【特集】四季のメニューで「食」考えるランチコーナー…共立第二

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共立女子第二中学校・高等学校
共立女子第二中学校・高等学校

 選び抜いた食材を使った給食で、「食育」に取り組む共立女子第二中学校・高等学校(東京都八王子市)が注目されています。

 生徒たちに食べ物を大切にする心を養ってもらうだけでなく、食材となる魚や野菜の生産から消費までのプロセスを学ぶ中で、環境問題について考えるきっかけにもなるそうです。どんな取り組みなのか、その現場を取材しました。

ランチコーナーを「教室」に

 同校が食育を取り入れたのは、同じ敷地内にあった共立女子大が2007年に神田一ツ橋キャンパスに移転したのがきっかけだ。高尾山系を望む広大な跡地を利用して校舎をリニューアルし、100席近いランチコーナー(食堂)と厨房を新たに設けた。

このランチコーナーを「教室」にして2011年から始まったのが、食育を兼ねた給食。導入にあたっては、育ちざかりの生徒が健康な生活を送るための第一歩として、食材に関する知識に加え、食事マナーや伝統食など、さまざまな切り口で「食」を考える習慣を身につけてもらうことを目的にすえた。

給食は月1回の楽しみだ
給食は月1回の楽しみだ

 同校には中高で計27クラスあり、学校行事などがある日を除いてほぼ毎日、2クラスずつこの取り組みに参加する。生徒たちはふだんクラスでお弁当を食べるが、月1回のペースで、この給食をとる計算になるという。

 入試広報部副主任の松田寿先生は「給食は教育の一環として実施しており、食材などの費用は学園側が負担しています。こんな形でやっている学校はほかにないのではないでしょうか」と話す。

本日のメニューは「郷土料理」

 食育のテーマは、ランチコーナーの営業を委託している「日本レストランエンタプライズ」の管理栄養士・笹川とも恵さんを中心に、各学年の食育担当の教師が意見を出し合って決めている。取材に訪れたのは9月下旬。ランチコーナーに入ると、できあがった料理が一人前ずつトレーにのせられ、入り口の温冷配膳車に積まれていた。

 この日、食育を受けるのは中学1年生82人。4時限目の終了を告げるベルとともに、生徒たちは教室からランチコーナーへ。料理が盛りつけられたトレーを配膳車からテーブルへ運んでいく。

手際よく配膳していく
手際よく配膳していく

 よく見ると、食器にもさりげない気配りがされている。女子校らしく、美しく華やかなデザインのものが多いのだ。また、どんぶりなど重くて壊れやすい食器はプラスチック製だが、お皿や小鉢は陶器製を使っている。

メニューについて質問する生徒も
メニューについて質問する生徒も

 講師役の笹川さんが、全員に給食がいきわたったのを確認して「いただきます」というと、食事が始まった。それと同時に、笹川さんがこの日のメニューについての説明を始め、生徒たちは食事をとりながら静かに聞いている。

 「本日の献立は、関東地方の郷土料理です。埼玉の冷汁うどん、あじやいわしを使う千葉のさんが焼き、栃木の特産物として知られるかんぴょうの玉子とじ、茨城のれんこんサラダ、神奈川のへらへら団子。それぞれの地方の味にしました」

時期にあわせたメニューが好評
時期にあわせたメニューが好評

 郷土料理というテーマにふさわしく、関東各地の地理と風土、食文化を舌で感じられるメニューだ。

 笹川さんは、こうした食材を紹介しながら、地産地消のメリットにも触れる。生産地と食卓の距離が近いことで輸送にかかる二酸化炭素の排出量が抑えられることや、農家の直売所が地域経済の活性化につながること、生産者の顔が見えることで消費者が安心を感じやすいことなど、その内容は幅広い。

 「スーパーなどで販売している産地直送の農産物をのぞいてみると、新たな発見があるかも知れません」と結んだ。

 レクチャーにかける時間は毎回5分から10分。この日もレクチャーが終わると、それまでの静かな風景が一変。生徒たちは友だちとおしゃべりしながら、料理を楽しんだ。

管理栄養士の笹川とも恵さん
管理栄養士の笹川とも恵さん

 生徒たちの間では、「おいしい」「はじめて食べた」といった声が飛び交っていた。中には、笹川さんにメニューについて質問したり、食に関する会話を交わしたりする生徒たちの姿も見られた。

この日のメニューは関東の郷土料理
この日のメニューは関東の郷土料理

 改めてメニューを見直すと、育ちざかりの中高生向けに栄養素やカロリーにも配慮していることがわかる。笹川さんによると、中高生が家庭ではあまり食べていないであろうかんぴょうやウドを使って、こうした食材への関心を高めてもらうことにも努めているという。

メニューは時期に合わせて

 スタートから3年目、毎回のメニューには季節に合わせた創意工夫が凝らされている。たとえば2011年4月、初めてのメニューとして供されたのが、その名もずばり「春の祝い膳」。鰆(さわら)の西京焼きとブロッコリーのごま和え、あさりご飯など、旬の食材をふんだんに使った。

 その後も、新入学時期には「朝食をしっかり食べよう」、5~6月には「ストレスに負けない食事をとろう」、7月には「夏バテ予防の食事」、修学旅行の時期には「京都の郷土料理」といった具合だ。このほか、これまでの献立表には「風邪を予防する食事」「花粉症を予防する食事」「カルシウムたっぷりメニュー」「クリスマスメニュー」などが載っている。

食文化を舌で感じる
食文化を舌で感じる

 生徒たちに最近好評だったのは「初夏のイタリアン」。これは、「海外の郷土料理に挑戦してみたい」という食育担当の教師の提案にこたえたもの。ズッキーニとピーマンのマリネ、ミラノ風カツレツ、ローマ風玉子とチーズのスープなどが出され、生徒たちは「本場イタリアの味」に舌鼓を打ったという。

 食にまつわるレクチャーも好評だ。たとえば、「いただきます」の語源は「命をいただきます」。「ごちそうさま」は、あちこち走り回って料理を用意してくれた人へ感謝する言葉、つまり「馳走=おもてなし」に由来する。また、迷い箸や探り箸といったマナー違反なども紹介して、食事への意識を高めている。

将来は「自給自足」も

 食育は家庭科の教科書でも取り上げられているが、その取り組み方は学校によって大きな幅がある。同校では給食だけでなく、約330平方メートルの学校菜園を設け、理科の授業で大根などの栽培も行っている。将来は、菜園で取れた食材を給食に取り入れる「自給自足」のようなアイデアも検討中という。

 「食」について考えることは、生き物や自身の健康、地域や国の在り方、ひいては地球全体について考えることにつながる。生徒たちがやがて結婚し、家庭を持ち、子どもを育てていくうえでも、きっと役立つに違いない。こうした教師たちの思いが、生徒たちを「食」の目利きができる人物に育て上げていくのだろう。(文と写真:林弘典、写真は一部、共立女子第二中学校・高等学校提供)

掲載日:2013年10月24日

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