ワグネル創設者、東部バフムートを6月までにロシア軍に引き渡すと表明
ジョージ・ライト、BBCニュース

画像提供, Reuters
ロシアの雇い兵組織「ワグネル」の代表は22日、ウクライナ東部バフムート市を6月1日までにロシア軍に引き渡すと表明した。
ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は20日、バフムートを制圧したと主張していた。
プリゴジン氏は22日、「ワグネルは5月25日から6月1日にかけてアルテモフスク(バフムート)を去る」と、テレグラムに投稿した録音で語った。バフムートはウクライナが改名するまで、旧ソヴィエト連邦の革命家にちなんでアルテモフスクと呼ばれていた。
プリゴジン氏はまた、バフムートの引き渡しを前に、同市の西側にワグネルが「防衛線」を設置したと述べた。
ウクライナは同市の一部をまだ掌握しているとし、郊外にはウクライナ部隊が迫っていると説明している。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は、同国軍がバフムート市内で依然として小規模拠点を保持しており、郊外にも前進していると繰り返し主張。ただ、軍の動きの「激しさ」は低下したとした。
マリャル氏はその後、テレグラムへの投稿で、ウクライナ軍が依然としてバフムートの「『リタク』地区にある特定の民間施設と民間部門」を掌握していると書いた。
下の米マクサー・テクノロジーズの衛星写真では、バフムート西部の昨年5月8日の様子(左)と、今年5月15日の状況(右)が分かる。中央の白丸を左右に動かすと変化が見て取れる。
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アナリストらは、バフムートにはロシアにとって戦略的な価値がほとんどないとしている。ただ、今回の戦争で最長の戦いとなっており、制圧すれば象徴的な勝利になるとみている。
ワグネルは数カ月にわたってバフムートに戦力を集中してきた。戦闘員を絶えず送り込み続けるという犠牲の大きな戦術によって、ウクライナの抵抗を徐々に削いでいったとみられる。
バフムートの現状をめぐってはここ数日、双方の主張が対立している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、日本で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席した際に、バフムートはロシアに「占領されていない」と主張した。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、20日のバフムート制圧の発表を受け、ワグネルを祝福した。
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BBCヴェリファイ(検証チーム)は、両陣営がバフムートからインターネットに投稿した最近の動画を調べている。
下の地図で示した4本の動画は過去数日に投稿されたものだが、撮影日時は特定できていない。


これら4本のうち、21日に投稿された動画には、バフムート西部のロシアが制圧したとされる場所でワグネル戦闘員らが旗を掲げる様子が映っている。別の動画では、市中心部の鉄道駅の近くとみられる場所で、プリゴジン氏が話をしている。
残りの2つの動画からは、ウクライナ軍が市の中心部と西側で活動している様子が見て取れる。これらの地域では、ウクライナ軍が奪還を目指して戦っている。
ワグネルとロシア軍の関係
プリゴジン氏は、自らとワグネルに対する評価がバフムート制圧にかかっているとしている。
最近は、「国防省が人材不足なら、私たちのところに将軍が何千人もいる」と発言した。
プリゴジン氏はロシア軍幹部について繰り返し、ワグネルを支援していないと公然と批判してきた。先月には、必要な弾薬が提供されないなら部隊を撤退させると脅した。
ロシアはバフムートを制圧すれば、ドネツク州全域の支配という目標に少し近づくことになる。ドネツク州は、昨年9月にロシアが併合を宣言したウクライナ東部と南部の4州の一つ。併合が宣言される前には、それらの州で住民投票が開かれたが、ロシア以外の国は不正だと非難した。
アメリカは今月、ウクライナでの戦争でロシア兵が2万人以上死亡し、8万人が負傷したとの見方を示した。BBCはこれらの人数を独自に検証できていない。
ロシアによる侵攻前、バフムートには約7万人が暮らしていたが、現在は数千人しか残っていない。かつては塩、石こう鉱山、大規模ワイナリーで有名だった。










