーマイニュース2001年4月2日、チョン・ジファン記者)
ホ.以上のような事実を総合して見る時、出入り記者団は、政府機関が提供する情報を独占できる地位を得ることにより、出入り記者団に属さない記者の取材の自由と一般国民の知る権利を侵害している点、さらには権言癒着にとどまらず、寸志授受等の腐敗が大手を振ってまかり通る原因にもなっているという点等を、問題として指摘することができます。
 ここに、二つの問題をつけ加えましょう。
 第一に、記者達の貴族化の問題があります。
 先ほどもご説明申し上げた通り、我々の社会で記者は、すでに貴族化、特権階級化しています。いくつかの言論社が言論市場を独寡占している状況で、その言論社に所属する記者達は、特に強大な社会的影響力と、ある程度の経済的な安定を持てるようになりました。記者達は、このような社会的地位の変化を経験すると同時に、社会的弱者や阻害された人々の痛みを受け止めるよりは、社会的支配階層の立場を代弁する傾向を帯びるようになりました。そして、出入り記者団の独占的地位は、記者達のこのような貴族化の傾向の一助となっています。
 第二に、新しい形態の言論の発展を制約するという問題があります。
 伝統的に言論社は、新聞社と放送社、そして彼らに情報を提供する通信社に区分されていました。しかし今は、境界線が崩壊しているだけでなく、インターネット新聞とインターネット放送という、新しいマスメディアが続々と登場しています。
 また、これらの新しいメディアは、少数のエリート記者が情報を供給していた過去の形態とは異なり、一般市民も自ら記者になって、ノートとカムコーダーを手に、取材現場を駆けずり回っています。そして、彼らがリアルタイムでインターネットに載せる各種の記事が、国民の知る権利を満たし、これら新しい形態の言論が、記者と読者の区別を破壊すると同時に、情報民主主義を実現しつつあります。そしてこれは、伝統的に言論市場を独占してきた既存の言論社に対する、重大な挑戦なのです。 
 ところが、出入り記者室を中心とした既存の言論慣行は、新生言論社の参入を困難にするだけでなく、新しい時代、新しい形態の言論の出現を阻んでいます。
 今、記者室は、あらゆる形態の言論社とすべての記者達に公開されるべきです。そうすれば、国民がもっと自由に情報に接近できるようになり、先に列挙した諸問題も改善され、国民の知る権利も実現されるでしょう。

