
- 36歳のジャスティン・ウォン氏は、高すぎるのでカナダに家を買うのを諦めた。
- 子どものころから日本を訪問していたウォン氏は、カナダではなく日本に家を買うことにした。
- できる限り、日本とカナダを往来する計画だ。
本稿は、日本の空き家を購入したい外国人向け仲介するサイト「アキヤマート(Akiya Mart)」を通じて、奈良県に家を買ったジャスティン・ウォン氏との対談を編集したものだ。ウォン氏は、バンクーバーから25キロほど南にあるブリティッシュ・コロンビア州デルタ市でマーケティング職に就いている。
私は子どものころから何度も日本を訪れており、日本の文化が大好きだ。ときには1人で、ときには両親とともに、これまでにおそらく6~7回ほど休暇で日本を訪問している。妻と出会ってからは一緒に何回か日本を訪れた。妻も日本が好きだ。
「もっと日本で過ごしたい」と、常に思っていた。
だから、3万ドル(約450万円、手数料・その他諸経費前)で日本に家を買った。家は1970年代後半か1980年代前半に建てられたものだと思う。広さは200平方メートル超で、寝室が8つ、洗面所が2つ、台所が2つある。
ほとんどの近しい人たちはただ驚き、興味を示した。唯一反対したのは私の家族で、詐欺の一種ではないかといぶかしがった。だが、彼らを非難することはできない。
私が買ったのは、かなり田舎にある物件だ。その家を一度も見たことも、実際に現地に足を運んだこともなかった。行ってみて空き地だったら? 私自身、現地に行くまで確信が持てなかったのだ。
厳密に言えば、その物件を見ずに買った。ビデオで内覧はしたが、いささか賭けのような決断だった。その際にすでに日本旅行を計画していたので、訪日時に実際に家を見たのだが、その時は「とにかく買って、後でちゃんと確認しに行こう」と考えていた。
個人的に、歩いて近隣に行けるところが気に入った。運転は苦にならないが、文字通りいつでも歩いてどこへでも行ける。すべてが非常に便利なところが、この物件を選んだ大きな理由だ。そしてもう一つの理由は食事である。値段的にも品質的にもとても良い。日本食が私は好きなのだ。私は昔から日本文化のそういう部分が大好きだった。

私は内向的で、1人を好む。特に30代になったいま、外出したり、社交的な活動にいそしんだりすることにあまり関心がない。日本は放っておいて欲しい人や、自分のことは自分でする人にとても寛容だ。
この家を見つけたのは偶然の産物だ。日本で家を買いたい人がレディット(Reddit)に投稿した記事を偶然見つけたのだ。この人が「アキヤマート(Akiya Mart)」を勧めていたので、私はそこで検索し、価格を見て、これなら買えるのではないかと思った。
日本に家を購入したのは、いまの地政学的な情勢を踏まえてのことで、偶然の一致にすぎない。だが、少しずつ前に進んでいるのは嬉しい。
いま、カナダで家を買うのは難しい
バンクーバー生まれの私は、これまでの人生をカナダで過ごしてきた。バンクーバーの少し南にあるデルタという町に住んでいる。
私の収入はまずまずだし、平均的なカナダ人よりは給料は良いが、デルタ市近郊に家を買う余裕はない。バンクーバーとの境にあるブリティッシュ・コロンビア州のリッチモンドでは、クローゼット1個分ほどの狭い家の住宅ローンを組むことさえできない。
バンクーバーの平均的な住宅価格は100万ドル(約1億5000万円)を超えている。
家の購入に精通しているわけではないが、日本で買ったものと大きさや容積が同じくらいの家をバンクーバーで検索してみた。すると、バンクーバーでは約390万米ドル(約5億8000万円)もしたのだ。
私は一生、カナダで家を借りざるを得ないという事実を受け入れた。そして、これは日本に家を買う良い機会だと捉えた。「ちょっと待って。450万円くらいでこの家を手に入れられる。それも、かねてから暮らしたいと思っていた国に」と。

日本で家を購入する機会があると知ったら、あとは考える必要もなかった。
購入プロセスも想定したよりも簡単だった。家を買ったことはなかったので(バンクーバーにいる誰もできそうに思えないが)、日本で家を買うのが、どんな感じなのか思いもつかなかった。
全体では1カ月半から2カ月かかったが、その大半はただ待っているだけだった。たくさん調べて、できるだけ多くの物件を検討したので、アキヤマートと出会って、不動産仲介業者と面談したときには、欲しい物件がすでに決まっていた。少しも時間を無駄にしたくなかったのだ。
日本にずっと住みたい
目下、小規模なリノベーション中だ。基盤部分に入ったいくつかの大きな亀裂を修理し、シロアリ予防剤を注入している。その後はさほど大きな修繕はしない。すばらしい家に余計な手を加えたくないのだ。
家を買う時の最大の懸念材料は、この家が耐震基準を満たしているかどうかだった。バンクーバーはプレート上に位置しており、常に地震の危険がある。だから、この家にも耐震工事等を施したかったのだが、建設業者からの見積りは家の購入代金の4倍だったので、見送ることにした。

これは投資ではないし、賃貸に出すつもりもない。ド田舎にあるので、このような場所に民泊する人は絶対にいない。当面この家は、基本的に休暇用の家にするつもりだ。90日の観光ビザを取得して、日本に3カ月滞在したらカナダに戻り、3カ月経ったら日本に戻ってくることを計画している。
私はリモートで働いているので、仕事が見つかるか心配せずに、自宅で働くことができる。そうした働き方を許してくれる素晴らしい職場だ。
日本で永住権を取得できたら、ほとんどの時間を日本で過ごすだろう。とても楽しいに違いない。日本でリタイアしたいと思っているが、実際にはかなり難しい。
日本に3カ月も住んだら嫌になるだろうって? そんなことはわからない。いまはただ、自分のプランにワクワクしている。













