国道、地下鉄、駅前広場…増殖する無料公衆無線LAN
災害時のインフラ確保と地域活性化図る
スマートフォン(スマホ)やタブレット端末、パソコンをインターネットに接続する通信回線として、無料で使える公衆無線LANのサービスを拡充する動きが相次いでいる。国土交通省は、全国の国道に沿って敷設した光ファイバーを活用し、一般消費者が利用できる公衆無線LANの親機(アクセスポイント=AP)を道路沿いに整備する実証実験を始める。東京地下鉄(東京メトロ)は、駅構内に設置済みのAPを活用し、新たに無料の公衆無線LANサービスを展開。東京都三鷹市も、三鷹駅前と周辺の商店街一帯でAPを整備する。災害時の連絡手段として公衆無線LANを活用するほか、周辺の商店や観光地の活性化を図る狙いもある。
国道沿いにAP設置 災害時のインフラ確保

国交省は、東京・秋葉原付近の国道17号線沿道にAPを新設し、一般消費者に無料で提供する実証実験を、2月18日から3月中旬まで展開する。今回の実験では、万世橋交差点-神田明神下交差点間の300メートルで、7カ所の街路灯にAPを設置。一般消費者が無料でインターネットに接続できる信号(SSID)、道路管理者専用の信号、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの各社が展開する有料の公衆無線LANサービスの信号を発信する。同省によると、国道に付随する街路灯などの設備にAPを設置するのは国内初という。
国交省が公衆無線LAN整備に乗り出す狙いは、災害発生時の被災状況把握の円滑化にある。国交省は各地の建設会社と、災害時に各地の被災状況を調査・報告してもらう協定を締結している。しかし東日本大震災の際は、携帯電話回線が長時間にわたり混雑したため状況把握に遅れが生じた。
一方、国交省が管理している全国の国道には光ファイバー網が敷設済みで、行政機関相互の連絡などに利用している。この回線は東日本大震災の際も混雑することなく運用できていた。同回線を公衆無線LANの中継回線として活用することで、災害時も使える通信インフラの整備を目指す。
具体的には、被災状況を撮影した写真を伝送するなどして状況の把握をしやすくするほか、一般消費者も交流サイト(SNS)やインターネット電話などで家族との連絡に使えるようにする。平常時にも、道路の管理業務用端末の通信インフラとして公衆無線LANを活用するほか、民間の公衆無線LAN事業者と連携してスマホなどの通信環境を充実させる。

国交省は今回の実証実験で、平常時や災害時に公衆無線LANがどの程度有効活用できるかを検証する。併せて、「今回は無料サービスを提供するが、実用化した場合の運営コストとその負担のあり方を今後検討していく」(国交省関東地方整備局の池田豊人道路部長)考えだ。
東京メトロ、駅構内のAPを無料開放
東京メトロは、乗客が無料で使える公衆無線LANの試験サービス「MANTA(マンタ)」を、14日から7月31日までの予定で始めた。当初は銀座線の全駅と大手町、日比谷、新宿、池袋など計31駅の構内で始め、他の駅にも順次展開していく。
乗客はMANTAの専用アプリをスマホにインストールすることでインターネットに接続できる。MANTAの接続時にはポータルサイトをスマホの画面に表示し、乗客が現在いる駅の時刻表や構内図、各線の不通や遅れなどの運行情報、ニュース、沿線の商店や観光地、イベントの案内といった情報を配信する。インターネット接続中は、スマホのブラウザーから各種サイトにアクセスしたり、スマホの各種アプリを使ったりすることも可能だ。
東京メトロは既に、他社管理駅など一部を除くほぼ全駅の構内に公衆無線LANのAPを設置済み。NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTT東日本、ソフトバンクモバイルの各社が提供する有料の公衆無線LANサービスが利用可能だ。これと並行する形で新たに無料サービスを展開する狙いについて「沿線の店舗やイベントなどの情報に乗客が触れる環境を用意し、メトロに乗って出かける機会を増やしたい」(東京メトロ)としている。
無料のネット接続は1回あたり15分、1日あたり5回まで。「乗客が駅構内にとどまる時間が15分を超えることはほとんどなく、乗り換えを加味しても1日5回あれば十分と考えた」(東京メトロ)としている。無料回線を長時間占有する行為を防ぐほか、有料サービスとのすみ分けを図る狙いもあるとみられる。
鉄道の駅構内における無料公衆無線LANとしては、福岡市交通局が市営地下鉄の全駅で提供しているほか、JR東日本も首都圏の主要駅で順次サービスを展開している。京都市交通局も13年度から市営地下鉄で無料サービスを始める予定だ。これらは主に外国人観光客を対象とし、通信インフラと観光情報の提供を図っている。日ごろから地下鉄を利用している地元の乗客を対象とする無料公衆無線LANは珍しい。
| 鉄道事業者 | 設置駅 | 提供開始 | 無料ネット接続の内容 |
|---|---|---|---|
| 福岡市交通局 | 福岡市営地下鉄の全駅 | 12年4月 | 1回あたり15分、回数無制限 |
| JR東日本 | 山手線内と舞浜、成田空港など首都圏主要駅 | 12年10月 | 1回あたり3時間、回数無制限 |
| 東京メトロ | 主要駅と銀座線全駅など31駅、以降順次拡大 | 13年2月 | 1回あたり15分、1日5回まで |
| 京都市交通局 | 京都市営地下鉄の全駅を予定 | 13年度 | 1回あたり3時間、回数無制限 |
三鷹市、駅周辺にAP100カ所

三鷹市は、同市が出資する第3セクターの「まちづくり三鷹」を通じて、三鷹駅南口の駅前と周辺の商店街に無料の公衆無線LANサービス「Wi-Fi三鷹」を展開する。まず三鷹駅前のバスターミナル付近など4カ所にAPを設置し、18日にサービスを始める。近隣店舗にもAPの設置を働き掛けており、「既に15店舗がAP新設で合意済み。3月末までに30店舗、将来は100店舗に拡充したい」(まちづくり三鷹)
Wi-Fi三鷹は東京メトロと同様、接続時にポータルサイトを表示。AP設置店舗のセール情報や割引クーポンなどを配信する。駅周辺には三鷹の森ジブリ美術館などの観光地があることから来訪者が多いものの「駅前のバスターミナルでバスに乗る人が多く、商店街への波及効果は限定的」(まちづくり三鷹)。このためバスターミナルに公衆無線LANを整備し、商店街の情報を提供することで、商店街への集客を図る。インターネットへの接続は1回あたり20分間で、1日あたりの回数制限は設けていない。

このほかWi-Fi三鷹は、国交省の取り組みと同様に災害時のネット接続回線を確保する狙いもある。東日本大震災の際、三鷹駅周辺には帰宅困難者が多数集まったものの、鉄道やバスの再開状況といった情報がほとんど得られず混乱していたという。こうした経緯から、災害時の通信インフラとして公衆無線LANを確保できるよう、駅前にAPを整備した。
既に整備済みのAPの費用は総務省からの補助金を充当しており、13年度以降の運営費用は三鷹市で予算計上する方針。店舗へのAP設置については、設置店に一定の費用負担を求める。
(電子報道部 金子寛人)












