第1回「結婚しないかも」孤独にのまれた30代 心のすき間、埋めたのは

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編集委員・岡崎明子
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 アパレル企業に勤めていた20、30代のころ、武田美保さん(45)は孤独を紛らわせるかのように、夜な夜な都内のバーに繰り出していた。

 勤め先はワンマン社長が経営する「昭和」な体質の会社で、なぜだかその社長に嫌われていた。接客の仕事は好きだったが、既に顧客が持っているアイテムでも「今年はこれがトレンドです」と買わせなければならないことも、苦痛だった。

 店を閉めた夜9時過ぎ。「今日こそは、まっすぐ家に帰ろう」と思っているのに、つい足は行きつけのバーに向かう。ひとり暮らしの家に帰ってもだれもいなくて孤独だけど、ここに来れば、同じような年ごろの仲間がいた。

 午前3時ごろまで飲み、ストレスを発散する日々。週4日は通っていたから、ほとんど貯金もできなかった。

 両親がそれほど仲良くない家に育ったせいか、結婚願望も、出産願望も、もともと低かった。それでも周りの友達が次々に結婚していくと、「結婚した方がいいかな」という考えが頭をかすめることもあった。

 当時、つきあっている彼はいた。地方の開業医の息子で、3歳年上。ずっとダンスに打ち込んでいたが「やっぱり医学部に入りたい」と言いだし、実家の仕送りで勉強しながら、ベンツに乗っていた。

 友人には「実家が太いから、そのまま結婚すればいいじゃん」と言われたが、彼の理想は夕飯におかずが何品も出てくる専業主婦の母。自分には絶対無理だと思い、5年つきあって別れた。

都市部で暮らすミドル世代のシングルは年々増えています。ひとり暮らしは気楽な一方で、いざという時に頼れる人がいないなど、孤独に悩む人も少なくありません。この女性も将来への不安でいっぱいでしたが、あることがきっかけで変わります。

マッチングアプリに登録したが…

 その後、副店長として地方で…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2024年9月16日10時11分 投稿
    【視点】

    「結婚はしないの?」「やっぱり結婚はいいものだよ」「結婚して子どもを持てば、あなたもお母さんの気持ちが分かるよ」 30代の頃、友人に、当時の彼氏や上司に、口やかましい親戚に、何かあるたびに投げかけられた言葉です。彼らは私への「親切な助言」

    …続きを読む
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年9月18日4時7分 投稿
    【視点】

    「結婚しないかも」しれないし、「結婚しても離婚するかも」しれないし、「離婚しても再婚するかも」しれないし、…。「○○しないかも」という表現は、多くの人が抱えているだろう自分がこの先どのような道を辿るのか予測がつかないなかで結婚する・結婚しな

    …続きを読む