5.被申立人らの行為の違法性について
イ.被申立人、インチョン国際空港出入り記者団は、インチョン国際空港出入り記者室を、排他的に占有したり使用する権利がありません。
(1)まず、この事件の出入り記者室は、インチョン国際空港公社が、報道資料を配布したりブリーフィングをする等、国民の知る権利を実現する行為を目的として用意した空間です。
 従って、出入り記者団の加入如何にかかわらず、すべての言論社の記者に、上記の空間に出入りし、取材活動をし、公団側が提供するすべての資料の提供を受ける権利があるのです。
 また、インチョン空港出入り記者団は、自分達の取材の便宜のために、上記の空間を好き勝手に使用しているにすぎません。決して法律や、インチョン国際空港公社との契約によって、独占的な使用権を与えられている訳ではないので、申立人に退去を要求する権利はないのです。
(2)被申立人オ・ジョムゴンは、インターネットに載せた記事を通じて、インチョン空港出入り記者室の使用と関連して、次のように説明しています。
[・・・最初に、昨年の末頃、インチョン国際空港公社側から、記者室の賃貸料問題を提起してきました。「他の機関もすべて賃貸料を受け取る予定なので、記者室の賃貸料についても考えるつもりだ」という公社側の立場が、キムポ空港の記者室に伝達されてきました。ただちに開かれた空港記者室全体会議の結論は、「賃貸料は払わない」というものでした。「記者室は、インチョン国際空港公社が必要に応じて作るもので、他の場所にある記者室もすべて、そのような次元で運営されている。だったら記者室は作るなと言おう。別に記者室がなくても、取材が不便なだけで記事を書けない訳ではない。それぞれの言論社の判断で取材をしてもかまわない」というのが、記者室会議の結果のあらましでした。
 このような記者室の立場が、インチョン国際空港公社側に伝えられ、「メディアの今日」や「記者協会報」にも記事が載って、外部に知れ渡りました。
 現在も、記者室の賃貸料問題は、確実な結論が出ている状態ではありません。公社側では、賃貸料を受け取らない方向で進めていると言っただけで、確実に「受け取らない」、または「無料で使え」という内容が、文書として記者室に伝達された訳ではありません。・・・]
(3)被申立人オ・ジョムゴンは、上記の説明で、インチョン国際空港公社側の必要によって、インチョン空港記者室が作られたことを自認しています。もちろん、ここでの「必要」というのが、公社側の、国民の知る権利を実現する必要を意味するのは、あまりにも自明のことです。
 それだけでなく、被申立人はまた、インチョン空港出入り記者団が賃貸料を払っていない事実と、いまだにインチョン国際空港公社側と、どのような賃貸契約も結んでいない事実を明らかにしています。
(4)一方、上記オ・ジョムゴンは、同じ記事の中で、一般の電話とインターネットに使用される電話代とコピー代、コーヒー代、浄水器の水代等、インチョン空港出入り記者室で使う費用については、現在参与している20の言論社が分担していることに言及し、これを分担していない言論社の記者は、記者室を使用できないという趣旨の主張を展開しています。
 しかし、これはまったく理不尽な主張です。
 まず、出入り記者室の出入りや取材活動は、記者室の電話使用等とは直接関連がありません。申立人が要求していたのは、取材活動のための出入り記者室への出入りであって、電話を使わせてくれとかコーヒーをくれということではないのです。
 仮に申立人が記者室の備品を使用したとしても、それは後の費用分担の問題に過ぎず、記者室に出入りをさせない理由にはなりません。
ロ.被申立人らの行為は、不当に競争者を排除する行為であって、違法な行為です。
(1)独占規制及び公正取引に関する法律 第23条は、[事業者が次の各号の一つに該当する行為により、公正な取引を阻害するおそれがある行為(以下、不公正取引行為とする)を行なったり、系列会社または他の事業者をして、これを行わせてはならない。]と規定し、このような不公正取引行為の一つとして、「不当に競争者を排除する行為」を挙げています。
(2)ところが、先にご説明申し上げた通り、インチョン空港出入り記者団は、新生言論社の記者達に対して、記者団入会の資格と手続きを設けることにより、参入の障壁を作っておいて、上記記者団に所属しない記者達の、記者室の出入りと取材を妨げています。この行為は当然、前述の「不当に競争者を排除する行為」に含まれます。
 従って、被申立人らの行為は、先に述べた独占規制及び公正取引に関する法律に違反した、明白な違法行為なのです。
ハ.被申立人らの行為は、憲法に保障された権利を侵害する行為です。
 まず、憲法第21条第1項は、「すべての国民は言論の自由を持つ」と規定しています。このような言論の自由の中には、国民の知る権利と、それを実現させるための手段として、言論社の報道の自由が含まれています。そして、取材の自由は、言論社の報道の自由の核心的な内容です。
 従って、被申立人らが申立人を記者室から強制的に退去させ、取材を妨害した行為は、当然、申立人の取材の自由を侵害し、さらには国民の知る権利を侵害する行為なのです。
ニ.さらに、インチョン国際空港公社が、申立人に対して出入り記者室の出入りを禁止したり、報道資料の配布を拒否することもまた、違法な行為です。
(1)まず、公社側の上記の行為も、先に言及した通り、憲法上保障された言論の自由を侵害する行為であることは明らかです。
(2)また、公社側が公団内に出入り記者室を運営するにあたり、特定の言論記者に対して出入りを禁じたり、報道資料の提供を拒否する行為は、その差別に合理的な根拠がまったくないので、当然、憲法第11条に規定された平等の原則にも違反します。

