【特集】2020年からの大学入試に向けて…片山学園

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 富山県唯一の私立中高一貫校である片山学園中学校・高等学校(富山市)。学習塾「育英センター」を母体とし、開校からわずか10年足らずで、毎年、東大や京大の医学部合格者を生む学校となった。そこで、2020年から一変する大学入試に向け、片山学園が設けた新たなカリキュラムについて話を聞いた。

時間割を根本から改革

新カリキュラムについて語る高倉真一教頭
新カリキュラムについて語る高倉真一教頭

 取材に応じてくれたのは、高倉真一教頭。教頭職の傍ら、英語教師としても週15時限を受け持っている。

 従来、片山学園は7限まで授業がある日が週3回、さらに週2回の夜間授業があるなど、充実した時間割でも注目されてきた。

 「2020年の大学入試改革への取り組みとして、まずこの時間割を変更しました。月曜から金曜までを毎日7限とし、毎週あった土曜日の登校は月1回に変更、夜間授業を廃止しました」と高倉教頭。特に土曜日は部活動の試合で授業を欠席する生徒が多かったため、部活動に専念する日にしたという。

土曜日に、より力を入れられるようになった部活動
土曜日に、より力を入れられるようになった部活動

 「結果、週37限だった授業は35限になりましたが、月1回の土曜日午前中の授業を『土曜塾』と称し、1週間学んだことのアウトプットなどを行っています。これは今まで夜間授業で行っていたことです。また、1日7限と授業数が多くても集中力が切れないよう、体育の授業を随所に組み込んでいます」。総合的な学力を身につけるためには、まず体力をしっかりつけることが大切。体育の授業も、今回の改革で重要な位置づけにあるそうだ。部活動の時間もこれまでから30分延ばし、体力強化を課題にしている。

 他校に比べ1日の授業数が多く、そのうえで部活動となると生徒は大変なのではという問いに、「土曜日は授業を気にせず試合に専念できるようになり、毎日の部活動の時間も増えたので、これまで以上にメリハリのある生活になってきているようです」と高倉教頭は言う。

アクティブ・ラーニングと総合学習

英語の授業風景。将来は英語で数学の授業をすることも検討している
英語の授業風景。将来は英語で数学の授業をすることも検討している

 2020年からの大学入試では、今まで以上に思考力や表現力を要する出題が予想されている。これに関して、片山学園の新カリキュラムはどのように対応しているのか。

 「全教科を通じて、アクティブ・ラーニングを徹底しています。先生が黒板に書きながら答えを解説していくという従来の授業をやめ、生徒たち自身で問題を解決していくスタイルです」と高倉教頭。

 「先生が出した課題についてグループごとに考え、互いに教え合います。人に教えるということは自分にとって非常に勉強になることなので、先生によってはほとんど正解を出さないということもあるそうです。また、先生主体で授業を進める旧来の授業では、その科目が苦手な子はどうしても授業に消極的になってしまうのですが、グループごとに答えを探すという作業で、全員が積極的に授業に参加するようになりました」

 答えの導きを生徒に任せる授業スタイルになっても、授業の遅れは特にないそうだ。人に教える楽しさを知り、予習をする生徒も増えたという。「学力の差はどの学校も抱える問題。勉強が出来ない子のサポートは教師にとって大きな課題でしたが、このアクティブ・ラーニングがそれを解消するのに有効だと、多くの先生が実感しているようです」

 また、今まで中学3年生が1年かけて取り組んでいた卒論を廃止した。代わりに、中学3年生でテーマを決めて探究活動を続け、高校2年生でそれを論文にまとめるという総合学習を取り入れた。3学年にわたる研究結果を論文にする作業は大学生の卒業論文よりも大変なのではと聞くと、高倉先生もうなずく。

