巨人とキツネが旅を通じて自然を癒やす「Unpetrified: Echoes of Nature」（ほぼ日 インディーPick Up！）

　本日紹介するのは，Dreamhunt Studioが手掛ける「Unpetrified: Echoes of Nature」だ。本作は，石の巨人と一匹のキツネが織りなす，穏やかな旅の物語である。プレイヤーは巨人を操り，荒廃しながらも美しい自然の中を探索していく。


　特徴的なのは，巨人が放つ不思議な波動だ。プレイヤーがボタンを押し，この力を解き放つことで，枯れた大地に草花が芽吹き，眠っていた生命が目を覚ます。ただ歩くのではなく，自らの手で世界に息吹を与えるのだ。

　また，本作に敵を倒す戦いは存在しない。行く手を阻むのは，自然の摂理を利用した仕掛けだけ。巨人の腕力で岩を動かしたり，時にはキツネの機動力を借りて道を開いたりする。


　言葉による会話はなく，すべては動きと景色，そして音楽で語られる。ただひたすらに世界を癒やし，忘れられた文明の欠片を拾い集めることが目的となる。巨人の感情は天候すら変え，物語が進むにつれて背中の花園も豊かになっていく。




　荒れた大地で立ち止まり，力を込めて波動を放つ。その瞬間に光が広がり，殺風景な景色が鮮やかな緑へと変わっていく。勝手に花が咲くのではない。プレイヤーが「ここを癒やす」と決めて指を動かすからこそ，世界が応えてくれる。この手作業のような感触が，枯れ地を蘇らせる確かな喜びにつながっているのだ。



　旅の道連れとなるキツネは，ただのマスコットではない。狭い隙間を抜けたり，巨人を導いたりと，パズルを解くための相棒といえる。言葉は通じないが，ふとした仕草や寄り添う距離感で信頼関係が伝わってくる。孤独な巨体にとって，その温もりこそが旅を続ける最大の動機となっているわけだ。



　敵を殴る音も，爆発音もここにはない。聞こえるのは風が木々を揺らす音や，穏やかな楽器の音色だけだ。環境音と音楽が境目なく混ざり合い，耳からも緊張を解きほぐしてくれる。ゲーム特有の焦燥感とは無縁の，深呼吸をしたくなるような時間が流れている。

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　日々の喧騒に疲れ，自らの手で美しい世界を取り戻したいと願う人にこそ，この優しい巨人の物語を手に取ってほしい。