米テキサス州の移民捜査局で銃撃、3人が死傷　容疑者も死亡

【ワシントン=芦塚智子】米南部テキサス州ダラスにある移民・税関捜査局（ICE）の収容施設で24日午前7時前（現地時間）、銃撃事件があった。国土安全保障省によると収容者3人が撃たれ、午後2時30分（同）時点で1人が死亡、2人が重体。当局は容疑者も自らを撃って死亡したと説明している。

同省は撃たれた3人のうち2人が死亡といったん発表したが、その後1人死亡に訂正した。米メディアは、複数の警察当局者の話として銃撃犯の疑いがあるのは29歳のジョシュア・ジャン容疑者だと報じた。

米連邦捜査局（FBI）の捜査官は記者会見で、初期の証拠として容疑者の近くで見つかった銃弾に反ICEのメッセージがあったと明らかにした。パテル長官はX（旧ツイッター）に現場で見つかったとする未使用の薬きょうの写真を投稿した。薬きょうに「反ICE（ANTI ICE）」の文字が見える。

パテル氏は「捜査中だが、初期の証拠の評価はこの攻撃の背後にイデオロギー的な動機があることを示している」と指摘。「これらの卑劣な、政治的な動機による法執行機関への攻撃は一回限りではない」と記した。

国土安保省の声明によると、容疑者はICE施設に近い建物の屋上から、ICE施設と非常口にあったバンに向けて無差別に発砲した。犠牲者はバンの中か近くで撃たれた。

NBCテレビは、ジャン容疑者は無党派として有権者登録していたと報じた。

容疑者の動機は明らかになっていないが、トランプ政権は左派の責任を追及し、保守活動家チャーリー・カーク氏の射殺事件をきっかけに強めてきた左派攻撃を増幅する構えだ。

トランプ大統領はSNSへの投稿で「この暴力は、過激左派の民主党員が法執行機関を悪魔のように扱ってきた結果だ」とした。「今週中に、これらの国内テロネットワークを破壊する大統領令に署名する」と表明した。

トランプ氏は22日に極左運動「アンティファ（反ファシスト）」を「国内テロ組織」に指定する大統領令に署名している。

バンス米副大統領は南部ノースカロライナ州でのイベントで、容疑者は「暴力的な左派の過激派」と断言した。薬きょうの文字や「まだ公にしていない証拠」から「この人物は政治的な動機があったことが分かっている」と述べた。

バンス氏は、西部カリフォルニア州のニューサム知事を名指しし、ICEなどを批判する民主党政治家の発言や左派メディアの「うそ」が「正気でない人たちに暴力行為をするよう奨励している」と主張。「法執行機関への暴力を奨励するなら、地獄に落ちればいい」と述べた。

テキサス州選出のクルーズ上院議員（共和党）は現地での記者会見で、カーク氏の事件などに言及し「これ以上は許されない。暴力は間違っている。政治的な動機による暴力は間違っている」と強調した。ICEや税関・国境取締局（CBP）を憎悪の対象にするような発言はやめるよう訴えた。