 「確かに大変な作業ですが、これは2020年からの大学入試対策に大きくつながっていくと思います。新たな大学入試では、論文の記述も当然あるでしょう。研究テーマは言語や歴史、物理、化学と生徒が自由に選んだものですが、この膨大な論文作成を乗り越えた自信は、入試の面接でも役に立つはずです。このように、総合学習は2020年からの入試の形とリンクしています」

英語は4技能と海外経験でサポート

昨年からプログラムに加えられた英国イートン校サマーカレッジ
昨年からプログラムに加えられた英国イートン校サマーカレッジ

 片山学園の英語教育は、以前から「読む、書く、聞く、話す」の4技能をバランス良く伸ばすようにしていた。「新たな大学入試では恐らく、英語での説明や面接が増えてくるでしょう」と高倉教頭は言う。片山学園では中学1年から英検受検を必修としている。中1で4級、中2で3級、中3で準2級の全員合格を目指し、中2の英検3級の合格者が80~90%になることもある。さらに英語のコミュニケーション力向上を飛躍させるのは、海外でのホームステイやサマーカレッジだ。

 「開校1年目から、高校1年生全員のイギリス10日間のホームステイを実施していますが、サマーカレッジには、中学から希望者が多くいます。イギリスのイートン校をはじめ、今年はスイス、来年はフランスやカナダの提携校でのサマーカレッジもスタートする予定です。また、学校が設けるこのようなプログラム以外にも、春休みなどに個人で行く生徒もいます。海外に目を向けている生徒が急増している様子は、教師にとっても驚きです」

 校内には英語ネイティブの教師が2人おり、その他に短期で外国から招くこともあるそうだ。「新しい入試では、英語以外の教科で英語の読解力や記述が求められることも想定しています。教師の間でも、数学を英語で解説してみようかなど、教科をまたいだ授業を検討しています」

自由度の高い寮で勉強環境をサポート

1泊からでも利用可能な学生寮
1泊からでも利用可能な学生寮
寮での中1生。勉強に集中できる環境が整っている
寮での中1生。勉強に集中できる環境が整っている

 朝礼や集団登校、清掃活動などを通じて自律性を養う寮生活は、片山学園の魅力のひとつだ。年間を通して生活する通年寮生はもちろん、勉強に集中したい試験前や、雪深い時期だけ寮に入る生徒も多いという。1日だけの宿泊も可能という自由度の高さが特徴的だが、寮内では、高校2、3年生をリーダーにした縦割りのグループを作って、ふだんのトラブルは生徒間で解決するのが基本。学生の自治区のようだ。

 寮生の勉強環境についても聞いてみた。「毎日夜8時から10時までは勉強の時間を設けています。その時間には育英センターの学習塾の先生方に来てもらい、生徒からの質問に対応します。大学受験になると、物理など専門的な分野もあるので、本校の卒業生にチューターとして来てもらうこともあります」。日々の学校授業に加え、寮生になるとさらに手厚い勉強環境が整えられるというわけだ。

社会人研修で使用する教材で道徳を身につける

 片山学園の新カリキュラムと学校環境は、2020年からの大学入試に向けて、すでに万全に整えられているという印象だが、学力・体力だけでなく、道徳観の導きにも注力している。

 道徳の時間に使われている教材は、企業のビジネス研修でも使用されるリーダーシップ教育を学校向けにした「リーダー・イン・ミー」というプログラムだ。「これも今年から導入したものです。小学校で実施されていますが、それの中学生バージョン。主に、自分が主体的に動くにはどうしたらいいかを学ぶ活動です。片山学園中学校は、全国の中学校に先駆けてこのプログラムを取り入れました。自分が主体的に動くためには、相手のことを考慮する必要もある。道徳本来の要素をそのまま実践できるプログラムです」

 毎年、中学3年生が体験する東大訪問では、片山学園卒業の東大生が率先して引率を引き受けてくれるという。改革で新たなプログラムが導入される前から、片山学園の生徒たちには、深い愛校心と思いやりの心が根付いているようだ。

(文と写真:小林由佳 一部写真提供:片山学園)

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