将棋小説にかけた2年間 芦沢央さん「おまえレベルの話はしてない」

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高津祐典
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 目の前に将棋盤がある。

 駒は初形に並んでいる。

 「ここに宇宙があるんだよな」。仕事場の将棋盤と対話しはじめると、1文字も書けずに1日が過ぎた。

 完成まで、2年。芦沢央(よう)さんは小説「おまえレベルの話はしてない」(河出書房新社)に、棋士という夢に人生をのみ込まれた男を描いた。夢の諦め方がわからない自分を託して。

 作品は色合いの異なる「芝編」と「大島編」からなる。芝と大島、2人は奨励会の同期だった。

 芝は20歳で棋士になった。夢をかなえ、白黒の世界は彩りを帯びる――はずだった。棋士6年目を迎え「負けました」という自らの声に慣れてしまった。

 「私は高校のときから小説家…

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この記事を書いた人
高津祐典
文化部次長|デジタル担当
専門・関心分野
囲碁、将棋、麻雀、文芸、論壇、ファッション