6.被申立人側の主張に対して
イ.これまで、出入り記者団の必要性と、出入り記者団への加入や出入り記者室の利用を制限する必要性について、たくさんの論争がありました。
 その、必要性を主張する核心的な根拠は、第一に、出入り記者は、出入りする機関について相当な情報と理解を持っている専門家でなければならないという点、第二に、客観的で公正な報道がなされるためには、該当記者に一定の資質が不可欠であり、その記者が属している言論社に公信力がなければならないという点、第三に、エンバーゴ(重要な事案に対して、一定の時期まで記事にしないという、記者と取材源との約束)が守られるためには、出入り記者を制限する必要性があるという点、第四に、出入り記者団に属していなくても、いくらでも取材活動が可能だという点、等です。
ロ.まず、記者が一定の専門性と資質を備え、その記者が属する言論社が公信力を持っていなければならないという主張に対しては、これに反対する理由がありません。当然、奨励しなければならない事柄です。
 しかしそれは、出入り記者団への加入や出入り記者室の利用を制限する根拠にはなり得ません。
 まず、どの記者が専門性と資質を持っているかは、その記者が書いた記事によって明らかになります。そして、評価するのは読者、あるいは国民です。専門性と資質の劣った記事は、当然国民から相手にされません。
 従って、このような点に対する評価を既存の出入り記者団、それも、自分達の独占的な地位を保ちたい出入り記者団がするというのは、まったく理屈に合わないことなのです。
 それに、必ずしも既存の記者団に所属している記者達が、より高い専門性と資質を備え、既存の言論社がより高い公信力を持っているとは限りません。現在我々の社会で、言論改革の必要性が一気に台頭しており、その責任は既存の言論社とその所属記者達にあります。むしろ、資質と道徳性の劣った記者達が、自分の属する言論社の権力にあぐらをかいて、国民の上に君臨しはしなかったか、謙虚に反省しなければならないでしょう。
ハ.次の、エンバーゴを守るために出入り記者団を制限しなければならないというのも、根拠のない主張です。エンバーゴは、該当政府機関と出入り記者団との談合を意味するものではありません。単に、国民の知る権利を侵害しない範囲で、国益と公益のために一時的に記事にするのを保留するもので、それを判断するのは記者の役目です。
 従って、出入り記者団に属さない記者だからといって、エンバーゴを守らないだろうと断言し、これを根拠に出入り記者室への出入りを制限するのは不当です。
 仮に、出入り記者室を一般人に開放することによって、エンバーゴが守られない可能性が高くなるとしても、情報を公開するかどうかは、結局は該当政府機関が判断すべきことなのです。
 率直に言って、政府機関が、記事にならないことを前提にして出入り記者達に情報を公開することが、国民にとって何の意味があるのか疑問です。あらかじめ取材ができるように便宜を提供するという程度の意味しかないでしょう。
ニ.最後に、出入り記者室を通さなくてもいくらでも取材できるというのも、まったく根拠になりません。
 もちろん記者は、出入り記者室で供給される情報だけをもとに、取材する訳ではありません。他の方法で報道資料を入手し、ブリーフィングの内容を確認することもできるでしょう。しかし現実的に、出入り記者室の出入りが制限されることによって、該当政府機関から提供される情報の入手に、制約を受けるのは事実です。この事件でも端的に表れています。
 しかし、より重要なのは、取材源に接する機会が、すべての言論社や記者達に同等でなければならないということなのです。

7.結論
イ.以上のような事実を総合して見る時、被申立人らが、申立人のインチョン空港記者室の出入りや取材行為を妨害するのは違法な行為です。被申立人は、現在も上記のような違法行為を継続しているので、申立人は、これを中止させるために、この事件の申立を提起するものです。
ロ.これまで我々の社会で、出入り記者団と出入り記者室に対しては、何度も問題が提起されてきました。新しく言論社ができるたびに、新生言論社は出入り記者団の排他主義によって被害を被り、その過程で一様に、記者団の弊害を指摘してきました。寸志事件等、言論界の腐敗が重要な問題として提起された時には、言論社が一斉に記者団脱退を宣言したりもしました。しかし、このような論争や反省はいつも一過性で終わり、新生言論社も、記者団に無事入城を果たしてしまえば、それ以上問題にしませんでした。そして、何も変わらないまま今日に至っています。
 従って、今このような論争に終止符を打たなければなりません。
 裁判所のこの事件の申立に対する判断は、まさにこのような論争に終止符を打つ役割をするでしょう。我が国のすべての記者室を開放し、さらには情報民主主義を実現させ、国民の知る権利を保障することによって、言論改革を一段階早める重要な契機になるでしょう。
 賢明なる御判断を、重ねてお願い申し上げます。
ハ.最後に、出入り記者団に参与する既存の言論社にお願い致します。
 この事件の申立は、決して個人的な欲や利害関係によるものではありません。不公正な慣行を是正することによって、国民の知る権利を実現させ、インターネットが高度に発展している新しい環境で、インターネット新聞、インターネット放送等、新しい形態のマスメディアも、国民のために堂々と働ける条件を作るためのものです。また、少数のエリート記者だけでなく、一般市民も自ら記者になり、読者になることによって、情報民主主義が実現する社会を建設するための努力でもあります。
 従って、十年余り前、寸志事件が発覚した時そうだったように、自ら出入り記者団を解体し、出入り記者室を開放することによって、言論改革運動に名誉ある参加をされることを、敢えて提案致します。(以後、機会があれば、望ましい代案について意見を申し上げます。)

