
企業がAI導入を競う中、バーセル(Vercel)は他社に先んじる方法を見つけたと述べている。それは、優秀な従業員の働き方をAIエージェントに学習させることだ。
2015年にプログラマーのギレルモ・ラウチ(Guillermo Rauch)氏によって設立された時価総額93億ドル(約1兆3950億円、1ドル=150円換算)の同社は、開発者がウェブサイトやアプリケーションを構築・展開するためのクラウドベースのプラットフォームを提供している。
同社は現在、AIエージェントを活用して、エントリーレベルの職務の多くで繰り返される単調な作業を自動化しており、かつて10人いたチームをたった1人と1つのボットにまで削減することに成功している。
エージェントは、一般的に自律的にタスクを完了できる仮想アシスタントと定義され、ユーザーからの指示なしに問題を分析し、計画を立案し、行動を起こす。
「ワークフローを文書化できれば、エージェントにそれを実行させるのは非常に簡単です」
と、バーセルの最高執行責任者(COO)であるジーン・デウィット・グロッサー(Jeanne DeWitt Grosser)氏はBusiness Insiderに語った。
AIエージェントの開発は、同社が営業部門内で社内イニシアチブチームを立ち上げた6月に始まった。 3月に入社したグロッサー氏は、重要な営業ワークフローを再現・強化するエージェントを開発するため、3人のエンジニアを採用した。
当時、同社には10人の営業開発担当者がいて、問い合わせに対応していた。これは一般的にエントリーレベルの業務で、そのうちの1人が際立ったパフォーマンスを発揮していた。エンジニアたちはその優秀な担当者を6週間観察し、仕事のあらゆるステップを記録した。そして、そのプロセスを模倣するエージェントを構築したのだ。
グロッサー氏によると、現在、バーセルの「リードエージェント」は、かつて複数の営業開発担当者が担当していたインバウンド業務の多くを自動化している。受信メッセージの確認、スパムのフィルタリング、社内データベースへの照会、OpenAIのDeep Researchツールによる企業情報の調査によるリードの選別などを行っている。その後、エージェントは個別の回答を作成し、サポートの問い合わせを自動的に適切な担当へ振り分ける。
人間のマネージャーがスラック(Slack)でエージェントの作業をレビューし、フィードバックを提供することで、システムはバーセル独自の文体やトーンを学習し、時間とともに改善していく。
導入以来、このエージェントのおかげで、10人いたチームは、エージェントを監督する 1 人の体制にまで縮小された。残る9人はアウトバウンド営業(こちらから顧客に働きかける営業活動)の役割へと移され、グロッサー氏はそれを「より高い価値を生む、より複雑なセールス業務」だと述べている。
「トップパフォーマーの行動を手本にすることは、これまでも一般的なビジネス手法でした。違うのは、今はテクノロジーによってそのプロセスを加速できるという点です」と、データブリックス(Databricks)とマイクロソフト(Microsoft)出身で、10月27日にバーセルのグローバル・フィールドエンジニアリング担当バイスプレジデントに就任したばかりのデビッド・トッテン(David Totten)氏は述べた。

グロッサー氏によると、AIのトレーニングへのアプローチは、企業がかつてインターン生、特に正社員採用を希望するインターン生をトレーニングしていた方法とそれほど変わらないという。
「毎日出勤せず、正しい姿勢を持たず、企業のビジョンを理解していない人にインターン生を任せる企業はありません」とグロッサー氏は述べた。
インターン生は最も優秀な人材に任せるものです。
グロッサー氏とトッテン氏はともに、バーセルの社内AI戦略の目標は人員削減ではないと述べた。実際、過去1年間で従業員数は増加したという。
バーセルは現在6つのAIエージェントを導入しているが、今後6~12カ月以内に数百のエージェントを導入する予定だ。これらはすべて、社内のトップパフォーマーをモデルにしている。
グロッサー氏によると、同社はすでに、AIエージェントの有力な活用方法を定義する特性を見出しているという。それは、複製可能で決定論的、つまり同じ入力に対して常に同じ出力を生成するという特性だ。
そうなると、人間に残されたのは、創造的で、知的に挑戦的で、時に曖昧な仕事だ。
「私の個人的な見解では、人間は本来、ほとんどの仕事が求めている以上のことをできる存在だと思っています」とグロッサー氏は述べた。