疎明資料

訴甲第1号証の1オーマイニュース記事(2001年3月29日付、チェ・ギョンジュン)
訴甲第1号証の2オーマイニュース記事(2001年3月29日付、チェ・ギョンジュン)
訴甲第2号証オーマイニュース記事(2001年4月3日付、オ・ジョムゴン)

添付書類

1.上記疎明方法各1通
1.訴訟委任状1通
1.担当弁護士指定書1通
1.法人登記簿謄本1通
1.納付書1通

2001年 5月

上記申立人の代理人

法務法人タサン総合法律事務所
 担当弁護士 キム・チルジュン
 担当弁護士 イム・チャンギ
 担当弁護士 チェ・ミョンジュン
 担当弁護士 チェ・ガンホ
 担当弁護士 パク・テヒョン
 担当弁護士 ソン・ナンジュ

インチョン地方裁判所 御中

(別紙)

被申立人の目録

1.インチョン空港出入り記者団
 インチョン広域市 チュン区 ウンソ洞 2851 インチョン国際空港 旅客ターミナル記者室
 代表者 コ・ウンソク幹事(連合ニュース)
2.ハン・デグヮン(京郷新聞社) 
 上記と同じ場所
3.ソン・ジンフプ(東亜日報社)
 上記と同じ場所
4.ソン・ハンス (大韓毎日新聞社)
 上記と同じ場所
5.キム・グィス (世界日報社)
 上記と同じ場所
6.チェ・ホンニョル(朝鮮日報社)
 上記と同じ場所
7.チェ・ヘジョン(ハンギョレ新聞社)
 上記と同じ場所
8.イ・ファン(韓国日報社)
 上記と同じ場所
9.チョン・ビョンドク(国民日報社)
 上記と同じ場所
10.キム・チャンウ(中央日報社)
 上記と同じ場所
11.パク・チャンヒョン(KBS)
 上記と同じ場所
12.イ・ジンヒ(MBC)
 上記と同じ場所
13.ナム・サンソク(SBS)
 上記と同じ場所
14.イ・ヒジン(CBS)
 上記と同じ場所
15.コ・ウンソク(連合ニュース)
 上記と同じ場所
16.ホ・ジンソク(毎日経済新聞社)
 上記と同じ場所
17.アン・ジェソク(韓国経済新聞社)
 上記と同じ場所
18.ハン・ヨンイル(ソウル経済新聞社)
 上記と同じ場所
19.ハン・ピョンス(文化日報社)
 上記と同じ場所
20.イ・ジュヒ(KH)
 上記と同じ場所
21.オ・ジョムゴン(YTN)
 上記と同じ場所
22.パク・チンソン(MBN)
 上記と同じ場所
23.インチョン国際空港公社
 インチョン広域市 チュン区 ウンソ洞2172-1 
 代表理事 カン・ドンソク

|

« 共謀罪を語る(6)
三宅勝久さん(ジャーナリスト)
| トップページ | 山岡俊介氏を誹謗中傷する記事に関連し
「武富士が現金を提供」という衝撃的な証言 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133720/7904990

この記事へのトラックバック一覧です: 警察庁記者クラブ事件(14)
韓国で記者クラブが廃止されたいきさつ
:

« 共謀罪を語る(6)
三宅勝久さん(ジャーナリスト)
| トップページ | 山岡俊介氏を誹謗中傷する記事に関連し
「武富士が現金を提供」という衝撃的な証言 »